黒と影 / 黒夢 | 安眠妨害水族館

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黒と影 (通常盤)/黒夢
¥2,500
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1. ZERO
2. ROCK’N’ROLL GOD STAIR
3. I HATE YOUR POPSTAR LIFE (Album ver.)
4. CLARITY
5. A LULL IN THE RAIN
6. FREE LOVE, FREE SEX, FREE SPEECH
7. MAD FLAVOR
8. ゲルニカ (Album ver.)
9. SOLITUDE
10. BLACK HOLIDAY
11. CALLING (Album ver.)
12. 黒と影
13. KINGDOM (Album ver.)
14. LEAP -BONUS TRACK-

デビュー20周年となる黒夢が放つ、復活後2枚目となるフルアルバム。
「黒と影」というタイトルのとおり、黒を基調としたダークなアートワークに期待感が高まります。

序盤は攻撃的。
どことなく、ストリート系の音楽性に舵を切り出した時期に似た雰囲気を持つ「ROCK’N’ROLL GOD STAIR」、ゴリゴリ攻めるベースが特徴的なシングル「I HATE YOUR POPSTAR LIFE」、スピード感がたまらない「CLARITY」と、アグレッシブなロックンロールをまくし立てます。
メロディよりも、ハードさを重視しているようなところがあり、メジャーデビュー~活動休止までの黒夢が持っていたポップさは影を潜めたイメージ。

ここで特筆すべきは、「CLARITY」でしょう。
作曲を、Vo.清春さんが、作詞を、Ba.人時さんが担当。
1曲だけとはいえ、黒夢の世界観の源流である歌詞の部分を、ましてや、自身が作曲をしたナンバーを、人時さんに委ねたという事実は、単なる遊び心やアクセントという言葉では片付けられない重みを感じます。
ミュージシャンとしての人時さんへの信頼感が増したという証拠なのでしょう。

中盤以降は、じっくりと大人のロックを追及していった印象。
演奏や音楽性に関して、自由度が一気に高まります。
ダークでダウナーなミディアムナンバー、妖しくまどろむアダルトチューンなど、じわじわと隙間を埋めていくように世界観を再構築。
年齢相応の大人びた表情を見せたと思ったら、狂気を帯びた歌声で、リスナーを圧倒し、ゆるいテンポの楽曲が固まっているものの、飽きさせることがない仕上がりとなっていますね。
個人的には、パンキッシュなサウンドに、哀愁メロディが重なる「A LULL IN THE RAIN」や、甘美なゴシックが清春節と融合した「BLACK HOLIDAY」が好み。

キャッチーさには欠けるため、後半に進むにつれ、キラーチューンらしいキラーチューンがなくなっていくのが、聴く人を選ぶかな。
清春さんのソロや、復活後のSadsからの流れで聴くなら、すんなり聴けそうな気もしますが、久しぶりに黒夢が聴ける!というテンションで聴いてしまうと、肩透かしをくらう。
慣れてくると、やっぱり格好良いな、となるのだけれど、最初の何回かはピンとこなかったのが本音であり、先入観を捨てて聴けるマインドに持っていけるかどうかがポイントなのかもしれません。

本人たちが語っているように、黒夢らしさは、今まで以上に感じない。
従来から、アルバムを出すたびに音楽性が変化して、1枚たりとて同じような作品がないのが黒夢ではありますが、再結成という形になっても、進んだ針を元に戻す気はさらさらないのだろう。
黒夢以外での活動を含めて、これまでに積み重ねた経験や技術を、バンドの名前に縛られずに、今、一番格好良いと思う形でドロップしているといったところです。
ある意味、黒夢らしくならなかったのが、黒夢らしい。

さて、今後の活動は、どうなるのでしょうか。
コメントなどから察するに流動的にはなりそうですが、発言の通りに活動していくバンドではないだけに、忘れた頃にワクワクする発表があったりしないかな、なんて思ったりしているのですけれど。

<過去の黒夢に関するレビュー>
CORKSCREW
迷える百合達~Romance Of Scarlet~
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