昭和初期の掛時計のレストアをしています | 路地裏の骨董カフェ

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アートとふるもの好きが嵩じて、明治、大正、昭和初期のインテリアや雑貨を取り扱う古物商を始めました。また、古時計や蓄音機などを中心に修理・調整をしています。
引き続き情報交換をお願い致します。

昭和初期の頃の製造と思われる、宮型の掛時計を入手しました。上の写真はレストア後の写真です。
トレードマークは、菱形にTとOが重なっているように見えます。
菱形にTOは、武田時計が使っていたようですが、このマークは使われた形跡がなく、記録に出てこないマークで詳細は分かりません。


入手時の状態は、時打ち側の2番車のピンが抜けており、ゼンマイを巻いても、直ぐに開放してしまう状態です。
また、頭飾りや扉側の膠が外れて、ばらける状態ですし、蝶番が錆で劣化して折れています。
まずは、木材の部品を元のように膠で接着して修復しました。同時にガラスも外して全て洗浄しました。



このほか、文字盤を固定する杉板も釘留めの箇所で割れており、修理を途中で諦めた形跡があります。
錆びた蝶番は全て交換しました。
汚れを落として、チークオイルでメンテナンスしました。箱本来の美しさが戻ってきました。


次は、機械のオーバーホールです。
まずは、ゼンマイを開放させて、汚れや錆を落とした後に、オイルを塗布しました。


次は、分解して洗浄です。
ブラシで汚れた油と塵や埃を落としました。



ここで、懸案の2番車のピンの修復をしました。

部品取りの歯車からピンを抜いて、こちらに移植しました。抜けないように穴を潰して、思いのほか時間がかかりました。


仮組みをして、要領よくホゾに歯車を収めて組み上げました。アルミの地板は固く、ホゾの広がりが殆ど無く、詰めの作業は不要と判断しました。
まだ、アルミが新しい素材で珍しい頃、戦争の金属統制が始まる前後に作られた時計と思われます。


しばらく稼動の様子をチェックしましたが、問題はないようですので、箱に入れて再度稼動のチェックをしました。


更に時間の調整で、日差2分以内に追い込んで、文字盤を取り付けました。
他の修理もあって、凡そ1か月と結構ここまで時間はかかりましたが、ようやく完成しました。
完成で、時計がキリッとなるところが心地いいですね。


少し遅れて、取り掛かったのが、こちらも昭和初期の小ぶりな明治時計です。補修後の写真ですが、木彫の装飾と木目の美しい時計です。


しかし、この小ぶりな時計は、扉が割れやすく、亀裂があるものが多い印象があります。木が縮んでできた亀裂は、埋めるしか無く、補修剤で傷隠しをしています。

完全に消すのは難しく目立たないようにするのが精一杯です。
一方、機械は、オーバーホールして組み上げました。こちらは、状態は良いようです。ホゾも詰めて調整しました。




この時計は、紙の文字板が日焼けで色が黄変して劣化が著しく、交換する必要があります。
このため、スキャンデータから、現在、文字板を作成中です。
明日以降、文字板を交換した上で、精度に問題がなければ箱に入れたいと思っています。
完成しましたら、またアップしますね。