本中毒、映画中毒、仕事中毒、そして...恋愛中毒 -108ページ目

滅び行く紙の書物について…

最寄り駅の駅前本屋が閉店した。
日常生活の中で本屋が開店した事はあるが、閉店するのは初めてだったので、かなり意外だった。
今の家に引っ越して25年以上、会社からの帰りにバスを待つ間は、その本屋に入り本を漁る習慣だったので、かなりの冊数の本をそこで買った。
マンガも含め、1000冊近くをその本屋で買ったのではないかと思う。

店長とも顔見知りになっていた。
本屋のオヤジではなく、いかにも店長という少し線の細い感じの上品な男だった。
一ヶ月くらい前に本を買った時に、実は来月に店を閉めるんです。と打ち明けられた。
僕自身が本を沢山買う為、本屋が閉店するという事態を理解できなかったので、怪訝な顔をした。
ネットとかのアマゾンに押されて本屋はもうダメなんです。
怪訝な顔をした僕に、店長は続けた。
ジュンク堂と丸善がくっついたでしょ。
あれは、別々にやっていたらもうダメだから、卸業者がくっつけさせたんです。
はぁ、そうですか。残念ですね。
間抜けの様に僕は答えた。


本当に閉店するのだろうか。
実感がないまま様子を見ていたら、次の週辺りから文具コーナーの文具の安売りが始まった。
本と違って文具は再販制度とかないから、売り切るしかないのだろう。
文具コーナーの棚は2週間程の内にみるみる歯抜けだらけになって行った。
僕も修正テープの詰め替えカートリッジを買い溜めしておこうと思ったら、もう売り切れていた。


最終日くらいは顔を出して店長に挨拶しようと思っていたのだが、何日か終電で帰る様な忙しい日が続き、気がついたら閉店日を過ぎていた。
店にはシャッターが降りて、閉店を伝える旨の挨拶の紙が貼ってあった。
最寄りの本屋を失った感覚と、もうあの店長には会えないのだな。と、妙な二重の喪失感。

この本屋で最後に買った本は何だろう、ふと考える。
美脚の女王・奈々緒のグラビアに誘われて買った、フライデーだと想い至る。
この10年で唯一買った写真週刊誌。
もの凄く僕らしくない。
やれやれ、なんと俗っぽい思い出になってしまった。
きっと20年後くらいに、ジジイになった僕は、この本屋と奈々緒を一組の連想記憶として思い出すのだろう。
ちょうど現在の僕が、殆どの人が覚えていないけど、好きだった小野真弓とかジャネット八田の事を、何かの拍子で思い出す様に…

■書評 斎木伸生『タンクバトル』 光人社NF文庫

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中島知久平は飛行機だったが、飛行機と並んで男の子の人気を三分するのは、戦車と軍艦である。

本書はその一方の雄、戦車戦の平易な歴史書。
月刊誌『丸』の連載に加筆修正をしてまとめたモノ。
タイトルが『タンクバトル』なので、戦争反対とか平和とかそういう人道的な視点は全く出てこない。
第二次世界大戦のドイツ軍の戦い主に、戦車の戦争/戦闘を時系列に記述している。
単行本では既に5巻まである様だが、文庫はまだ2巻まで。
まだ2巻なので、記述は1942年時点まで。


ヨーロッパや北アフリカに於ける陸戦の記述を読んでいると、いつまでもグダグダと戦争している感じがする。
政治的な要因・補給の不足etcで、互いに決定的な打撃を相手に与えられない膠着状態が続いたから仕方ないのだが…
とかく僕らが想起する海戦や航空戦主体での決戦主義に偏りがちな戦争と、実際のヨーロッパでの戦争は、かなり概念が違う感じがする。
僕は勉強不足で知らないのだが、もしかしたら中国大陸での日本軍の戦争が同じ様なモノなのかしら…

<脱線・追記>
偶然にも2巻には、現在ロシアとウクライナの間で紛争となっているクリミア半島の話が出てくる。
地政学的には、クリミア半島はややこしい問題を抱えやすい構造になっていると、この本を読みながら感じてしまった。

■書評 岩瀬達哉『血族の王 松下幸之助とナショナルの世紀』 新潮文庫2014/2/1

血族の王: 松下幸之助とナショナルの世紀 (新潮文庫)/岩瀬 達哉
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期末の忙しさにかまけて、ブログの記事を長く書けないでいた。
貧乏暇無しなのである。


さて、戦前の産業界の巨人、中島知久平の伝記を読んだからと言うわけではないが…
戦後の産業界の巨人、松下幸之助に関するノンフィクションを読む。


一般に語られる松下幸之助の数々のエピソードは、彼の神話を補強するためにかなり偏向し演出されているが、この本はそういう演出とは距離をとり、等身大の松下幸之助を語ろうとしている姿勢が面白い。
起業間もない頃の先輩起業家との確執、戦前戦後の財閥指定や組合設立のダークな部分、中国を巡る密輸と諜報活動、今だったら独禁法違反に抵触する熱海会談、そしてお妾さんとその家族の話題…


おそらく世間一般に喧伝されている松下幸之助神話と、この本に書かれている内容のギャップに読者は少し戸惑うだろう。
しかし、不思議と松下幸之助に対する悪い感情は湧かない。
逆に松下幸之助の真摯さと弱さ・愚かさ、そして血のにじむ様な努力をこの本の中に見出す。
伝説に彩られた松下幸之助像よりも、この本で語られる松下幸之助の方が、僕は好きだ。