苦痛だった。
登りきったと思ったら、今度は下り。
傾斜に身を任せるかのように、ひたすら下って下って、下るのみ。
今年からのコース変更で、95kmからのきつい坂(モンスター)をこの前半で逆に下るという(私には)試練。
火野正平のように「人生、下り坂最高!」とはいかない。(分かる人だけでいいです)
どうしても後傾姿勢になって、坂を攻められない。
傍らを軽快に追い抜いて行くランナーたち。多いのは、背中にリュック。トレイルランナーの皆さんに、坂を走るコツを教わりたいものだ・・・と思いながら、ひたすら下る。
まだか。ステラシアターはまだか・・・
って、知ってるとはいえ、こんな長い距離を最後登るのか・・・
40km通過が「4時間40分01秒(事前の予定と1秒違い)」という順調ぶりもさておき、ステラシアターまで下りきった頃には、だいぶ脚をやられてしまっていた。特に負荷が掛かったのは、両足の人差し指。出血してませんように。。。
なんとか、なんとか河口湖へ。
45km過ぎで、応援の嫁(おはぎ)と合流。
「去年より脚、動いてないよ」
そりゃそうだ。
「たま胡もがんばってお留守番してるんだから」
ああ、そうだった。。
この春、我が家に家族が増えた。
譲渡会でおはぎがひと目惚れし、迎え入れることとなった、もうすぐ1歳のメス猫。
「玉のような子」に、胡のまじない(検索して調べて下さい)をかけて「たま胡」。
まだ家に慣れていない中、無理を言ってお義母さんにトイレとご飯の世話をお願いしてきた。
富士五湖の100kmは、もう自分だけのことではない。しっかり完走して、メダルを持って帰ろう。たとえたま胡に無視されて「猫に小判」になったとしても、メダルは持って帰ろうと・・・
河口湖の上辺を、いつもの通り、ひたすら走る。
もうここからは「既知の道」。
西浜小の関門も17分の貯金でクリアし、西湖へ。
湖の入り口で両の太ももが痙攣したり、50kmを過ぎて急に脚が重くなったりと、身体のダメージは例年より溜りが早いのは仕方ないが、「前へ、前へ」という気持ちだけは切れることなく、野鳥の森公園、青木が原を抜け、「短いようで長い」精進湖は、偶然その場にいたランナーで自然発生的にできた集団に乗っかってクリアする。
旧精進小学校の関門で、貯金は40分ほど。
時間の厳しさもここまでくると緩和され、少し気持ちに余裕が出てくる。
「よし、やってみよう」
富士五湖に参加して、今年で5回目。
初めての経験を遂行することになった。
(つづく)
※ごまめ知識(3)※
どうしても、書いておきたかったことがある。
最近の大会でもたまに目にするが、富士五湖でも去年から横断幕で見た記憶がある、この応援フレーズ。
「死ぬこと以外かすり傷」
インパクトの大きい言葉ゆえに、その語源についてはネット上でもある事ない事、いろいろと囁かれているのだが、私としてはここで「正解」をちゃんと書いておきたいと思う。
まず、この言葉の主となる人物は、水彩画家・永山裕子さん。
彼女の座右の銘がズバリ、「死ぬこと以外かすり傷」なのである。
ではなぜ、これほどまでに世に広がることになったのか。
そのきっかけとなったのは、私が愛聴している TBSラジオ『安住伸一郎の日曜天国』 である。
一昨年の秋、千葉の館山で公開生放送があり、いろんな経緯があって永山さんは生放送の会場で、スナックという名の模擬店をやることになったのだが、その時、お店のママとなった永山さんは客に渡す名刺の裏に、この 「死ぬこと以外かすり傷」 を記したのだ。
おそらくこの名刺をもらった誰かがSNSなどにアップしたことで、世に知れ渡ったのだと思われるが、たしかに自分を開き直らせるにはこれ以上ない言葉だと思う。
なお、永山さん自らの作なのかと思いきや、実は違うみたいで、「近所のボクシングジムに貼ってあった」言葉らしい。