しばりやトーマスの斜陽産業・続 -83ページ目

サニー千葉よ永遠なれ

 アクション俳優で、ジャパンアクションクラブの創立者でもある千葉真一が逝去。死因は7月末、コロナ感染による自宅療養中に肺炎が悪化し、8月8日に入院。18日に容体が急変し息を引き取ったという。

 

 

 千葉真一は『新 七色仮面』で顔出しの主役、スーツアクターを兼任する「二刀流の男」として名前を売り、深作欣二と組んだアクション映画の数々をヒットに導き、日本最高峰のアクションスターとして名を馳せる。「世界に通用するアクションスターとスタントマンを育成する」としてジャパンアクションクラブを設立。特撮ヒーロー番組の人気拡大に一役買った。設立後、主演映画『ボディガード牙』のヒットから始まるカラテ映画ブームを牽引し、『激突!殺人拳』のシリーズが海外に『Street Fighter』のタイトルで輸出され、2番街、3番街の劇場で(マニア向けに)熱狂的な人気を獲得し、カルト化する。

 

「熱狂的な」ショックを受けた一人であるクエンティン・タランティーノは自身が脚本を書いた『トゥルー・ロマンス』で主人公クラレンスが女をナンパするときに「サニー・千葉の『Street Fighter』シリーズのオールナイト上映観に行こうぜ!」と誘ってあえなく失敗するシーンをつくった(脚本が大幅に改定されたらしく、タランティーノ本人は自分の作品と認めてはいない)。後に『キル・ビル』に出演した背後にはそんなエピソードがあるのだ。

 世界のアクションスターを目指した千葉だが、カラテ映画(海外ではマーシャルアーツ)の人気低下に伴い千葉の世界で人気を博す、という夢は志半ばに倒れたともいえる。しかしタランティーノやキアヌ・リーブスといった著名人が千葉に影響されたことを公言しているし、愛弟子である真田広之は『ラスト・サムライ』『ラッシュアワー3』『モータル・コンバット』と言ったビッグタイトルで主演を押しのける活躍をしている。サニー千葉の名は不滅だ!

 

 

 

 

 

 

 

書くことはやめられない『ガーンジー島の読書会の秘密』

※これは前ブログの過去記事(2019年08月30日)の再録です



 イギリス海峡フランス側に位置するチャネル諸島はイギリスのリゾート地だが連合王国に属さない、イギリス王室保護領となっている。もとはヴァイキングが収めていたノルマンディー公国の領地であった。13世紀初頭にイングランド王がフランスとの戦争に敗れノルマンディー公国を失ったが、チャネル諸島はイングランド王に忠誠を誓ったためイングランド王領のまま、現在に至っている。そんなチャネル諸島で2番目に大きい島、ガーンジー島を舞台にした『ガーンジー島の読書会の秘密』を観た。

 第二次大戦終結直後のロンドンで、駆け出しの作家ジュリエット・アシュトン(『ベイビー・ドライバー』で主人公ベイビーに無償の愛を捧げるヒロイン役で人気爆発したリリー・ジェームズが演じている)はある一通の手紙を受け取る。それはドーシー・アダムズ(ミキール・ハースマン)というガーンジー島の住民で、ジュリエットが戦争中に生活費のために古本屋に売った本をドーシーが偶然手にし、そこにジュリエットの名前と住所が書いていたので手紙を送ったのだ。

 戦争中はナチスに支配されていた島だったが、終戦したので島の本屋を復活させたく、ロンドンの書店の住所を教えてほしい、というもので、戦争中は“読書とポテトピールパイの会”に所属し、会は夜間の外出を禁止し、家畜すら島民から取り上げる厳しい統治をしていたナチスから豚肉を隠すために生まれた、というくだりに興味を持ったジュリエットは「会のことを教えてほしい」と返事を出す。

