映画の中の夢こそ現実『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
※この記事は前ブログの過去記事(2019年09月08日)の再録です

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・・・といえば4時間近くあって途中で休憩時間のあるレオーネの遺作か、リー・リンチェイが実在の格闘家を演じたシリーズが思い出されるところだが、これはタランティーノ監督の9作目で、1969年のハリウッドを描いた作品だ。過去にタランティーノ映画で主演を務めたレオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットが初の競演を果たしている。
ディカプリオ演じるリック・ダルトンは西部劇TVドラマのスターだったが、映画への進出に失敗し今は若手スターを輝かせる悪役ゲストで食いつないでいる落ち目の俳優。プロデューサー(アル・パチーノ)からは「イタリアの西部劇にでも出たら?仕事はいっぱいあるよ」と言われてしまう。クリント・イーストウッドなどはTVの西部劇からイタリアのマカロニ・ウェスタン(当時はスパゲッティ・ウェスタンと言われてた)に出て活躍し、ハリウッドに復帰して大スターになった稀有なケースだが、イタリアで仕事をすることは「落ち目」以外の何物でもなかった。
「俺、イタリアで仕事しろって言われたよ~もう落ち目だよぉ~」
とディカプリオは運転手として雇っているスタントマンのクリフ・ブース(ブラッド・ピット)にめそめそ泣きつく。ブラピはディカプリオ専属のスタントマンで長年の相棒だ。今は彼も仕事がなく、普段はトレーラーハウスに住んでいるほぼ無職だが、ボスであるディカプリオとは友情で結ばれ彼のためならなんでもする男だ。風で倒れたアンテナの修理だってやっちゃうぞ!意味もなくシャツを脱いでムッキムキの肉体(50代にはとても見えない)を晒すブラピ(観客サービス)。
男らしいブラピに比べてめそめそして情けないのがディカプリオ。必死に取ってきたニコラス・ハモンド(コロムビア版スパイダーマンの主役)が監督の西部劇の悪役仕事も、前日に酒を飲み過ぎてセリフが入っていないまま二日酔いで現場入り。
「なんで俺、飲んじまったんだ!あれほど控えろっていったのに!どうして8杯も飲んだ!そこは4杯にしておけよ!」(いや4杯もダメだよ!)
休憩中に子役の女の子に説教されたり、暇つぶしに読んだ本の主人公が怪我のせいでまともに動けなくなって、みじめな人生を送っているという内容に「まるで今の俺みたいだぁ~俺はダメだよぉ~」とズルズル鼻を啜って泣いちゃう。情緒不安定にもほどがあるよディカプリオ・・・
そんな男は不安定なディカプリオの隣の家に引っ越してきた人がいた。若手映画女優のシャロン・テートと若手映画監督のロマン・ポランスキーだ。『スーサイド・スクワッド』のハーレイ・クインでおなじみのマーゴット・ロビーが演じるテートは『哀愁の花びら』(のちにカルト的人気を誇ることになる『ワイルド・パーティ』の前作、だったが『哀愁~』の原作者に拒否されてパロディ化することになった)『サイレンサー/破壊部隊』で人気上昇した若手女優。それまでは陰キャの女王みたいな役や、トーニャ・ハーディングとか、どぎつい役ばかりしていたロビーも、本作はキラキラ笑顔が眩しい天使のようなテート役を好演。
しかしテートの人生の顛末を知っている人にはわかる。ハリウッドを震撼させたシャロン・テート殺害事件まであと2日ということを。
ブラピはテート殺害事件の実行犯グループであるチャールズ・マンソンファミリーのアジトにそうと知らず入り込む。それまではロサンゼルスの陽光が眩しいラブ&ピースな画面が突如『悪魔のいけにえ』みたいなタッチになるのでびっくりだ。その後の惨劇を予兆させておいて、映画は衝撃のクライマックスに突き進む。
最近のタランティーノは本当の歴史とは違う顛末を用意する。歴史修正映画とでも呼べばいいのか・・・にハマっていて、ユダヤ人がヒットラー他ナチスの人間を火炎放射器で焼き尽くす『イングロリアス・バスターズ』や、黒人奴隷が白人の奴隷商人らに復讐する『ジャンゴ 繋がれざる者』などを作ってきた。
それは映画に取りつかれた人生で、実際の歴史とは違う、「俺にとっては映画の中の夢こそが現実なんだ!」という映画の現実を愛したタランティーノのメッセージ、愛なのだ。
チキンサンド戦争勃発
※この記事は前ブログの過去記事(2019年09月06日)の再録です

人間、それがいつでも手に入るものなら、必死になって欲しいとは思わないもの。急いで買いに行かないと手に入らないとなったら、突然欲しくなってしまうのです。
人気アーティストのライブチケットがいつでも手に入るなら、誰も争いません。たかがチケットに過ぎないのですが、入手困難で自分が買えなければ「十分な数を用意しろ」とわめき、転売屋を憎むのです。
全米でチキンサンド騒ぎ、テキサス州では完売にキレて銃を抜く客も
https://www.cnn.co.jp/usa/35142189.html
これだってたかがチキンサンドです。今、買えなくてもちょっと待てば買えるじゃないですか。そんなにしてまで欲しいものか?でも自分が買えないとなれば、なんとしてでも欲しいと思い、手に入れるために銃を抜くのです。
ファーストフードで商品が買えずに銃を抜くといえば、みんな大好きな映画『フォーリング・ダウン』を思い出します。主役のマイケル・ダグラスは色んなストレスに苛まれた挙句、我慢の限界を超えて銃を抜いたのです。でも結局のところ、理由は「俺を蔑ろにしやがって」程度のことです。
実はこの騒動の背景には、NYで起きている「チキンサンド戦争」というものがあり、大手ファーストフード店がしのぎを削ってチキンサンドの新商品を送り込み、互いの店のチキンサンドを「それっておいしいの?」「愚か者が2番目に美味いチキンサンドを争っている」などとTwitter上で煽りをはじめたりと、子供のケンカか!
