M of Beauty / メガマソ | 安眠妨害水族館

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M of Beauty/メガマソ

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1. M of Beauty
2. chimes
3. ハピリーモッシュフロア、ヘッドバンギングソング
4. AWAKE
5. ワスレナグサ
6. 四の喫茶館物語
7. 前髪、ディフォルメされた歌謡曲を作る。
8. Torisarideishi's Love
9. 白夜の小惑星
10. MEMORIES
11. メグムミサダメキタゾラニナクノ
12. EYES
13. センスオブスターゲーザー

2010年にリリースされたメガマソのフルレンス。
メジャー1stアルバムとなった作品です。

「chimes」、「MEMORIES」と、立て続けにポップな楽曲をシングルとして切ってきた彼ら。
"メジャーデビュー"という事実が楽曲の変化によって示された。
そう思いかけていたところでリリースされたのが、本作「M of Beauty」でした。

良くも悪くも"メジャーっぽい"と称される本作。
実際に、ストレートさが増したのも確か。
Vo.インザーギさんが作曲に絡むようになった効果か、Gt.涼平さんがあえてそうしていたのか、初期にあった難解さは、影を潜めたと言えるのでしょう。

しかし、それもメガマソにとってはチャレンジの一環だったのだと思いますね。
彼らにおいて何の戦略もなく大人の言いなりになっていたとは考えにくく、じっくりと聴き込んだところで本領を発揮するスパイスが散りばめられていると考えるのが妥当。
メジャーに進出し、メジャーの環境で、メジャーらしい音楽に挑戦する。
その手法によりどれだけ"個"を高められるかを実験したのが、本作であるのだと解釈しています。

具体的には、とっつきやすいシングル曲により間口を広げ、"涼平節"をサブリミナル的に混ぜ込む。
初期のサウンドにどっぷりだったリスナーは、大衆化されたと勘繰ってしまうのも仕方なしではあるのですが、インザーギさんの歌唱力は、ある程度大衆化された音楽であっても十分に通用する力量。
やってみる価値は大いにあったのかと。
また、その分頑張らねば、という意志表示なのか演奏隊も奮起しており、見違えるように安定したような気がしますな。
メジャー2ndとなる「Loveless, more Loveless」ではインザーギさんの歌を聴かせる点に重心を置いたところからも、この1stを"個の可能性を探り当てるきっかけ"にしたかったのだと推測できます。

もちろん、昔ながらのファンでもニヤりとしてしまう楽曲も忘れずに。
ツタツタ走るドラムに、ディストーションギターが印象的に重なる「前髪、ディフォルメされた歌謡曲を作る。」は、アヤビエ時代のサウンドメイクを感じさせるし、「白夜の小惑星」では、浮遊感のあるファンタジックな作風で、その頃の歌詞世界を音で表現したような雰囲気がある。
スタートの「M of Beauty」、ラストの「EYES」を王道でまとめたと思いきや、通常盤にのみ収録された「センスオブスターゲーザー」は、カオティックな和風ダークチューン。
両極端な振れ幅は、ときにリスナーを混乱させそうですが、この不思議な世界観こそが、メガマソの真骨頂だったりするのですよ。

ちなみに、「M of Beauty」というタイトル、アヤビエ時代に発表した「エム」と関連性があったりするのだろうか。
その辺りの想像を膨らませてくれるのも、非現実世界におけるリアリティを描く涼平さん流のメルヘンファンタジーならでは。
過去と比べて嘆くのではなく、置かれている環境で出来るようになることを楽しむ。
そんなスタンスで聴くと、案外本質は変わっていないのだな、と気付かされるかもしれません。

<過去のメガマソに関するレビュー>
動かなくなるまで、好きでいて。
雪はまだ降り注いでいるか?
Loveless, more Loveless
キスミイチュチュ(メガマチュ)
櫂の目塔の属領
バイパー
ニューロマンサー(神経系亜人性)