高い美意識と見識と深い愛情が後世に残るものを作る~さあ デューク 第四話 | 音楽でよろこびの風を

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相模の風THEめをとのダンナ

いしはらとしひろです。

 

【お知らせ】

11月22日には私のグループ 相模の風THEめをとの

配信ライブがあります。

詳しいお知らせはこのページの下部に。

 

さてさて。

勝手にジャズ妄想ストーリー 想像の翼って奴がパタパタ言ってます。

繊細な音楽人 デューク・ピアソンさんの物語の第四回目です。

 

ここまでのあらすじ

1960年代に活躍した、ジャズのピアニスト、アレンジャーのデュークピアソンさんの霊が、僕の前に現れた。恒例のジャズマン霊。

彼はなんと音を出したいという。しかもピアノで。

早速僕はリハーサルスタジオを予約し、ピアソンさんの霊と話をしながら、スタジオへ向かう。

いよいよスタジオに入り、ピアソンさんにピアノを弾いてもらおうとしたら、まさかの「霊だから実体であるピアノは弾けない」と言われ呆然。しかし、いしはらの不用意な一言から、ピアソンさんに体を貸す羽目に。いしはらの体を借りたピアソンさんは、思う存分にピアノを弾きまくる。

いしはらのリクエストにも応え、過去の自分の名曲を弾くピアソンさん。

そして録音や曲にまつわるエピソードも。アレンジャー、プロデューサーとしての矜持も聞かせてくれて、その見識にもうなずくいしはら。

 

では、続きをどうぞ!

 

勝手に妄想ジャズストーリー④

さあ デューク 第四話

 

 と言いつつ僕は、一つのアルバムを思い出していた。

 グラント・グリーンのアルバム『アイドル・モーメンツ』だ。このアルバムにはピアソンさんがピアニストとして参加している。曲も2曲提供している。全4曲のうちの2曲だから半分だ。

 このアルバムは1963年の制作だから、まだアルフレッド・ライオンがプロデュースをしているけれど、さっき言ったように手伝いは始めている頃だ。そしてこのアルバム、音楽的な部分で仕切っていたのはリーダーのグラントさんではなく、ピアソンさんの可能性が高いのだ。

 なぜなら。

 ソロはもちろん、主役のグラントさんがたくさん弾いている。にもかかわらず、アルバムから、楽曲から漂ってくるのはピアソンさんの匂いなのだ。

 言うまでもなく、このアルバムは素晴らしいアルバム。名盤として評価されている。ただ僕には、時にこのアルバムがデューク・ピアソンのアルバムでグラント・グリーンが客演、と思えてしまう時がある。別にピアソンさんは出しゃばっているわけではない。ピアノをガンガン弾くタイプでもない。にもかかわらず、その場を支配してしまう音楽力。ちなみにグラント・グリーンとデューク・ピアソンの共演はこのアルバムしかない。

 この傾向はピアソンさんを見いだした人である、ドナルド・バード(ピアソンさんのレコーディングデビューは、ドナルド・バードの名作『フィエゴ』だ)のピアソンさん参加アルバムでも感じることがある。『バード・イン・フライト』とかね。これはドナルド・バードのというよりデューク・ピアソンのアルバムだな、って。

 激しくは主張していないのに、存在感は強い音を生み出せる人なのだ。全体を染め上げる自分の色を持っている。

 

「アルフレッドはミュージシャンではないけれど、高い美意識と見識とジャズに対する深い深い愛情がありました。きっと私よりも全体を見ていたし、ミュージシャンではない分フラットに音楽そのものを聴いていたと思います。

 私はミュージシャンだからこそ、アレンジャーだからこそ。自分なりの音使いや音作りのルールみたいなものがありました。それゆえに、そこから大幅にはみ出すような音楽は、善し悪し以前に許容できなかった。もちろんプロデューサーとして、アレンジャーとして、その幅が狭かったと思わない。でもアルフレッドにはかなわなかった。今にして思えば、ですがね」

 そのピアソンさんの色が、抑えても出てしまうところが素敵なところでもあり、でも時と場合によっては、そのミュージシャン本来の持ち味を変えてしまった。そういう時もきっとあったのだろう。

 でも、それはそれで良しとしませんか、ピアソンさん。だって僕はそんなピアソンさんが生み出す音が、大好きだから。

 

「ところでピアソンさん。僕、1968年のあなたのアルバム『ファントム』も大好きなんですが、特にあのタイトル曲、それまでのピアソンさんの曲の傾向と比べると、ちょっと異質ですよね。」

「あれはね」

「ええ」

「あの時一番やりたかったこと」

その答えを聞いてにやりとしてしまった僕。そうでしょうとも。

「あれ、サイケデリックをやりたかったんですよね?」

「私は好きな音楽、たくさんあるんですよ」

「ドアーズとか、グレイトフルデッドとか、それにリボルバーの頃のビートルズとか。匂いますよね」

「ばれましたか。そこにマーティン・デニーなんかのエキゾチックサウンドを混ぜて、ジャズで炒める」

「やっぱりそうでしたか。あれ、麻薬的な陶酔感ありますよね。結構演奏時間長いのに。あの空間に浸っているとあっという間に終わってしまいます。ああ、終わらないでって思います」