たかが、チキンサンドじゃねえか。でも自分が買えなかったから銃を抜いたのですね。「そうか、本当に私も残念だ」(小川真司の声で)
ひと夏をハダシで駆け抜けろ『サマーフィルムにのって』
去年公開された『アルプススタンドのはしの方』は高校演劇を原作にしたまだ無名のキャストによる作品であったが、新時代の青春映画として話題を巻き起こした。今年もそれに続く青春映画の新風が吹き荒れた。それが『サマーフィルムにのって』だ。
高校の映研に所属する女子校生、ハダシ(伊藤万理華)は学園祭に上映する予定の作品の製作に取り掛かっていたが、映研をまとめる存在の花鈴(甲田まひる)によるキラキラ恋愛映画に納得ができない。ハダシの趣味は女子高生らしからぬ時代劇で、勝新の大ファンである彼女は理想の時代劇を撮ろうとしていたが、理解してくれるのはSFファンのビート板(河合優実)、剣道部員のブルーハワイ(祷キララ)だけな上、理想が高いハダシは主演役者を見つけられないでいた。
いきつけの映画館で時代劇三本立てを楽しんでいたハダシは、上映後に感動のあまり号泣する観客を目に止める。その青年はハダシが撮ろうとする時代劇の主役にピッタリだった!なぜかハダシのことを「巨匠」と呼ぶその青年、凛太郎(金子大地)を強引に誘い、校内のはみだし連中をかき集め、クランクイン。
「打倒ラブコメ」
を掲げた時代劇映画撮影は花鈴たちの思わぬ邪魔が入ったり、素人監督故の失敗を重ねながら完成に近づいていく中でハダシは凛太郎にほのかな恋心を募らせる(もちろん時代劇で頭がいっぱいな彼女はそれが恋だとも気づかない)だが仲間たちと妙にコミュニケーションがズレている凛太郎の思わぬ正体が明かされる。彼はタイムマシンでやってきた未来人だったのだ・・・
恋×友情×時代劇×SF×青春映画
という惹句はそのまま、すべての要素が一本に詰まっている奇跡のような映画だ。恋の甘酸っぱさを噛みしめ、友情に涙し、時代劇に儚み、SFのセンス・オブ・ワンダーに驚き、青春をもう一度繰り返したいと願う。学生たちが創作の楽しさ、辛さを体験するのだが、作品自体も学生映画のような瑞々しさに満ち溢れている。
未来では数分の映像しかなくなってるというのもファスト映画に対する痛烈な皮肉に聞こえ、誰も他人の作った物語になんか興味がないというのだが本作は大林信彦や勝新、長谷川一夫にハインラインといった人たちの影響を受けている。他人のつくった物語にだって価値はあるんだ!
この手の作品では非難されがちなラブコメ脳のリア充のみなさんにも光が当てられているのも良いですね。クライマックス、ラストシーンはこちらの想像を軽く超えていてひっくり返った。
やはり夏は青春映画の季節だな。ひと夏を青春で駆け抜けろ!
踊る佐野史郎!『騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE タイムスリップ!恐竜パニック!!
※この記事は前ブログの過去記事(2019年08月27日)の再録です

毎年夏の恒例、スーパー戦隊と仮面ライダーの合体映画、戦隊版。
公開してから大分経った時期に観に行ったのだが、夏休み中だったこともあって親子連れがまだちらほらといた(というか親子連れで観に行く映画なんだけどな・・・)。近くの座席にいた小学校一年ぐらいの男児と母親の二人連れのうち母親はリュウソウジャーが始まった途端、寝息を立てていた(笑)。息子の方は楽しんでいたのかと思いきや、終わった後の会話を聞くと、「つまんなかったね!」
そりゃないよ!リュウソウジャーはまだ面白い方だったぞ!!
