泳ぐ写真家龍之介 -9ページ目

「バカフライ?」

私のバタフライは、昔、「バカフライ」と呼ばれていました。
不細工なフォームで、津波を発生させながら
乱暴に推進していたからです。

まだ高校生のころは、どんなフォームでも
力で泳ぐことができるので、
優雅なフォームや美しいフォームなんて
考えたこともありませんでした。

クロールもそうでした。
風車の用にただ腕を振り回したら
そこそこのタイムが出ていたからです。

雑な性格と有り余る体力のせいか
まったくデリカシーのない、
恥ずかしい泳ぎをしていたものです。
赤面ものです。


50を過ぎてマスターズ水泳を始めて、
一番の収穫は、
「美しく泳ぐことの」の発見です。
「速い泳ぎは美しく、美しい泳ぎは速い」
ということに気がつきました。

まず、美しく楽に泳げるフォームを身につける
その後に、スピードアップが見えてくる。

そんな過程が、最近楽しみになってきました。

美しさの背景には、力強さと柔軟性があります。
特に柔軟性は、ケガを防ぐ意味からも
可動域を広げる意味からも、重要項目だと思います。
格闘技時代に徹底して訓練した柔軟性をまた、見直して、
20代の柔軟性を取り戻そうと考えています。

そんなこんなで、いろいろとトライしている今日この頃です。










「父の事」

いきなり物騒な話になりますが、
「気違い水」とは、酒のことです。
飲み過ぎると気違いになる。
という戒めの言葉でしょうか。
私の田舎、大酒呑みの多い熊本でよく耳にする言葉です。

私が小学生の頃、
ある日、祖母に呼ばれて、目の前に座らされました。
祖母曰く
「お前には、大酒呑みの血が流れておる。
将来酒を呑む時には心して、呑みすぎることなかれ!
酒は気違い水じゃ!」

私には何のことか分からずポカンとしていると。

「よく聞くがよい!
お前の父親はな、学校(小学校)から帰ってくると、
土間の酒樽(父の実家は網元で、漁師が呑むための酒がいつも用意してあった)から
こっそりと酒を盗み呑みしておったのじゃ。
ある日、酔っぱらって、障子に火をつけてのう。
あやうく火事になりそうになった。
咄嗟に体で障子を押し倒して事なきを得たのじゃ。
我が子ながら怖かったぞ!
大酒呑みの血とは、そのことじゃ!」

と、いうショッキングな話を聞かされました。

その話は、私の潜在意識に沈潜して、
成人してからも、ある程度酒が進むと、
強力なブレーキとなりました。
そのおかげで、私は、酒で致命的な失敗をした記憶はありません。
致命的でない失敗は沢山ありますが、、、(ノ゚ο゚)ノ

酒について、祖母から聞かされた話は、
私の人生にとって、この上とない箴言となりました。
最近、どこぞの検事さんが、酔っぱらって、痴漢行為を働いて、
一生を棒に振るような結果になった。
なんて話も最近よく耳にします。
今まで、そんな事がなかったのも、祖母のおかげだと感謝しています。


そんな父は、その後、帝国海軍の技術将校として、
終戦まで「機雷」の開発に携わりました。
私の子供の頃、父曰く、
「俺はどんな爆発物でも作れる、原爆だって材料があれば作れる!」
どうやら、父は、生来、物を燃やしたり破壊するのが、好きだったようです。

私が小学校の時は、厳しく、
ケンカして負けて泣いて帰ってくると、家に入れてもらえませんでした。
私が剣道をやりたい。と言うと、
「剣道はケンカの役に立たない、柔道にしろ」
という理由で、
私は柔道をやることになりました。
私がケンカに負けなくなって、喜んでくれたのも父です。
信じられないことに父の職業は、「教師」だったのです。
今だったらとっくにクビになっていたかもしれません。
しかし、当時はそんな先生が多かったように思います。

そんな父も、私が中学校に入る頃になると
とても温厚になり、私に怒ることはなくなりました。

晩年は、昔の父が想像出来ないくらい好々爺になり、
私が釣りに連れて行くと、子供の様に喜んでいました。

先日、父の祥月命日でした。
大酒呑みで、ヘビースモーカーでしたが、
79歳で亡くなる直前まで元気でした。
豪快に、大正、昭和、平成を駆け抜けて行ったその人生は
幸せそのものだったと思っています。









「気」

私が、以前、住んでいたマンションは、
隣が里山のような公園で、裏が畑でした。
そのせいか、
カブトムシやクワガタムシなどの来訪者が多いところでした。

ある日、マンションの階段を上ろうとしていたら、
手すりに、子供のトカゲがちょこんと乗っていました。

私は、子供の頃、トカゲをペットにしていたこともあり、
トカゲが大好きです(蛇は嫌いです)。

目と目が合って、よく見ると、
愛らしい顔をしています。

思わず、手を差し出して、
「こっちにおいで!」と言うと、

ぴょんと、私の手のひらに飛び乗ってきました。

普通なら、トカゲは、人間を見たら、警戒して、
近づくと逃げるはずですが、
私の「気」を感じたのでしょうか?
不思議な体験でした。

そう言えば、
私は、子供の頃に猿と格闘した経験があり、
猿は大嫌い。
動物園で猿と目が合うと、
必ず威嚇されます。

以心伝心と言いますか。
「気」は通じるようです。

それは、勿論、対人間にも言えることで、
私は、今まで随分いろんな人に「邪気」を発してきたのではないのか?
と最近思っています。
言葉にしなくとも、気は通じます。
怖いですね。