洗練さで魅了する、定期演奏会二日目。 | "楽音楽"の日々

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音楽、映画を中心にしたエンタテインメント全般についての思い入れと、日々の雑感を綴っていきます。

日本全国で桜が咲き誇っています。

私の自宅から徒歩3分の公園へ、桜を見に行きました。

 

 

ここの桜も、実に美しいです。知られた場所ではありませんが、穴場のスポットだと思っています。平日にもかかわらず、青空に映える桜を楽しもうと家族で訪れている人たちがいっぱいでした。

 

 

 

 

京都橘高校吹奏楽部の第60回記念定期演奏会の2日目「White」です。

この日は余裕を持って配信の時間に間に合いました。後の情報によると前日もあったらしいのですが、開演前に顧問の兼城先生の挨拶があります。ごくごく普通のスーツ姿です。

そして、開演前の「マナー講座」です。生徒たちの発案・構成によるものだそうです。

最初は普通の「お願い」ですが、だんだん様子がおかしくなってきます。パーカッションの3年生男子二人によるコント仕立ての小芝居は、とても楽しいものでした。二人のコンビネーションは、実に見事なものです。以前のイヴェントでは二人で漫才をやったというレポートもあったのですが、予想以上に息ぴったりでしたね。

 

いよいよ開演です。

「White」のサブタイトルにふさわしい白い(薄いグレーか?)タキシードに着替えて顧問が登場します。

最初の曲は、團伊玖磨作曲の「祝典行進曲」です。典雅な雰囲気と親しみ易いメロディを持つ、私が大好きな曲です。古関裕而作曲の「オリンピック行進曲」と共に、我が国が世界に誇るマーチの名曲だと思います。

ここでは、秋山和慶指揮の洗足学園音楽大学の演奏をお聴きください。

 

 

作曲の團伊玖磨氏は、1924年4月7日生まれ。生誕100年になります。全くの偶然ですが、ちょうど100年前ですね。團さん、誕生日おめでとうございます。

彼はクラシック音楽をベースにして、様々なタイプの曲を無数に作曲しました。メディアに顔を出す機会がそれほど多くなかったので一般的な知名度はありませんが、聞けば誰でも知っているような歌曲や童謡も多くあります。私は、中学校の吹奏楽部時代に、彼の作品の初演の舞台にも立ちました。

そうそう、女優・モデルとしてテレビでも活躍している團遥香は、彼の孫です。

 

ここで、MCです。前日には気付かなかったのですが、彼女は白のユニフォームの右袖だけを肘までたくし上げています。違和感を感じたのですが、考えてみれば彼女はホルン担当。右腕の袖は、演奏上とても邪魔になるんですよね。

 

 

「ホープタウンの休日」は、前日に披露した「セドナ」と同じくSteven Reinekeの手になる吹奏楽の人気曲です。京都橘は、以前に定期演奏会でも演奏しています。

このDVDに収録されています。

 

 

ホルン、トロンボーン、ユーフォニアムといった中音域の活躍が目立つ曲です。特に、今期の京都橘が誇るホルン・セクションが吠えまくっているのが印象的です。

立命館大学応援団吹奏楽部の演奏をご覧ください。

 

 

中盤のクラリネットのソロから、フルートとのデュエットへ繋がるパートが美しいです。そして、クライマックスのチャイム(「のど自慢」の鐘ですね。)の連打が気分を上げてくれます。世界中で演奏されていますが、京都橘によるここでの演奏はトップクラスだと断言できる素晴らしさです。

 

「魔女の宅急便」セレクションは、久石譲の曲を森田一浩氏が構成・アレンジしたものです。耳に馴染んだ可愛いメロディもありますが、難易度高めのシンフォニックなセクションがダイナミックな展開を作っています。通して聴くと、とてもカラフルなメドレーになっています。

京都新聞から彼らの練習の様子がアップされました。収録が4月1日となっていますが、実際は定期演奏会へ向けての練習の時でしょう。この曲の一番難しいところが取り上げられています。

 

 

卒業生も参加してるので、3月中のものでしょうね。

 

この日だけのパフォーマンス「ピンク・レディー・メドレー」は、珍しく彼らの「高校生らしさ」が出た演出でした。

オリジナルに忠実な編曲ですが、演奏は驚くほどまとまっています。男女二人づつのダンサーが、ピンクレディーの振り付けをコピーして踊ります。男子の赤いジャケットは、以前の座奏用のユニフォームでしょうか?全員ちゃんと踊れているのですが、こういう場合は本家よりも派手な動きをしないと意味がありません。ちょっと恥ずかしさも入ったダンスは、他の中学、高校の演奏会でも見たことのあるレベルですね。やはり、彼らも普通の高校生。それに気付いてホッとしている自分に驚いてしまいます。

