死ぬはずだった夜‐36‐
お互い言葉を発しない。
目の前にいる男を自分と重ねた
可哀相な人だ……
あんたも あたしも。
自分の思い通りにならない事に
怒りは頂点に達したようだ。
男は緩めていた左手に
再び力を入れた。
そして右手で拳を握り
大きく振り上げその拳を……
私の顔面に向けた。
死ぬはずだった夜‐34‐
はっと我に返った。
生きてる?
死んでる?
わたしは
……まだ生きていた。
男の手元が緩んでいる。
死んだと思って怖くなったんだろう……
男は小刻みに震えていた。
そして意識が戻った私は
再び男を見つめた。
次は何だ?
何するつもりなんだ?
この生と死の狭間の異様な空気は
誰にも味合わせたくない。
心臓が握り潰されるような
そんな感じ……
極度の圧迫感と
張り詰めた緊張感。
これを経験した者は
心に一生の傷を背負うだろう……
良かった
これが自分で
よ か っ た 。