仏教研究の至高の碩学、中村元(なかむらはじめ)東大名誉教授の名著"龍樹"です。
日本の仏教を大乗仏教というのは、学校でまなびましたね。では、大乗仏教の祖はだれかというと、釈迦じゃありません。龍樹です。
龍樹は、ことさら大乗仏教を提唱しようとしたわけではありませんが、部派仏教(小乗仏教)と論争した結果、誕生したのが大乗仏教で、その論点が"空"でした。
現在では、部派仏教を小乗仏教と呼びませんが、まだ教科書では両方を併記しているかもしれませんが。
仏教史のターニング・ポイントだったのが、"空"でした。
般若心経にも、空が何度も繰り返されますが、般若の考え方の中心に、空があるからで、その考え方を短く要約したものが、般若心経です。
この空が、仏教の瞑想法に関係して、釈迦が唱えた禅(パーリ語: jhana) を再理解しようということになりました。
一方で、達磨が少林寺に伝えた禅の瞑想法は、龍樹が唱えた空によるものではなくて、唯識的なアプローチでした。龍樹の空を瞑想の中心にしたのは、天台の中観でした。天台大師が、空を把握する修行法として、仮中空の三観を提唱したのが、日本に空の考え方が持ち込まれるきっかけになります。
この経緯は、すこしややこしいですが、日本の禅宗が、栄西など、比叡山延暦寺から現れることを思い出していただくといいです。
そして、気功の瞑想法ですが、これも天台に準じて、空を把握します。こういう経緯は、日本の禅宗と同じですが、たまたまそうなっています。
中国道教の重要経典でも、"龍樹を忘れるな"と言われています。
日本の禅宗の祖・栄西が中国で学んだ禅宗は、たまたま、中国道教の祖・呂洞寳が生前に出家したと同じ黄龍派でした。
黄龍派は、臨済宗を継承する一派だったので、栄西は臨済宗を名乗ったと考えられます。