"楽音楽"の日々

"楽音楽"の日々

音楽、映画を中心にしたエンタテインメント全般についての思い入れと、日々の雑感を綴っていきます。

奈良県明日香村は、日本の古代史に興味を持っている人間にとっては憧れの場所です。

文献がほとんど残っていない古代は、日本の歴史大好きな私にとってイマジネーションを広げてくれる時代で興味がつきません。

 

京都橘高校吹奏楽部は、2017年にも「ムジークフェストなら」に参加しています。その時は、開催地について深掘りすることはありませんでした。今回、再びこのイヴェントでパフォーマンスを見せてくれることになって、現地のことを調べてみました。

 

国営飛鳥歴史公園は、明日香村の中にある史跡の周辺を整備して、町内の5箇所に点在しています。発見当時話題になった「高松塚古墳」や「キトラ古墳」などがありますが、最も有名なのは「石舞台古墳」でしょう。

 

 

歴史の教科書で見て強烈な印象を残してくれたこの古墳は、7世紀に作られた方墳で、蘇我馬子の墓と伝えられています。決定的な文献はありませんが。正方形に近い形の盛土で作られていたはずですが、風雨で侵食されて現在は石室だけが残されています。そんなことを知らなかった学生時代は、その姿だけが強烈に印象に残ったのでした。

 

で、今回の「ムジークフェストなら2024」は、その「石舞台古墳」を中心とするエリアで開催されたのでした。6月1日のことです。

前回参加した2017年は特設ステージだったのですが、今回はここ数年使われている「あすか風舞台」という常設ステージでの開催でした。

恒例のフラワークラウンさんの「晴天祈願」の下方にも「石舞台古墳」が描かれています。

 

「あおぞら吹奏楽!2024」と題された今回のイヴェントは、例年どおり奈良近郊の学校が複数参加して、ゲストには各地で引っ張りだこの「ブラック・ボトム・ブラスバンド」が呼ばれました。更に、トリを飾るスペシャル・ゲストという形で京都橘高校吹奏楽部がパフォーマンスを披露しました。

 

今回は、撮影するには不利な「逆光」の形になって、撮影者の皆さんは苦労されていたようです。そんな中で安定のクオリティを保ち続ける「慶次郎前田」さんの撮影・編集で、「コンサート・ステージ」をご覧ください。

 

 

昨年の台湾で大緊張のMCデビューした今期の部長ですが、冒頭のインタビューでは明るく朗らかでとても素敵です。

プログラムは、前回の「TAIWAN PLUS」で披露したものからピックアップして、更に「宝島」を加えた構成です。1年生を鍛える時期なので仕方がないとはわかっているものの、この選曲は私にとって退屈です。振り付けなどのパフォーマンスがない「座奏」で「京都橘らしさ」を出すのは、とても難しいですよね。とは言うものの、京都橘ならではの「特別感」を求めるのはファンとしての「高望み」なのでしょうか?

 

 

 

さて、気を取り直して後半の「マーチング・ステージ」です。

 

 

ブルーメ・タイプの衣装で登場です。よく見てみると、靴もソックスも着替えています。まぁ、当然でしょうけどね。こちらも「慶次郎前田」さんの動画でご覧ください。

 

 

「Winter Games」は、1年生を含めた全員での演奏です。ステージからはみ出してしまうので、残念ながらカラー・ガードの1年生のうち2人は舞台袖です。

それにしても、スーザフォン8本はヴィジュアル的に圧巻です。ローズパレードではどうなるのか、期待が膨らみます。

 

MCは、昨期から引き続いて安定のホルンちゃん。「Here We Go」の決まり文句も、今期はちょっとクールに決めています。

 

「Celebration」は、絶対にアメリカでもウケるナンバーになりましたね。今期のパターンとして、テナー・サックスのソロから2本でハモるという形にしてきました。良いアイデアですね。終わった二人の笑顔が眩しいです。

 

そして、今回のイヴェントにおいてファンの間で騒然となったのが、「September」のピアノによるイントロでした。

多くの撮影者の方々は、心優しくその部分をさりげなくカットして動画をアップされています。世界中で、しかも繰り返し見られる京都橘の動画であることを考えれば、正しい判断だと言えるでしょう。

私も、最初に見た時は「一体、何が起きたんだ?!」と思いました。たくさんの動画をじっくり見て検証してみると、いつもの京都橘ではありえない異変に気付きました。それは、「譜面台」です。通常、京都橘のマーチング・ステージでは、譜面台は一切使いません。それは、パーカッション・セクションでも同様です。ところが、今回のステージでは、ピアノの前に譜面台があるのです。しかも、ピアノを弾いているのは、今までピアノを弾いている姿を見たことのない3年生です。私のお気に入りの部員で、ずっと注目してきているので間違いないと思います。

 

ここからは、私の推測です。

本番当日になって、この曲のピアノ担当が突然欠席することになったんでしょう。ブラスエキスポでピアノを弾いていたサックス奏者なのか、別の部員なのかはわかりませんが。事前に欠席がわかっていれば、譜面台が必要にならないように練習しているはずです。多分、突然の欠席という緊急事態だったのでしょう。ピンチ!!急遽の代役だったのでしょうが、本人にとっては悔しい結果になりました。

ということで、最善を尽くしたけれども残念な結果になったんだと私は理解しました。

失敗を次に繋げる京都橘のことです。きっと複数の部員がピアノを担当できるように、練習を繰り返していることでしょう。常にステップアップを目指していく姿勢が、京都橘の最大の魅力のひとつだと思っています。

 

さて、この曲の見どころ(聴きどころ?)を、いくつか。

カラーガードが、1年生4人を含めた8人体制のお披露目。1年生はいずれも笑顔がないし動きも硬いんですが、これからが楽しみです。

アルト・サックスのソロは、「泣き虫サックス」として人気になった2年生の男子。「良い音してるなー。」と感心していたら、引き継いだ副部長は更に華やかな音色。さすがです。

最前列に揃ったトロンボーンは、11人。迫力満点だし、ヴィジュアル的に壮観です。

 

そして、かなりこなれてきた「Think」です。今年の定期演奏会でお披露目された時点で、今までに見たことのない独特の振り付けで注目していましたが、かなり良い感じになってきました。これで、全米を驚かせて欲しいと思ってしまいます。

この曲において目立っているのが、ピッコロです。吹奏楽器の中で最高音を担当しているうえに、基本的にひとりです。目立つ音なので失敗は許されませんし、曲の「効果音」的な使われ方をする例がしばしばあります。これを担当している部員は、昨年2年生の時から重責を担っていますが、今年の安定感は素晴らしいです。特に、この曲では最高音からのグリッサンドが数カ所あって、とてもカッコ良く決まっています。

 

1年の間をおいて復活の「Memories Of You」は、アメリカでのパフォーマンスを探っているのかもしれません。

ソロを吹くのは、多分クラリネット・セクションのリーダーですね。精神的余裕が見えるソロは、とても気持ち良いです。

 

ラストの「Sing, Sing, Sing」における吹奏楽器は、既に自信に溢れているようにも聞こえます。もう、完成間近か?なんて思わせてくれます。ただ、違和感があるのが、メイン・ドラムです。フィル・インなどが、かなり個性的で今まで聞いたことのないパターンです。そう、3年生の彼女です。多分、ステージでこの曲を叩いているのは、これが初めてだと思います。今期のこの曲は、2年生の部員が叩いていたはずです。見返してみると、その2年生部員の姿が見えません。この日は、欠席だったようです。ということで、3年生の彼女が全編に渡ってメイン・ドラムを叩くことになったようです。彼女はパンチ力が足りませんが、リズム・キープに関しては実に見事です。今までの経験が、ここに結実しているように思えます。

「September」におけるピアノのトラブルばかりが取りざたされているようですが、ピンチはそれだけではなかったんです。ほとんど話題になりませんが、メイン・ドラムを一人が叩くことになるとは、本人が一番重圧を感じていたはずです。崩壊しそうなピンチを救ったのは、メイン・ドラムを担当した彼女だったと私は思うのです。実に見事なプレイでした。

 

 

ということで、ピンチを切り抜けた京都橘高校吹奏楽部は、一層その強さを増して行くことでしょう。

 

 

 

最後に、このイヴェント全体のパフォーマンスを収めた動画をご紹介しておきましょう。

奈良のレヴェルの高さを実感すると同時に、ゲストのブラック・ボトム・ブラスバンドの見事なパフォーマンスも堪能できます。

5月12日の「ブラスエキスポ2024」へ向けて、フラワークラウンさんは4月から連日のように「晴天祈願」のイラストを投稿されました。参加団体全てが描かれているんですが、それぞれがキャラクターを持って喋り出したので、もはや「てるてる坊主」であることを忘れてしまう楽しさです。

本番までかなりの期間があるので、それぞれの団体が参加するイヴェントについての「小ネタ」が満載で、基本的な情報を持っている人ほど楽しめる仕掛けになっています。流石に私も全てを把握しているわけではありませんが。

京都橘は、4月21日に「ローム・ミュージック・フェスティバル」に参加する予定でしたが、直前に降雨のために中止になりました。その日の夕方にアップされたのが、これです。

 

 

落ち込んでいる京都橘の丸い背中が、愛おしいです。

 

ゴールデン・ウィーク明けには、富山遠征から戻った京都橘がお土産を配っています。

 

下の方では、「博多どんたく」に初参戦した箕面自由が、博多土産を配る様子も・・・。ご丁寧に「海の中道」に咲き誇っていたネモフィラまで描かれています。芸が細かい。

 

 

 

ということで、「晴天祈願」が通じたのか、「晴天」ではありませんでしたが「ブラスエキスポ2024」はなんとか開催されました。

毎回恒例の、京都府の交歓コンサートでの京都橘のパフォーマンスをご覧ください。慶次郎前田さん撮影の動画です。

 

 

前期から引き続いての定番ナンバー「September」です。今回は、なんと言っても紫色のキャップの初披露が目玉ですね。暑い屋外でのイヴェントに対処するために新調されたものと思われます。スーザフォンは、邪魔にならないようにツバを斜め後ろに回しています。

ジャージを履いた「はにわスタイル」を否定するつもりはありませんが、ステップの美しさがとても見辛いです。残念です。

印象的なピアノのリズムで始まる「September」ですが、ここでのピアノを担当している部員は顔がよく見えません。けれども、サックスのストラップを首から下げています。1年生が入っていないパフォーマンスなので、今回だけの臨時の抜擢なのかもしれません。あるいは、昨期から顕著になってきた「セクションの壁」を越えた柔軟な対応の可能性もあります。1年生が全員参加した時の姿に期待するしかありませんね。

ここでのパーカッション・セクションは、3人だけ。「ブルーメの丘」から、シンバルの彼が控えにまわっているのが気になるところです。カウベルとギロの師弟コンビは、今年度私が個人的に期待しているんです。けれども、メイン・ドラムがきっちりテンポをキープしているにもかかわらず、二人はどんどん先を急いでいます。たった3人でも、まとまっていないという状態です。吹奏楽器は充分に音は出ているのですが、リズムがまとまらないせいで全体がバラバラになっています。

「TAIWAN PLUS」を見る限り、パーカッション・セクションにたくさんの1年生が入っているようです。まとめるのは大変だと予想できますが、それが出来上がった時に「橘グルーヴ」が生まれて、バンド全体が一気にワンランク上にジャンプ・アップすると信じています。

アルト・サックスのソロを吹く二人は、それぞれブリリアントな良い音です。最初の部員は初めてソロを聞きます。これから期待できそうです。2番目のソロは、昨年から注目している現・副部長です。二人とも、ソロ終わりの笑顔が眩しいです。

この曲の終盤、サックスのソリでバックの全員がぴょんぴょんする時、2年前の台湾遠征の時にバナーを担当して人気が出た二人がハイタッチしています。3年生になった現在でも仲が良いのが伝わってくる光景ですね。

 

 

 

例年、「ブラスエキスポ」の魅力は、広い万博記念公園に関西一円から多くの吹奏楽団が集まり、新緑が美しい風景の中でそれぞれの個性を披露することにあると思っています。ところが、今年はテレビ局のイヴェントが開催されることになって、従来の場所でやれなくなってしまいました。地図で確認してみましょう。

 

 

東西に伸びる幹線道路の北側一帯が、いつもの会場ですね。で、今年は地図の右下の赤い楕円で囲ったエリアです。緑も少なくて、殺風景です。今年も参加団体が多かっただけに、実に残念です。特に、観客が至近距離で観覧できるルートは、以前の10分の1にも満たないと思われます。明らかに、関西吹奏楽連盟の失態であります。

 

ということで、不満タラタラですみません。実際のパレードの様子を見てみましょう。

 

エリアが狭い上に連続して撮影するのが困難な会場だったので、撮影者の方々は相当苦労されていることが見て取れます。そんな中で最も上手く出来た動画は、やはり橘動画の重鎮でした。「st&橘ファミリーバンド」というチャンネル名に変更された、st.taketoさんの動画をご覧ください。

 

 

「チームtaketo」の見事な連携で、短いパレードの全貌を楽しむことができます。それでも、たった13分!

