音楽に真摯な人は強引だった~さあ デューク 第二話 | 音楽でよろこびの風を

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相模の風THEめをとのダンナ

いしはらとしひろです。

 

【お知らせ】

11月22日には私のグループ 相模の風THEめをとの

配信ライブがあります。

詳しいお知らせはこのページの下部に。

 

さてさて。

あなたの人生を揺るがす?勝手にジャズ妄想ストーリー

才人デューク・ピアソンさんの物語の第2回目です。

 

第一回のあらすじ

1960年代に活躍した、ジャズのピアニスト、アレンジャーのデュークピアソンさんの霊が、僕の前に現れた。恒例のジャズマン霊。

彼はなんと音を出したいという。しかもピアノで。

早速僕はリハーサルスタジオを予約し、ピアソンさんの霊と話をしながら、スタジオへ向かう。

 

では、続きをどうぞ!

スタジオに着くとピアソンさんは紳士から豹変して……

 

「さあ デューク」第二話

 

「でも、僕よりもピアソンさんやジャズ全体に詳しい人なんて、この世の中にたくさんいると思うんですけど、なんでまた皆さん僕なんかと?」

「さぁ、なんででしょうね。でも、私もあなたとお話がしたくて、こうして姿を現したんですから、それでいいじゃありませんか。それに詳しいからって、その人を好きかどうかはまた別の問題です」

 ひょー嬉しいこと言ってくれるね。

「しかし、日本は町中でも自動販売機が多いですね」

「そうですね、缶ジュースとか色々なものを売っていますよ」

「アメリカでは大体店の中にしかないですよ。壊されて盗まれてしまうことが多いですからね」

「そういいますね。日本は割と治安はいいので」

ピアソンさんはひょろっとして背も高いので、歩くのも結構早い。

「待ってくださいよ、ピアソンさん、早いっす、歩くのが」

「ああ、すまないですねえ。久々に音が出せるかと思うとつい」

 そりゃあそうだろうなぁ。分かります、その気持ち。早歩きにもなるでしょうとも。

 いよいよ、スタジオに着いた。指定されたA3スタジオの扉を開け、僕が照明をつけるよりも早く、ピアソンさんはアップライトピアノに一直線。

しかし、ピアノの前に立ち尽くしている。

「すいません、大事なことを忘れていました。私は今、ピアノを直接弾くのはおろか、ピアノの蓋を開けることもできないんです」

「蓋くらい開けますって。あらよっと」

「ありがとうございます。しかし、せっかくピアノを前にしても弾けないんですよ」

「なんで?ひょっとして、それは霊だからですか?」

「ええ、もちろんそうです」

「でもハンクさんやアイクさんは、お茶とか珈琲とか飲んでましたけど」

「それはそんな風に見える映像を、あなたや周りの人の脳に送り込んでいただけです。あなたは気づかなかったかもしれませんが、カップの中の珈琲は減っていなかったはずです」

なんと!そうだったのかぁ!

「でも、私は本物のピアノを弾きたい。この手で弾きたい」

 うつむいてしまうピアソンさん。

「そうかぁ、それはきびしいですね。僕もピアノはほとんど弾けないから、指示してもらって弾く、なんてこともできそうにないしな。代わってあげられたらいいのに」

 うかつな一言ってのは、このことだった。顔を上げたピアソンさんの目がギラッと光った。

「今、代わって上げられたら、と、おっしゃいましたね」

 なんだか食いつくような口調だ。ちょっと恐いぞ。ここまでは紳士的に話をしていたじゃないか。

「いしはらさん、あなたの体をお借りしても良いですか?」

「え、借りるって?どうやって」

何をする気だ、ピアソンさん。

「お借りします!」

 えーー、まだ貸すとかいいですよとか、返事もしていないのに。

 体の奥の方で、何かがぐるっとねじれるような感覚がした。それが上の方に来て、視界がぐるっと一回転した。そして脳みそを誰かに掴まれて、ぐちゃぐちゃにかき混ぜられるような。

「うわーーーーー!」と声を出したような気がして………

 

 気がつくとピアソンさんは、僕の体の中に入っていた。いや、乗っ取られたと言った方がいいか。しかし紳士面して強引だなぁ。今までの3人はそこまでのことはしなかったぞ。

 そして僕は、いやピアソンさんに乗っ取られた僕はピアノ椅子に腰掛けると、猛然とピアノを弾き始めた。凄い勢いで。端正なタッチが売りのピアソンさんとは思えない、ゴンゴンと弾きまくる………

 

 30分は弾きっぱなしだったか。僕はギターは弾けるけれどピアノは弾けないから、たとえ体を乗っ取られたからとは言え、30分ピアノを弾き続けるのは初めてだ。疲れはしないけど、手の甲や手首がちょっと変な感じ。そりゃそうだよな、いきなりプロのピアニストの手になっちまったんだもの。ついて行けなくても無理はない。

「なかなか妙なものですね、自分の体が動いているのに、自分の意思とはまったく関係ないってのは」麻酔がかかったようにちょっとぼんやりした状態。そして少し上から自分を見下ろしているような感じ。ひょっとして今、幽体離脱ってやつなのか?

