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火砕流直撃 死者122人に ムラピ山噴火

 降灰はボゴールにも到達 避難勧告地域20キロへ拡大
 ジョクジャ空港は閉鎖

 先月二十六日以降、噴火を繰り返しているジャワ島中部のムラピ山南部で五日未明、大量の火砕流が集落を襲い、新たに六十四人が死亡、百五十一人が重軽傷を負い、五日までの死者は計百二十二人に達した。政府は避難勧告地域を山頂から半径十五キロの地点から二十キロへと拡大=図。避難民は計十万人を超えたとみられ、噴火の影響で、ジョクジャカルタのアディスチプト空港は航空機の離発着を全面的に停止、閉鎖に追い込まれた。火山専門家は過去百年で最大規模の噴火と発表、噴煙は高さ三・五キロに達し、降灰は四百キロ離れた西ジャワ州ボゴール近郊などでも観測されるなど被害が広がっている。
 ユドヨノ大統領は五日午後、ジャカルタの大統領宮殿で閣議を主宰した後、記者会見を開き、緊急事態に対処するため、地方レベルから中央政府の主導へ変更すると発表、シャムスル・マアリフ国家災害対策庁(BNPB)長官が指揮し、ハメンクブウォノ・ジョクジャカルタ特別州知事、ビビット・ワルヨ中部ジャワ州知事、軍・警察などと連携していくとの方針を示した。大統領は当面、ジョクジャカルタの大統領宮殿で執務を行うと明らかにした。
 また、国軍が救助支援、警察が交通や治安維持を担当し、アグン・ラクソノ公共福祉担当調整相が支援物資の配布を調整するよう指示した。
 アグン調整相は、政府が一千億ルピアの予算を用意し、被災地の牛やヤギなどの家畜を買い取り、家畜の世話で避難勧告地域の自宅に戻る住民が火砕流に巻き込まれるのを未然に防ぐと発表。自治体の農業局が家畜データを再集計し、この結果に基づいて補償対象とすると明らかにした。

1872年以来の規模

 ジョクジャカルタ火山研究調査所(BPPTK)のスバンドリオ所長は五日、先月二十六日から始まったムラピ山の一連の噴火活動は、一八七二年の噴火以来の大規模なものであるとの認識を示した。
 一九三〇年に起きた火砕流では千三百人以上の死亡者が出たと記録されているが、スバンドリオ所長は「噴出物の量では、今回の噴火の方が多い」と推測、噴火前から行っている避難活動が功を奏し、被害者数が低く抑えられているとの見解を示した。

■15キロの集落に被害

 ムラピ山は依然として活発な火山活動が続いている。五日午前零時四十分、ムラピ山南部のジョクジャカルタ特別州スレマン県チャンクリンガンの集落が火砕流に埋もれ、新たに六十四人が死亡、七十七人が重軽傷を負った。集落は三日に十キロから十五キロへと拡大された避難勧告地域にあり、住民は自宅で就寝中で逃げ遅れたという。
 同地区の数村が火砕流に埋もれたとみられ、救助隊が入れない場所もあり、生存者から家族や近隣住民の安否確認を急いでいる。

ソロやスマランは運航

 ジョクジャカルタのアディスチプト空港は全面的に運営を停止したが、ムラピ山東部のソロのアディスマルモ空港は、マレーシアやシンガポールから乗り入れている国際線を含め、通常通り運航している。
 ジョクジャカルタ便が全面的に欠航したのを受け、スマランのアフマッドヤニ空港では、ジャカルタなどからジョクジャカルタへ向かう乗客も到着、スマラン便も混雑し始めている。
 ムラピ山周辺のみだった降灰はこの日、西ジャワ州バンドンやボゴールなどでも観察された。ボゴール市街とスカブミの中間地点、チャリンギン郡に居住する主婦ユルマニダス・ラティウスさん(五八)は「午後三時ごろから軒下の床が白くなり始めた」と話す。リカ・ユリさん(二八)は「屋根に灰が積もり始めたため、子どもにはマスクを付けさせている」と語った。

避難民28万人超に 火砕流がゴルフ場破壊


 ムラピ山は六日から七日にかけても噴火を続け、火砕流はムラピ山南部で火口から九キロのジョクジャカルタ特別州スレマン県チャンクリンガンのゴルフ場「ムラピ・ゴルフ」に到達、ゴルフ場北側の一部が埋もれた。避難民は二十八万九千人に達した。
 五日夜にジョクジャカルタ入りしたユドヨノ大統領は、大統領宮殿を拠点に災害対策を陣頭指揮し、インドネシア赤十字のユスフ・カラ総裁(前副大統領)らと協議、支援を要請した。
 また大統領はジョクジャカルタ市街北部のマグウォハルジョ競技場に収容されている約三万人の避難民を慰問。避難民はジョクジャカルタ特別州と中部ジャワ州で計二十八万九千人に達し、政府は衣食住に必要な物資調達に尽力していると説明し、「危険地域にある自宅には戻らないで」などと呼び掛けた。
 エネルギー鉱物資源省地質センターのスクヤル所長は「三七日の一連の噴火は、先月二十六日の噴火の三倍ほどのエネルギーになる」と指摘し、今後、さらに大規模な噴火が起こる可能性があると警告した。
 火口には直径四百メートルほどの溶岩ドームが形成され、ここから南側のグンドル川に火砕流が流れ込んでいるが、ムラピ山山ろくに流れる十二の河川流域の住民は警戒する必要があると強調。だが、歴史的に見ても火砕流の到達距離が山頂から半径十五キロを超えたことはなく、避難勧告地域は現行の二十キロで十分との認識を示した。
 シャムスル・マアリフ国家災害対策庁(BNPB)長官は、噴火による被害者や被災地の状況について、四、五日に発生した火砕流で計八十八人が死亡したと明らかにした。うち七十九人は七日、スレマン県ブラン村の公共墓地に集団埋葬された。先月二十六日から同日までの死者は百三十五人に上り、スレマン県が最多の百二十三人、マグラン七人、ボヨラリ三人、クラテン二人となっている。