「ブルーメの丘」の時に比べると、一年生の参加も増えて振り付けの動きも大きくなりました。それぞれの楽器の音もよく出ていますが、やはり全体のまとまりがまだまだですねー。京都橘の実力は、こんなものじゃないっ!目に見えて進歩しているので、これからの成熟に期待したいと思います。

ここでの見ものは、終盤球場に入ってから「Sir Duke」が始まるところです。後方の観客席で、ブルーシートの上に整然と並べられているのは京都橘のビニール・バッグです。普段の部活動の精神が垣間見得ます。彼らが行く先々で評価が高いのは、こういったことが自然にできることが根底にあるからだと思えるのです。

 

台湾のRooster Jamesさんも、今回も遠征です。他の団体の様子もわかる動画になっています。

 

 

これを見ると、パレードが始まる時点で雨が降っていることがわかります。ポップな編集で、Roosterさんのお気に入りのバンドがわかります。そして、「京都橘大好き!」が溢れる撮影と編集には、思わず笑顔になってしまいます。私のお気に入りのバンドも、いくつかあります。いずれ、記事にするかもしれません。

 

 

フラワークラウンさんの「任務完了」のイラスト。

 

 

タオルが配布されたのかどうかは不明ですが、なんともほっこりするイラストで参加団体の皆さんの労をねぎらいたいと思うのです。

 

 

 

今回の動画を見るにつけ、本来の会場に戻して欲しいなぁと思ってしまいます。けれども、来年は大阪万博(1970年ではなく、2025年の!)での開催が予定されているようです。未着工の施設が多過ぎて開催そのものが不安視されている、大阪府最大の懸案です。一体どうなることやら・・・。

今年は、不完全燃焼。来年は、不安だらけ。

 

「3000人の吹奏楽」がなくなってしまった現在、関西吹奏楽の団体が集まる大きなイヴェントは、これだけになってしまいました。もう一度、このイヴェントの魅力を考え直して欲しいと思っています。

 

何やら、今後の「ブラスエキスポ」の行く末に怪しい雲行きを感じているのは、私だけでしょうか?

フランスの映画監督Claude Lelouchによる1966年の名作「男と女(Un homme et une femme)」は、中学生の頃から映画を楽しんで来た私にとっては、「生涯の10本」に入るほど大好きな作品です。

Claude Lelouch監督と音楽を担当したFrancis Laiにとっては、出世作になりました。

 

私が最初にこの作品を観たのがいつ頃だったのか記憶にありませんが、多分テレビ放送だったと思います。明らかなのは、ラジオから聞こえて来たこの作品のテーマ曲を気に入っていたことが映画を観るよりずっと先だったことです。当時は盛んにラジオでかかっていましたが、他のポップ・ソングとは明らかに違う個性を持っていました。

1960年前後からフランスの映画界で盛り上がっていた「ヌーヴェルヴァーグ」という流れ。日本語だと「新しい波」ですね。様々な作家たちが個性的な作品を作り出しましたが、難しい内容のものもあって私はそちらにのめり込むことはありませんでした。そんな中で、傍流でありながら手持ちカメラを多用して斬新な映像処理や音楽の絶妙な使い方を駆使してスタイリッシュにまとめ上げたのが、この「男と女」でした。

物語は、夫と子供がいる普通の女性が、夫とは全く違った生き方をしている男性に惹かれていくという、古今東西に数多ある「不倫もの」です。けれども、妙に深刻になることもなく、スピード感溢れる斬新な映像に驚いたり感心したりしてるうちにラストを迎えます。私は、映画でしか表現できない非現実的な世界に、どっぷりと浸かることになるのでした。

 

映画の場面を繋ぎ合わせた動画で、テーマ曲をお聴きください。

 

 

男女のデュエットによる「ダバダバダ」というフレーズは印象的で、今でも「スキャットの代表曲」と言えばこの曲が紹介されます。

歌っているのは、歌手で女優でもあったNicole Croisilleと、この映画ではヒロインの夫を演じた俳優でシンガー・ソングライターのPierre Barouhです。この曲を作ったのが、Francis Lai。彼はこの曲をきっかけにして、ヨーロッパ各国やアメリカの映画にも呼ばれるようになり、1970年にはアメリカ映画「ある愛の詩(Love Story)」でアカデミー作曲賞を獲得することになります。彼は美しく耳に残るメロディーを作る才能を持っていますが、それを支えるコード進行に個性を発揮しています。「男と女」のテーマ曲を後に楽譜を見ながらギターで弾いてみた私は、それまでに経験したことのない独特のコード進行に苦労しながら驚いていました。

 

映画を観た後、当然のようにサウンドトラックのLPレコードを購入して、文字通り擦り切れるほど聴いていました。現在ではCDも持っていますが、やはりLPレコードの赤いジャケットに思い入れがあります。

 

 

 

 

 

ご覧いただいた動画にも出ていたこの映画のヒロインを演じたAnouk Aimeeが、6月18日に92歳で亡くなりました。

 

この映画における彼女はとてもエレガントで、私にとってのフランス女性のイメージを形作ったのでした。Lelouch監督は、彼女を魅力的に撮ることに全力を注いていたのかもしれません。まぁ、映画監督なら、主演女優を美しく撮ろうと思うのは、当たり前のことでしょうけど。

 

 

私がこの映画のサウンドトラック盤を愛するのは、印象的なテーマ曲だけのせいではありません。全曲が魅力的なのです。テーマ曲の歌詞付きヴァージョンやインストゥルメンタルもありますが、それ以外も聴き応えのある曲が満載です。

Francis Laiの曲にPierre Barouhが詞を付けた曲をお聴きください。

 

 

美しいメロディーに耳を奪われがちですが、悲しみや恐れや喜びといった様々な感情をひとつの曲で表現するという、この映画の世界観を見事に昇華させた名曲だと思います。コンボオルガンの音と言ったら、私は今でもこの曲を思い浮かべます。

 

Pierre Barouhは、フランスの音楽界においても重要人物です。彼は、ブラジルのボサノヴァをフランスに広めて「フレンチ・ボッサ」と呼ばれる流れを作り出しました。現在でもその流れは脈々と続いています。そのきっかけになった曲も、この映画で使われています。彼の作詞作曲による「Samba Saravah」が、それです。MVなんて言葉がなかった時代ですが、これも魁(さきがけ)なのかもしれません。

 

 

実は、この映画で夫婦を演じたPierreとAnoukは、撮影中に恋に落ちて結婚しています。長続きはしなかったようですが。

この動画はまるでプライヴェート・ヴィデオのようですね。彼女の振る舞いや表情は、恋してる女!彼はずっと歌っているんですが、キスをしたりちょっかいを出したり・・・。こんなにされたら、男は、落ちます。

 

 

最後に、この映画でも特に印象的に使われていた曲です。

 

 

オルガン、ピアノ、ギターのシンプルなバックでPierreが歌う曲ですが、そのリズムと関係なく心臓の鼓動のようなリズムがずっと後ろに流れています。主人公二人の鼓動を模しているような、絶妙な音処理です。このように、映画に寄り添う音作りが、このサウンドトラックを特別なものにしていると思うのです。

 

 

映画「男と女」は、Claude Lelouchだけではなく、Francis LaiやPierre Barouhの才能やセンスが「奇跡的」に集結した、名作だと断言します。

更に、Anouk Aimeeは、私にとって「フランスのミューズ」になったのでした。

 

「女神」は、その姿と影響を地上に残して、天へ帰って行ったのでした。

 

 

R.I.P.

フランソワーズ・アルディ(Françoise Hardy)が、6月11日に亡くなりました。80歳でした。

 

彼女に関する評伝は専門家がいろんなところで書くと思います。私はフレンチ・ポップスに精通しているわけではないので、私個人の思い出と共に彼女の作品をここに残しておきたいと思います。

 

私が彼女を知ったのは、1973年。ラジオから盛んに流れてきていた「さよならを教えて(Comment te dire adieu)」でした。

 

 

イントロのピアノとベースによるフレーズはとても印象的で、現在でもこのイントロだけでこの曲だと直感的にわかる素晴らしさです。

Francoiseのヴォーカルと同じ旋律をなぞっているフリューゲルホルン(トランペット?)が、このメロディの美しさを際立たせています。訃報を受けて今回調べて初めて知ったのですが、この曲は元々アメリカ人が作った曲らしいです。それを気に入ったフレンチ・ポップスの重鎮Serge Gainsbourgがフランス語の歌詞を書いて、Francoiseが歌ったのが大ヒットしたということです。この曲をきっかけにして、彼女はSergeとその奥様Jane Birkinとの交流が始まったようです。

そういえば、私のFrancoiseの印象は、昨年亡くなったJane Birkinにとても似ているのです。商業的成功に固執することなく、自分の思うがままに音楽活動を続けたことも共通しています。また、モデルや女優としての活動を通じて「ファッション・アイコン」として大衆に支持されたことも共通しています。

 

そんなこととは関係なく、中学生の私はこんな風に耳元で囁いてくれる女性が現れてくれることを固く信じていたのでした。

 

 

その後、我が国ではドラマで印象的に使われた彼女の曲が、リヴァイヴァル・ヒットしました。

 

 

私はそのドラマを見ていなかったので、それほど思い入れはありません。

 

 

Francoiseのアイドル歌手としてのヒットは、1960年代に集中しています。私は大人になってから、彼女のベスト・アルバムも購入して思い出を楽しんでいました。

 

 

彼女が自ら楽曲を作るようになってからは、日本でヒット曲に恵まれることはありませんでした。私も、「さよならを教えて」の人として、甘酸っぱい思い出と共に過去の引き出しにしまっていました。

 

 

時は流れて、1980年。私は様々なジャンルの音楽を楽しんでいましたが、中でもフュージョン音楽の魅力にのめり込んでいたのでした。

そんな私の目の前に現れたのは、懐かしい名前Francoise Hardyの新作「Gin Tonic」だったのです。

 