「本当に申し訳ない。私の勝手でこんなことをしてしまい」

 いやぁ、今までで一番紳士な感じの人(いや霊だ)なのに、一番強引とは。

「すっきりしましたか?」

「ええ、とっても」

「そりゃあよかった。今弾いていたのは、即興ですか?」

「そうですね。スタンダードもちょこっと混ぜましたが、ほとんどアドリブで」

 ジャズピアニストなのだから即興で長時間弾けて当たり前なんだけれど、30分アドリブしっぱなしとは相当たまっていたんですね、ピアソンさん。

「ははは。そうですね。なんと言っても死んで以来だから、ほぼ40年ぶりか。そりゃあ、弾きたいネタもたっぷりとありましたからね」

「ああ、今の演奏、僕はついて行くのが精一杯で、音の方をほとんど覚えていない。弾きまくったという印象しかないなんて」よく分かっていない楽器を人に操られて弾く、ってつまりはこういうことなんだろう。

「ところでピアソンさん、あなた、こんなにピアノを弾き倒すくせに、ピアノメインのアルバム、意外に少ないですよね。ファンのみんなも、もうちょっとあったらと思う人も結構いると思うんです。もう少しピアノトリオのアルバムとかも、作っても良かったんじゃないですか?」

「作曲やアレンジの方が好き、というのも大きいですけど」

「でも、それだけじゃないですよね」

「実は私、自分のピアノにそれほどの自信が持てなかったんです」

 マジか?あんなに良いのに!

「ええ?デビューアルバム『プロフィール』のピアノトリオだって、素晴らしいじゃないですか。あれを好きという人も多いはずですけど」

「私は子供の頃からピアノも弾いていたし、トランペットも吹いていました。でも、プロの音楽家に、なんてことを考えて、本格的にピアノを弾き始めたのは実は20才近くなってからなんです」

「割と遅いですね」

「ええ、やっぱり子供の頃から本格的に弾いてきた人とは違いがある」

「そうかもしれませんけど、でも音楽の良さはテクニックだけじゃないでしょう。それにそういう意味でのテクニックも充分に持っていらっしゃるのでは?」

「そうなんですけどね。分かってはいるんですけど」

 ピアソンさんの音楽的な基準は、おそらくものすごく高い。耳だっていいはずだ。そういう人だからこそ、素晴らしいアレンジや作曲ができるし、また自分の演奏に不満を持ってしまうのかもしれない。でも個性的な、ピアソンさんにしか弾けないピアノなのに。

「ピアノトリオという形では、最後に作った『メリー・オール・ソウル』は結構納得しています」

 

 

「ああ素敵ですよね、あれ。ドラムのミッキー・ローカーさん、ベースのボブ・クランショウさんと一緒にやった奴ですね。」

「彼らとはバンドだという意識を持っていましたからね。60年代半ばからずっと一緒でしたし。ホーンやリード楽器のメンバーが代わることはあっても、彼らと私は常に一体。だからこその私の音楽だったから」

「そうですよね。もうあうんの呼吸というか。曲はいわゆるクリスマスソング、スタンダード主体ですけど、三人の押し引き、からみ方。最高じゃないですか。バンドサウンドとしてすごいですよ」

「そうですか、嬉しいですね」

「ローカーさんの切れ味のいいドラムが、よりいっそうピアソンさんのピアノのかっこよさを引きだしていますよね」

お互いを熟知していて、でも予定調和には収まらない瞬発力もある演奏。スリルとリラックスが同居しているアルバムなんて、そうそうない。

 

 

今日はここまで。

ここで紹介した「メリー・オール・ソウル」

とっても素敵なクリスマスアルバムですよ。

クリスマスアルバムにありがちな、テキトーにながしている感など全くなく、本気でかっこよく、でもリラックス感もあるという希有なアルバム。

こんなラテンでカッコいい『ジングル・ベル』なんて聴いたことないぞ。

ピアノ主体のアルバムが案外少ないピアソンさんの、ピアノトリオのアルでもあります。有名曲ばかりでなじみやすいけれど、名演の嵐。ピアニストとして、アレンジャーとしての矜持が垣間見えます。

 

※この物語は実在の人物、実在の楽曲やアルバムを素材にしていますが、全てフィクションです。

 

 

勝手にジャズ妄想ストーリー

「さあ デューク」 第一話はこちらから読めます

第三話はこちらから読めます

第四話はこちらから読めます

 

その1 「モブ霊~心優しきサック奏者ハンク・モブレイとの会話」は こちらから読めます。ブルーノートを代表するサックス奏者の優しさ

 

その2 「野生の緑~グラント・グリーンのしつこい魅力」は こちらから読めます。 最高のグルーヴを聴かせるギタリストの物語

 

その3 「遺作なのにエロいってどういうこと!?~アイク・ケベックのたくましさ」は こちらから読めます。 彼は『男』だ!骨太の音と山あり谷あり人生。

 

 

 

【相模の風THEめをと情報】

相模の風THEめをとの映像はこちらから見られます


11月22日(日) いい夫婦の日
相模の風THEめをと結婚14周年記念ライブ!
久々のリアルライブ+有料配信ライブ



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音楽は祝祭だ!

相模の風THEめをと と最高の音空間を楽しもう!


11月22日(日) 18時30分よりツイキャスにて配信
有料配信のお申し込み方法

料金 2000円
☆有料配信はリアルタイムでご覧になれるほか、
アーカイブとして2週間保存されますので、
ライブ当日から12月5日まで観覧可能です。
何度でも見られます。

今回はツイキャスから配信します。
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