爆音から静寂へ『サウンド・オブ・メタル~聞こえるということ~』
映画は爆音で幕を開ける。恋人のルー(オリヴィア・クック)とハードコアのバンドを組むドラマーのルーベンはいつものようにライブをしていると、音が聞こえにくくなっていることに気づく。病院で検査すると医者からは難聴だと診断される。ルーの勧めで聴覚障碍者らの自助グループに参加して暮らすことに。
映画『サウンド・オブ・メタル~聞こえるということ~』は突発性難聴を患ってしまうミュージシャンの物語で、主人公のドラマーを演じたリズ・アーメッドの演技が絶賛されている。パパラッチを描いた『ナイトクローラー』でジェイク・ギレンホールにひどい目に遭わされたり、『ヴェノム』のヴィラン、ライオット役でトム・ハーディをひどい目に遭わせていた男だ。
彼が難聴になるのはイヤーピースもせずに直でハードコアの爆音を聴いているからだ。いかにデカい音を響かせるかが売りな上に真横に積み上げられたスピーカーから絨毯爆撃のごとく爆音を聴いてたらそりゃあ耳も悪くなるよ!ルーベンは医者に診てもらい突発性難聴だと診断。どうすれば治る?の問いに医者は「失われた聴覚は戻らない」と冷たく告げる。
少しは聞こえるんだから問題ないさとルーベンはステージに立とうとするが症状は悪くなる一方で次第に自暴自棄になっていく。彼の耳は「全く聞こえない」わけではなく、かすかに聞こえる。それだけに絶望はより深い。まるで聞こえないのなら諦めることもできるのに。
見かねた恋人のルーは聴覚障碍者の自助グループを紹介する。そこで出会ったベトナム戦争で聴覚を悪くしたというジョー(ポール・レイシー)はこの生活を受け入れなくてはいけない、と恋人と別れ暮らすことを提案される。最愛の恋人と別れることなど考えられないルーベンだが、ルーは「彼のために」実家へ帰っていく。
こうして自助グループでの生活が始まる。グループ内の人間たちはみな手話で話す。手話がわからないルーベンは孤独感に苛まれる。
そんな状況でも普通の生活を取り戻そうとするルーベンは屋根の修理を始めたりするが、ジョーは「何もするな」と彼に部屋にこもってコーヒーとドーナツだけ食ってノートに何かを書け、それだけを命じる。追い出し部屋に入れられた窓際社員みたいな生活にイライラを爆発させるルーベン。だが手話を覚え、「聞こえない」生活を次第に受け入れていくように。
この映画、突然無音になったり音が遠く聞こえたりとサウンドデザインに凝っていて観客はルーベンと同じ環境に叩き込まれる。
けれどルーがソロミュージシャンとして成功したニュースを見ると居ても立っても居られないルーベンはインプラントを埋め込んで聴覚を取り戻す人工内耳の出術をひそかに受ける。数万ドルの手術費を払って人口内耳をつけたものの、音はノイズ混じりに聞こえるだけ。まるで周波数のあってないラジオみたいなのだ。人間の耳というものは「聞こえなくてもよい音」を遮断しているらしいのだが、人口内耳は拾った音をそのまま取り込むので変なノイズが混じる。医者も「そういうものです」というんだけど最初に説明しろよ!実際は長い期間リハビリすれば元のように聞こえるようにもなるらしいのだが・・・
かつての生活を取り戻そうとするルーベンをジョーは突き放し、自助グループを追い出される。人工内耳をつけたルーベンはちょっとした話声やクラクション、雑音に怯え、ただ外を歩くことすらままならぬ生活を強いられる。
難病から立ち直るのではなく、あるがままに受け入れるのだという。劇中ジョーがルーベンに語る
「君は聞こえなくなったのではない。静寂を手に入れたのだ」
という言葉はハードコアの爆音よりもずしりと重い。恋人のルーを演じたオリヴィア・クックは『レディ・プレーヤー1』で思い込みの強い主人公を一度突き放すヒロインだった彼女。この映画でも彼を一度は突き放す。
聞こえないことは喪失ではないとするラストシーン、爆音で始まって静寂で終わるという構成、何もかもが美しい。ハンデから立ち直ることを描くありきたりな難病映画になっていないのも好感。
