つぎの決心。
日本の小劇場界において、まずチケットノルマはデフォルトです。
もちろん日々大勢の方々に観て欲しいと願って止みませんが、しかしそれが俳優の責任となれば大変です。
映画や舞台は多くのスタッフがそれぞれ専門スキルを持ち寄って生み出される総合芸術です。俳優は俳優の専門スキルをトレーニングする時間が必要だからです。
たとえばボクサーが、セコンドやプロモーターを兼ねるのは困難なのです。
その中で知り合いに、舞台ではフリーで活動している女優がいます。
いつも才能ある集団 (劇団) を見つけてはオーディションに臨み、そして合格しています。
そのうえ彼女へは大勢のお客さんが応援してくれているので、小劇場のなかでは驚かれ、そして毎回行った先の劇団では大変喜ばれるそうです。
ところが。
彼女にメインの役はけっして回ってきません。
劇団員が演じるからです。
しかしセールスだけでなく公演を観る限り、彼女の存在は圧倒的なのです。だからこそ、たくさんの応援を得ているのだとは思います。
個人的には俳優としてチケットノルマについて疑問を感じているひとりですが、だからといってチケットをたくさん売る女優を便利に扱って良いとは思いません。
良い舞台を作るのは大変に難しいものです。
チケット販売数でキャスティングされているような作品を観て、何度もがっかりさせられてきました。舞台のライブの可能性を痛感しているからです。
それでも。
なんだか、いつまでも心のもやもやが晴れない時間を過ごしていました。
そして、ある決心をしました。
最近の不思議
結局俳優は日々受け身で、どこからがオファーが来るまで地に潜ってトレーニングしている訳ですが。
ひょんなことで舞台制作をし始め、そのノウハウが解らず途方に暮れていると、数年ぶりに元舞台制作の方から連絡を頂けたりするのです。
あるいはFacebookのDMで舞台公演のお知らせをすると、これまた数年ぶりにそれとは無関係にふらりと知り合いからメッセージを頂いたりします。
まめに連絡をされる方は、良くあるのかもしれませんが。
嬉しくて、何かを信じたくなります。
あまりに不思議です。
シアターグリーン学生芸術祭 Vol.12
来月の舞台公演の参考にと、池袋の演劇祭に行ってみる。けっこう活況(かっきょう)で、2度とも満員だった。
大学生が書く台本は今となってはとても新鮮で、青春時代の映画がいつでも輝いて見えるのと同じようにまぶしかった。
もちろん将来プロになりたいと志している彼らは、いろいろ研究して臨んだであろうこの舞台を彼らなりの解釈で挑戦していて、きっとこうした人材が明日の業界を背負うんだろうなとふと思えた。
しかしもっと言えば、どちらかといえばどうやってもこの先が無いだろう、という作品の方により僕はドキドキした。
先が無い、というのは業界に鑑(かんが)みて将来予算を組んで企画を立てにくいということであり、それでもこの先の命のことなど考えずに小劇場でしか生きられない何かのように汗を流している彼らにより、何なのか心配なのか解らないがとにかく感動した。
とはいえ、かつての小劇場ブームも最初はこのような形で始まったのだろうし、それを考えるとこの瞬間がとても貴重に思えてワクワクせずにいられなかった。
じぶんが年齢をとったりして環境が変わると、確実に見え方が変わる。それに良いも悪いもない。不思議だ。