このアルバムが彼女のディスコグラフィーの中でどのような評価を得ているのか、私は全く知りません。けれども、その当時フュージョン音楽が好きだった私の周辺では、かなりの盛り上がりを見せていました。と言うのも、このアルバムは英米の音楽界ではありえないフランスらしいメロディーとコード進行で作られていながら、演奏はジャズやフュージョン音楽を得意としているに違いないプレイヤー達が腕を競っているような素晴らしさなのです。残念ながら、演奏しているミュージシャンのクレジットは皆無です。それでも、じっくり聴く価値がある作品だと思っています。

多くの曲を作り、アレンジも担当している音楽監督は、映画音楽の世界で熱狂的なファンの多いGabriel Yaredです。彼の個性的な楽曲とアレンジが英米で発展してきた音楽と混じり合って、ワン・アンド・オンリーの世界を作り出した、まさに「フュージョン音楽」だと言えます。そんな楽曲に独自のヴォーカルでその世界観を表現するFrancoiseの歌声。いわゆる「フレンチ・ポップス」と思って聴いたら、気持ち良く裏切られる作品です。

 

この時期、彼女はライヴ歌唱からは引退していましたので、動画はありません。けれども、公式のチャンネルにこのアルバムの楽曲が全部アップされています。これらをピックアップして、私のお気に入りを紹介したいと思います。

 

 

アルバムのトップは、「JAZZYに暮れて(Jazzy Retro Satanas)」です。

 

 

パワフルなピアノと存在感抜群のベースに乗って、Francoiseの自信に溢れたヴォーカルが登場します。60年代のヒット曲の頃とは、随分印象が違います。耳に残るサビのメロディーと、賑やかな女声コーラス。さらに派手なホーン・セクションが気分を上げてくれます。見事なアレンジと演奏。まるでアメリカ録音かと思うようなジャジーな楽曲です。リズムの感じは、ずっと後に登場する「エレクトロ・スウィング」の元になってるような気がします。

 

 

「折れた小枝(Branche Cassée)」は、従来の彼女のイメージに近い楽曲です。

 

 

ピアノをバックに展開される優しい歌声に引き込まれます。ここで注目したいのは、ダイナミクス溢れるストリングスです。まるで一人の人物が弾いているような、繊細な表現です。

 

 

「Bosse Bossez Bossa」は、ブラジルとフランスの幸せな融合を感じさせます。

 

 

エレクトリック・ピアノと上品なクィーカのイントロで始まりますが、リズムは全くボサノヴァではありません。それでもブラジルの香りを感じるのは、絶妙なアレンジのせいなのでしょう。メロディーとコード進行は、いかにもフランスらしいのですが、ボサノヴァの展開の仕方にも近いのかもしれません。

効果音のようにも聞こえるコーラスがかなり個性的で、耳に残ります。

 

 

そして、このアルバム中最も話題になったのが、「Juke Box」です。

 

 

おしゃれなファンク、といった印象です。Stevie Wonderのことを歌った曲ですが、大胆にも彼の代表曲「I Wish」の有名なフレーズを導入しています。こういった使い方は、英米の音楽界ではあまり記憶にありません。リスペクトしてるんだから、このくらい使っても良いでしょう?というフランスらしい解釈なのかもしれません。この曲、大好きです。

 

 

もう一曲、ジャジーなやつを。「まだ見ぬ人へのシャンソン(Chanson Ouverte)」です。

 

 

メロディーは明らかにフランス産なんですが、ジャジーですねー。まるで深町純のようなシンセの節回しが、私のツボです。この曲でもピアノが大活躍ですが、ギター好きにはたまらないプレイが印象的です。ギターだけ聞いていても十分楽しめます。三連の曲ですが、さしずめ「ジャズ・ワルツ」といった趣です。

 

 

最後に「午前0時の女(Minuit Minuit)」です。

 

 

まるで、当時のJ-POPのようなアレンジと演奏です。それにフレンチ・ポップスのメロディーが乗っかると、独特の雰囲気になるんですね。やはり、サビのメロディーが印象的です。

 

 

と、いろんなタイプの曲が満載で、FrancoiseとGabriel Yaredが創り出す世界にどっぷり浸かることができるアルバムでした。当時は、繰り返し繰り返し聴いたものです。

私にとっては、このアルバムを残してくれたことだけでも、Francoiseに感謝なのです。

 

 

 

世間一般の評価とは大きくかけ離れているかもしれませんが、私にとってはFrancoise Hardyと言えば、アルバム「Gin Tonic」なのです。

 

私の青春の一ページを鮮やかに彩ってくれた彼女に、心から感謝です。

 

R.I.P.

京都橘高校吹奏楽部のゴールデンウィーク。昨年は福岡の「博多どんたく」に参加して、私にとって「初・生橘」という思い出深い経験になりました。

そして、今年は初の富山県遠征となりました。「2024となみチューリップフェア」の最終日を飾るメイン・ゲストとしての出演です。

 

 

富山県が日本最大のチューリップの産地だという知識はありましたが、「砺波チューリップ公園」という場所があることは全く知りませんでした。園内を撮影した動画は、たくさんアップされています。中でもおすすめの美しい動画が、これです。

 

 

前回記事にした「ブルーメの丘」のように、京都橘と自然公園の風景の相性がバッチリなことは、彼らのファンなら誰もが知っていることですね。今回の遠征では2回のホール公演もありましたが、これらを見れることは最初から諦めていました。けれども、公園でのパフォーマンスなら見れるかも?と僅かながら期待していました。結果は、SNSアップ禁止ということで、ファンの願いが届くことはありませんでした。色とりどりのチューリップの中をパレードする京都橘の姿は、きっと素晴らしかったに違いありません。残念です。まぁ、入場料を取っている公園なので、そこの指示に従うのは当然のことです。ただ、他の団体のステージの様子は動画アップされているので、釈然としない部分はありますが・・・。

それを考えると、同じ入場料を取っているはずの「ブルーメの丘」の太っ腹な対応には、ファンはもっと感謝するべきだと思うのです。

 

 

 

 

 

 

さて、富山遠征から一週間後には彼らの地元・京都での台湾物産展のステージに登場です。「TAIWAN PLUS2024」というタイトルで、京都最大の国際展示場「みやこめっせ」で開催されました。

 

 

「京都橘」と「みやこめっせ」というと、ファンとしては12年前のこの動画を思い出します。

 

 

今ほど動画の多くない時期ですので、この年のパレードのプログラムを知るには貴重な動画です。中でも話題になったのがサンバ曲として「森のくまさん」を使ったことでした。この記事を書くにあたって、ちょっと調べてみました。もともとマリンバを主役にして岡田俊輔氏がサンバのリズムでアレンジしたものが「サンバ・ベアー」というタイトルで出版されているようです。そこから通常の吹奏楽曲として改変したものが「サンバ・ベアーMe」というタイトルで流通しているのが現状です。「Me」が何を意味しているのかは不明です。日本全国で演奏されている様子ですが、圧倒的に京都で演奏されているのが不思議です。ある楽団がアンコール曲に採用していることも理由のひとつでしょうが、この局地的な取り上げられ方は珍しいですね。

近年の彼らの演奏に慣れていると、この時の京都橘の演奏は相当粗っぽいですね。こちらの「勢い」が魅力だとおっしゃるファンの方が多いのもわかる気がします。

 

さて、今回のステージは、他にオーケストラも演奏する予定だったので、もっと広いステージが準備されるだろうと予想していました。実際に見てみると、予想以上に立派なステージで、背景の巨大なLEDモニターがおしゃれでした。

橘撮影の巨匠たちの動画は、ファンの方なら既にチェック済みだと思いますが、数日前にMarschtanz63さんによる美しい動画がアップされました。今回は、これを見ながらステージの様子を振り返りたいと思います。

 

 

このイヴェントのメインMCと思われる男性は簡単に京都橘を紹介しますが、メモを手にしていません。もともと京都橘のファンなら簡単なことですが、そうでなければ「さすがプロ」というスキルです。

「ブルーメの丘」のパレードでは、通例を覆して数名の1年生が参加していましたが、今回の座奏が1年生全員参加のお披露目公演になります。ですから、演奏のクオリティについて細部まで述べるのは無粋ですね。楽しんで見るのが正解だと言えます。

定番の「Fanfare For Tachibana」は、トランペットとトロンボーンが最前列に並んでステージの開幕を告げます。彼らが定位置に戻るまでちょっと長めのドラム・マーチがあって、いきなり新しいレパートリーが登場します。Henry Fillmore作曲の「His Honor」という曲ですが、作曲者も曲名も私は知りませんでした。けれども、メロディが始まったら、いっしょに口ずさんでいました。きっと、どこかで聞いて覚えていたんだと思います。行進曲にしては珍しく、半音階進行を多用した流麗なメロディ。特に上昇する音階は希望に溢れる雰囲気で、京都橘のイメージにぴったりです。一体どんな曲なのか、調べてみました。

 

「サーカス・マーチ」

 

初めて知る言葉です。この「サーカス・マーチ」は、20世紀初頭の最大の娯楽のひとつであったサーカスのためのマーチなのです。それまでの「行進するためのマーチ」という枠から飛び出して、サーカスの楽しくワクワクする雰囲気を盛り上げるための楽曲を総称する名前なのです。Henry Fillmoreは、その「サーカス・マーチ」の人気作曲家だったのです。「サーカス・マーチ」と呼ばれる曲は、いずれもテンポが速く、軽快だという共通点があります。ただ、きっちりとした区分けではなく、それ以前の曲も「サーカス・マーチ」風に演奏することも多々あるようです。代表的な曲も列挙してありましたが、私が知っている曲もたくさんありました。

この曲を演奏している動画も、いくつも見てみました。やはり速いテンポのものが多く、吹奏楽のステージではアンコールに取り上げられることが多いようです。そんな中で、私が個人的にベストだと思うものに出会いました。原田慶太楼指揮の東京佼成ウインドオーケストラの演奏です。

 

 

曲が始まってしまえばテンポは一定なので、途中ではダイナミクスだけを指示するという正しい指揮ぶり。見ているだけでも楽しさが伝わってきます。さすが現在のクラシック音楽界を牽引する原田慶太楼。メンバーの技量の高さが基本にあるのは当然ですが、彼の指揮はこの曲の魅力を最大限に引き出しています。彼の指揮は、オーケストラでクラシック音楽を演奏している時でも、とってもわかりやすいのです。

 

ということで、京都橘の演奏を聴いてみると、テンポが行進するのにぴったりなのです。MCは「本年度のマーチのレパートリーとして」と紹介していましたが、このテンポは明らかに「マーチングコンテスト」用だと私は考えます。ほぼ、間違いないでしょう。まぁ、私の予想ですから、大きく裏切られる可能性もありますが。マーコン京都府大会までの楽しみです。

 

ここからは、ポップス・ステージです。

京都橘としては初めてのナンバーもありますが、全国的にしばしば演奏されている定番曲ばかりで目新しさは全くありません。

ステージの最後の曲「ディズニー・メドレー」も人気の曲でいろんな楽団が演奏しているのですが、様々なタイプの曲調が登場してきて飽きさせません。パーカッションが大活躍の曲ですが、注目は1年生です。スライド・ホイッスルの、緊張男子二人に、「ハイ・ホー」で鍛冶屋のリズムを刻む緊張男子。全く余裕がなくて「全集中」しているのが伝わってきて、こちらも手に汗握ります。ところが意外にもテンポが速くなることもなく、ちゃんとできています。将来有望!?他にも色々見どころや「ツッコミどころ」が多々あるんですが、私が期待したいのが「いつか王子様が」でのテナー・サックス5人によるソリです。多分楽譜の上ではひとりで吹くことになっているんじゃないかと思うのですが、複数人で吹くことで見た目も音的にもインパクトがあります。京都橘では以前からこんなことをしばしばやっています。どれもインパクト大ですが、私が最も記憶に残っているのは、2018年のレパートリー「Paradise Has No Border」におけるトランペット・セクションのソリです。

 

 

今年のテナー・サックス・ソリもこのくらい揃うと、とんでもなくカッコ良くなるんじゃないかと楽しみになります。

 

私は個人のことを書くことを控えているのですが、どうしても注目したい部員がいるのです。

それは、「We Are The World」以外でメイン・ドラムを叩いている2年生です。彼女は昨年の台湾公演でもノリが良く、1年生であるにも関わらず全身で楽しさを表現していました。ここでは初めてのドラム・セットで、リズム・キープに集中しているので笑顔が全くありませんが、パンチ力もあるのでメイン・ドラマーとしての資質があるんじゃないかと感じています。ドラムに慣れてきて彼女に自然な笑顔が出てきた時には、今期の「橘グルーヴ」が出来上がるような気がします。是非とも彼女をメイン・ドラマーにして欲しいと思うのです。私の目と耳は、間違っているのか???