 ドーシーの返事には会は自分の他に若い女性のエリザベス(ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ)、その知人で初老の女性アメリア(ペネロープ・ウィルトン)、自家製のジンをみんなに振る舞うアイソラ(キャサリン・パーキンソン)、郵便局長の老人エベン・ラムジー(トム・コートネイ)を合わせた5人。最初はアメリアが密かに隠していた豚をみんなで食べよう、というだけであったが、その帰りにナチス兵に外出したことを咎められ、咄嗟にエリザベスは「読書の会です」といってごまかした。体裁を整えるために5人は営業していない古本屋からかき集めてきた本をみんなで読むようになり、終戦後の今もそれは続いている。厳しいナチス統治の中でただ一つの娯楽であり、「会は僕らの避難所だった」というドーシーの手紙に興味を募らせたジュリエットはこれを新聞の記事にしようとガーンジー島に赴く。

 船に乗り込む寸前に恋人のマーク(グレン・パウエル)から予期せぬプロポーズを受け、恋も仕事も上向きの彼女は島へ向かうが、読書会のメンバーからは「会のことを新聞記事にしたい」というとメンバーからは「記事にされるのはお断り」と言われ、距離を置かれてしまう。この場にいないエリザベスのことを聞いても「今は島にいない」と言われるだけ。

 ジュリエットは会のメンバーからエリザベスの為人を聞き出す。エリザベスは誰にも分け隔てなく優しく、他人に尽くす聖女のような人だとドーシーから教えられるが、宿の女主人シャルロットからは「あんな悪女はいない」「会の連中に嘘を吹き込まれているだけで、あの女はとんでもないアバズレさ」とまるで逆のことを聞かされる。エリザベスの秘密に迫ろうと滞在期間を延ばすジュリエットは、エリザベスが島にいない理由、その真相にたどり着くのだが・・・


 英国アカデミー賞に輝いた『フォー・ウェディング』、デップ&パチーノの『フェイク』などで知られる巨匠、マイク・ニューウェル監督による本作はナチスの支配に揺れる島の住民が戦争に翻弄され、引き裂かれる悲劇のメロドラマだ。その悲劇に島民のみならず、ロンドンで戦争の災厄に見舞われたジュリエットも巻き込まれていく。
 ハーレクインロマンスも真っ青の展開だが、ニューウェルの演出や、リリー・ジェームズ他、『ダウントン・アビー』の出演者による優雅で洗練された物語にはメロドラマには縁のない40代オッサンの僕でも思わず前のめりで夢中になってしまった。

 そして悩みに悩んだ挙句、物語を書くことを決意したジュリエットが怒涛の勢いでタイプライターを叩きまくるシーンには、胸にこみ上げるものがあった。一日数百アクセスぐらいしかないこのブログを10年続けている僕もどうしても書きたいこと、残したいことがあってキーボードをたたいているわけです。エリザベスと僕では書いている内容は大分違いますけど・・・書くことはやめられない!

 

 

 

 

血みどろのニチアサ『サイコ・ゴアマン』

 

  カナダが誇る天才過激映像集団『アストロン6』のメンバーにして特殊造型、メイクアップアーティストのスティーブン・コスタンスキ監督の最新作『サイコ・ゴアマン』は80年代のゴア、スプラッター、SF映画のテイストに日本の特撮、クリーチャー作品をミックスしたダーク・ヒーロー作品であり、「血みどろのニチアサ」と呼んでも差し支えない一本で東映のヒーロー番組も真っ青だ!

 

 宇宙の遥か彼方、惑星ガイガックス(ガイナックスのパロディかな)で破壊の限りを尽くし、あらゆる正義と秩序に反発する“悪魔”が存在した。正義の勢力はもてる力を結集し悪魔を封印することに成功、宇宙の彼方に放逐する。

 

 現代の地球で暮らす8歳の少女ミミ (ニタ=ジョゼ・ハンナ) はカナダ生まれの有名なスポーツ(という設定)のクレイジー・ボールで兄のルークを負かし、罰ゲームとして裏庭を掘り返させ、渋々従ったルークは宝石と棺を発見。ミミが手にした宝石の力で棺の中から“悪魔”がよみがえり、廃工場のチンピラたちを虐殺!ミミが持つ宝石の力で“悪魔”をコントロールできることを知った彼女は“悪魔”にサイコ・ゴアマンと名付け、周囲の子供に見せびらかす。

