続)車内放送から、andとorを考える | 特許翻訳 A to Z

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1992年5月から、フリーランスで特許翻訳者をしています。

車内放送から、andとorを考える」の続きです。

 

英語の車内放送での乗り換え案内で、複数の路線が列挙されるときに and なのか or なのか。

文全体を示した上で米国人に確認したところ、前回も書いたように

 

 乗換可能な路線側からみて「選択肢を列挙している」だけだと考えれば、and でも

 間違いだとは言い切れない、ただ or のほうがベターだと思う

 

とのことでした。

これについて、ついでなので海外では実際のところどうなっているのか、調べてみました。

 

Youtubeをあたると、車内放送を題材にした動画が膨大な数で出てきます。

特に日本では単に録音するだけでなく、車内表示そっくりの架空LCDを重ねてあったり、音声の字幕を添えてあったりと、動画としてのバリエーションもさまざまです。

 

初めて知りましたが、車内放送だけで、完全にひとつの趣味の領域となっているようです。

 

今回は、同じような動画を海外で探して、確認してみました。

日本に比べると種類も数も驚くほど少ないとはいえ、大都市圏であれば比較的簡単に見つかります。

 

The next stop is (駅名).  

This is (駅名).  Transfer is available to ~

 

R160 - C Express Train to 168 Street announcements + New M60 SBS Announcement


同じパターンが使われている動画例(ニューヨーク)

MTA NYC Subway: R142A (6) Train Recording Announcement to 3rd Avenue-138th Street

R188 - 7 Train to 111 Street announcements (Via Flushing Local)

 

-----------------------------------------

This is Jackson Heights-Roosevelt Avenue, Transfer is available to the 2,4,D,N, & Q Trains

https://www.youtube.com/watch?v=QYxv2i0bcWo

 

Transfer Is Available to the 2,3,A,C, and E Trains.... Connection is Available to PATH Trains

https://www.youtube.com/watch?v=seNIhMSyPx0

 

 

Transfer を主語にして、availableとなっていますね。

該当する駅で available な transferを示していますから、列挙されている路線は選択肢です。

 

 

一方、Generic Station Announcementsにある下記の案内が、日本の放送に近い形式になっています。

Tube Train なので、英国です。

 

The next stop will be (駅名), where passengers can change for services to~

 

This train is for East Grinstead. The next stop will be Newcastle, where passengers can change for services to Metrocentre, Carlisle and Sunderland. Also change for the Tyne & Wear Metro.

 

※Metrocentre、Carlisle、Sunderland はいずれも、路線名ではなく駅名のようです。


日本の放送と形が似ているとはいえ、where で文をつないでいることからもわかるように視点はあくまで駅にあり、乗客のほうは「passengers can change」と表現されています。

 

このパターンで実際の放送を探したのですが、見つけることができませんでした。

ただ、available と同じで乗り換えが可能だというだけですから、後ろは純粋に選択肢でしょう。

 

かたや同じ英国でも、changeから始まる案内もありました。

 

The next station is (駅名).  Change for ~ and

 

The next station is King's Cross St Pancras.  Change for the Victoria, Northern, Hammersmith and City, Metropolitan and Circle lines and National and International Rail services.
 

The Next Station Is King's Cross St Pancras Announcement 

 

キングス・クロス・セント・パンクラス駅での乗り換え案内です。

ヴィクトリア線、ノーザン線、ハマースミス・シティー線、メトロポリタン線、サークル線はいずれも地下鉄の路線名で、最後の接続詞は and になっています。

 

日本の関東近郊で使われている「Please change here for (路線名) and (路線名)」に似ていますね。

 

ただ・・・・

Please change という場合のchangeは動詞で、なおかつ視点は乗客に向けられています。

それも、今まさに乗り換えをしようとしている乗客に。

この意味で、進行形を使っている passengers changing/going to~ も同じです。

 

一方、英国での案内にあるChange は、動詞の命令形のほかに、名詞の可能性もあるように思います。

 

乗客に対して、命令形で 「乗り換えろ」と言うかどうか、という問題ですね。

 

実際、英国系の英英辞典でchangeを引くと名詞として「乗り換え」の定義が出てくるのに対し、米国系の辞書を探しても、同じような定義は見当たりません。

 

例)

a situation in which you get off one train, bus, or aircraft and get on another in order to continue your journey
(Longman)


the action of getting off a train, bus, etc. and catching another in order to continue a journey:
(Cambridge)

英国人は命令形でも何とも思わず普通に使うのかもしれませんが・・・

文法的な正しさはともかく、個人的には、できるだけ少ない語数で名詞を並べているというほうが何となくしっくりきます。新聞のリードみたいなものですね。

 

なお、同じくChangeから始まる案内として、他に次のようなものもありました。

シンガポールです。

 

Announcements Mega-thread - SGTrains Forums

例)

Next station, Dhoby Ghaut. ... Change at the next station for the Circle Line or North East Line.

 

Next station, Marina Bay. ... Change at the next station for the Circle Line, or train service to Marina South Pier. .. This train service will end at Marina Bay.


シンガポールの英語は「シングリッシュ」とも言われる独特のものだとはいえ、公用語になっているのは、イギリス英語。

英国と同じ用法だったとしても、少しも不思議はありません。

 

こうしてあらためて調べてみると、国によって個性というか見方の違いが感じられますね。

 

もっとも、日本語でも「お乗り換えのお客様は・・・・」や「○○線はお乗り換えです」など、バリエーションがあります。

 

これを英語にするとして、乗り換えようとしている乗客を見ているのであれば、やはり路線名を列挙した最後は or  ・・・?

それともやっぱり、and ? 

 

みなさまは、いかがでしょうか。

 

 

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