 

ところで、京都で開催される台湾フェアだということで、卒業生も多数来場したようです。「ブルーメの丘」のパレードでも散見されましたが、後輩の姿を見届けたいのはもちろんのこと、中華文化総会の李さんとの再会も期待してのことだと思われます。

 

 

Rooster Jamesさんの動画には、この交流の様子や台湾メディアのインタビューを受ける顧問や部長・ドラムメジャーの様子も収められています。

体調不良で、前回の記事から随分と間が空いてしまいました。

そんな私を置いてけぼりにして、京都橘高校吹奏楽部は新年度最初からフルスロットルで駆け抜けています。

 

 

 

 

120期の最後のパレードである「京都さくらパレード」は、荒天予報のために前日に中止になってしまいました。

このところ何かと雨による中止が多かった屋外イヴェントに対抗しようと、フラワークラウンさんが「てるてる坊主」を作られました。

 

 

願いを込めた今期最初のイヴェント、4月21日の「ロームミュージックフェスタ」にも、晴天祈願のイラストを発表。

 

願いも虚しく、雨のために直前に中止になりました。121期の初陣を観れなかったことは、私もとても残念でした。

 

そして、4月28日のブルーメの丘パレード。

 

このイラストのようなスッキリした晴れにはなりませんでしたが、なんとか雨は降らずに無事に開催されました。

フラワークラウンさんには、当分頑張っていただかないといけませんね。よろしくお願いします。

 

 

 

現在でも続いているイヴェントの中でも、京都橘が古くから参加しているのが「ブルーメの丘」です。ここの風景は、京都橘との相性ピッタリですもんね。京都橘のおかげで、世界中に知られるようになった風景です。

コロナ禍を経て、数年ぶりに動画撮影の規制なしになりました。「ブルーメの丘」さんには、心から感謝です。

 

 

 

無数の動画がアップされています。これらをじっくり観ながら今期のパレードのプログラムをチェックしていきましょう。

京都橘の動画での「二大巨頭」による作品は、チーム編成によるマルチカメラも定着してきて、どちらも観応えあります。

 

 

 

これまでの歴代パレード・プログラムは、知らない曲が何曲かあって、調べることが多々ありました。けれども、今期のプログラムは、初めて全曲知っていました。どうということはないけど、ちょっと嬉しいです。

 

定番の「Down By The Riverside」に続いて登場するのは、ファンにはお馴染みの「Fantasmic!」です。けれども、これまでは「ディズニー・メドレー」のトップとしてファンファーレ的な使われ方をしていましたので、最初の部分だけでした。今回は、きっちり聴かせてくれます。

 

続いては、Queenの名曲「We Will Rock You」です。始まった途端に、私は嫌な予感がしました。と言うのも、これまでいくつかのバンドがパレードで演奏していたのを聴きましたが、単純すぎてとてもつまらなかったのです。そもそも単純なリズムで、Freddie Mercuryの歌声ありきの名曲なので、そのまま吹奏楽で演奏しても何ら耳新しいものにならないのです。

今回の京都橘の演奏も、最初はシンプルです。ところが、進むにつれてメロディのハーモニーがだんだん分厚くなり、メロディの間を埋めるユニゾンのソリやオブリガートがとてもカッコ良いのです。この編曲は、実に見事です。ここでの演奏はまだまだバラツキがありますが、精度が高くなると相当カッコ良くなるに違いありません。また、振り付けにおいては、ジャンピング・ハイキックを取り入れてきました。まだまだ模索中で、「ローキック」になってしまっているのは御愛嬌。これもだんだん派手になることでしょう。

 

「The Raiders March」は、映画「インディ・ジョーンズ」シリーズのテーマ曲ですね。「Star Wars」と同様、John Williamsの代表曲のひとつです。ひょっとしたら、ローズ・パレードで前回の「Star Wars」のような使われ方をするのかもしれません。まだまだパンチがありませんが、京都橘なら何とかなるでしょう。

 

さて、私が我が耳を疑ったのは、Aviciiのヒット曲「Wake Me Up」でした。EDM(Electronic Dance Music)に疎い私でも知っている曲です。とりあえず、オリジナルをお聴きください。

 

 

リズムこそEDMですが、曲そのものはカントリー風味のフォークソングです。この曲を特別のものにしているのは、作詞も手掛けたAloe Blaccのヴォーカルですね。淡々としていながらエモーショナルな歌声は、結構耳に残ります。

Aviciiは良い曲が多いので、興味を持たれた方は他の曲も聴いてみてください。

 

で、京都橘の演奏は・・・。EDMの要素を除いたら、カントリーそのものです。編曲も至極真っ当なもので、このまま演奏するとオリジナルの「劣化コピー」になってしまいます。これを避けるためには、譜面どおりに演奏するのではなく、軽快なリズムはキープしたままで抑えて演奏してから、印象的なサビで一気にフォルティッシモにする位しか思いつきません。如何でしょうか?

これは、工夫がいる曲ですねー。

 

続いての「Aloha E Komo Mai」は、ディズニーのアニメ映画「リロ・アンド・スティッチ」の挿入曲です。毎年恒例の「元気な歌」は、今期はこれで来ました。いかにも京都橘らしい元気な歌声と可愛い振り付けは、誰が見ても笑顔になれるナンバーですね。

 

2015年のパレードで演奏していた「I Want You Back」は、京都橘らしい「ぴょんぴょん」がふんだんに入った他の団体では絶対にできないプログラムです。更に精度を上げて、観客を笑顔にして欲しいものです。

 

「Show Me How You Burlesque」は、2015年の「3000人の吹奏楽」でのパフォーマンスが記憶に残る曲ですね。これも精度が上がると、相当カッコ良くなりそうな気がします。

 

そして、2019年のパレード・プログラムで記憶に新しい、Stevie Wonderの「Sir Duke」です。私も大好きな曲で、当時パレード・プログラムになった時は期待したのですが、完成されないままに終わってしまいました。今期は、何としてもカッコ良く決めて欲しいものです。

 

始まった途端にその曲だとわかる「Can't Buy Me Love」。言わずと知れたThe Beatlesの初期の代表曲ですが、この吹奏楽アレンジが素晴らしいです。この編曲は、Richard L.Saucedo氏の手になるものです。「Magical Mystery Tour」とのメドレーになっていますが、京都橘はこの前半だけを使っています。

 

 

メロディの後のソリが、カッコ良いです。そこからのワクワクする転調。実に見事です。これ、完璧にモノにして欲しいなぁ。絶対にウケるプログラムだと思います。

 

そして、パレード・プログラムの最後を飾るサンバ曲は、真島俊夫作曲のジャパニーズ・サンバの名曲「Bay Breeze」です。

私がブラジル音楽にのめり込んだのは、ノリの良いリズムだけではなく、楽曲にどことなく「寂寞感」があることでした。そのことがブラジル音楽の魅力と感じていたのでした。日本で作られるサンバ曲は、妙に明るい雰囲気のものが多いです。そんな中、この曲はブラジルの心をきちんと消化した上で作られた名曲だと思っています。ローズ・パレードに採用されるかどうかは不明ですが、アメリカでも受け入れられるクオリティであることは明白です。ま、単なる私の希望ですが・・・。

個人的には、「う〜っ、サンバ!」からの「キャ〜」が復活したのが単純に嬉しいです。橘伝統のサンバ・ステップが出来ていない部員が散見されるのには、思わず笑ってしまいます。頑張れ、頑張れ!

 

 

 

さて、いろんな動画を見て感じたことです。

バリトン・サックスとバス・クラリネットの音が目立って収録されています。スーザフォンと共に低音部を支えるこれらの楽器の活躍に期待したいと思っています。

また、この時期に多くの1年生がパレードに参加しているのは、初めて見る気がします。特に笑顔が印象的なパーカッション・パートの二人。今年度のキー・パーソンになるかも・・・?期待してます。

 

スロー・ナンバーを入れて革命的だった昨期に比べると、今期は手堅いプログラムと言えるかもしれません。けれども、複数の楽器が同じ音形で進行する「ソリ」が多いので、まとまった時の聴き応えはおそらく想像以上のものになるのではないかと思います。現状では、想像するしかないですけど。

また、始まった途端に曲目がわかるナンバーが多い気がします。観客の心を掴むには、結構重要な要素なのかもしれません。

 

 

昨年同時期の「博多どんたく」を体験した者の感想としては、今年度は良く音が出ていることが印象的でした。まだまだ全体的にまとまりがないけど、最終目標が共有されているせいなのか、とにかく各人の音は出ています。明らかに暗中模索だった昨年とは違っています。このことは、全員がまとまってくればすぐにかなりのクオリティに達することを意味していると思うのです。

 

 

今期の最終目標であるローズ・パレードへ向けて、なかなか良いスタートを切ったという印象でした。

ワクワクを共有しながら、彼らの成長を見守っていきましょう。

前回の投稿から1ヶ月も経ってしまいました。既に卒業してしまった120期についてどうしても書いておかなきゃいけないことがありますので、ここでまとめておきたいと思います。

 

前回まで書いていた京都橘高校吹奏楽部の第60回定期演奏会の最終日には、多くの来賓や関西テレビをはじめとする取材が入りました。その中で、「日本でただひとりの吹奏楽作家」として有名な「オザワ部長」も2年連続の取材をしていました。

 

 

正式な取材でなければ得られない貴重なインタビューや写真は、貴重なものです。ちなみに、この記事の中で紹介されている動画は、本番当日の通しリハーサル、所謂「ゲネリハ」と呼ばれるものの様子です。唇がバテると本番に影響が出るので、トランペットやトロンボーンなどはポイントになる部分でしか吹いていません。なので、音の迫力は感じられません。

 

 

2022年の台湾公演から京都橘の一番側にいる中華文化総会の李さんも、来賓のひとりでした。

 

 

また、李さんは演奏会の翌日に学校で行われた「卒部式」にも列席して、卒業生たちを見送りました。

 

彼は、5月11、12日に京都で開催された台湾の見本市「TAIWAN PLUS」の主要メンバーでもあり、11日に京都橘がパフォーマンスをすることになったのも、彼のセッティングだと推測できます。これからも京都橘と台湾の絆は続いていくことになるのでしょうね。ただ、今期は既にスケジュールがびっしりで、台湾訪問はかなり難しそうですが・・・。

 

 

 

 

