ストーリーもリアリティも全体構成も二の次でいい。胸を「はっ」と突かれるような美しい場面が1カ所でもあればいい。
 小説でも芝居でもビデオクリップでも、そんな偏った鑑賞法が身についてしまった。前からその傾向はあったのだが、年を取るにつれて拍車がかかっている。もしかすると、老化現象の一種か。

 樹理(浅見れいな)が「この人がお父さんだったら、と思いました」と言い、仲正(西村雅彦)が嗚咽を漏らす。いかにもわざとらしいシーンだが、脳内の「美しさセンサー」が即座に反応する。
 エンディングは取調室で仲正が佐久(小澤征悦)に語っているはずの回想が映像化されている。さすがに美しさセンサーはさほど反応しないが、結構気に入る終わり方だ。

 明らかに違法アップロードだが、今回の話はここにある。

 浅見れいなさんは前にどこかで見た気がしたのだが、調べたところ、「相棒」Season10最終話「罪と罰」に出ていたのだった。ネットのお蔭で何でもわかるものだ。
 一昨日の「太陽王」観劇の折は、宝塚歌劇を初めて見る者として思うことがいくつかあった。

 まず驚いたのは女性比率の高さ。女性ファンが大半を占めていることは何となく知っていたが、推定95%超が女性だった。男性ファンを開拓すれば観客総数はすぐに2、3割増やせるのではないかと思われるが、そうは簡単にいかない結果が現状なのだろう。それとも意図して男性ファンを遠ざけているのか。それはともかく、1人でタカラヅカを見ている男はゲイと間違われはしないか、と休憩時間中に心配になり始めた。

 開演前や途中休憩、終演のアナウンスを主役自らが(もちろん録音だが)行うのは非常に好ましい。最初に「星組、柚希礼音です」と聞いたときは驚いた。観客は歓迎されている気になり、また、主役が公演の細部にまで責任を負っている印象を与えることができる。ほかの劇団も真似すべきではないか。

 カーテンコールで主役が千秋楽でもないのに挨拶をするのもよい。ただ、その内容は「本日はお越しいただき有難うございました。また、是非お出でください」程度。せっかく挨拶するのであれば、短くでいいから何か記憶に残ることを日替わりで言えればもっといい。

 観客は熱心なファンが多いはずだが、心底入れ込んで舞台を見ている雰囲気が周囲から思いのほか感じ取れなかったのは何故か。座っていたのが2階席だからか。それとも、「観客のプロ」というか、批評家的な目で見ているお客さんが多いからだろうか。

 物語がひととおり終わった後に唐突に始まる、本編と関係がなさそうな、でも一部の音楽は本編と共通する「踊りの時間」。縮小版の「ショー」というべきなのだろうか。髪を撫で付けた男役の燕尾服姿は、宝塚初心者には正直言ってハードルが高い。あれでもし、噂に聞く羽根を背負っていようものなら、ハードルは3倍増しになっていたことだろう。初タカラヅカが大劇場や東京宝塚劇場でなかったのは、案外正解だったかもしれない。
 エンディング直前の、柚希礼音さんが太陽の踊りを舞うシーン。その所作の見事さに思わず涙が流れた…。

 宝塚歌劇を見るのは初めてだ。いつかは見ようと思い続けていたのだが、2つの懸念が二の足を踏ませていた。一度見たらドツボにハマってしまうのではないか。あるいは反対に、独特の空気にまったく馴染めないのではないか。結論としては、正気を保ったまま、非常に楽しむことができた。
 今回のポスターをある宝塚ファンは自らのブログで「ヴィジュアル系バンドの人みたい」と評していた。確かに音楽も、あちこちロックのようだった。ルイ14世とマリーが初めて出会った日、夜に互いを思って歌うデュオがまさにそんな感じで気に入った。ほかに印象深かったのは、ベタではあるが、ラスト近く、ルイ14世がフランソワーズに求婚するシーンの音楽。フランソワーズ役は宝塚サイトによると妃海風さんとのことだが、今日の娘役のなかで歌声が最も素敵に聞こえた。
 ルイ14世の弟、オルレアン公フィリップ(配役表ではムッシュー=紅ゆずるさんのことらしい)の登場シーンでの音楽は、一見チャラいが中毒性のある良曲。
 柚希さんはさすがの存在感。そもそも歌も踊りも他の人の2倍以上の量ではないか。トップともなると、才能も努力も尋常ではないことが、素人目にもうかがえる。