リュウソウジャー一行は龍井うい(金城茉奈)がやっている動画サイト用の撮影に付き合わされて福井県の県立恐竜博物館にやってきた。福井県立恐竜博物館といえば恐竜モチーフ戦隊の先輩、獣電戦隊キョウリュウジャーのダンスを撮影した場所じゃないですか(キョウリュウジャーの劇場版ロケにも使われた)。戦隊マニアはニヤリとする展開。
展示されていた6500年前の隕石が割れ、中から二匹の騎士竜が現れ、博物館の外にいた女性の首飾りと合体。彼女は6500万年からタイムスリップしてきたリュウソウ族のユノ(北原里英)で、彼女が生み出したマイナソーの力でリュウソウジャーたちを連れて6500万年前にタイムスリップしてしまう。ういとリュウソウゴールド・カナロ(兵頭功海)は「展示物を壊した」と女性職員(シンケンジャーに出ていた森田涼花!)に連れていかれてしまう。
6500万年前の世界で自分たちが見たこともない恐竜たちが生きている姿を見たリュウソウジャーたちは驚きを隠せない。この世界ではユノの父親である科学者のヴァルマがリュウソウ族を導くリーダーであったが、迫りくる巨大隕石による破壊後の世界を生き延びるために極端な弱肉強食を推し進め、生き残ったものだけを隕石から守るシェルターに入れようとしていた。ヴァルマを演じるのは特撮作品に造詣が深い佐野史郎。出番こそ多くはないが、印象深い悪役を熱演。
リュウソウジャーたちとユノはヴァルマを説得するが聞き入れられず、ヴァルマが自らつくったガイソーグの鎧の前に敗北する。本編ではいまだ謎の存在だったキャラクター、ガイソーグの秘密が少しだけ明かされており、今後の展開にどう影響するのか期待です。
マイナソーの力で再び現代に戻ったリュウソウジャー。現代で暴れまわる巨大マイナソーをキシリュウオーファイブナイツで倒すと、その影響でまたまた6500万年前にタイムスリップ!(本作では6500万年前と現代をやたらと行ったり来たりする上にタイムスリップの条件もさほど示されないので、その辺は結構いいかげん)
巨大隕石は地球に近づいており、しかも現代の資料で見た隕石よりも遥かに大きい。このままでは恐竜だけではなく、地球自体が消滅してしまう!
ユノはヴァルマしか入ることのできない神殿に眠るキシリュウオーのプロトタイプ、キシリュウジンを使えば隕石を破壊できるかも知れないと告げ、全員で神殿に乗り込むことに。しかし作戦はヴァルマに見破れており、激しい戦闘が開始される。リュウソウレッド・コウ(一ノ瀬颯)がヴァルマをひきつけ、他の4人はキシリュウジンのいる神殿へ。
ここでひとつの問題が。リュウソウジャーたちがタイムスリップできたのはユノが生んだマイナソーの力のせいで、マイナソーが滅んだ今、タイムスリップができない!隕石を破壊して地球を救っても現代に帰ることはできないが、覚悟を決めた4人は隕石に立ち向かう。
一方、コウはガイソーグの前に追い詰められるが弱肉強食の考えを改めないヴァルマに怒り心頭。本編でも見せたことのない強い怒りの表情でパワーアップ。ガイソーグを破りヴァルマを会心させる。
この本編でも見せたことのない・・・っていうのがポイントで、夏の合体映画の撮影ってライダーは終盤に向けてラストスパートをかけるタイミングなのに比べ、スーパー戦隊って本編の撮影開始直後ぐらいに撮影してんですよ。役者陣はキャラクターが何にも固まってない状態で撮らされているので、大変ですよ。毎年。ちなみにカナロ役の兵頭くんはこの映画が初撮影だったとか・・・おかげでリュウソウゴールドは一瞬も出てきませんでしたよ・・・
その状態でコウが本編でもあまり見ることのない怒りの表情を見せているのは物語上の都合もあるのでしょうが、以降はこういうキャラクターになっていくということなのかも。
それ以外では時空のゆがみが起きたら現代に戻れるとか、かなり適当な部分があるので見ている僕がパニックになりかけましたが、現代に戻ったコウたちが自分たちの活躍を記した石板が残されているのを見つけて、自分たちのソウルが6500万年前のリュウソウ族に伝わり、時を越えて現代に受け継がれた・・・という事実(フィクションだよ!)には胸がじいんとしますね。ちなみにユノやヴァルマの時代には騎士竜がヴァルマのディノミーゴ、コブラーゴしかいないのだけど、この経緯を経て騎士竜の必要性が高まったのだな・・・とか、リュウソウ族が内紛の結果、陸と海に棲み処が別れていくのも、この時ヴァルマが起こしたサバイバルが尾を引いた結果なんだな・・・と想像でき、32分しかない割にはきちんと本編と整合性を持たせているというのが大したもの。