2017年の秋口から京都橘を追っかけている私にとって、120期は特別に思い入れがある年度になりました。

5月に開催された「博多どんたく」で初めて生の彼らを見て、さらにパフォーマンス以外のところでも彼らの様子を見ることができたので、もうほとんど「親目線」です。

 

正直に言えば、音に迫力がなくて、拍子抜けしました。同じパレードに参加している他の強豪校の音と比べると、明らかに「聞き劣り」しているように感じました。「暗中模索」といった印象だったのです。

そんな彼らがたった半年で見違えるように成長していった姿は、手放しで賞賛したいと思うのです。

 

120期のパレード・プログラムは、選曲・曲順共にとても素晴らしいものでした。けれども、振り付けは細かい複雑な部分が多くて、全体的にはダイナミックさに欠けているように思えました。多分、やりたいことがたくさんありすぎて、それを全部詰め込んでしまったのかもしれません。

そんな中で私のお気に入りは、「アメリカン・パトロール」で隊列が揃って左右へ移動する部分です。

 

 

視覚効果抜群でしょう?ローズ・パレードでは観客から距離があるので、こういったダイナミックな動きがアピールできるんじゃないかと思っています。

また、パレードの固定概念を覆す「星に願いを」は、京都橘の歴史の中でもエポックメイキングな選曲でした。

 

 

パレードにおいてスローな曲を導入するなんて、頭の固い吹奏楽関係者たちからは批判されそうですが・・・。

「聴かせるマーチングバンド」を体現する美しいハーモニーと美しい振り付け。曲の終わりに拍手・歓声が起こることを想定していたかのような完成度です。これまでも常識を打ち破ることを次々にやってきた京都橘ならではの快挙だと思います。

そのパレードの完成形は、台湾西門町でのパフォーマンスで見ることができます。「博多どんたく」の時と同じプログラムとは思えない素晴らしさです。

 

 

 

「3000人の吹奏楽ファイナル」で彼らが見せた驚きのフォーメーションは、DCIでしか見たことのないものでした。

 

 

このパターンがマーチング・コンテストのプログラムに取り入れられるんじゃないかという私の予想は見事に裏切られたんですが、昨年までの全国金賞のプログラムを凌駕するものに進化しました。

全編見どころですが、私のお気に入りは、まず「バラ色の人生」のイントロです。

 

 

鈴木英史氏によるロマンティシズム溢れるドリーミーなアレンジ。それを視覚的に表現するフォーメーションと振り付けは、繰り返し見ても飽きることがありません。

カンパニーフロントは当然素晴らしいのですが、一列に揃うまでの過程がスリリングで鳥肌が立ちます。

そして、クライマックス「The Sing」における高速フォーメーション・チェンジ。

 

 

他の強豪校のプログラムで、こんなに走り回る姿を見たことがありません。完全に京都橘の専売特許になった感がありますね。

きっと、今年度も驚かせてくれることでしょう。

 

 

 

 

 

さて、何の予告もなくアップされたのが、12月14日に台北の国家音楽庁で開催された単独コンサートの全貌を収録した動画でした。

予想を遥かに上回る素晴らしさで、120期の到達点を克明に記録したコンサート映像です。これをじっくり見れば、120期の完成度の高さを感じることができます。

まずは、第一部の「コンサート・ステージ」です。

 

 

1曲目は、イタリアの作曲家ヴェルディの歌劇「アイーダ」より「凱旋行進曲」です。残念ながら過去の動画はありませんが、京都橘は昔から折に触れて演奏してきました。とてもスケールの大きな曲で、吹奏楽でも人気の曲です。クラシック音楽に詳しくなくても、サッカーの試合では耳に馴染んだメロディです。

 

 

トランペットによる典雅なメロディが応援歌になるなんて、天国のヴェルディも予想していなかったでしょうね。

ここでの京都橘の演奏は、9分にも及ぶ大曲を途中ダレることもなく、実に緻密に組み立てています。「兼城サウンド」の究極の形と言える出来です。「楽しい演奏」を楽しみにして来場した台湾の観客も、彼らの実力に驚いたに違いありません。

クラシカルな曲をこれ1曲にして、ポップス・ステージへ移ります。観客のことを考えると、この割り切った構成は見事と言うしかありません。台湾でもよく知られている日本の曲を続けます。

そして、120期の座奏のハイライトとして演奏されてきた「翼をください」は、理想的な形で演奏されます。客席の通路に部員たちが散らばって、観客へ向かって歌います。たぶん台湾ではあまり知られていない曲だと思いますが、リズム・インしてからの観客の反応を見ていると実に楽しそうで、この演出は大成功だったと言えますね。

台湾公演のための特別プログラム「五月天(Mayday)メドレー」は、なかなかレアですね。台湾を代表するロック・バンドMaydayは2000年代にはしばしば来日もしていて、テレビにも出ていました。日本のバンドGLAYとも親しくしていたようで、たびたび共演もしていました。野外フェス、サマー・ソニックにも出演しています。そのおかげで、私も知っていました。ここでのメドレーでは、彼らのヒット曲を3曲繋げています。その最後の曲を、ライヴ映像でご覧ください。

 

 

楽器編成こそロック・バンドではありますが、メロディがとてもポップですね。観客がいっしょに歌えるような曲が多い印象です。

京都橘の演奏は、譜面を追うことに集中しているように見えます。リハーサルもそれほど出来ていないはずなので、それも仕方ないことですね。

座奏のプログラムの最後は「We Are The World」ですが、とても上手いMCさんの盛り上げでアンコールになります。マーチング・コンテストのプログラムを演奏するというアナウンスに、客席からどよめきが上がります。期待していたのか、はたまたサプライズだったのか・・・?

このプログラムは、マーチング抜きでたびたび演奏してきました。鈴木英史氏のアレンジの緻密さと京都橘の表現力を存分に楽しめる演奏です。人数制限もなく、全員でのゴージャスな音の洪水。演奏しながらも、自身に溢れた笑顔が印象的です。締めくくりの「The Sing」は、やっぱりドラム・セットが良いですねー。この一年で最も練習してきた曲のはずで、完璧な演奏でした。

 

 

そして、観客の皆さんお待ちかねの第二部「マーチング・ステージ」が開幕です。

座奏では気付かなかったのですが、録音が特殊です。中央のマイクを使っているようですが、指向性の強いもののようで、中央部の音だけが極端に大きくて両端の楽器の音が小さく収録されています。スタンド・マイクはきちんと使えているのに・・・、実にもったいないです。会場ではバランス良く響いていたと信じたいです。

 

 

構成の完璧さには、文句の付けようがありません。

120期を代表するナンバーは、どれ?と問われたら、私は迷わず「Celebration」と答えます。

京都橘の「美しさ、楽しさ、カッコ良さ」が詰め込まれた、素晴らしいナンバーです。これは他の団体で実現するのは、絶対に無理でしょう。振り付けとフォーメーションを考案した構成係には、称賛の拍手を送りましょう。

腰を痛めているピアノの部員には、椅子とクッションが用意されています。続く「君の瞳に恋してる」は、通常は彼女がグロッケンを担当するのですが、移動に時間が掛かることを見越して後輩がイントロだけを担当しています。このあたりの「なんとかする」ところは、毎度のことながら京都橘らしさを実感するのです。

 

「Summertime」は大人な振り付けがおしゃれな、私のお気に入りのナンバーです。

ステージの右側で4人のユーフォニアムがメロディを吹いていますが、全く聞こえません。前述した指向性の強いマイクのせいですね。実にもったいないです。

 

「My Way」では、ハープにもマイクを立てていて、高音のアルペジオが美しく収録されています。

ここ数年、スローな曲をマーチングに取り入れてきた京都橘ですが、120期においてそれが完成されたと言えます。振り付けの素晴らしさもありますが、ハープを大胆に取り入れたことはマーチングにおける「革命」とも言えると思います。音だけではなく、ヴィジュアル的にインパクトがありますもんね。

 

「Uptown Funk」は、一番人気のナンバーになりました。

久しぶりにBruno Marsのオリジナルを聴いてみたら、全く違う楽器編成にも関わらずオリジナルの世界観を見事に表現できていることに驚かされました。「橘グルーヴ」が完成されたからこそ実現できたカッコ良さです。そうそう、ティンパニによるアクセントが効果的ですよー。聴き逃し厳禁です。

 

ハープなしでは成り立たない「80日間世界一周」は、格調高く優雅な仕上がり。新しい京都橘をアピールするナンバーだと言えます。

 

端正な「Sing,Sing,Sing」でプログラムを締めくくると、大きな話題になったアンコール曲「愛の讃歌」へ続きます。

このアンコールの動画がアップされた時、私は台湾の人々へのリスペクトが彼らの笑顔と涙へ繋がったのだと書きました。けれども今回のコンサートの全貌を通して見てみると、それ以外に自分たちのベストを見せることができた満足感も大きな要因だと実感できました。そう断言できるほど、ベスト・プレイ満載の完璧な構成のコンサートでした。間違いなく120期の活動を総括する動画の決定版です。

 

正直なところ心配しかなかった5月の「博多どんたく」から、よくぞここまで成長してくれたと、親目線で感涙するのです。

私の記憶では、最も成長具合が大きかった年度です。実に良いものを見せてもらいました。120期の全てのメンバーとスタッフに、心から感謝します。

 

 

 

 

 

京都橘高校吹奏楽部について記事を書き始めてから1年半ほどになります。

私にとっての宝物は、私の拙い記事を暖かく見守っていただいた読者の方々です。何人かの方とはプライベートなメッセージのやり取りもするようになりました。身近に語り合う友人がほとんどいませんので、とても心強い仲間達です。そんな中のお一人から、こんなものを送っていただきました。

 

 

定期演奏会のプログラムと、2日目のクイズの賞品のクッキーです。

どのようにして感謝の気持ちを示せば良いのかわかりません。お返しできるものもありませんし・・・。

感謝の心を忘れずに、これからも記事を書くことしか私にはできません。

 

 

新入生を迎えた121期も既に動き始めています。今年は、どんな驚きと笑顔を届けてくれるんでしょうか?

