路地裏の骨董カフェ -4ページ目

路地裏の骨董カフェ

アートとふるもの好きが嵩じて、明治、大正、昭和初期のインテリアや雑貨を取り扱う古物商を始めました。また、古時計や蓄音機などを中心に修理・調整をしています。
引き続き情報交換をお願い致します。


昭和初期頃の明治時計のレストアの続きです。
この時計は、扉の割れの補修と、機械のオーバーホールは終えたのですが、文字板の劣化が著しいので、新しくスキャンデータから新しい文字盤を作成することにしました。

もう少し白ければ、そのまま使うのですが、日焼けと汚れで、濃い茶色になっているので、ここは交換としました。

スキャンしたてのデータは、色んな汚れや影も拾いますので、極力少ない状態でスキャンして、ペイントで補正して作成しています。


インクジェットのままでは滲みますので、原板を一旦コンビニ等のコピー機で複写したものを使い、色褪せ加工して使っています。


真鍮枠に収めて文字盤の完成です。
箱に元の様に取り付けて、一通りの作業は終わりました。
ほんのり色褪せ加工をしないと、漂白した白がきつくて古い時計と違和感が出てしまいます。





扉の木の手彫りの飾りがなんともレトロ感を感じさせる時計です。
備品のラベルが箱に残っていて、郵政弘済会の納品の様です。キ197号用時計とありますので、どこかの郵便局で使われていたのではないかと思いますが、詳細は不明です。

こちらの掛時計も、また元気に時を刻みはじめました。近日中にショップの方に上げようと思います。

少し時間差でオーバーホールを始めたのは、以前に入手した精工舎のトーマス型の丸時計です。丸時計は、根強い人気があって、お好きな方も多いようです。
背中に箱を付けた形がグレシャム 型で、箱全体が丸いのがトーマス型です。


原因は分かりませんが、文字盤の白抜けした部分が見苦しくて気になります。

まずは、機械のオーバーホールからです。
幸い左右のゼンマイ切れはありませんでしたので、ゼンマイの力を解放させたら、清掃、油引きしました。ホゾも詰めて、調整しました。


時代の特定に自信がありませんが、戦後の昭和30年頃の時計で、比較的に丸時計としては新しいのではないかと思います。
この時計の場合は、箱に収めて時間の追い込みをしました。



次は、懸案の文字盤ですが、A3より大きいので、パソコンでスキャンできません。
コピー専門店で、A2サイズでコピーしたものを、修正液とペンで手作業で補正をして、再度A2の大きさにコピーして交換の文字板を作成しました。

こちらも色褪せの加工をして、ブリキの板に貼り付けています。


穴あけして、ハトメをつけてネジ止めをしましたが、ここで問題発生。錆で劣化したネジが半分の位置で折れて穴に残ってしまいました。トホホです。リューターで穴のネジを砕いて除く作業に思いのほか時間がかかりました。


こちらも文字盤を交換して、元の状態になんとか戻りました。精度の方もおよそ日差2分以内に追い込めたのではないかと思います。


ようやく出口が見えると、並んだ時計を見ながら安堵しています。慣らしで動かしながら様子を見ることにして、こちらも問題がでなければ近日中にショップの方に上げたいと思います。

こんな感じで、作業が遅いので、どんどんという訳にはいきませんが、時間をかけながら一台一台仕上げています。

昭和初期の頃の製造と思われる、宮型の掛時計を入手しました。上の写真はレストア後の写真です。
トレードマークは、菱形にTとOが重なっているように見えます。
菱形にTOは、武田時計が使っていたようですが、このマークは使われた形跡がなく、記録に出てこないマークで詳細は分かりません。


入手時の状態は、時打ち側の2番車のピンが抜けており、ゼンマイを巻いても、直ぐに開放してしまう状態です。
また、頭飾りや扉側の膠が外れて、ばらける状態ですし、蝶番が錆で劣化して折れています。
まずは、木材の部品を元のように膠で接着して修復しました。同時にガラスも外して全て洗浄しました。



このほか、文字盤を固定する杉板も釘留めの箇所で割れており、修理を途中で諦めた形跡があります。
錆びた蝶番は全て交換しました。
汚れを落として、チークオイルでメンテナンスしました。箱本来の美しさが戻ってきました。


次は、機械のオーバーホールです。
まずは、ゼンマイを開放させて、汚れや錆を落とした後に、オイルを塗布しました。


次は、分解して洗浄です。
ブラシで汚れた油と塵や埃を落としました。



ここで、懸案の2番車のピンの修復をしました。

部品取りの歯車からピンを抜いて、こちらに移植しました。抜けないように穴を潰して、思いのほか時間がかかりました。


仮組みをして、要領よくホゾに歯車を収めて組み上げました。アルミの地板は固く、ホゾの広がりが殆ど無く、詰めの作業は不要と判断しました。
まだ、アルミが新しい素材で珍しい頃、戦争の金属統制が始まる前後に作られた時計と思われます。