ゲストの北原里英、佐野史郎ともども生き生きとした演技を見せてくれ、特に佐野史郎が嬉しそうにケボーンダンスを踊るエンドロールは控え目にいって最高です。
悪魔と契約しろ!『仮面ライダーリバイス』第一話
仮面ライダー生誕50年のメモリアルイヤーに放送開始となる『仮面ライダーリバイス』の放送がいよいよスタート。
物語は1971年(仮面ライダーが放送開始した年!)、南米の遺跡発掘現場でバイスタンプが発見されるところから始まる。バイスタンプを自身の体にスタンプすれば、己の中に潜む「悪魔」を実体化させることが可能になる。政府機関フェニックスは50年後の現代で悪魔と契約して仮面ライダーに変身できるリバイスシステムを開発するが悪魔崇拝主義者集団、デッドマンズの襲撃によって所有するバイスタンプの多くを奪われてしまい、対デッドマンズ組織フェニックス分隊を結成、その分隊長に五十嵐大二(日向亘)を任命する。
大二の実家である銭湯「しあわせ湯」では家族が大二の分隊長就任を大喜びするが、兄の一輝(前田拳太郎)は自分の内からささやきかける悪魔の声に悩まされていた。
隊長任命式で五十嵐一家、しあわせ湯の常連客たちが見守る(大騒ぎ)する中、会場がデッドマンズの襲撃を受ける。フェニックス幹部、門田ヒロミ(小松準弥)はリバイスベルトとバイスタンプで変身しようとするが、悪魔と契約することが叶わなかったため、新たな悪魔を生み出すことになってしまう。リバイスシステムの産みの親であるフェニックス幹部ジョージ・狩崎(濱尾ノリタカ)は大二に変身を迫る。しかし門田の失敗を目の当たりにした大二もまた変身することができない。
会場が大混乱に陥る中、母幸美(映美くらら)が悪魔の攻撃を受け吹き飛ばされたのを見た一輝は
「どうだ?俺っちと契約しないか?悪魔に魂を売るんだよ!」
と悪魔のささやきに耳を貸し、バイスタンプを体に押して契約を完了する。具現化した悪魔バイス(木村昴)はこともあろうに幸美を襲おうとする。ジョージは一輝に「そのドライバーを使って悪魔をコントロールしろ」と迫る。やむなく一輝はリバイスドライバーを使って仮面ライダーリバイに変身、コントロールすることが可能になったバイスと悪魔を退治するのだった。
悪魔、契約、家族というコンセプトが最初の一話で無理なく示され、各キャラの説明もスムーズに行われ文句のつけどころのない初回だった。遺跡の中から悪魔が発見されるという出だしや悪魔はコントロール次第によって敵にも味方にもなる、というのは『デビルマン』っぽくて好きだな。
主人公の一輝は何らかの理由でプロサッカー選手になる夢を捨て(銭湯に三浦カズのポスターがあってカズが未だに日本サッカー界のヒーローとして扱われているのには驚いたが、仮面ライダーとサッカーという組み合わせはロクなことがないので不安ではある)、弟の出世を願い、実家の銭湯を守っているというのは今後の話の広がりが期待できそう。
弟の大二は出世頭のエリートなんだろうけど、肝心なところで前へ踏み出せない心の弱さを初回で露見させているので、シリーズ中盤以降の闇落ち展開が予想される。
妹のさくら(井本彩花)は空手有段者という設定で早速アクションを見せていて、アクション面を担当するポジションでの活躍を見てみたい。
今回思い切っているのは家族の前でライダーに変身しているというあたり。実家の銭湯はライダーがやっているということで繁盛するのか、敵の襲撃を受けて銭湯ならぬ戦闘状態になるのか興味津々だ。
第四の壁を突破するバイスのキャラクターも想像以上に馴染んでいてデッドプールのごときキャラが視聴者にどう受け入れられるかがポイントのよう。
TTFCでは望月卓プロデューサーと脚本木下半太のオーディオコメンタリーがあり、「一話にして伏線を張っている」とのこと。木下作品はきっちり伏線張って回収するのがお馴染みなのでその辺も楽しみか。本編で追えないぐらいの複雑なストーリーにして力尽きた感のあるセイバーのようなことにだけはならないで欲しい・・・