 このミミという少女は可愛らしい外見とは裏腹にとてつもなく性格が悪い・・・いわゆるメスガキってやつです。彼女は自分のいいなりになる、すごい力をもった玩具が手に入ったと大喜びで友達を脳味噌の化け物にしたり、粉々に破壊(死んでるよ・・・多分)させたりと暴れまわる。サイコ・ゴアマンは「いつか後悔させてやるぞ!」と吼えるものの、宝石のせいで逆らえないのだった。

 

 このミミのメスガキぶりが凄まじく、家族も友人も世間も何もかもバカにしている娘なので、お兄ちゃんは常にいいなり、仕事もしない父親グレッグ、夫と毎日口喧嘩の絶えないスーザンもミミには手を焼くばかりで何もできない。ミミに従わされたサイコ・ゴアマンの破壊活動はエスカレートする一方で真面目な警官をドロドロの化け物に変えたり(何もしてないのに・・・)とやりたい放題。サイコ・ゴアマンはかつてガイガックス星で奴隷として使役されていたという悲しい過去を語るが、そんな過去に一切興味がないミミにはどこ吹く風。

「毎日がサイコー!ハッピーよ!」

 これじゃあ奴隷にされてた時と同じじゃないか!だがサイコ・ゴアマンもやられっぱなしではない。かつての仲間たちをブラウン管を使って地球に呼び寄せる。ガイガックス星を統治する正義の集団(には見えない)テンプル騎士団(名前も完全に悪役だよ)は宇宙会議を開き、最強の戦士、パンドラを地球に送り込む。

 宇宙会議に参加したメンバーにはいちいち細かい設定が存在しているのが、作品の内容にはほぼ反映されていない(低予算SFにありがちな無駄な設定へのこだわりが見え隠れ)。パンドラはコスタンスキ監督が影響を受けたという雨宮慶太の『人造人間ハカイダー』に登場するミカエル風の白銀ボディが凛々しい。

 

 地球に呼び寄せられたサイコ・ゴアマンの仲間たち皺苦茶老人ダークスクリーム、死体満載酸性風呂デストラッパー、肩に翼を乗せた全身金属サイボーグ剣士カシアス3000、全身ウジ虫状態死霊魔術師クイーンオベリスク、干し首を操る極東特撮システム出身出目金ウィッチマスター(全員大層な名前がついているが、二つ名はおそらく日本の配給がこじつけたと思われる)らがやってくる。仲間を得てミミに復讐しようとするサイコ・ゴアマンだが彼らはテンプル騎士団と取引をするためにやってきたのだった。5人がかりでフルボッコにされるサイコ・ゴアマン。ミミは裏切ろうとしたサイコ・ゴアマンを「いい気味よ」と放っておく(酷すぎ)のだが、最後には助けてやる。

 父グレッグはミミとサイコ・ゴアマンに無理やり従わされ救助に向かう。地球に着いたパンドラはスーザンを懐柔し味方につけ、メスガキの妹にこれ以上いいなりになるのはごめんだと兄ルークもパンドラの側につく。こんなに苦労しているのに(実際は何もしていない)認めてもらえないと不満な父グレッグはミミとサイコ・ゴアマンに肩入れ。

パンドラ=ルーク、スーザン派VSサイコ・ゴアマン=ミミ、グレッグ派との対決は決着がつかず、これでケリをつけるしかないわ!そう、クレイジー・ボールよ!