しばらく稼動の様子をチェックしましたが、問題はないようですので、箱に入れて再度稼動のチェックをしました。


更に時間の調整で、日差2分以内に追い込んで、文字盤を取り付けました。
他の修理もあって、凡そ1か月と結構ここまで時間はかかりましたが、ようやく完成しました。
完成で、時計がキリッとなるところが心地いいですね。


少し遅れて、取り掛かったのが、こちらも昭和初期の小ぶりな明治時計です。補修後の写真ですが、木彫の装飾と木目の美しい時計です。


しかし、この小ぶりな時計は、扉が割れやすく、亀裂があるものが多い印象があります。木が縮んでできた亀裂は、埋めるしか無く、補修剤で傷隠しをしています。

完全に消すのは難しく目立たないようにするのが精一杯です。
一方、機械は、オーバーホールして組み上げました。こちらは、状態は良いようです。ホゾも詰めて調整しました。




この時計は、紙の文字板が日焼けで色が黄変して劣化が著しく、交換する必要があります。
このため、スキャンデータから、現在、文字板を作成中です。
明日以降、文字板を交換した上で、精度に問題がなければ箱に入れたいと思っています。
完成しましたら、またアップしますね。


11月も半ば、戸外は紅葉が🍁どんどん進んでいますが、時計の修理の日々を送っています。
最初は、思い出の目覚まし時計なので、なんとか修復をとご依頼のあった、昭和20年〜30年頃の精工舎の目覚まし時計です。
この当時の文字板は、塗装が剥離して細かい亀裂が入りやすいですネ。亀裂が広がる前でしたら、表面保護剤で落ち着かせてそのまま使えるんですが、ここまで亀裂が入ると文字板を生かして使うのは難しいです。
戦前の目覚まし時計でしたら紙文字板でも違和感がないのですが、戦後の時計はやはり塗装がスタンダードですので、今回は新たにジャンクから部品を転用する事にしました。運良くネットでジャンク部品を入手する事ができました。

全く同じ数字ではありませんが、作られた年代がほぼ一緒なので、仕上がりに違和感が少ないと思います。
機械は、オーバーホールする事として分解しました。


ブラシでゴシゴシ丁寧に汚れを落としました。
何度もメンテナンスをしてきた時計のようですので、機械の状態は比較的いい方です。
分解してみると、更に不具合がありました。
目安針を動かす棒がつまみの根元で折れています。更につまみもありません。
こちらも入手したジャンクから転用できました。
下の方が折れた部品です。


洗浄が終わったら、乾燥したら組み上げです。

さらに、テンプの振りに元気がありませんので、芯を研磨しました。



文字板をつけて、目覚まし時計のベルの鳴る設定を調整しました。
全体を組み立てたら完成です。



つまみも、幸い合う部品がありましたので、不具合は全て解消されました。
現在機械やベルの状態や精度の調整をしていますが、日差2分以内に追い込めそうですので、完成も間近です。

次は、昭和初期頃の精工舎ビー目覚ましのベルの修理です。アンソニアの小型目覚まし時計をミツバチと同じBEEと言う名前で売ったところから、ビー目覚ましと呼ばれるようになったそうです。


不具合は、星の形をした、ベルを鳴らす歯車部品のザラガンギ車の真が折れたようで、他のジャンクから部品を調達して、新しい部品と交換しました。


また、ベル用のゼンマイもありませんし、ベルを叩く撞木もありませんので、撞木は裏ビー目覚ましの部品を転用して作る事にしました。


左が純正部品ですが、右が裏ビー目覚ましの撞木を加工したものです。ちなみに、裏蓋をベルとして叩く小型の目覚まし時計を裏ビーと呼びます。





こちらも、精度の追い込みの調整をして、もう少しで完成といったところです。
ビー目覚まし時計も、時代によってデザインが少しずつ違うのですが、これは後期の形のようです。
ご依頼の時計の修理もなんとかお渡しできる一歩手前まで来ました。もう少し様子を見たいと思います。



