少し前、Youtubeで、野々村チェアマンらが出ていた動画を見たときに、ゲストの一人だった曺貴裁監督が、チームの強さについてこう話していました。
「得点を取ったときよりも、守備のときの選手の様子に注目している」
「例えば、相手からシュートを撃たれて味方の選手がそれを体でブロックした時。本人だけじゃなく、その周囲の選手が手を叩いたりガッツポーズをしたりする姿を見ると、『このチームは強い』と思う」
なるほど、と膝を打ちました。
先週の長崎戦の72分。
相手にシュートを撃たれた時に住吉選手がブロックした後、権田選手と手を叩き合う姿がありました。
今のエスパルスはやはり強くなってきているのだと確信しました。
長崎戦の引き分けも私はポジティブに捉えています。
2016年は、エスパルスが残り9試合を9連勝で終えて、2位だった松本山雅を追い抜きました。
その記録を辿ると、残り9試合の時点でのエスパルスと松本山雅の勝ち点差は7。
つまり、残り9試合で勝ち点7差でも、9試合全て勝った上で、得失点差で何とか2位になれたわけです。
長崎戦の話にもどりましょう。
あの試合が終わった時点で、エスパルスの残り試合は9、長崎は8というのは確定事実です。
そして、もし負けたら、残り試合8で勝ち点差は5。
長崎からすれば、2016年のエスパルスよりも楽なミッションとなります。
ところが引き分けになると、勝ち点差は8。
つまり、残り8試合で勝ち点差8です。
これは2016年のエスパルス(残り9試合で勝ち点差7)よりもはるかに困難なミッションです。
あの年を経験した方なら実感していると思いますが、残り9試合の時点で「引き分けは、即、プレーオフ」という余裕のない心理状態で応援していました。
今の長崎はそれよりも苦しい状態に置かれているわけです。
この差は客観的にみて、非常に大きいです。
ですから、後半3バックにした時には「なるほど」と思わず納得しつつも、攻撃の手を緩めない乾選手に感心しながら応援していました。
ただ、もうひとつ。
過去の経験上、「引き分け注意!」とも言いたいです。
というのは、2016年にエスパルスが松本山雅に追いつけた最大の原因は、松本山雅が負けなしを続けながらも、2引き分けしたからでした。
対するエスパルスは勝ち点3をゲットし続けたので、勝ち点4を詰められたのです。
その時「これで勝負は五分五分に持ち込んだ」という実感を得たのを覚えています。
実際、1試合でひっくり返せる「勝点3差」という位置は、追いかけるチームの方が心理的に強いです。
確か、ラスト2試合残すあたりで得失点差で順位をひっくり返して、最終節の徳島戦に臨んだと思います。
そしてその試合、スマホで松本山雅が先制されたのを見た私は、ポカリスエットスタジアムのスタンドで「引き分けでも行けるかも」と甘い考えを持ってしまいました。
しかし、当時の選手たちは勝利しか考えておらず、ご存知のとおり、テセ選手からのアシストで金子選手が勝利のゴールを決めました。
試合終了後に、松本山雅の勝利を知って、背筋が寒くなったのも覚えています。
奇しくも、その松本山雅を率いていた監督が反町GM。
長崎戦の引き分けの大切さも、これからの引き分けの怖さも体で知り尽くしているはずです。
そして残り9試合を2016年のような「勝利しかあり得ない」という気持ちで戦って結果を出せば、自動昇格だけでなく、J2優勝が確定します。
エスパルスは横浜FCよりも1試合少なく、かつ国立での直接対決があるからです。
長崎戦の引き分けは、このポジションを確保するためだったと後から言えるよう、今週の山口戦から勝ち点3を奪い続けていくと確信しています。
そして、エスパルスをより「強いチーム」にするため、ファン、サポーターも、得点シーンと同じくらい守備で戦った瞬間に大きな歓声や拍手を送って後押しをしたいですね。