路地裏の骨董カフェ -5ページ目

路地裏の骨董カフェ

アートとふるもの好きが嵩じて、明治、大正、昭和初期のインテリアや雑貨を取り扱う古物商を始めました。また、古時計や蓄音機などを中心に修理・調整をしています。
引き続き情報交換をお願い致します。


大正期の精工舎角形オルゴール目覚まし時計をオーバーホールしました。
この角形のキャリッジ型の目覚まし時計は、ドイツのユンハンスなどのモデルに倣って国産したもので、明治35年から関東大震災の大正12年までの間に作られました。3種類あって、ベルの目覚ましが3円70銭 時打ちが4円10銭 オルゴールが5円80銭と、オルゴールが一番高いお値段でした。

状態は、両方のゼンマイが切れていませんが、巻いてもテンプは動かず、オルゴールも、定時になっても動きません。

古い時計ですので、最後の手入れされて随分時間もたっているようです。オーバーホールする事にしました。

この時計は、底から始めます。
木製の裏蓋を外すとオルゴールが見えます。
清掃後の写真ですが、オルゴールの櫛は折れやすいので、洗浄液で軽く汚れを落とす程度に留めています。


音階をスイスに送って、ムーブメントを輸入したもので、当時は、オルゴールの櫛を加工する技術がなく、戦前の精工舎のオルゴール時計はスイス製のものが使われているそうです。


ニッケルの地板も綺麗で、部品に錆はあるものの、状態はまずまずです。部品はサビ落としした後、洗浄液でブラシ洗いして乾燥させました。

ホゾの広がりは、ポンスで詰めて調整。磨いています。



オルゴールの動きを一番左右する風切り車の調整をします。蓄音機のガバナー部分に似ていますね。抵抗なく回るように位置を加減しました。

次にテンプのメンテナンスです。
外したヒゲゼンマイは、バネが同心円になっていません。ピンセットで同心円を描くように調整。


さらに、独楽のように回転するテンプの芯を研磨しました。精度に影響する大事な部分です。


回転のチェックで、重い箇所のテンワを削って回転のムラをなくしました。部品が大きいので、作業はしやすいですネ。




若干テンワの曲がりが気になりますが、いい感じの振り角がでました。
ただ、時計をいろんな角度に傾けてテンプの動きを確認した時に、特定の角度でクランクが外れる不具合が出ました。前に修理では、一番振りが元気なところに調整していますが、このままにできませんので、どの角度でもテンプが動くように再調整しました。
この不具合の解消に一番手間を取りました。

次に、日焼けで劣化した文字盤は、紙が掠れて抵抗が高くなっていますし、壊れやすいため、スキャンデータから起こした紙文字板に交換しました。

右は随分白く見えますが、薄っすらと色褪せ加工をしています。

このほか、裏蓋の止め金具がグラグラする不具合があって、ハンダで埋めて修理しました。


元のように組み上げて完成です。
文字盤新調でキリッとなりました。
文字板と針とニッケルや真鍮の外側のバランスが大切で、動きに支障が出ないように組むのがポイントのようです。



オルゴールの曲は、明治期に流行った俗謡の「梅ヶ枝節」です。



ちなみに、梅が枝節の歌詞は、こんな感じです。

原歌 - 梅が枝の、手水鉢、叩いてお金が出るならば、もしもお金が出た時は、その時ゃ身請けを、そうれたのむ

替え歌 - この頃の、米相場、あたって儲になるならば、もしも儲になるならば、その時ゃ芸者衆を、そうれたのむ

オルゴールは、そうれたのむ ヨイヨイ の合いの手まで入っています。
この時計が、長い間どこにあったかは、不明ですが、金運など縁起のいい曲ですので、商家の枕元に置いてあったのでしょうか。
今の時代にしっかり残っている事が素晴らしいですネ。

テンプの元気も良く、ゼンマイを巻いて2日以上の稼働を確認しました。精度も日差2分以内をクリアしましたので、Shopにあげました。

ご興味のある方は、ぜひご覧ください。








こちらは、昭和初期のレジ、日本金銭整理器です。当時のレジは、金銭の計算機能はなく、売り上げをメモして入金するタイプでした。
そこに登場したのが、上の硬貨投入口にお金を入れると、下の引き出しに自動で分類してくれる金銭整理器です。
硬貨の重さの違いで、転がる長さが違う事を応用した商品なんですが、お釣りが出しやすく、売り上げの計算がしやすい事で、硬貨を良く使う食堂などのお店で使われていたと思われます。