本作はアマプラで配信中
同監督作品
リズ・アーメッド出演作
オリヴィア・クックが同じようなヒロインを演じてます
人生は送りバントだ『アルプススタンドのはしの方』
夏の全国高校野球大会一回戦、母校野球部の応援に駆り出された演劇部員の安田あすは(小野梨奈)と田宮ひかる(西本まりん)はやる気もない上、野球に興味もないので応援席のはしの方ですっとんきょうな会話を続けていた。近くには元野球部員の藤野富士雄(平井亜門)は犠牲フライやタッチアップといったルールも知らない彼女たちに観戦しながらルールを教えてやる。彼女らの後ろで試合も見守る宮下恵(中村守里)は常に学年トップの成績を誇る優等生で、彼女もまた無理やり応援に駆り出されていた。
『アルプススタンドのはしの方』は応援に本気ではない4人の高校生の物語。元は東播磨高校演劇部の舞台演劇で、部員が4人しかいないために4人でできる作品として作られたが話題になり、全国の高校でリメイク上映され、この度映画化。監督はピンク映画、オリジナルビデオ作品であらゆるジャンルを早撮りで完成させる職人、城定秀夫だ。
やる気のない4人に「お前らなにやってんだ!もっと声を出せ!」とハッパをかける英語教師の厚木修平(目次立樹)は「腹から声を出すんだよ!」と声を張り上げるが、演劇部員の安田から「先生、それ喉からです。腹から出てません」と突っ込まれるが気にせず「人生は送りバントなんだよぉ!」とまるで森脇健司みたいなことをいう。気持ちはわかるけど空回っている感じの人で、やる気に溢れてるが彼は野球部でもなんでもない英語教師で茶道部の顧問。
安田は演劇の全国大会にシナリオを書いたが、部員が当日にインフルエンザに罹ってしまい、顧問の「しょうがない」の言葉を最後に出場を辞退する。藤野はポジションが投手だったため、エースの園田がいる限り試合には出られない。出られないのにやっていても「しょうがない」と野球部を辞め、練習している時間を他のことに使った方が有意義だと思うが、何をやるわけでもなく夏は過ぎてゆく。田宮は自分がインフルエンザに罹ったことで全国大会を台無しにしたと引け目に感じ、安田にも引け目を感じてしまい、気を遣い続けてしまう。宮下は常に学年トップの成績だったのにも関わらず、直前の学年試験で吹奏楽部長の久住智香(黒木ひかり)にトップを明け渡してしまう。周囲からは「そういうこともあるだろうから、しょうがない」と慰められるが、気が小さく思ったことも言えず友達も少ない宮下は自分が持っていないものをすべてもっている上に彼女がひそかに憧れているエースの園田とも交際しているという久住に嫉妬する。
試合は一方的な展開になっていき、敗戦濃厚。相手は甲子園常連校だからしょうがないと諦めを口にする安田に宮下はみんな頑張ってるのにしょうがないなんて言わないでというが、「頑張ったけれど、しょうがない」と言われた経験がある安田は反論する。試合に代打として矢野が出場。矢野は藤野に「下手くそなのに、レギュラーになれないのにずっと練習してる。わけがわからない」と言われている万年ベンチの選手で、せっかくの代打も送りバントを命じられる。
「どんなに頑張ったって送りバントじゃん」
だが犠打を成功させた矢野はグラウンドで嬉しさを爆発。そして反撃が始まる・・・
前半ずっとオフビートの会話劇だったはずが、試合展開とともに右肩上がりの盛り上がりを続け白熱していく。試合の場面なんてまったく映らないのに!何事も「しょうがない」と諦めて居た4人はいつしか身を乗り出し、声を張り上げて声を枯らして応援するのだった。
アルプススタンドのはしで主役になれない彼ら彼女たちにも紡ぎだせる物語がある。原作の演劇を上映した東播磨高校の野球部は2021年3月19日から開幕する第93回選抜高校野球大会の21世紀枠として春夏通して初の甲子園出場を果たす。何が起こるか最後までわからない!
