大正期の精工舎角形オルゴール目覚まし時計をオーバーホールしました。
この角形のキャリッジ型の目覚まし時計は、ドイツのユンハンスなどのモデルに倣って国産したもので、明治35年から関東大震災の大正12年までの間に作られました。3種類あって、ベルの目覚ましが3円70銭 時打ちが4円10銭 オルゴールが5円80銭と、オルゴールが一番高いお値段でした。
状態は、両方のゼンマイが切れていませんが、巻いてもテンプは動かず、オルゴールも、定時になっても動きません。
古い時計ですので、最後の手入れされて随分時間もたっているようです。オーバーホールする事にしました。
この時計は、底から始めます。
木製の裏蓋を外すとオルゴールが見えます。
清掃後の写真ですが、オルゴールの櫛は折れやすいので、洗浄液で軽く汚れを落とす程度に留めています。
ホゾの広がりは、ポンスで詰めて調整。磨いています。
次にテンプのメンテナンスです。
外したヒゲゼンマイは、バネが同心円になっていません。ピンセットで同心円を描くように調整。
若干テンワの曲がりが気になりますが、いい感じの振り角がでました。
ただ、時計をいろんな角度に傾けてテンプの動きを確認した時に、特定の角度でクランクが外れる不具合が出ました。前に修理では、一番振りが元気なところに調整していますが、このままにできませんので、どの角度でもテンプが動くように再調整しました。
この不具合の解消に一番手間を取りました。
次に、日焼けで劣化した文字盤は、紙が掠れて抵抗が高くなっていますし、壊れやすいため、スキャンデータから起こした紙文字板に交換しました。
このほか、裏蓋の止め金具がグラグラする不具合があって、ハンダで埋めて修理しました。
文字盤新調でキリッとなりました。
文字板と針とニッケルや真鍮の外側のバランスが大切で、動きに支障が出ないように組むのがポイントのようです。
ちなみに、梅が枝節の歌詞は、こんな感じです。
原歌 - 梅が枝の、手水鉢、叩いてお金が出るならば、もしもお金が出た時は、その時ゃ身請けを、そうれたのむ
替え歌 - この頃の、米相場、あたって儲になるならば、もしも儲になるならば、その時ゃ芸者衆を、そうれたのむ
オルゴールは、そうれたのむ ヨイヨイ の合いの手まで入っています。
この時計が、長い間どこにあったかは、不明ですが、金運など縁起のいい曲ですので、商家の枕元に置いてあったのでしょうか。
今の時代にしっかり残っている事が素晴らしいですネ。
テンプの元気も良く、ゼンマイを巻いて2日以上の稼働を確認しました。精度も日差2分以内をクリアしましたので、Shopにあげました。
ご興味のある方は、ぜひご覧ください。