やさしさと思いやりを示されたナルシシストがより献身的な配偶者になれるかどうかを実験した研究もある。
まず、配偶者に寛容と思いやりといたわりの気持ちをもっているかを1人1人に尋ねた。
そのあと夫婦を数カ月に渡って観察し、献身の度合いの変化を確かめた。
配偶者がやさしさと思いやりを示してくれていると感じたナルシシストは、以前よりも結婚生活に献身的になったと報告した。
この結果には勇気づけられる。
そうだとしても、私たち筆者はナルシシストとの結婚を勧めないが、この研究はやさしさや心の絆を積極的に表現すれば、ナルシシズムの解毒剤になり得ることの新しい証拠を示している。
もう1つの提案は、たがいに献身的で思いやりのある安定した人間関係がいかにありがたいものかを教育することである。
人とのつながりは、人生をより素晴らしいものにしてくれる。
たとえば結婚は、とくに男性にとってありがたい。
なにしろ共働きの妻と幼い子供がいながら週60時間働くのは大変だが、一方で、家族がいれば無茶をせずにすむ。
既婚男性のほうが酒の席で羽目をはずさないし、夜遊びもしないし、総じてばかなまねをしない。苦労もあるが、結婚は良いものだ。
アメリカ社会は、たがいに献身的で思いやりのある安定した人間関係を重んじるべきである。
確かに重んじられてはいるが、一方で正反対の概念、すなわち自己中心的な短い関係も驚くほど多い。
私たちの文化は結婚式と結婚生活を美化するあまり、そこに自己犠牲と責任が伴うことを忘れているようだ。
結婚式はそのことを心に刻む機会であるべきなのに、ナルシシズムの披露で終わってしまっている。
レベッカ・ミードが『完璧な1日~アメリカの結婚式商売~』で述べているように、「婚約期間中の女性は注目の中心にいるべきだという考えを・・・結婚情報誌が煽っている」
16ヶ月のあいだ、自分のこと、自分の容姿、自分の好み、そしてそれらをどう最大限に演出できるかだけを考えることが彼女に与えられた特権、というよりも義務なのだ」
結婚を控えて自分のことで頭がいっぱいの女性を表す「ブライジーラ」という新語まで生まれた。
花嫁(ブライド)とゴジラを合わせた造語である(この言葉が市民権を獲得したのは、もちろん同名のリアリティ番組のおかげだ)
2008年のウィキペディアによれば、ブライジーラとは
「行く先々で家族や友人や結婚式業者を困惑させる、気難しく不機嫌で完璧主義の花嫁のこと。完璧な1日になるべき結婚式のことで頭がいっぱいで、式を非の打ちどころのないものにするために家族や付き添い人や、ときには新郎の気持ちさえないがしろにする」
ウェブマガジン『スレート』のエミリー・ヨッフは、「いつから結婚は場面限定の後天的ナルシシズムが発揮される場になったのだろう?」と首をかしげる。
あるカメラマンは、「花嫁をできるだけセレブ雑誌の写真のように見せること」が「結婚写真を撮る目的になっている」とミードに話した。
結婚式はどんどん贅沢になっている。
ごく普通のアメリカ人が、セレブリティに集まる100万ドル級の派手なパーティーに似せようとするからだ。
2006年の平均費用は2万7000ドルを超え、物価上昇を考慮しても、1990年~18%以上増加した。
いまも高いアメリカの離婚率が示すように、豪勢なパーティーを開いても、それで夫婦仲が安定する保証はない。
アメリカ文化は、浅薄な人間関係が理想だと私たちに教えようとする。
たとえば、テレビや映画の脚本家は「夢のような恋愛」のネタ探しに必死のようだ。
自分は特別だと思わせてくれる現実離れした恋愛に誰もが憧れ、平凡な交際などは一昔前の退屈な人たちがすることに思えてしまう。
残念ながら、そんな夢のような関係は現実の世界では不安定な原子の粒子と同じで、気づく前に見えなくなっている。
わがままな人々のドタバタドラマを見るほうがずっとおもしろいのはわかるが(シェイクスピアの時代からほとんど変わっていない)、ものには限度というものがある。
『ファミリー・タイズ』『コスビー・ショー』『ホーム・インプルーブメント』などの1980年~1990年のホームコメディは消え、いまのテレビはニューヨークの独身男女やセックスに夢中の金持ちティーンエイジャーやナルシシストの医者が主人公のドラマと、番組のなかだけのセレブとセレブを結ばせるリアリティ番組に占拠されてしまった。
この数年でトップ10に入っていて、昔のドラマに最も近いホームドラマは『デスパレートな妻たち』だけだ。
これとて思いやりのお手本とは言えない。
要するに、私たちの文化が目を向けなければならないのは、華やかな人ではなく質実な人なのである。
ブライジーラやセクシーなセレブリティやリアリティ番組の出たがり屋の挑戦者やわがままなCEOの話は、こんなにいらない。
ほしいのは温かくたがいに献身的で尊敬しあっている模範的な人間関係の話である。
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