食ったらバカウマ!邦画界最後の挑戦者『三大怪獣グルメ』
ある日突然、巨大イカ、巨大タコが大暴れして町を破壊する。それは 元超理化学研究所員の田沼雄太(植田圭輔)が神社に奉納する予定だった新鮮なイカとタコが何者かに盗まれ、巨大化した姿であった。田沼は研究所で生物を巨大化する薬セタップXを開発していたが、研究予算を使い過ぎて首になったのだった。
そんなこともあって田沼は巨大怪獣による被害の責任を負わされるところだったが、尻ぬぐいをするため政府主導の対怪獣組織、シーフード怪獣攻撃部隊SMAT(Seafood Monster Attack Team)に志願する。 SMATには防衛相のエリートで田沼の幼馴染である星山奈々(吉田綾乃クリスティー)と研究所時代のライバルである科学顧問・彦馬新次郎(安里勇哉)がおり、二人は星山をめぐって火花を散らす。
政府が巨大イカを「イカラ」、巨大タコを「タッコラ」とまんまなネーミングにし、彦馬考案の「酢砲」による撃退作戦が開始されるが、第三の巨大怪獣、カニーラが現れ作戦は失敗。
カニーラが切断したイカラ、タッコラの足が食用として転用できたことから世間は怪獣肉ブームが起き、田沼考案の国立競技場を丼に見立てる「海鮮丼作戦」が立案される。彦馬の酢砲と田沼の海鮮丼を合わせた作戦だが、星山をめぐって二人は仲たがいをし、修復不可能なまでになってしまうのだった。
競技場を丼にして怪獣を食っちまうというのは河崎実監督の学生時代のデビュー作『フウト』(豆腐、牛肉、ネギが巨大化して暴れまわり、最後は後楽園球場ですき焼きにされるというモノ。『地球防衛少女イコちゃん』にも転用された)の流用だが、そもそもは円谷英二が戦前に考えていた大タコ映画のオマージュで、庵野秀明とは別次元で怪獣映画の歴史を辿っている河崎実監督ならではのバカ企画である。
登場人物の会話や、地球の危機が迫っている(ようには見えないが)にも関わらず女をめぐってチマチマした言い争いをするなどそこかしこに漂う昭和テイスト(今、令和っすよ)がたまらなく愛おしい。さらにイカラとカニーラの着ぐるみは同じ河崎作品の『イカレスラー』『かにゴールキーパー』の流用だ。スタジオに残っている怪獣の着ぐるみは流用※という円谷魂が根付いている!クライマックスに登場するジャンボコックは浅草、かっぱ橋商店街にあるニイミ洋食器店のビルから突き出ているオブジェの巨大版だが、モチーフは東映のジャイアントロボである。
これが単なるバカ映画として収まっていないのは、国産の巨大怪獣映画などというものはウルトラマンとゴジラぐらいしか今はまともに存在していないわけで、久しくチャレンジングスピリッツを失っている邦画界で河崎実だけが最後の希望だからである。
「怪獣まとめて食ってやる!」
というグルメ根性こそが邦画界に必要なのだ。
※流用と書いたのですが、のちに河崎実監督本人から
「今回は珍しくスーツを新規でつくっています」
との連絡を頂いたので、訂正致します。「三大怪獣グルメの怪獣は新規です!」
本当のヒーローって?『シャザム!』
※この記事は前ブログの過去記事(2019年05月02日)の再録です

アメコミのスーパーヒーローもの映画が増えすぎて、何が何だかわからなくなっている昨今、興味のない人にはどれも同じに見える、という状況。だがこれだけは断言できる。『シャザム!』は他のどのスーパーヒーローにも似てなくて、尚且つもっとも重要な作品である、と。
14歳の少年、ビリー・バットソン(バットマンみたいな名前だな。ちなみにこの漫画はDCコミックスのヒーローだ)は幼いころに父、そして母とはぐれて以来、孤児になったがどの里親とも「本当の家族じゃない」となじめず、家 出を繰り返しては里親にさじを投げられ、たらい回しにされていた。グループホームを営むバスケス夫妻に引き取られてもビリーは夫妻、新たにできた5人の家族にも心を開かない。しかし足が不自由で、バットマンオタクのフレディが学校でいじめられているのを見て、彼を助ける。いじめっ子がフレディを「お前に母親はいない」となじったからだ。突如ビリーは岩でできた地下の宮殿に飛ばされる。そこで出会った魔術師シャザムによって「お前には正義の心がある」と認められたビリーにはシャザムの能力が継承される。
「我の名を唱えろ。『シャザム!』だ」
「シャザムって・・・だせぇ名前!」
「唱えろ!」
ダサい名前を唱えたビリーは稲妻マークを胸に輝かせ、6人の神の力を持つヒーローに変身。どう見ても見た目は中年のオッサンである。ここに「見た目は大人、中身は子供!」の逆『名探偵コナン』なヒーローが誕生した。