以前入手した時に、突板の剥げて傷んだ部分を、赤漆のカシューで薄く補色してそのままになっていました。


マークを見ると、専売特許の番号と昭和7年5月の文字が見えますので、製造も昭和初期と分かります。


調べるとダイヤル鍵が機能していませんし、硬貨が転がらずに、奥に落ちる不具合があるようです。分解して、修理する事にしました。


同じような、金銭整理器をメンテナンスしていたので、要領は同じです。
内側には積年の塵や埃が溜まっていて、掃除機で綺麗に清掃しました。


鍵は、バネの先が折れて引っかからなくなっていましたので、先を延ばして掛けてロックが掛かるようにしました。あとは、左右の回転でダイヤル鍵の開くタイミングを確認して、メモしました。

忘れると開かなくなるので、リスキーではありますが、壊れた部分を元に戻さずそのままは忍びないので、復元する事にしました。


残る課題の、硬貨がうまく転がらずに、奥に落ちてしまう不具合は、ハンダ付けの痕があったので、合点がいきました。
転落防止の保護板が欠落していたようです。
ブリキ板をカットして、保護板をハンダ付けして修理完了です。



うまく、奥に落ちる事なく、分類できるようになりました。ただ、厳密には、100円玉と5円玉は同じ場所に落ちるようです。
さらに、500円玉は、大きすぎて、投入口からは入りませんので、実用で使うには不向きかも知れません。
頭には、金属の透かし飾りがあるものが多いのですが、これは入手当初からありません。



こちらの金銭整理器も、ずっと懸案のままだったのですが、ようやく整備が完了しました。
昭和レトロな雰囲気は、インテリアとしても存在感がありますね。

こちらは、さっそくShopの方にアップしました。
興味のある方はご覧下さい。










懸案のコロムビアポータブル蓄音機no.204のサウンドボックスをメンテナンスしました。
No15のサウンドボックスは、裏の赤ゴムの方のマイナスネジを回して分解しようとして、無理に開けてゴムの緩衝材を壊してしまうケースがとても多いです。そこは分解ではまず触りません。

今回は、裏側は問題ありませんが、振動盤を押さえるゴムの輪が硬化して、音が悪くなっています。分解して交換する事にしました。

振動盤は裏からトンボにビス留めされていますので、まずは、保護の塗料を剥がし液で落として、慎重にビスを外して、次に表のトンボを固定した左右のネジを緩めて、中のベヤリングを無くさないように、取り出して、トンボを外しました。その後に、表のマイナスネジを緩めて、カバーを外しました。
ここから、振動盤を傷つけないように、固着を溶かしながら硬化したゴムを外しました。焦ると振動盤を破ってしまうので、要注意。


振動盤が外れたら、全部の部品を洗って、洗浄しました。錆びた箇所は、落としてメンテナンス。


ゴムの交換は、企業秘密の虫ゴムを輪にして納めています。(笑) 徳用の虫ゴムは、色んな種類がありますが、聴き比べても大差はないと思います。


振動盤の中央がずれないように、元に戻しました。


あとは、洗ったベアリングをグリスに並べて、トンボのビス留めです。
両側を締める前に、裏からトンボ押さえの小さなビスを先に留めて、音を出しながら、締め加減を調整しました。
程よい加減はいつも難しいですネ。
調整が完了したら、ビスの保護の接着剤を盛って終わりです。


あとは、経年劣化で箱の角のカバー紙が外れて口が開いていますので、補修しました。
これは、普通に襖貼り用のデンプン糊を使っています。


メンテナンス完了です。グレンミラーの茶色の小瓶を掛けてみました。


YouTubeのリンクはこちらから、ご覧ください。


これで漸く、5月から懸案だった蓄音機も修理が完了しました。

あとは、頭丸の8日巻きの置き時計を入手しましたので、こちらもメンテナンスをしました。


昭和初期頃の東京時計製で、アンチモニー合金の鹿のレリーフが美しい時計です。8日巻きで、音で知らせる機能はありません。
アンチモニーの工芸品は、東京都の伝統工芸でサビのない、燻し銀の枠は時代を経ても色褪せない落ち着いた雰囲気が良いと思います。
アール・デコ様式のモダンなデザインがいつもながら私の好みなんです。


こちらは、全分解しましたが、力の解放に気を使いました。
テンプの芯を研磨し、回転のバランスを調整して戻しています。



こちらは、大正末から昭和初期の頭丸の精工舎の8日巻きの置き時計です。木製の風格あるデザインです。機械の動きはいいようですので、簡易洗浄した後に、テンプの芯を研磨し、同様に回転の調整をした後に戻しています。



両方ともに、精度は日差2分以内に収まっています。実質はもっといい精度が出ています。
1日巻きの目覚まし時計より精度が上の印象があります。いい感じに復活してくれました。