 

 このクレイジー・ボール、何度説明されてもルールがよくわからないので気にしてはいけない。とにかく地球の運命は8歳のメスガキに託されたってことだ!(もう最悪)

 

 日本の映画情報メディアが「血みどろのニチアサ」「邪悪な不思議コメディーシリーズ」「カナダの浦沢義雄作品」などと宣伝したため、うっかり勘違いして観に行くとえげつないスプラッター、ゴア描写がてんこもりなので唖然とするかも。

 80年代の映画作品は規制が現在ほど厳しくなかったのでティーンが見られる映画でも平気で残酷シーンがあったりした。子供の頃にうっかりそんな映画たちを見てしまったコスタンスキ監督はすっかりやられてしまい、そのまま大人になった。自分が子供の頃にショックを受けたことを今の子供たちにも味合わせたい!そんな思いで『サイコ・ゴアマン』はつくられた。サイコ・ゴアマンの略称はPGで、これは映画のレイティングを表す 「Parental Guidance」 (~未満の子供には保護者の指導が必要)のことだ。

 

 とにかく少女ミミの度を過ぎたメスガキぶりがハマっていて、コスタンスキ監督は日本の『ゼイラム』や『真・仮面ライダー序章』なんかに影響を受けたそうだが、日本の映画ではこんなメスガキが主役になることはまず、ありえないのでその時点でコスタンスキ監督、日本の特撮映画に勝ってます!

 

 

 

 

 

 

 

底抜けズッコケぶりを、あえて再現しました!『ゴジラVSコング』

 

 モンスター・ヴァースシリーズの第4作にして霊長類最強の巨神コングと怪獣王ゴジラが地上最強はどちらだ!?をかけて激突する決戦映画。

 

 もちろんこの作品は62年の東宝映画『キングコング対ゴジラ』をベースした作品だが本作スタッフは「リメイクではない」とはっきり証言している。『キングコング対ゴジラ』はキングコングの権利をもつRKOとゴジラの権利をもつ東宝がどちらも「うちのキャラクターを敗者にさせたくない」と意見が対立したため折衷案として「決着はつかない」という決着を見た作品で、何十年もの間双方のファンをやきもきさせた(『ゴジラ対ガメラ』が実現しなかったのも同じことの繰り返しになるからだろう)。

 だが今回メガホンをとったアダム・ウィンガードは「勝者を決めたい」としており、何十年にも渡る「どっちが強い?」論争に終止符が打たれるのか?ハリウッドの手によって!

 

 怪獣王が地上の王者となった5年前の戦い(『キング・オブ・モンスターズ』)でゴジラとコングに長年の因縁があることがわかり、怪獣を研究している機関モナークはゴジラからコングを守るために髑髏島を隔離施設化し、その中で監視していたが、巨大になる一方のコングを押しとどめることに苦労していた。言語学者アイリーン(レベッカ・ホール)はコングと心を通わせる少女ジア(髑髏島の先祖イーウィス族の末裔)によってコングの存在をやがてゴジラが嗅ぎ付けていることを知り、決戦が始まることが示唆される。

 巨大企業エイペックス・サイバネティクスは世間に明かさず秘密の研究に没頭していた。陰謀論者のポッドキャスター、バーニー(ブライアン・タイリー・ヘンリー)はエイペックス本社に潜入するが、本社は突如ゴジラの襲撃を受け崩壊、なんとか助かったバーニーは破壊された施設の中で謎の機械を発見し、自身のポッドキャストで事実を公表する。

 彼の配信は怪しげな陰謀論としてまるで相手にされていなかったがアイリーンの娘、マディソン(ミリー・ボビー・ブラウン)には「真実を語っている!」(?)とバカ受けで彼女のオタクっぽい友人ジョシュ(ジュリアン・デニソン)と二人でバーニーの元へ。

 

 マディソンは前作で環境テロリストと組んで怪獣に世界を破壊させ、人類以外の手によって世界の再生を目論んだ科学者の娘で母親を疑いもせずに信じたためにとんでもないことになっていたが、今回も陰謀論者の意見をこれっぽっちも疑わないどころか、神のように崇めているという5年前のことを何も反省していない!

