『レッド・ファミリー』 | やりすぎ限界映画入門

やりすぎ限界映画入門

ダイナマイト・ボンバー・ギャル @ パスタ功次郎

■「やりすぎ限界映画工房」
■「自称 “本物” のエド・ウッド」


■『レッド・ファミリー』
やりすぎ限界映画:☆☆☆☆★★★[95]

2013年/韓国映画/100分
監督:イ・ジュヒョン
出演:パク・ソヨン/キム・ユミ/チョン・ウ/ソン・ビョンホ/パク・ビョンウン/カン・ウンジン/オ・ジェム/パク・ミョンシン/キム・ジェロク

2014年 第30回 やりすぎ限界映画祭
2014年 ベスト10 第1位:『レッド・ファミリー』
やりすぎ限界パルムドール/やりすぎ限界女優賞/やりすぎ限界男優賞/やりすぎ限界監督賞/やりすぎ限界脚本賞:『レッド・ファミリー』


[ネタバレ注意!]※見終わった人が読んで下さい。



やりすぎ限界女優賞:パク・ソヨン


やりすぎ限界女優賞:キム・ユミ


やりすぎ限界女優賞:チョン・ウ


やりすぎ限界女優賞:ソン・ビョンホ


やりすぎ限界女優賞:カン・ウンジン


■第2稿 2020年 8月30日 版

[「全部」「実話」に見えた]




「実話」「フィクション」の表記がないのは、韓国では「日常茶飯事」の「現実」だからに感じた。「当たりまえ」すぎて、あえて表記の必要がない「真実」なのかもしれない。『クロッシング』と同じく、「調査」による事実に基づくエピソードの集大成に見える。僕には「全部」「実話」に見えた。

[「地獄」恐るべき「極限の枷」]






■仲むつまじい家族に扮した北朝鮮のスパイの
 残酷過ぎる任務が滑稽にさえ見えるのは、
 日本が平和過ぎるためか。
 -ジャーナリスト 田原総一朗

(映画『レッド・ファミリー』公式サイトより)





日本人が「当たりまえ」と思ってる幸せは絶対「当たりまえ」ではない。北朝鮮の実情を見る度に「震撼」「驚愕」「絶句」する。「食料」「医療」の貧窮に始まり「家族と一緒に暮らせない」という「現実」を、日本人は自分の身に置き換えて考えることができるだろうか? 「同じ人間」であることに「共感」できるだろうか?






人間はそもそも何のために生きるのか? 「絶対死ぬ」人生において「人間」は、「楽しむために生きる」のだと信じる。「やりたいことをする」ことの “核” は「楽しむこと」。「仲むつまじい家族に扮した北朝鮮のスパイ」『レッド・ファミリー』は、恐るべき「極限の枷」を背負った人間の、壮絶な「地獄」を見せる。壮絶な「地獄」は、「人間」が「人間」であることとは何かまで観客に問う。

[「家族に会うために殺す」「家族に会えないまま死ぬ」]




「家族と一緒に暮らしたい」。僕には『レッド・ファミリー』が「真実」にしか見えない。国家の命令でスパイ達が殺人を行うのは、故郷に住む家族を人質として拘束されてるから。「失敗」は「重罪」となり故郷の家族が罰を受ける。「強制収容所」の恐怖。「人間」として「当たりまえの生活」さえ許されない状況で、スパイ達は「家族に会いたい」という細やかな想いだけを夢見て任務を遂行する。




「家族に会うために殺す」。だがスパイ達は「20年」も家族に会わせてもらえない。そのうち自分の家族を守るためなら、他人の家族を殺していいのかという疑問が生まれる。そして「20年」任務を遂行し、異国の地で「家族に会えないまま死ぬ」。“本物” の「地獄」が、今現実にこの世に「実在」してる。

[「幸せ」「自由」]



「やりたいことをする幸せ」「家族と一緒に暮らせる幸せ」「命令も束縛もされない幸せ」「言いたいことが言える幸せ」「だらしないままでいられる幸せ」…………。「自由」。自分がやりたいことを自分で選択できること。「自由」ということが、どれだけ「幸せ」かを自覚してる人間は少ない。






生まれた時から運命を決められた人生。それ以外の生きる道を許されない人生。「危険思想に染まった」「南の思想にかぶれた」「腐敗した南に憧れている」。「自由」である「南の思想」に「憧れない」スパイこそ、もはや「嘘つき」だろう。「同じ人間」であることに涙が止まらなかった。

[「1シーン1極限台詞」]




■「私たちは…
  規則正しく回るだけの-
  時計の部品と同じよ
  そのうちいつか
  夫のように死んで
  娘にも会えず…」







『レッド・ファミリー』の「全シーン」がもはや全部「極限台詞」。「仲むつまじい家族に扮した北朝鮮のスパイ」達が直面する「苦悩」「葛藤」を涙なしに見れるかを問いたい。「1シーン1極限台詞」の映画の中で、僕が最も哀しかったのは「時計の部品」だった。「時計の部品」=「人間ではない」ということ。何かが完全に間違ってるのではないだろうか?

[「涙腺決壊!」]




■「北朝鮮スパイが演じる〈完璧な一家〉が犯した失態。
  全てを覆す「世界で一番切ない芝居」に涙腺決壊!」







極限のくそリアリズムにおいて、ミンジ(パク・ソヨン)が助かったのは「嘘」かもしれない。だがたとえ「嘘」でも、ミンジが助からなければ、もはや見てる観客が救われない。あまりに残虐すぎる哀しみに。ミンジを救ってくれた「イ・ジュヒョン監督」に感謝した。




「時計の部品」が「死の直前」に「人間になることを許された」。いや、死の直前まで「人間になることを許されなかった」。〈完璧な一家〉が「人間になることができた」のは、数十年生きてきた生涯で、「死の直前」の「一瞬」だけだった。「涙腺決壊!」 これがやりすぎ限界映画だ!




画像 2020年 8月