亡骸を・・・ / 黒夢 | 安眠妨害水族館

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亡骸を…/黒夢
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1.UNDER… 
2.終幕の時
3.DANCE 2 GARNET
4.賛美歌
5.十字架との戯れ
6.MISERY
7.If
8.JESUS
9.親愛なるDEATH MASK
10.亡骸を

黒夢にとって、インディーズ時代では唯一のフルアルバムとなる作品。
1993年のリリースです。

後期は、パンキッシュな音楽性に傾向していきますが、本作では、ダークで濃厚な、ヴィジュアル系特有の世界観を堪能できる。
キャッチーさは不要。
ドロドロとした音楽性と、背徳感のある歌詞。
これに、Vo.清春さんの独特のしゃくりあげるような歌声が重なれば、後世のバンドに大きな影響を与えた黒夢というバンドが出来上がります。

黒夢と言えば、「親愛なるDEATH MASK」の強烈なインパクト。
シャウトというよりも奇声に近いカナキリ声で、放送禁止用語を捲し立てていく。
俗に言う、ツタツタ発狂系の元祖となった楽曲です。

この楽曲の存在により、インディーズ時代の彼らは、とにかく激しいというイメージを持たれがちなのですが、改めて振り返ってみると、それ以外の部分でも、十分に原点を感じられる作品に仕上がっているのではないかと。
案外、ミディアムナンバーが多いのですよね。
陰鬱で暗い。
じっとりとした湿度を纏った楽曲たちが、こうも存在感を発揮しているアルバムだったとは、前評判だけで聴いてしまうと、驚かされるところなのかもしれません。

「MISERY」などは、その中でもメロディアスに振れた美しく耽美的な楽曲で、ただ暗いだけ、という印象を払拭し、アルバムの陰陽をはっきりとさせている。
「UNDER…」や、「十字架との戯れ」といった王道ナンバーに耳を奪われがちですが、この手のアクセントとなる楽曲が、大事なポイントで効いていたというのが、地味に重要だったりするのですよ。
激しい曲だけやっていればいいのに、という評価にならなかったからこそ、王道的なヴィジュアル系バンドとして、その後のカリスマ性に繋がったと言っても、過言ではないはず。

当然と言えば、当然なのですが、メジャー進出後のアルバムと比較して、音質の悪さは目立ってしまう。
アレンジについても、もっと作り込むことは可能だったろうとも思います。
その後の活動や、残した音楽を知っている前提にあっては、1曲1曲の粒感については、決して大きいとは言えないかな。

しかしながら、この一生懸命に狂っていこうとする感覚は、何物にも代えがたい。
どうやったら、狂気じみた演出となりうるのか、あれこれ試行錯誤している様は、まさに初期衝動。
その後のヴィジュアル系のテンプレートを作ってしまったほどの表現技法は、今聴いてみても、色褪せるものではありません。
時代遅れと一蹴するのではなく、伝説だからと媚びることもなく、ふと思い出したように、新鮮な気持ちで聴きたい一枚。

<過去の黒夢に関するレビュー>
CORKSCREW
迷える百合達~Romance Of Scarlet~