 

 元モナークの学者、ネイサン(アレクサンダー・スカルスガルド)は地球空洞説を唱えていたが、兄が空洞世界へ進行を目論むも特殊な重力によって「反転」してしまい死亡。それ以来調査を諦めて居たがエイペックスのCEOウォルター(デミアン・ビチル)は彼が開発している対怪獣用兵器のためのエネルギー源が空洞世界にあるとして故人であるモナークの芹沢猪四郎博士の遺児、芹沢連(小栗旬)らに焚きつけられ、再び空洞世界を目指す。ネイサンは髑髏島で旧友のアイリーンに再会し、空洞世界こそがコングの生誕の地であり、帰巣本能を利用すればコングを故郷へ返してやれると説き、空洞世界に眠るエネルギー源のことは秘密にしてジアを説得、空洞世界へ旅立つことに。

 

 この地下空洞という設定は怪獣映画にありがちなハッタリが効いていて、異世界大好きな子供心に火をつけてくれる楽しい設定だ。

 

 米軍による輸送作戦が決行させるが鎮静剤を打たれたはずのコングが暴れだす。ジアはコングと手話で会話(!)をして落ち着かせる。

 輸送中、コングの存在を感じ取ったゴジラが襲来、護衛艦隊はなすすべもなく駆逐され、コングも海に引きずり込まれ苦手な海中戦を挑まれ大苦戦。ネイサンの「死んだふり」作戦によってゴジラはその場を離れなんとか窮地を脱する一行。

 

 空母でコングを輸送し、艦上で大決戦という場面は中々に熱い展開で滾らせてくれる。この場では地の利(というか海の利)を得たゴジラに軍配が上がるが、本格的な決戦はこのあとだ。手話ができるというのはいくらなんでも・・・という気がするが、人間ではない生物と心を通わせる少女というのはRKOが『キングコング』の亜種としてつくった『猿人ジョー・ヤング』のオマージュだろう。怪獣映画ではこういう歴史をあらためて辿ることが重要なので、アダム・ウィンガード監督の細かいところに手が届く仕事に拍手を送りたい。

 

 バーニーと合流したマディソン、ジョシュはエイペックス本社が何かを配送しているリニアモーターカーを発見、こっそり乗り込むとリニアはあっという間に香港へ!ネイサンら一行はエイペックスの技術によって誕生した特殊重力に耐えうるマシン、ヒーヴを使って空洞世界にたどり着き、先祖の地でコングは遺跡の中から謎の力が秘められた斧を発見する。

 

 ヒーヴはスーパーX風のハッタリ科学マシンでゴジラファンもニヤリ。

 

 香港についたマディソンらはウォルターがキングギドラの頭部を再利用して開発した対ゴジラ用兵器、メカゴジラの存在を知る。芹沢連はパイロットとリンクするテクノロジーでメカゴジラを動かしていたが、既存のテクノロジーでは長時間メカゴジラを稼働させることができず、空洞世界に存在するエネルギー源を利用すれば問題が解決できると踏んでおり、自身の娘マイア(エイザ・ゴンザレス)を同行させ、エネルギー源を奪取させ、香港に転送するがコングの怒りをかい、空洞世界の怪獣ヘルホークとの争いに巻き込まれ命を落とす。

 香港でメカゴジラの起動を察知したゴジラは香港の街を破壊、さらに反対側の世界にいるコングに向けて放射熱線を吐き、直通する一本の道ができてしまう。コングはそれを辿って空洞世界を脱出。香港を舞台にゴジラとコングの決戦が始まるが、大接戦の末コングは破れ、心肺機能が停止する。

 

 メカゴジラの登場は当初、完全に伏せられていて世界中の観客は度肝を抜かれたが、日本は世界最遅の公開だったためあらゆるところでネタバレが起きてしまっていてそこだけは残念。パイロットと精神でリンクする技術は『パシフィック・リム』を想起させ、モンスター・ヴァースの一篇として組み込まれる今後の展開に期待か。

 