「ええ、私は麻薬はやらなかったけれど、あの浮遊感としか言いようがないサウンドが作れた時は、やった、と思いました。もちろんそれまでのジャズにだって、そういう要素のある曲や演奏はありました。でも、そこに焦点を当てて浮遊感や陶酔感そのものを曲にしたジャズは、あまりなかったんじゃないでしょうか」

「あなたの狙い通りに、僕はあの曲でたっぷり浮遊させてもらっています。最高のドラッグミュージックですね。しかも抑えめが魅力のピアソンさんにしては、アレは全開です。」

「ははは。全開とは。あれはあの1968年でなければ、出せない音楽だったかもしれませんね」いたずらっぽく笑うピアソンさん。

「あのアルバム、レコード番号で言うと『ファントム』の一つ前が、あなたの恩人ドナルド・バードさんの『スロウ・ドラッグ』ですけど、あれもわざとですよね?わざと連番にした」

「君もあの手の変な音楽が好きなんだね(笑)」

 

「ジャケットの雰囲気というかテイストが似ていますし、タイトル曲の妙にダルなループ感というか。音楽の傾向は似ているというほどではないけど、でも印象はなんとなく相通じるものがあります。あれは二枚で対になった作品ですね?それが制作時期はちょっと離れているのに、レコード番号をわざわざ連番にした意味かと」

「まぁ結果的にああなりました。狙って作ったわけではないけれど、でも、いざアルバムを出そう、って時に『ファントム』と『スロウ・ドラッグ』を対に見えるようにしてもいいかな、というのは仕掛けましたよ。まぁ、分かる人だけ分かればいいと思ったけれど、日本にもいたんですね。面白いですね」

 ここはいしはら、ドヤ顔です。やったぁ。なんか嬉しいぞ。

 

 ピアソンさんの音楽は全体に繊細だし、細かいところまでよく気を配られている。でもそのくせ、曲の奥底を支えるグルーヴは太い。そして黒っぽい。

 1967年のアルバム『ライト・タッチ』に収められている「チリ・ペッパー」や「ロス・マロス・オンブレス」などを聴くとよくわかる。テーマリフがめちゃくちゃカッコいい。それを支えているのは、黒々としたブルージーな空気と、程よく整えられたアレンジメント。気持ちよくうねるグルーヴ感。程よい粗さもあるホーン奏者の勢いと対になっていて。

 程よく、が肝だ。そしてピアソンさんのセンスだ。決め決めにしすぎない。やりすぎない。まとめすぎない。繊細さと太いグルーヴの同居。仕掛けた音とその場の勢いの幸せな同居。

 このバランス感覚こそがピアソンさんの凄さでもあると思う。なんにせよ、凄みの一つもなければビッグバンドなども運営できないし、そうそうたるクセ者ミュージシャン達もついてこない。

 

 そして、そこはかとなく全体に漂う「ルパン三世感」

 もちろんルパン三世の方が、これよりも数年後だから、話が逆立ちしているのだけれど。昭和の日本にこそぴったりな、でも矛盾するようだけど、今聴いても古さを感じさせないエバーグリーンな音楽。日本でこそ、もっと受け入れられていいと思うのだけれど。

 

 ピアソンさんはけっして、これ見よがしな演奏やアレンジはしないし、いつも空間を残してくれる。

 速さには「小気味良さ」があるけれど、遅さや少なさには「優雅」が含まれる。詰め込んだ音には満腹感はあるけれど、それが豊穣につながるかどうかはまた別の話。

 いい感じのデコボコがある音楽。隅から隅までコントロールしきって消毒したような音楽は、ピアソンさんの趣味じゃない。

 

 

今日はここまで。

デューク・ピアソンさんは素晴らしいアルバムを発表し続ける傍ら、ブルーノートレコードの創業者、アルフレッド・ライオンが1967年に引退してしまうと、彼の跡を継いでプロデューサーとしても腕を振るいます。

そこにも色々な物語が隠れていたのですね。時にそこで苦悩する場面もあったようです。

 

さて、いよいよ次回は最終回です。

この物語の着地点は?

 

勝手にジャズ妄想ストーリー

「さあ デューク」 第一話はこちらから読めます

第二話はこちらから読めます

第三話はこちらから読めます

第五話はこちらから読めます。

 

その1 「モブ霊~心優しきサック奏者ハンク・モブレイとの会話」は こちらから読めます。ブルーノートを代表するサックス奏者の優しさ

 

その2 「野生の緑~グラント・グリーンのしつこい魅力」は こちらから読めます。 最高のグルーヴを聴かせるギタリストの物語

 

その3 「遺作なのにエロいってどういうこと!?~アイク・ケベックのたくましさ」は こちらから読めます。 彼は『男』だ!骨太の音と山あり谷あり人生。

 

 

 

【相模の風THEめをと情報】

相模の風THEめをとの映像はこちらから見られます


11月22日(日) いい夫婦の日
相模の風THEめをと結婚14周年記念ライブ!
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11月22日(日) 18時30分よりツイキャスにて配信
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料金 2000円
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何度でも見られます。

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