 今のところは正気を保っているのだが、来月2日の終演までにもう一度くらい見に行ってしまうかもしれない。
 たぶんメンバー3人よりファンのほうが思い入れの強い曲。特に古いファン(古くからのファンと人間として古いファンの両方)にその傾向が顕著なようだ。
 4月の金沢での対バンライブでセットリストに加えられた。イントロが流れて間もなく、あ~ちゃんが「宇多丸さんのリクエストです」と紹介すると、会場の古いファンたちは感動に打ち震えた。
 宇多丸さんや掟さんが危機を感じ取ったファーストアルバム=ベスト盤に唯一入った新曲。しかも1曲目。「手を伸ばしてももう届かない」何かに捧げられた曲。2006年11月に宇多丸さんがゲストとして呼ばれたラジオ番組で紹介した曲。
 金沢では、メンバーは楽しそうに、しかし特別の感慨があるふうでもなく、歌い踊っていた。3人は、少なくとも2008年時点では、かなわぬ恋の歌と捉えているようだ。そのほうが素直ではある。若いファンも、過去の歴史にはさほど屈託がないと聞く。
 それでも、古いファンたちはもはや、過剰な感傷を抱かずしてこの曲を聞くことはできない。中田氏が曲に封じ込めた思いは決して語られぬまま、歌い手を通して微妙に屈折しつつも、聞き手の心の中で乱反射し続けることだろう。
 クラウドとクラウドの間を突き抜けてPerfume Planetを聞く。リスナーからのメッセージを紹介するコーナーにメールが1通も届いていないという。
 今からメールを送ったら、次に聞くときに紹介されないだろうか。健気で儚い君たちに、一言声を掛けたかった。
 松本を前回訪れたのは2008年9月。あの年の夏は仕事が珍しく立て込み、疲れ果てて9月下旬に遅い夏休みを温泉宿で過ごした。ピークを外れた時期の平日とあって、どこも観光客はまばらだった。
 今回はさすがに人出が多い。松本城では「天守閣入場90分待ち」の掲示に戦意喪失し、内堀に沿ってぐるりと回って外に出る。それでもお城は十分よく見えたし、藤の花も咲いていた。そもそも天守閣は4年前に見学したのだった。
 お城の近くで蕎麦でも食べようかと思ったが、順番待ちの客があふれている店の次は売り切れで早じまいしている店と、これまた戦意喪失。昼食は後回しにして旧開智学校へ。ここも4年前はガラガラで、窓から差し込む光が美しかったが、今回はなんだか慌ただしい。
 宿は美ヶ原温泉。部屋に案内してくれた仲居さんは着物に「研修中」の札を付けていた。もっと楽な仕事もあるだろうに、若い女の子が人の遊んでいるときに一生懸命働いているのは本当に偉い。
 温泉といえば大浴場。いろいろな意味で人目にさらす肢体ではないので、本当は他人と一緒には入りたくない。だが、平たい顔族の入浴欲は羞恥心に勝る。目標は1泊につき入浴4回だが、今回は夕食時に日本酒を飲みすぎたせいもあって2回で終了。
 朝風呂から戻り、前日の世界卓球・女子準決勝の結果を確認するためテレビをつける(世界卓球を生中継するテレビ東京系列は松本では見られない)。すると、間もなく気象庁の会見中継が始まった。5時18分に起きた地震は東京・千代田区で震度5弱だったという。松本では全然気付かなかった。
 宿を出て穂高駅まで電車で移動。朝から弱い雨が降り始めたため、予定していたレンタサイクルはやめて、周回バスでわさび農場へ。施設内で買い物や飲み食いする観光客がこれまた大勢いたが、それにしても入場無料でよくやっていけるものだと感心する。
 駅に戻り、松本へ引き返す普通電車に乗ると、重そうなリュックを持った登山客が座席を占拠していた。それも中高年者ばかりだ。なんともうらやましい元気さである。もっとも、電車の中では皆さん正体をなくして寝入っていたが。
 松本であずさに乗り換え、新宿に帰る。かつて上野は東北方面からの終着駅だったが、東北新幹線が東京駅まで延びたので、いまや途中駅になってしまった。その点、新宿はいまだ中央本線のターミナルである。ターミナルとターミネーターの語源は同じ。いつの日か松本にI'll be back.
 