 

 

今回で120期についての記事は、ひとまず終了です。

最後は、フラワークラウン画伯による120期を記憶に留めるイラストです。これからも、お世話になります。

京都橘高校の第60回記念定期演奏会、最終日「Orange」の開演です。

 

 

彼らの集大成、まさに「満開」です。

 

 

 

クラシカル・ステージに登壇した顧問は、モーニング姿。この3日間、だんだんフォーマルになっています。この気遣い、彼のこだわりを感じます。

この日は、クラシカル曲が4曲。続くポップス・ステージの1曲目「魔女の宅急便」セレクションもシンフォニックなので、曲調としては計5曲。座奏に重点を置く彼らの本気度が伝わってきます。

その中で3日間通して演奏されたのが、ラフマニノフ作曲の「パガニーニの主題による狂詩曲」です。この曲で今期の実力を示すんだという強い意志を感じます。充実した、見事な演奏でした。

曲目の紹介をするMCは「ラフマニノフ」という発音を初日から言いづらそうにしていましたが、3日目にしてやっとスムーズに言えました。見ている私も、思わず笑顔になります。

いろいろ動画を検索しているうちに、作曲者ラフマニノフ自身がピアノを弾いている古い録音を見つけました。ユージン・オーマンディ指揮のフィラデルフィア管弦楽団の演奏をお聴きください。

 

 

彼自身がピアノで弾きたかったからこの曲を作ったんだということがよくわかる、華麗な演奏ですね。

 

プッチーニ作曲のオペラ「トゥーランドット」もダイナミックな演奏で、近年の「歌う京都橘」の実力を堪能できました。

この中で最も有名なアリア「誰も寝てはならぬ」は、誰が歌ったものを聴いても感動してしまう位大好きなんですが、私個人的に最もお気に入りのものを聴いていただきます。ズービン・メータ指揮のロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団を従えて、ルチアーノ・パヴァロッティが歌います。

 

 

豪胆かつ繊細なヴォーカルで魅了する彼の声は、唯一無二の素晴らしさです。

 

今期のイヴェントで披露されたものの動画を見る機会がなかった「WE ARE THE WORLD」を、やっと見ることができました。

この吹奏楽アレンジはかなりオリジナルに忠実で、驚きは全くありません。

 

 

小・中学生でも簡単に演奏できそうな、シンプルな編曲ですね。

私は中高生の頃に母校の吹奏楽部のためにたくさんの曲をアレンジしましたが、もっと冒険的なことを試みていたことを突然思い出しました。

京都橘の演奏は、メロディを奏でるトランペット2本とトロンボーン2本がとても安定していて、なかなか見事です。これまでのイヴェントで音を確認できなかった部員の音を聴けただけでも、定期演奏会の意味があります。カラーガードの部員によるトランペットも、なかなか貴重です。

今期はギターを弾くことが多かった彼女がベースを弾いている姿にびっくりしました。まぁ、コントラバスを弾けるので、エレキベースができるのも当然ではあるんですが・・・私にとっては小さなサプライズでした。彼女の手元が見えないので確認はできませんが、アタック音が強いのでピックを使って弾いているのかもしれません。

 

 

そして、この日だけのスペシャル・プログラムであるOB合同スペシャルステージです。席の準備中に現役生だけで演奏されたのが、「いい日旅立ち」です。

 

 

これも、実にシンプルなアレンジですね。

京都橘は忠実に演奏しています。イントロのトランペットの音がとても良いですねー。そして当然のようにヴォーカルが入ります。「翼をください」のリードを務めた2人が客席へ降りてデュエットします。なかなか堂々たる歌いっぷりです。新たに考案されたのかどうかわかりませんが、ハーモニーの作り方がなかなか新鮮です。

 

「となりのトトロ〜コンサート・バンドのためのセレクション」は、久石譲の曲を人気編曲家・後藤洋氏がアレンジした作品です。たくさんの曲の繋ぎ方がとてもおしゃれで、アレンジャーのセンスの良さが随所に見ることができます。京都橘は、今期いろんなところでこれを演奏してきました。陸上自衛隊東部方面音楽隊の演奏をお聴きください。

 

 

音楽大学卒業生が大半を占める精鋭らしく、素晴らしい演奏ですね。編曲者の意図が明確に伝わる、見事な曲の解釈だと思います。

 

さて、今回の演奏は、180名による合同演奏だとアナウンスされました。入場してくるOB達の姿を目を皿のようにして見てみましたが、数名しかわかりませんでした。

始まった演奏は、180名という大編成によるリッチなサウンドで、他ではなかなか聴けないものでした。まさに「吹奏楽の醍醐味」と言える音楽体験ですね。それぞれメロディを担当する楽器が立ち上がる忙しい展開ですが、ちゃんとカメラが追っかけてくれたおかげで、OB達を随分確認できました。119期と114期のドラムメジャー、O-vils.在籍のチューバ、お気に入りだった118期のアルト・サックス、昨年の定期演奏会の「Memories Of You」でソロを担当したクラリネットなどなど。119期のメンバーはあまり印象が変わっていないので、わかりやすいですね。懐かしい顔が、いっぱいです。

そう言えば、2月に開催されたOBだけで結成されたバンドのコンサートに、現顧問が協力していたという情報がありました。その時には、今回参加できるメンバーが確定していたんでしょうね。

演奏が終わって、お辞儀と握手をする現役生とOBたち。笑顔で手を取り合って高く上げる姿に、思わず涙してしまいました。「Orange」の伝統と継承を感じる素敵な光景でした。私の聞き間違いでなければ、MCが「71期から・・・」とアナウンスしていました。計算してみると、私よりも歳上のOGも参加していることになります。歳を重ねても音楽を続けるって、良いことですね。私も楽器の練習を再開しようかしら・・・。

 

そうそう、毎年この座奏では井谷コーチが1曲指揮をすることが恒例になっていましたが、今回はそれがなかったのが残念でした。私、彼女のファンなので・・・。彼女は年末からいろんなライヴで演奏していることがSNSにアップされていたので、スケジュール的に練習に参加するのが無理だったのかもしれません。

さらに言えば、今回はプロのミュージシャンがゲスト出演していません。そんなことをすっかり忘れるくらい密度の濃い演奏会になりました。

 

 

 

 

第二部のマーチング・ステージは、スタートからの6曲が前日までに披露されたものでした。けれども、いずれの曲も「今期最後」という気迫を感じさせるものでした。全員気合いが入っていて、自然にテンポが速くなる傾向にあります。そこをドラムを中心にしたパーカッション・セクションが適正なテンポに抑えています。今期の充実度のキモは、やはりパーカッション・セクションだったことを実感します。

 

Bruno Marsの新レパートリー「Runaway Baby」を初日と2日目に披露しましたが、最終日にはそれに変わって今期の人気曲「Uptown Funk」を持ってきました。きっと部員全員も好きなのでしょう。流石の充実ぶりです。アメリカの人気編曲家Jay Bocookによるアレンジで、世界中で演奏されているのが動画サイトへの投稿の数からもわかります。どれも残念な出来なので、ここではHal Leonard Concert Bandによるガイダンス演奏をお聴きください。スコアを見ながら聴くと、音の輪郭が良くわかって楽しめます。

 

 

残念ながら、心浮き立つグルーヴ感では京都橘の圧勝です。多分、演奏だけでも現時点では世界最高でしょう。さらに振り付けを含めたら、これを超えるものは永遠に現れない気がします。是非ともBruno Marsに観てもらいたいですね。きっと気に入ってもらえるに違いありません。

 

そして、毎年恒例の3年生によるパフォーマンスです。今年は、「Amazing Grace」です。昨年のチャレンジングなアレンジの「明日に架ける橋」に比べると、正統派なアレンジの作品です。アレンジをしたのは、前述のJay Bocook氏と並ぶ人気の編曲家Jay Dawsonです。この演奏の動画を検索していると、ナッシュビルのバンドの演奏を見つけてしまいました。なんと、アレンジャーDawson氏がバグパイプで参加しているとのことで、早速見てみました。

 

 

バンドの演奏は残念なレベルですが、後半にスコットランドの衣装で登場するDawson氏はインパクト大ですね。ひょっとしてスコットランド出身の人なのかと思って調べてみたら、完全なアメリカ人、しかもナッシュビル出身でした。地元のバンドにゲスト参加していたのでした。

で、29人の3年生による演奏は、バランスも良く実に美しいものでした。カラーガードの2人も(たぶん)初めてオレンジのケープを付けてのパフォーマンスです。クライマックスのカンパニーフロントには、やっぱり涙してしまいました。実に美しいパフォーマンスでした。

 

部長の挨拶は、涙を堪えての簡潔なもので見事でした。感情過多にしない演出は、今期の最大の特徴だと思います。

 

「80日間世界一周」は、凛としているけど暖かくてエレガント。ハープの導入を含めて、私はステージマーチングの革命だと思っています。

 

そして、プログラム上の最後の曲「The Sing~Sing,Sing,Sing」が始まります。

前日と同じ「The Sing」を使っているものの、違う形の入り方。実に芸が細かくて、カッコ良いですね。

それに続いて「Sing,Sing,Sing」。堂々たる京都橘だけの「Sing,Sing,Sing」。完成形を見た気がします。

 

声を揃えての「ありがとうございました!」で、一旦プログラムは終了。

間髪入れずに始まるのが、「愛の讃歌」です。

昨期のマーチングコンテストのプログラムの1曲に過ぎなかったこの曲ですが、当時はこんな扱いになるとは誰も想像していなかったはずです。当然、編曲をした鈴木英史氏にとっても、予想外の展開でしょう。今季になってから、ローズパレード会長の来校時の演奏と台湾コンサートでのアンコールで、京都橘の新しい象徴として確信したのではないでしょうか?演奏の充実ぶりだけではなく、ステージマーチングでも美しいフォーメーションとクライマックスを作るカンパニーフロントを見せることができるナンバーとして、これからも続けて欲しい曲になりました。

 

「動」の「Sing,Sing,Sing」と、「静」の「愛の讃歌」。

京都橘の現在を象徴する対照的な2曲。

京都橘は、切れ味鋭い「双刃の剣」を手に入れた!と私は確信するのです。皆さん、いかがでしょう?

 

 

京都橘の定期演奏会と言えば、これ。部員全員が観客へ挨拶する「Sailing」。いつから始まったのか不明ですが、もはや橘の「伝統」とも言うべきナンバーです。

挨拶をするセクションが演奏からすっぽり抜けるんですが、それを全く感じさせないメロディの受け渡し。そしてフォーメーションの美しさには、毎年感心させられます。そしてドラムメジャーの満面の笑顔での敬礼で大団円。美しい。

 

感情豊かだけど簡潔な顧問の挨拶も、毎年ながら感服です。

 

3年生をひとりひとり送り出す「青春の輝き(I Need To Be In Love)」も、もう定番になりましたね。

リハーサル不足なのか感情の高ぶりのせいなのかわかりませんが、出だしと部長を送った後の曲調の転換の際に演奏が乱れます。それでも崩壊しないのが、京都橘です。

送り出される3年生は顧問とグータッチするのですが、その際の様子が私が想像していたそれぞれのキャラにぴったりでとても楽しかったです。中でも印象的だったのは、カラーガードの部員です。フラッグを持たずに、スーザフォンを抱えて去って行きます。驚きましたが、彼女の強いアイデンティティを感じて、感動してしまいました。

 

この曲のオリジナル、Carpentersによるライヴ・ヴァージョンを卒業生へお届けします。

 

 

 

 

 

どうしても感情過多になってしまいがちな卒業公演ですが、今回の京都橘の定期演奏会は手作り感はありながらも緻密な構成力で組み立てられた見事なコンサートでした。このバランス感覚が今期の最大の特徴でした。

爽やかで楽しくて感動的なショーは、彼らのファンでなくても存分に楽しめるものだったはずです。

 

 

最後に、大きなイヴェントの度に京都橘を取材してくれている関西テレビが、最終日に密着取材した動画で楽しみたいと思います。

 

 

部員たちにとっても、大切な記録になることでしょう。何度見ても涙してしまいます。

 

 

3日間開催する意味のある構成で、心底堪能できました。

部員たちをはじめ、この舞台に関わった全ての人々に心からの賛辞と感謝を述べたいと思うのです。

日本全国で桜が咲き誇っています。

私の自宅から徒歩3分の公園へ、桜を見に行きました。

 

 

ここの桜も、実に美しいです。知られた場所ではありませんが、穴場のスポットだと思っています。平日にもかかわらず、青空に映える桜を楽しもうと家族で訪れている人たちがいっぱいでした。

 

 

 

 

京都橘高校吹奏楽部の第60回記念定期演奏会の2日目「White」です。

この日は余裕を持って配信の時間に間に合いました。後の情報によると前日もあったらしいのですが、開演前に顧問の兼城先生の挨拶があります。ごくごく普通のスーツ姿です。

そして、開演前の「マナー講座」です。生徒たちの発案・構成によるものだそうです。

最初は普通の「お願い」ですが、だんだん様子がおかしくなってきます。パーカッションの3年生男子二人によるコント仕立ての小芝居は、とても楽しいものでした。二人のコンビネーションは、実に見事なものです。以前のイヴェントでは二人で漫才をやったというレポートもあったのですが、予想以上に息ぴったりでしたね。