 香港のエイペックス施設ではバーニーらが「メカゴジラをつくったせいでゴジラが怒った」とウォルターを糾弾するがメカゴジラが完成すれば怪獣王など恐れる必要はない、メカゴジラこそが怪獣王になるのだと。しかし空洞世界のエネルギー源によってフルパワーに達したメカゴジラは芹沢連とつながるリンクを切り、暴走。ウォルターは施設の破壊に巻き込まれ死んでしまう。

 

 小栗が演じる芹沢連のキャラクターはこの映画でもっとも残酷に扱われ、意味不明だ。渡辺謙が演じた猪四郎博士とのつながりはまったくわからず、背後関係も示されないので彼が死のうがなんだろうが観客は何とも思わない。様々な事情から出演場面が大幅にカットされたとされ、残念というしかない。

 

 暴走するメカゴジラの圧倒的な攻撃力の前に怪獣王たるゴジラも苦戦。怪獣王とて人間のテクノロジーの前には敗れ去るしかないのか?

 仮死状態になったコングを救う術はもうないが、ネイサンは「心臓マッサージを行えばまだわからない!」と言い出し、ヒーヴの電極を利用してAEDのように使用し、コングを再生させる。

 

 いくらなんでも心臓マッサージって・・・と思うけど、これももちろんジョン・ギラーミン監督の『キングコング2』でコングの心臓を移植したっていうやつのオマージュなんですよね監督!?

 

 蘇ったコングはゴジラと共闘しメカゴジラに対峙するが、2体の力をもってしてもメカゴジラの暴走を止められない。エイペックス社内でメカゴジラの暴走を止められないかと悪戦苦闘していたバーニーたちもなすすべがなかったが、ジョシュがコントロールパネルに酒をぶちまけてショートさせる荒業でメカゴジラのコントロールシステムに不調を起こさせ、その隙をついたゴジラとコングがメカゴジラを破壊する。共通の敵を倒した2体は争うことなく、その場を去った。

 

 心臓マッサージがOKなんだからこれもアリでしょ!そんなんでええんかい!とかいうツッコミは空しいだけです。

 

 結果、東宝のゴジラ映画でさんざん見てきた底抜けズッコケ描写をハリウッドの超大作で再現するとは・・・ウィンガード監督をはじめとするスタッフは本当に日本のゴジラ映画が好きなんですねえ。ハリウッドの方に寄せようとしすぎた 『GODZILLA ゴジラ』『キング・オブ・モンスターズ』はヌルすぎたぐらい。『ゴジラVSコング』は両者の対決にきちんと決着をつけつつ、互いの存在をリスペクトできる良い結末だったといえよう。

 

 東宝とレジェンダリー・ピクチャーズが組んだ『モンスター・ヴァース』シリーズの契約は『ゴジラVSコング』で一旦最後となるそうだが、ここまでをphase1として以降phase2、3としてシリーズが拡大していく構想がまことしやかにささやかれたこともあり、脚本家のボレンスタインがその後の構想を語っており、まさしく安泰だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴジラファンは複雑なのだ『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』

※これは前ブログの過去記事(2019年06月11日)の再録です

 2014年版『GODZILLA ゴジラ』の続き。前回はオリジナル怪獣のムートーとの戦いが描かれたが、今回は世界中に眠る怪獣たちが目覚め、地球の王座を巡って戦いが起こる。王の座は渡さんと再びゴジラが現れる。挑むのはキングギドラ、ラドン、モスラ!(そのほか)『怪獣総進撃』か?『オール怪獣総進撃』か?はたまた『FINAL WARS』か!?

 ・・・と期待を煽るだけ煽って我々の前にやってきたのは平成ゴジラシリーズ程度の大盛焼きそば一万倍野郎でしかなかった!