 大河ドラマは土曜の再放送を時々見る。ただし、途中から見たり途中で見るのをやめたりで、一話通じて見ることはない。今日もそんな感じだ。
 中谷美紀さんの存在感がすごい。特に、目に涙をためて笑うところ。仁と同様、中谷さんが支えているドラマかも。
Blu-ray「LEVEL3」のブックレットを見た後、長らく仕舞い込んでいたDVD「JPN」のブックレットを見付け出した。こちらもほほえましいショットがいくつもあるのだが、特に手先の美しさという点ではLEVEL3に軍配が上がる気がする。
 Blu-rayを初めて見たとき思わず涙があふれたのは冒頭のEnter the Sphere~Magic of Loveだが、それらの曲のシーンはブックレットでも美しい。LEVEL3の各曲に付けられたダンスは総じて大人の女性らしい身のこなし、とりわけ手や腕のしなやかな動きを印象深く取り入れていることに改めて思いが及ぶ。
 単純に楽曲の好みでいうと、今でもJPN以前(インディーズ期を含む)のほうが素直に耳になじむ。しかし、過去にとどまっていては現在のパフォーマンスの域には決して到達できなかった。Blu-ray「LEVEL3」の美しい映像を見るとき、これまで内心で抵抗感のあった「最新のPerfumeが最高のPerfume」というフレーズがじわりと胸にしみ込んでくる。
 日生劇場には1週間前に行ったばかりだというのに、一昨日(20日)夜にまたもや出掛けた。別キャストのステージも見ておきたかったのである。結論…市村さんは鹿賀さんの10倍元気だった!
 日本が誇るミュージカルスターの歌いっぷりは、ややもするとタモリも納得のあざとさ。しかし、10年を経て10倍ジコチューとなったファントムには、そのあざとさこそ似つかわしい。
 それにしても、この日は昼の公演を3時に終えた後、5時半から夜の追加公演。それでも元気ハツラツで、カーテンコールではスキップしながら舞台袖に引っ込むお茶目ぶりで客席を沸かせた。
 クリスティーヌ役の濱田さんは声がきれい、立ち居振る舞いがチャーミング、そして顔が小さめ(この意味、わかる人にはわかるかと)。
 歌をもっと聞きたかったが、なにしろファントムの無理な願いを聞き入れてステージで1曲だけ歌うという筋書きなので、ソロでの聞かせどころはたった1曲しかないのが残念だ。
 橘さんのラウルは田代さんと比べ、嫌なヤツ感が薄めで哀れさが濃いめな印象。
 メグ役はこの前見たときと同じ笹本さん。オペラ座の怪人のほうのクリスティーヌを演じさせたい女優さんだ。
 マダム・ジリー役の鳳蘭さん(なぜかフルネームで書きたい)は貫録十分の演技だが、私は香寿さんのほうが好み。
 グスタフ役の加藤清史郎くん(なぜかフルネームで書きたい)は演技はもちろん、歌がうまいのに驚く。
 客席はこの前と比べても女性(なぜか女子とは書きたくない)の比率が高く、オペラグラスを持っている人の割合も高め。市村さん人気の表れか。濱田さんをオペラグラスで見ている人も多かったが。
 公演が終わって夜の街へと出る。ミュージカルはマチネよりやはりソワレのほうがいい。ことにファントムを見るときは。