まだまだ、別に時計も修理途中ですが、また次にご報告しますネ。

すっかり秋の気候に移って来ました。
ブログの更新も少し空いてしまいました。
9月は連休があるので、ちまちました修理の積み残しを中心に片付けようと、今月のテーマにしていましたので、小ネタばかりです。

まずは、アンソニアの水銀振り子の置時計から、ゼンマイ切れを一度修理して、しばらく動いていたのですが、繋いだ箇所が外れて、止まったままでお蔵入り。
全て分解して、一からやり直しです。

オスメスの加工だったのですが、巻きのトルクに負けたようです。接合の加工が甘かったようで、抜けています。
内側ですので、やはり芯に巻きつける加工が正解でした。ゼンマイを焼き鈍して、芯を掛ける穴あけ加工をしました。


再び、香箱に戻して、再び組み立てです。
この時計は、琺瑯文字板にクラックがあって、完品とは言い難いものですが、時間をかけて修理した愛着のある時計です。
今のところ、2週間近く様子を見ていますが、いい感じで動いています。


次は、フランス製の小さなDEP社製の目覚まし時計です。横長の文字板が斬新なデザインですネ。
このスタイルは、1930年代頃と思われます。


完成後の写真ですが、オーバーホールして、稼働は問題ないのですが、足が一本足りません。あり合わせのビスでこれまで代用していましたが、こちらも、この機会に真鍮から作る事に。


手前の足の方が、リューターで削り出したものです。若干輝きがまだ綺麗です。
これでガタつきはなくなりました。

ただ、入手時にゼンマイを巻く部品が既に無かったので、別のネジをつけていますが、丸い形で巻きづらい。
今後、どう加工するか思案中です。とりあえずこのまま保留に。


次は、5月に一度分解清掃して組みあげた蓄音機です。コロムビア No.204ですが、完成後に、ゼンマイのエンドが滑る不具合がある事が分かり、一旦お蔵入りにしてたもの。
ようやくジャンクの香箱入りゼンマイが入手できたので、こちらも再度分解して、交換する事にしました。

機械自体は、一度洗浄注油済ですので、綺麗です。


香箱ごと、交換です。交換部品の方も、分解して洗浄、注油しました。


交換して、再度組み上げると、ガバナー位置を回転しやすく、異音の出ない位置に調整しました。


こちらの蓄音機もようやく、完成が近づいてきました。とは言え、サウンドボックスのメンテナンスがまだですので、あと少しといったところです。


サウンドボックスのメンテナンスが終わりましたら、実際の音出しの動画をアップしたいと思います。

このほか、置時計などのオーバーホール同時並行でやっていまが、ご紹介は、次回に。








1940年代頃の製造と思われる、レミントンランドのタイプライターをメンテナンスしました。
実は、5月の長い連休の時期に、一度メンテナンスを始めたんですが、文字打ちの調整がきっちりいかずに、そのままになっていました。
秋が近づくと、不思議に積み残しの修理を年末までに片付けたい思いに駆られて、再度調整に入りました。

このタイプライターは、部隊の所属ナンバーなどがマークしてあって、軍用で使われた形跡があります。払い下げを受けた方が放出したか、戦後輸入されたか、経緯は不明ですが、時代の生き証人みたいな感じがします。


前後左右、保護用のカバーを外して、汚れや埃を綺麗にとりました。再度、稼働箇所に注油して、動きを見ました。
文字打ちで、普通は一文字分キャリッジが動くんですが、強くタイプすると、二文字分動くんです。カムの引っ掛かりが甘く、抜けた時に二文字動くようです。


裏のこの部分が心臓部です。文字送りの歯車が一文字ずつ引っかかる部分ですが、ネジの調整が沢山あり、微妙なバランスで動いていますので、微調整しながら様子を見ます。
なかなか、歯車の滑りが解消されません。
どうも、稼働に遊びがあるため、振動が大きいと二文字進む事が分かりました。


緩んだネジを再度点検しながら、漸く影響のあった箇所の遊びを減らすと、うまく一文字送りするようになりました。
リボンが劣化で脆くなっていますが、なんとか打てました。

再び組み上げて、メンテナンス終了としました。
5月の時点で、諦めかけていたんですが、他のタイプライターのメンテナンスで、色々とヒントを得て、調整箇所を絞れたのが良かったと思います。
実際に使われて、傷も沢山ありますが、稼働する骨董品のレベルに戻せたのではないかと思います。
急がば回れのように、慌てずゆっくり取り組むと、いい結果が出るケースとなりました。