めっきり気温も下がり、朝晩は冷え込んできました。秋の紅葉もじわじわと進んでいるようです。

ようやく、赤菱製の出テンプ式の丸グレシャム 時計とオール社の手回しミシンもメンテナンスが終わり、Shopの方にあげました。




日曜日には、ご依頼のあった、別の精工舎の丸時計とドイツ製の回転振り子時計も修理・調整が終わり無事納めてひと段落しました。


その合間も以前からの続きで、細かな修理を続けています。

まずは、デザインがお気に入りのフランスDEP社のちっこい目覚まし時計ですが、時間のゼンマイを巻くつまみが欠損で、あり合わせのつまみで代用していました。




多分、ネジのシャフトが途中で折れてそのままの形跡があります。代用の丸のつまみでは、力が入らず上手く巻けません。

径の合うつまみの両側に窪みの穴を開けて、真鍮の輪を噛ませて、ネジ巻き用のつまみを加工しました。


ところが、折れたシャフトのネジ山が少なくて、巻く力に負けて滑ってしまいます。

小型のタップとダイスのねじ切りを新たに入手しました。


小型のダイスで、深めのネジ山を新たに切りました。これで、ようやく、ゼンマイが滑らずに巻けるようになりました。



時間はかかり苦労はしましたが、漸くDEPのアンティーク時計もなんとか復活しました。
デザインが素敵なだけに一安心です。

さらに、上の時計と同じ頃の携帯目覚まし時計と思われますが、こちらもメンテナンスをしました。

文字板にフランス製とあり、メーカーは不詳ですが、似た形でバヤール製を思わせますが、詳細は分かりません。


こちらは、オーバーホールはせずに、機械を洗浄後にテンプの真を研磨し、調整しました。



ただ、長針の蛍光塗料が欠損していますので、蓄光パウダーで補修して戻しました。



外側の塗装の剥げが課題で気になりますが、これはこれで味としてそのままとしています。

この他、同じくフランス製のDEPの目覚まし時計も入手したのでこちらも修理をしています。
ベークライト製の1940年頃の製造と思われますが、アール・デコスタイルの時計です。



ヒゲゼンマイが切れた状態で、時間が全く合っていません。テンプを調整したのちヒゲを交換したのですが、長すぎて大幅に遅れます。

赤菱時計のヒゲの微妙な調整で時間を要したので、次に直ぐとはいかずにちょっと一休みしています。

こんな感じで、他の時計の修理の合間を縫って、フランス製の可愛い時計も修理・調整していますが、一台一台慌てずゆっくり…。

この他、精工舎の目覚まし時計の修理のご依頼もありましたが、文字板の塗装劣化で使えない状態です。文字盤を入手する事にして、到着待ちの状況ですので、続きはまた次回にご報告しますね。



久しぶりのブログ更新となりました。
いろんな時計の修理に手こずって、なかなか公開まで辿りつかずに、2週間はあっという間に過ぎてしまいました。
まずは、上の写真の、丸型の掛時計をオーバーホールしました。裏には、赤菱式改良掛時計とありますし、愛知県時計組合のシールがあります。
さらに、時計修理の保証書が貼ってあり、大正14年とありますので、大正中期から末期にかけて名古屋で製造された時計と分かります。

駒の様に回るテンプが文字盤と一緒に見えるデザインが、なかなか趣があります。
普通の振り子時計と違って、どんなに時計が傾いても時計が止まらないのが、テンプ式の時計の特徴ですネ。
明治時代は、船時計がテンプ式時計で、海の揺れでも時計を刻む様に作られていました。
テンプ式は、その後に小型化して、目覚し時計や懐中時計を経て、腕時計へと進化していきました。
説明書にあるように、揺れや振動のある場所で使えるとあります。



まずは、テンプを慎重に外したのちに、ゼンマイを開放させて、分解しました。ゼンマイは、清掃して油引きをしています。


部品は、ブラシで清掃した後組み上げました。
構造は、とても振り子時計に似ていますが、風見鶏の様な形をした、クランクがテンプ式の特徴です。これで、駒の形のテンプを左右に弾いて、振り子のような一定の間隔を作っています。


組み上げて、時間の精度の追い込みに入りますが、この時計は、修理の途中でお手上げで止めた感じが見受けられます。入手時にテンプがグラグラで、ヒゲゼンマイも形がいびつになっていました。

いつものように、形を整えて元に戻しましたが、時間が全然合っていません。精度を追い込みかけたのですが、上下に形が崩れたヒゲは、回転もいびつで、殆どいい時間になりかけていたのですが、このままでは、ベストな状態とは言えませんんので、新しいヒゲに交換する事にしました。



テンプの天真も研磨して、振りに元気が戻ってきました。
ただ、新しいヒゲの、時間の追い込みに手こずって、程よい位置を見つけるのに、微妙な調整を繰り返して、ようやく、日差2分以内をクリアしました。実際は、もっといい精度が出ています。
時間調整に時間はかかりましたが、いい感じに仕上がりました。


次は、ご依頼のあった、別の丸時計の修理ですが、症状は、こはぜのバネが欠損しており、新しいバネを取り付けて修理は完了しました。
しかし、同じ方から依頼された回転振り子時計の修理が、思いのほか苦戦して、精度を上げるのに苦労しました。もう少しで追い込めるのではないかというところまで、来ています。


さらに、精工舎の昭和30年代頃の掛時計もご依頼を頂いて、オーバーホールをしました。




ボン打ち側に不具合があって、時々時を一つ多く打つ異常が出ます。こちらも原因を修正しました。
あとは、箱の劣化です。タバコの汚れた思ったのですが、どうもシェラックニスが劣化してまばらに剥がれて、痛々しい状況です。
こちらも、軽くヤスリがけし、シェラックを再塗装して、凸凹のない状態にしています。


塗装を全て剥いで、再塗装の選択肢もありましたが、古びた風合いは残しながら、軽く塗装する程度にとどめました。
こんな感じで、同時並行で時計の修理をしている状況ですが、ようやく、なんとか出口が見えてきたところです。