 

いよいよ開演です。

「White」のサブタイトルにふさわしい白い(薄いグレーか?)タキシードに着替えて顧問が登場します。

最初の曲は、團伊玖磨作曲の「祝典行進曲」です。典雅な雰囲気と親しみ易いメロディを持つ、私が大好きな曲です。古関裕而作曲の「オリンピック行進曲」と共に、我が国が世界に誇るマーチの名曲だと思います。

ここでは、秋山和慶指揮の洗足学園音楽大学の演奏をお聴きください。

 

 

作曲の團伊玖磨氏は、1924年4月7日生まれ。生誕100年になります。全くの偶然ですが、ちょうど100年前ですね。團さん、誕生日おめでとうございます。

彼はクラシック音楽をベースにして、様々なタイプの曲を無数に作曲しました。メディアに顔を出す機会がそれほど多くなかったので一般的な知名度はありませんが、聞けば誰でも知っているような歌曲や童謡も多くあります。私は、中学校の吹奏楽部時代に、彼の作品の初演の舞台にも立ちました。

そうそう、女優・モデルとしてテレビでも活躍している團遥香は、彼の孫です。

 

ここで、MCです。前日には気付かなかったのですが、彼女は白のユニフォームの右袖だけを肘までたくし上げています。違和感を感じたのですが、考えてみれば彼女はホルン担当。右腕の袖は、演奏上とても邪魔になるんですよね。

 

 

「ホープタウンの休日」は、前日に披露した「セドナ」と同じくSteven Reinekeの手になる吹奏楽の人気曲です。京都橘は、以前に定期演奏会でも演奏しています。

このDVDに収録されています。

 

 

ホルン、トロンボーン、ユーフォニアムといった中音域の活躍が目立つ曲です。特に、今期の京都橘が誇るホルン・セクションが吠えまくっているのが印象的です。

立命館大学応援団吹奏楽部の演奏をご覧ください。

 

 

中盤のクラリネットのソロから、フルートとのデュエットへ繋がるパートが美しいです。そして、クライマックスのチャイム(「のど自慢」の鐘ですね。)の連打が気分を上げてくれます。世界中で演奏されていますが、京都橘によるここでの演奏はトップクラスだと断言できる素晴らしさです。

 

「魔女の宅急便」セレクションは、久石譲の曲を森田一浩氏が構成・アレンジしたものです。耳に馴染んだ可愛いメロディもありますが、難易度高めのシンフォニックなセクションがダイナミックな展開を作っています。通して聴くと、とてもカラフルなメドレーになっています。

京都新聞から彼らの練習の様子がアップされました。収録が4月1日となっていますが、実際は定期演奏会へ向けての練習の時でしょう。この曲の一番難しいところが取り上げられています。

 

 

卒業生も参加してるので、3月中のものでしょうね。

 

この日だけのパフォーマンス「ピンク・レディー・メドレー」は、珍しく彼らの「高校生らしさ」が出た演出でした。

オリジナルに忠実な編曲ですが、演奏は驚くほどまとまっています。男女二人づつのダンサーが、ピンクレディーの振り付けをコピーして踊ります。男子の赤いジャケットは、以前の座奏用のユニフォームでしょうか?全員ちゃんと踊れているのですが、こういう場合は本家よりも派手な動きをしないと意味がありません。ちょっと恥ずかしさも入ったダンスは、他の中学、高校の演奏会でも見たことのあるレベルですね。やはり、彼らも普通の高校生。それに気付いてホッとしている自分に驚いてしまいます。

このメドレーの各曲の作曲は、全て都倉俊一氏。日本の歌謡史に名を残す名作曲家ですが、現在は文化庁の長官です。東京から京都へ移転した文化庁。その節目のイヴェントに京都橘は参加しています(2018年の寺町パレードと、2023年のイヴェント)。都倉氏が京都をベースに活動しているのは間違いないので、ひょっとしたらこの日の演奏会に招待されていたのかもしれませんね。

 

そして、ここで京都橘特製クッキーをかけたクイズと抽選会です。まぁ、全国の中高生の定期演奏会でもおなじみのコーナーですね。

この日の来場者に、開演前にクイズに答えてもらっていて、ステージでその正解発表を行うという形です。前日での最大のサプライズだった「Down By The Riverside」を、ここでまた演るとは!

パーカッションとチューバが舞台上にスタンバイして、ドラムメジャーの笛を合図に客席後方から演奏しながら入場してきます。前日とは似て非なる演出で、「これぞ京都橘のDown By The Riverside!」と、心踊る展開です。ステージと客席後方との距離があるために音がずれてしまっているのが残念ですが、すぐに修正してしまう京都橘の底力に唸らされます。白いコンサート・ユニフォームでの演奏は、初の試みですね。カラーガードが持つ京都橘を象徴する旗が、白いユニフォームに映えます。全員がステージ上に揃ったところで、パレードの顔とも言うべきバナーが舞台袖から登場します。実に、美しい。白いユニフォームだからこそ色彩がクローズアップされます。この演出を見せるためのクイズだったんですね。なんという構成力なのでしょう。2日目のサブテーマ「White」は、これだったのではないかと私は思っています。

 

第一部を締めくくるのは、神村学園とのジョイント・コンサートでお披露目されて以来、ことあるごとに演奏された「翼をください」です。やはり何度聴いても宮川彬良のアレンジが素晴らしいですねー。ケレン味たっぷりのやり過ぎとも思える彼のアレンジは、私は大好きです。演奏者の数を減らしても更に充実した京都橘の演奏は、実に素晴らしいです。リード・ヴォーカルの二人も、本番を重ねて堂々たる歌いっぷりです。ハーモニーが美しいですね。

 

 

 

第二部のマーチング・ステージは、最初の4曲は初日と全く同じ流れです。

「I Can't Turn You Loose」は初めて見るユニークなステップが満載で、来期のステージで披露されるのが楽しみになります。曲の終わりは、京都橘の伝統芸でもあるバラバラなポーズでのストップモーションです。

 

 

「Think」は、「I Can't Turn You Loose」と同じく、映画「ブルース・ブラザーズ」からの選曲です。R&Bの女王Aretha Franklinの数あるヒット曲の中の1曲ですね。「ブルース・ブラザーズ」にもゲスト出演してこの曲を歌っているのです。

 

 

まぁ、このパワフルな歌声を吹奏楽で再現するのは無理な話でしょう。また違ったアプローチが必要ですね。京都橘のアプローチはArethaのイメージからは離れて、お得意の「ぴょんぴょん」を中心にした「KT印」の組み立てです。更に、大胆なステップも披露して驚かせてくれます。

 

オレンジのユニフォームに着替えてからの一曲目は、すっかりお馴染みになった「Celebration」です。演奏もダンスも充実していて、部員たちも大好きだということが伝わってくる充実のパフォーマンスです。

 

 

さて、この3日間の公演で触れておかなくてはいけないことは、カメラワークの素晴らしさです。

それぞれのカメラマンも見事ですが、スイッチング(場面の切り替え)が抜群です。明らかに譜面を見ながらどこにスポットを当てるかを理解しています。当日の通しリハーサルで、その手順は確定されていたはずです。これをライヴ配信で完璧にできるのは、プロ中のプロですね。おかげで、京都橘のパフォーマンスを存分に楽しめました。撮影スタッフの皆さんに、心から感謝です。

そうそう、「My Way」ではホルン・ソロをアップで捉える際に、徐々にピントを合わせるテクニックも披露してくれています。また、ハープをアップで捉えるシーンでは、プレイ終わりに笑顔になる瞬間までしっかり見せてくれます。

 

 

一緒に見ていた私の弟は、様々なイヴェントの撮影や編集もするプロなのですが、「自分には、とてもできない。」と感服していました。

 

初日に続いての「Runaway Baby」は、京都橘としては(たぶん)初めてのサイレンの使用も画期的です。私としては、神戸弘陵がやっているように全力で手回しして欲しいと思ってしまうのですが、スイッチでサイレンの音を出すスマートさが橘らしさなのかもしれませんね。

この曲の最初のメロディを奏でるトロンボーンとユーフォニアムの左右へ向くフォーメーションは割とありがちですが、京都橘では初めて見るような気がします。なかなか新鮮な画です。

 

更に、カラーガードによるジャンピング・ハイキックも初めて目にするものです。これも来期のイヴェントの目玉になるかもしれません。

 

「80日間世界一周」は、1956年のアメリカ映画の主題曲です。私も随分昔に観たのですが、ほとんど覚えていません。けれども、この音楽だけは体に染み付いています。大好きな曲です。岩井直溥氏のアレンジが、実に素晴らしいです。東京佼成ウインドオーケストラの演奏でお聴きください。

 

 

京都橘の演奏は、これよりもずっとエモーショナルで私のお気に入りです。特に、サックスのオブリガート(メロディのバックに流れる対旋律)が素敵です。

 

そしてこの日の最後を締めくくるのは、「The Sing~Sing,Sing,Sing」です。

今期のマーチング・コンテストのプログラムの中でも印象的だった「The Sing」の最初の部分を導入部にして、十八番の「Sing,Sing,Sing」が始まります。今期の充実ぶりを示す、貫禄のパフォーマンスです。

 

 

 

この2日目はゲストもなく、部員たちが構成するステージをじっくり楽しめました。

中高生のステージにありがちな「グズグズになる」ところが一切なく、よく考えて構成された見事なコンサートでした。どんな場面においてもとても洗練されたものを作り上げるところは、今期の大きな特徴だと思っています。

中高生がコンサートの構成を考える場合にお手本となるような、見事な演奏会でした。

 

とても爽やかな印象を残して、最終日への期待を膨らませるのでした。

 

第60回記念の京都橘高校定期演奏会を、私はライヴ配信で3日間楽しみました。

 

 

今回も事前にプログラムも発表されて、いろいろ予想しながら本番を待っていたのでした。

 

今回は3日間公演。それぞれ「Blue」「White」「Orange」というテーマが付けられて、違ったプログラムで構成されました。

日によって演奏曲目が違うので、発表されたプログラムはとても見辛いです。まぁ、仕方ないですが。

3日間で演奏された曲は、のべ35曲プラス・アルファ。昨年の23曲と比較すると、1、5倍です。本番までにこれらを仕上げるのは、とんでもなく大変だったことは容易に想像できます。

 

 

ということで、3月22日に開催された定期演奏会初日「Blue」と題されたステージが始まります。

演奏会に集中するために雑多なことを終わらせた私がPCの前に座ったのは、開演直前でした。

定刻通りに白いユニフォーム姿の部員たちが入場してきます。コンサート・ミストレスを務めるドラムメジャーのクラリネットの音に導かれて、チューニングと暫しの音出し。他のオーケストラのコンサートでも、この瞬間が大好きなんです。これから始まる演奏への期待感が高まりますよね。

 

登場した顧問の兼城先生の姿を見た私は、「えらくカジュアルだなぁ」と感じたのでした。なにしろ、シャツの首元が閉じてなかったので、そんな印象を持ったのです。けれども、開いた襟元には、アスコット・タイが見えました。日本ではあまり見かけませんが、基本的にはかなりフォーマルなネクタイなのです。さすが、TPOは心得ていらっしゃる。

 

 

1曲目は、今期のマーチング・コンテストのプログラムです。多分、今年になって初めての演奏だと思われますが、全体のリズムの乱れが少しだけ気になります。それにも拘らず、マーチ「木陰の散歩道」でのスネア・ドラムはとても素晴らしいです。