 とはいえ制作はハリウッドで、今世界でもっとも景気のいい中国資本をバックにつけたレジェンダリー作品なので、VFXはすさまじいの一言で、南極でのゴジラVSキングギドラ戦やメキシコでのラドン大暴れなどは絶句。が、後半のクライマックスは一切緩急がつけられず、ただただハイテンションで突き進むだけなので見ていて疲れるし飽きる。

 なにより怪獣バトルのすさまじさと比較しても人間ドラマの雑さ、酷さはいくら僕たちが『ゴジラ対メガロ』『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』とか、平成ゴジラVSシリーズとかに耐えてきたとはいえ、納得できなかった。

 まずこの映画の主役であるラッセル一家。マーク(カイル・チャンドラー)とエマ(ヴェラ・ファーミガ)はモナークの科学者で、サンフランシスコの惨劇で息子を失ったことからマークは組織を離れ、エマはマークが考案した怪獣と交信できる機械“オルカ”を完成させ、中国のモナーク施設でモスラを目覚めさせた上にコントロールすることに成功。しかしエコ・テロ集団に捕まり、助けにやってきたマークの前でオルカを使いキングギドラを復活させる。その後

「地球は死に瀕している!怪獣たちに地球を好き放題破壊させ、地球の寄生虫である人類を激減させるのだ!(サノスかよおめーは)そして地球を再生させよう!」

 とか突然言い始める。彼女はモナークにいたときは逆のこと言ってたのに、地球を破壊しようとするエコ・テロ連中に感化されたのか、平和のためにつくられたはずのオルカが人類に牙をむくのだ。これはゴジラシリーズで描かれてきた「科学の暴走が人類を破滅させる」というテーマに沿っているかもしれないが、このエマと娘マディソンのやることが支離滅裂。
 エマとマディソンはキングギドラが眠る南極にまで助けに来たマークを振り切ってキングギドラを目覚めさせる。
中国でエコ・テロ連中に捕まった時点で感化されてるわけだ。
 しかしその後、メキシコで無差別に暴れまわるラドンを見て「住民が避難するまで攻撃しない予定だったのに」とか言い出して母娘決別。しかし怪獣が暴れれば犠牲がでるのは当たり前で、その程度の覚悟で怪獣蘇らせたんかい!と言いたくなるし、娘もなに今更善人ぶってんだ!南極では親父すら無視しておいて!そして急に正義感に目覚めた娘はエコテロ施設を抜け出してオルカを持ち出し、ボストンのフェンウェイ・パークまでたどり着く。ここまでエコ・テロ連中の誰にも気づかれないまま・・・マディソンはオルカで世界中の怪獣の動きを停止。そして娘の行動を知ったエマはエコ・テロ連中を捨ててボストンへ・・・

 怪獣による世界中の破壊は全部この家族が原因なのに、ラストでは誰も死ぬことなく(追記:母親は死んでました)家族が再会できてよかったね、じゃねーよ!あっちなみにクライマックスではゴジラやキングギドラの真下で家族が怪獣を見上げてなんか騒いでました。話が雑過ぎる!大森一樹のゴジラでさんざん見た光景を2019年のハリウッド作品で見ることになろうとは・・・

 死ぬべき人間が誰も死なず、死ななくてもいい人間がみんな死ぬ、という不条理。この家族が怪獣を止めるために全員死なないと納得できない。そもそもモナークっていう組織自体が無能の集まりだよね。怪獣を発見して管理しているといいながら、実際は世界中で共有すべき情報を独り占めしていたわけで、なんか一握りの富裕層が世界の富を支配している、みたいな揶揄に見えなくもない。そして芹沢猪四郎博士(渡辺謙)の犠牲で世界が救われ、チャン・ツィイーが生き残る!見ようによっては欧米社会が支配してきた富をアジア人が再分配するストーリーに見えなくもない・・・ってこんな前田有一みたいな戯言を抜かしてる場合ではない。

 この杜撰なお話をやってしまったマイケル・ドハティ監督が大森一樹やら大河原孝夫の平成ゴジラVSシリーズのファンだというのはわかった。初代のファンです、みたいな戯言でお茶を濁さなかったことは好感がもてる。
 僕も青春時代のゴジラがVSシリーズだったからあのシリーズは憎みつつも愛している部分があるので、今回も腹が立つけど好きだといえる。ゴジラファンは複雑なのだ(面倒ともいう)。