ビリーはスーパーヒーローになったものの、その力でロクなことをしない。指先から出る雷でスマホの充電をしたり、巨大なパワーを見せて大道芸のようなことをしたり、ユーチューバーになったり・・・なにしてんだ!なぜこんなことをしているのかというと、子供だから(笑)。じゃなくて対決する悪役がいないからね。そんなシャザムの前にもヴィランが現れる。ドクター・シヴァナ(『キングスマン』のマーリン役でおなじみ、マーク・ストロング)だ。彼はシャザムの力を軽く凌駕するパワーの持ち主で、ヒーローとしての使命に目覚めていないビリーでは歯が立たない。彼から逃げ回るビリー。しかし彼はシヴァナと対決する宿命を背負っている。
シヴァナは子供の頃から強権的な父親と兄から見下されていた。それは大人になっても変わらない。会社の社長、重役として振る舞う彼らに比べてシヴァナはわけのわからない研究を続けている変人でしかない。ビリーより以前にシャザムの力を継承するはずだったが、七つの大罪に唆されたために力を身に着ける資格がないと見なされたからだ。シヴァナはビリーのダークサイドともいえる。本当の家族から愛を得られなかったシヴァナと、疑似家族だけど本当の家族にも劣らぬ愛を得られたビリーの対決となるのだ。
この漫画を見て親のない子やグループホームで暮らす子供は勇気を与えられたことだろう。敵を倒すからヒーローではない。自分以外の誰かのために戦うからこそ、ヒーローなのだ。(筋肉も能力も、そのきっかけにすぎない)だからこそ、この映画の吹き替えをコネと身内受けのギャグだけで済ませている福田雄一が監修するっていうのは、『シャザム!』への冒涜としか思えないな!俺は!
みもりんが雨を降らせるぞ!
※この記事は前ブログの過去記事(2019年04月12日)からの再録です
かねてから交際の報道があった声優の三森すずこさんと新日本プロレスのレスラー、オカダ・カズチカがそれぞれブログとTwitterで入籍を発表。
皆さんへ
2019/4/12 12:00
私事で恐縮ですが、
この度、新日本プロレスのオカダ・カズチカさんと入籍いたしましたことをご報告させていただきます。
人としてまだまだ未熟な私ですが、
私の母のように、明るく楽しく温かく家族を支える女性になれるよう努めていきたいと思います。
そして、表現者・三森すずことしては、これからも変わらず精進し続け、さらなる高みを目指していきたいと思います。
皆さん、いつもたくさんのご声援をいただき、本当にありがとうございます。
三森すずこ
https://lineblog.me/mimori_suzuko/archives/1690509.html
オカダ・カズチカ
@rainmakerXokada
私事ですが以前よりお付き合いさせて頂いていた三森すずこさんと入籍したことをご報告させて頂きます。
レインメーカーとして”幸せの雨”を家庭に降らせることができるようお互いに協力し合いながら、
プロレス界にも変わらずに”カネの雨”を降らせ続けていきますので、
今後とも宜しくお願い致します。
https://twitter.com/rainmakerXokada/status/1116536433693474816
この二人は去年の1月に東京スポーツのスクープによって交際が明らかになった。
オカダ・カズチカに新恋人 人気声優・三森すずこと真剣交際5か月
https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/884977/
が、この報道の前には週刊文春の文春砲LIVEが「アルファベットと地図に要注目。声優、アニメファンは見逃すな!」と予告していた。
https://twitter.com/bunshunho2386/status/951800323915497472
示された地図が静岡の沼津だったので『ラブライブ!サンシャイン!!』の声優ユニット、Aqoursのスクープか!?と色めき立ったものの、東スポにスクープを先取りされ、しかも内容は三森すずことオカダの熱愛報道という…文春が間抜けなのは三森すずこはラブライブ一期の声優なので、文春は二期サンシャインの聖地である沼津と勘違いしているところ。
文春の声優スクープは茅原実里が一般人男性と交際してるといった「どうでもいい」ニュースや、花澤香菜と小野賢章の交際といった濃いファンなら「知ってる」程度のことを大ニュース、スクープと騒ぎ立てているばかりで、この三森とオカダの熱愛も文春に抜かれるぐらいなら、と新日が東スポに情報を流したのが丸わかりで、なぜプロレス関連で東スポと勝負ができると思ったのか。このスクープを最後に文春の声優ネタは沈静化するのであった。
と、こんな場外乱闘にもめげずゴールインを果たした二人に祝福の雨が降りますように!