 

続いての曲は、ラフマニノフ作曲の「パガニーニの主題による狂詩曲」です。

ピアノとオーケストラによる演奏は大好きですが、吹奏楽版をしっかり聴くのはほぼ初めてです。吹奏楽アレンジは、人気編曲家の森田一浩氏。圧倒的な管楽器の数を生かしたダイナミックなアレンジは、実に見事です。京都橘の演奏も、文句の付けようのない表現です。表情豊かなクラリネットのソロで始まる通称「アダージョ」と呼ばれるパートのメロディが、一番一般的に知られていますね。私がこの曲を大好きになったのは、1980年のアメリカ映画「ある日どこかで(Somewhere In Time)」で印象的に使われたことがきっかけでした。

 

 

私にとって「生涯のベスト10」に入るSFファンタジーです。観たことのない方は、是非一度お試しを。原田知世主演の「時をかける少女」がお好きな方なら、きっと気に入ってもらえると思います。

 

続くクラシック曲は、プッチーニ作曲のオペラ「トゥーランドット」です。

オペラの作曲家として数多くの作品を残しているプッチーニですが、日本を舞台にした「蝶々夫人」と対をなす「トゥーランドット」は、中国が舞台です。後藤洋氏による吹奏楽アレンジは、各地の吹奏楽団で演奏されています。京都橘の演奏でも、中国風のパーカッションを使用したりして、エキゾチックな雰囲気を加えています。

有名なメロディが満載のこのオペラで最も有名なのが、終盤で演奏されているアリア「誰も寝てはならぬ」でしょう。京都橘の演奏も良く唄っていて、その出来の素晴らしさに驚きました。座奏に力を入れている近年の京都橘の実力を発揮した、集大成とも言える演奏です。

 

MCの元気な声で始まるのは、ポップス・ステージです。

まずは、お馴染みの「スーパー・マリオ・ブラザーズ」です。

今期も散々演奏してきた大人気のナンバーですが、ここでの演奏は更にソリッドになっています。特に、パーカッション・セクションの充実ぶりが耳に残ります。

 

ここで、この日だけの特別プログラム、中学生合同ステージがアナウンスされます。舞台上の席の準備中に演奏されるのが、アニメ「ワンピース」の主題歌「We Are!」です。

マルチタム担当の彼のヴォーカルは本番を重ねて堂々たるもので、全く不安を感じさせません。まるでスター歌手のように客席の通路で歌う姿には、思わず笑みがこぼれてしまいます。舞台上から観客の視線をそらすための演出も、実に見事でした。

 

演奏の終わりと同時に椅子のセッティングが終わって、中学生の入場です。舞台の両袖から登場するものと思っていたら、いきなり「Down By The Riverside」が始まります。京都橘の部員達による渾身の演奏で、客席後方から通路を歩いて中学生達が入場して来ます。なんとまあ、立体的な演出なんでしょう!パレードの時よりずっとパワー・アップしたパーカッション隊の華麗な響きもあって、この曲の新たな魅力を発見した気分です。この演出は、初日の最大のサプライズでした。

 

さて、中学生を含めて170名を越えるバンドでの演奏が始まります。

最初は、吹奏楽における現代の人気作曲家Steven Reinekeによる最も人気の曲「セドナ」です。

私の記憶では、以前にも京都橘はこの曲を演奏していたのを見たような気がするんですが、いつのものだったか思い出せません。いずれにしろ、この明るくて心踊るサウンドにわかりやすいメロディは、京都橘のイメージにピッタリだと思うのです。いかがでしょう?私が大好きなJohn Williamsの作品にも通じる万人受けする曲調を作り出す人物が気になって調べてみたら、私より10歳も年下でした。現在は、最もアメリカらしいポップ・クラシカルを演奏するシンシナティ・ポップス・オーケストラの編曲家として活躍しているらしいです。

顧問の兼城先生の母校の吹奏楽部の演奏をお聴きください。

 

 

各パートのソリが多くて、絶好の選曲だと思います。懸命な中学生と優しく見守る京都橘の部員たち。この明るい曲で涙するとは、自分でも意外な驚きでした。予想以上に分厚いサウンドで、私が今までに聴いた「セドナ」の中でもトップクラスの出来だと思いました。

 

もう一曲は、岩井直溥編曲の「ディズニー・メドレー」です。現在でもどんどん作られている「ディズニー・メドレー」ですが、このアレンジは数多あるメドレーの中でも最も古いもののひとつだと思います。立命館大学応援団吹奏楽部の演奏をご覧ください。

 

 

いかにも岩井直溥氏らしい個性あふれるおしゃれなアレンジが魅力的です。特に、パーカッションが大活躍ですね。今回の演奏では、目立つところを中学生に任せて京都橘の部員はそれを見守るスタンスでした。

 

この中学生合同ステージは、私の期待を遥かに超える充実したものになりました。この参加者の中からどれだけの「オレンジの悪魔」が生まれるのか、もう期待しかありません。

 

ここまで、1時間を遥かに超えるステージ。満足の第一部でした。

 

 

 

 

20分の休憩を経て、第二部「マーチング・ステージ」の開幕です。

「伝統」と「革新」が現在の京都橘の両輪だと思っているのですが、マーチング・ステージのスタートは、その「伝統」を引き継いで青いユニフォームで「Winter Games」です。いつもと変わらない演出ですが、最初のフォルティッシモで鳥肌が立つのはなぜなんでしょう?これを超えるオープニングには、当分出会えない気がします。

 

本番の写真や動画はほとんどありませんので、ここからはいつも素敵なイラストを投稿されているフラワークラウンさんの作品を織り込みながら、パフォーマンスを紹介していきたいと思います。

 

「Winter Games」の「ヘイッ!」から間髪置かずに始まるのが、松田聖子の最初のヒット曲「青い珊瑚礁」です。

この曲は1月に開催された「フィールドアート」でお披露目されたという情報だけを得ていて、きっと定期演奏会のプログラムに入るだろうと期待していました。正統派のアレンジでオリジナルをなぞった構成の編曲ですが、振り付けがなかなか凝っています。前期の人気曲「ラムのラブソング」にも似た可愛い振り付けもあるのですが、全体的にはクールな印象なのが意外でした。

 

 

そして、ここからラストまで、年末のアメリカ遠征のプログラムの候補曲が続きます。多分、ここから数曲は間違いなく演奏されることになるでしょう。

 

Otis Reddingの名曲「I Can't Turn You Loose」は、10年前の伝説のステージでもパフォーマンスされたものです。さらには2018年には「The Blues Brothers Revue」の一部として演奏されました。

日本で広く知られるようになったのは、やはり映画「ブルース・ブラザース」で使われたことからでしょう。映画のサウンドトラックから、お聴きください。

 

 

京都橘のパフォーマンスは、初めて見るステップも所々にあって、ブラッシュアップしていったらアメリカでも絶対ウケるものになりそうです。

この曲の演奏で、私が最も好きなのはThe Gadd Gangによるカヴァーです。

 

 

実にカッコ良いですねー。目指せ、このグルーヴ!会場がダンスフロアになること、間違いなし!

 

George Gershwinの名作オペラ「ポーギーとベス」からのスタンダード・ナンバー「Summertime」は、岩井直溥氏のアレンジです。トロンボーンのソロから始まります。良い音ですねー。もっと自分のものにしてブルース・フィーリングが出せれば満点のプレイです。

リズムインしてからの振り付けが、私のお気に入りです。橘お得意の「ぴょんぴょん」したくなるリズムなんですが、ここでは敢えてアダルトでおしゃれな振り付けにしています。これは、実にカッコ良い。カラーガードのステッキを使ったダンスも、おしゃれです。

 

 

そして、今期を代表するナンバー「September」です。ピアノが作り出すサルサのリズムと、今期一番目立っていた強力なサックス・セクションをフィーチャーしたパフォーマンスは、追随を許しません。他の誰も真似できない完璧なステージです。

 

 

ドラムメジャーの明るい声のMCから、舞台は暗転して祝電の披露です。

当然のように、台湾の蔡英文総統からの祝電が最初です。彼女の任期もあとわずか。来期はどうなるんでしょう?その後も、各地の吹奏楽部や関係のある自治体の長からの祝電が続きます。京都橘の交流の多彩さを再認識させられます。

この長い暗転の間にオレンジのユニフォームに着替えて、後半のステージが開幕します。

 

ノーランズのヒット曲「ダンシング・シスター(I'm In The Mood For Dancing)」は、1、2年生のパフォーマンスです。当然、来期のドラムメジャーが指揮をしています。来期の定番のナンバーになるんでしょうか?かなり出来上がっている印象です。

 

今期、日本でも台湾でも評判になったのが、フランク・シナトラのヒット曲「My Way」です。

ホルンのソロも橘の歴史で記憶にない珍しいもので、注目を浴びました。

 

ハープも加えたフル・パフォーマンスですが、話題になったカニちゃんはベースを弾いていません。こういったところが、定期演奏会のおもしろさです。ファンにとって「定番」と思っていることを軽〜く裏切ってくれるのも、毎年楽しみにしていることなのです。後半では、ドラムメジャーのメイス捌きも楽しめます。

この曲はMCも語っていたように、フランスの曲です。作者が歌っている動画がありました。

 

 

これを聴くと、やはりシャンソンですね。

これを聴いたアメリカのシンガー・ソングライターPaul Ankaが新たな歌詞をつけて歌ったのがフランク・シナトラだったのです。それが大ヒットしたため、この曲をフランスの曲だと思う人は多くありません。イギリスの曲がフランスのご当地ソングになった「オー・シャンゼリゼ」と同じような経緯ですね。

作詞を担当したPaul Ankaの歌をお聴きください。

 

 

私個人的には、フランク・シナトラの歌よりも好きです。

 

そして、今期のプログラムの中で私が最も好きだったのが「君の瞳に恋してる」です。

カラーガードを中心にして、可愛さが渋滞する記憶に残る振り付けです。

 

 

カラーガードは、完全にチアガールのような振り付けだし、演奏しているメンバーも実に楽しそうです。日本では熱帯JAZZ楽団のヴァージョンが主流になっていますが、オリジナルに近い金山徹氏のアレンジを採用したことが京都橘の個性を引き出すことになっています。

 

ここで、部長の挨拶を挟んで、クライマックスへ突入します。

 

「Runaway Baby」は、既にいろんな吹奏楽団が演奏していて、京都橘はかなり後発といった感じですね。けれども、なかなかカッコ良い振り付けになっています。出雲商業がやっている右足を後ろへ跳ね上げる振り付けは、オリジナルのBruno Marsがやっていた印象的なものなので、当然のように京都橘でも取り入れています。

この曲は、当然来期のメイン・プログラムのひとつになるでしょうし、アメリカ遠征においても有力な候補になるでしょう。

 

そして、前回の定期演奏会以来、1年ぶりの「Memories Of You」です。

今回のクラリネット・ソロは、初めての部員が担当します。緊張していることは手に取るようにわかるんですが、なかなか堂々としたプレイです。バックのハーモニーも美しく、エモーショナルに歌い上げていて完璧な出来です。

 

バスタムのジャングル・ビートから始まる「Sing,Sing,Sing」は、いつもながら見事です。とてもソリッドなサウンドで、今期の集大成としてのパフォーマンスです。

今期の通常のパターンで終わったのは、ちょっと拍子抜けしてしまいました。サプライズのアンコールを軽く入れても良かった気がします。

 

それにしても、全体の構成がしっかりと組み立てられていて、充実の初日のステージでした。

残り2日への期待感が高まる幕切れでした。