Mystirudom Lips / カル・ヴァリ | 安眠妨害水族館

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Mystirudom Lips/カル・ヴァリ
 

1.Mystirudom Lips
2.トランジスタ

実質的に、カメレオの前身バンドにあたるカル・ヴァリ。
本作は、ライカエジソン限定でリリースされた2曲入りのシングルです。
当時は、HIKARU.さんはシネマ、Daisukeさんは牡丹、KouichiさんはKo-ich名義での活動でした。

当初は、白系と呼ばれる世界観を追求していた彼ら。
そこに、ダンスポップの要素が加わってきたのが、この辺りの時期だったように思います。
幻想的で、淡々とした雰囲気に、踊れるリズム。
古き良き白系サウンドを、現代のキラキラ系にも繋がるデジタルさでコーティングしたような音楽性は、ラウドバンド一色になりつつあった2008年当時のV系シーンにおいて、異質な光を放っていましたね。

と言いつつ、この「Mystirudom Lips」は、元ネタがバレバレのような。
イントロから、サビに入るまでの流れ、シンセのフレーズや、メロディの使い方。
これで、L'Arc~en~Cielの「Caress of Venus」を思い出さない90年代リスナーはいないでしょう。
ここまで来ると、意図的なオマージュなのかもしれません。
やはり、こういう音楽を志すバンドが、ラルクを通っていないはずがないわけで、強いリスペクトを感じるな。

サビになると、四つ打ちリズムのダンサブルなポップサウンド。
Vo.シネマさんの、さらっと流すような歌い方も相まって、ダンスチューンなのに世界観が見える、独特の雰囲気に仕上がっているのではないかと。
この辺りは、なんとも、カル・ヴァリらしい。

カップリングは、ややダークさを増すものの、サウンドメイクとしては、表題曲を引き継ぐ形。
開けたサビは、幻想的な雰囲気を壊さずに、ベタな王道感も狙う役割を担っていて、聴きやすさもあるのでは。
間奏で、楽器隊によるチャレンジを詰め込んでいるのも面白いです。
ベースの独壇場があったかと思えば、スリリングなギターソロに痺れる。
どのパートを耳で追っても、これは、という発見があるのが良いですよね。

今もなお、カメレオではなく、カル・ヴァリがよい、と主張するファンも多いだけあって、ポップさの中に翳りがあり、マニアックさがあり、音楽へのこだわりがある。
オマージュ的な部分について、やりすぎととるか、楽しいととるかで、印象は変わってきそうですが、練り込まれたアレンジに耳を澄ませば、それだけで判断してしまうのは早いということに気付くはず。
打ち込みの無機質さを、生音で相殺させたり、生音のザラザラした質感を、デジタルな打ち込みで非現実的なイメージに変えてみたり。
真逆のアプローチが、打ち消しあうのではなく、お互いを補完しあっているようで、遊び心が実に効いているのです。

まぁ、導入には、このようなシングル作品よりも、何枚か出ているミニアルバムや1stフルアルバムを聴くべきでしょうか。
ベストアルバムも出ていますが、こちらは限定生産だったこともあり、やや手に入れにくいのが残念なところ。
ちなみに、本作に収録された2曲は、そのベスト盤には収録されておりませんので、聴きたい人はご留意ください。
そういう意味では、ある種、ニーズが消えていない作品と言えるのかも。

<過去のカル・ヴァリに関するレビュー>
Cranium entrance