外務省「予定通り」 米大統領訪問

 ムラピ火山の噴火の影響が深刻化する中、外務省のトゥク・ファイザシャ報道官は七日、九ー十日に予定されているオバマ米大統領のインドネシア訪問は、予定通り行われるとの見込みを示した。
 オバマ大統領はインドを皮切りに六日、十日間のアジア歴訪を開始。ファイザシャ報道官は「米国側から訪問延期や中止の連絡はない」として、現在ジョクジャカルタで対策の陣頭指揮を取っているユドヨノ大統領も、九日午後に予定されているオーストリアのハインツ・フィッシャー大統領との会談、同日夕に予定されているオバマ大統領との会談に備え、八日にはジャカルタに戻る予定だと説明した。
 ホワイトハウスは噴火の影響について、引き続き慎重に観察を続けるとしている。オバマ大統領はミシェル夫人とともに大統領専用機「エアフォースワン」で九日夕方に、インドからジャカルタに到着する予定。

噴煙懸念で国際線に影響 スカルノハッタで一部運休

 日航機が引き返す ムラピ山噴火


 先月二十六日以降、噴火を繰り返し、百三十人以上の死者が出ているジャワ島中部のムラピ山の噴煙の影響で、ジャカルタの空の玄関、スカルノハッタ国際空港を発着する外国の航空会社十五社の国際線が六日に計四十五便、七日には八社の計二十二便が欠航・運休した。国内線は、空港が五日に閉鎖されたジョクジャカルタ発着便など一部の路線を除いて運航しているが、ダイヤの大幅な乱れで遅延も出た。
 日本航空JL725便(ボーイング777300、乗客乗員八十六人)は六日午前十一時五十七分(日本時間)、成田空港を出発したが、約五時間のフライトの後、同日午後五時過ぎ、ブルネイ上空で日本へ引き返した。
 日本航空ジャカルタ支店の田中洋之・旅客営業部長は「日本側は、出発時は問題ないと判断したが、火山灰の影響があるかもしれないとの懸念は事前にあったので、ブルネイ辺りまで来た時点でオペレーション側に再確認し、ジャカルタ上空まで火山灰が来るとの予測が伝えられた」と説明。
 カリマンタンまで来れば、シンガポールに着陸することも可能だが、シンガポールの空港の運航状況なども考慮し、ブルネイで引き返した方がよいとの決定が下されたという。
 田中部長は「今後も、日本のオペレーション・コントロールが上空の状況を見極めて判断していく」と話した。日航は七日のジャカルタ便を運休したが、八日の運航の可否判断については、同日早朝まで待ち、最終判断を下すとしている。日航の最新の国際線運航見通しは同社のウェブサイト(www.jal.co.jp/cms/other/ja/weather_info_int.html )で確認できる。
 今年四月、北西ヨーロッパ全域に多大な混乱を引き起こしたアイスランドのエイヤフィヤットラヨークトル火山の噴火では、英国の旅客機のエンジンが火山灰を吸い込み、故障する事故も発生している。
 スカルノハッタ空港を管理・運営する国営第二アンカサプラ社のサントソ広報担当は「国内線への影響は空港が閉鎖されたジョクジャカルタ便以外はほとんど出ていない。スカルノハッタ空港周辺に降灰は観測されておらず、離発着は可能だ」と強調。「海外の航空会社は、豪州当局が発信した火山灰の情報をもとに欠航・運休を決定したとみられる。情報が錯綜した可能性もある」と指摘した。
 七日に国際線を欠航・運休したのは、日航、エミレーツ航空、フィリピン航空、バリューエア航空、キャセイ・パシフィック航空、ジェットスター航空など八社の二十二便。シンガポール航空は最大で六時間半ほど遅延したが、運航を再開。マレーシア航空はクアラルンプール便計九便のうち三便を欠航・運休した。
 一方、ガルーダ航空の国際線は運航を行っている。プジョブロト広報担当副社長は「日本を含む国際線は運航している。気象、火山の噴火状況を分析する担当機関と連絡を密に取り合って判断している」と語った。

スマラン便に殺到

 ジョクジャカルタのアディスチプト空港やバンドンのフセインサストラヌガラ空港は閉鎖されている。ムラピ山東部の中部ジャワ州ソロのアディスマルモ空港はソロ発の国内線が運航。ジャカルタ発ソロ行きは、ガルーダ航空とライオン航空の午前の便は運航したが、午後は欠航した。
 スマランのアフマッドヤニ空港は全便運航しており、ジャカルタなどからジョクジャカルタに向かう乗客が殺到。同空港唯一の国際線で週四日運航しているバタビア航空のシンガポール便は六日、予定通り離発着した。
 バリのングラライ空港は、ジョクジャカルタ発着便を除き、国際・国内線ともに運航している。
 国鉄は、ジャカルタ発ジョクジャカルタ行きのすべての特急列車に二両追加し、乗客増加に対処するほか、エコノミー列車にも救援物資を輸送するための貨物車両を連結すると明らかにした。