このメドレーの各曲の作曲は、全て都倉俊一氏。日本の歌謡史に名を残す名作曲家ですが、現在は文化庁の長官です。東京から京都へ移転した文化庁。その節目のイヴェントに京都橘は参加しています(2018年の寺町パレードと、2023年のイヴェント)。都倉氏が京都をベースに活動しているのは間違いないので、ひょっとしたらこの日の演奏会に招待されていたのかもしれませんね。

 

そして、ここで京都橘特製クッキーをかけたクイズと抽選会です。まぁ、全国の中高生の定期演奏会でもおなじみのコーナーですね。

この日の来場者に、開演前にクイズに答えてもらっていて、ステージでその正解発表を行うという形です。前日での最大のサプライズだった「Down By The Riverside」を、ここでまた演るとは!

パーカッションとチューバが舞台上にスタンバイして、ドラムメジャーの笛を合図に客席後方から演奏しながら入場してきます。前日とは似て非なる演出で、「これぞ京都橘のDown By The Riverside!」と、心踊る展開です。ステージと客席後方との距離があるために音がずれてしまっているのが残念ですが、すぐに修正してしまう京都橘の底力に唸らされます。白いコンサート・ユニフォームでの演奏は、初の試みですね。カラーガードが持つ京都橘を象徴する旗が、白いユニフォームに映えます。全員がステージ上に揃ったところで、パレードの顔とも言うべきバナーが舞台袖から登場します。実に、美しい。白いユニフォームだからこそ色彩がクローズアップされます。この演出を見せるためのクイズだったんですね。なんという構成力なのでしょう。2日目のサブテーマ「White」は、これだったのではないかと私は思っています。

 

第一部を締めくくるのは、神村学園とのジョイント・コンサートでお披露目されて以来、ことあるごとに演奏された「翼をください」です。やはり何度聴いても宮川彬良のアレンジが素晴らしいですねー。ケレン味たっぷりのやり過ぎとも思える彼のアレンジは、私は大好きです。演奏者の数を減らしても更に充実した京都橘の演奏は、実に素晴らしいです。リード・ヴォーカルの二人も、本番を重ねて堂々たる歌いっぷりです。ハーモニーが美しいですね。

 

 

 

第二部のマーチング・ステージは、最初の4曲は初日と全く同じ流れです。

「I Can't Turn You Loose」は初めて見るユニークなステップが満載で、来期のステージで披露されるのが楽しみになります。曲の終わりは、京都橘の伝統芸でもあるバラバラなポーズでのストップモーションです。

 

 

「Think」は、「I Can't Turn You Loose」と同じく、映画「ブルース・ブラザーズ」からの選曲です。R&Bの女王Aretha Franklinの数あるヒット曲の中の1曲ですね。「ブルース・ブラザーズ」にもゲスト出演してこの曲を歌っているのです。

 

 

まぁ、このパワフルな歌声を吹奏楽で再現するのは無理な話でしょう。また違ったアプローチが必要ですね。京都橘のアプローチはArethaのイメージからは離れて、お得意の「ぴょんぴょん」を中心にした「KT印」の組み立てです。更に、大胆なステップも披露して驚かせてくれます。

 

オレンジのユニフォームに着替えてからの一曲目は、すっかりお馴染みになった「Celebration」です。演奏もダンスも充実していて、部員たちも大好きだということが伝わってくる充実のパフォーマンスです。

 

 

さて、この3日間の公演で触れておかなくてはいけないことは、カメラワークの素晴らしさです。

それぞれのカメラマンも見事ですが、スイッチング(場面の切り替え)が抜群です。明らかに譜面を見ながらどこにスポットを当てるかを理解しています。当日の通しリハーサルで、その手順は確定されていたはずです。これをライヴ配信で完璧にできるのは、プロ中のプロですね。おかげで、京都橘のパフォーマンスを存分に楽しめました。撮影スタッフの皆さんに、心から感謝です。

そうそう、「My Way」ではホルン・ソロをアップで捉える際に、徐々にピントを合わせるテクニックも披露してくれています。また、ハープをアップで捉えるシーンでは、プレイ終わりに笑顔になる瞬間までしっかり見せてくれます。

 

 

一緒に見ていた私の弟は、様々なイヴェントの撮影や編集もするプロなのですが、「自分には、とてもできない。」と感服していました。

 

初日に続いての「Runaway Baby」は、京都橘としては(たぶん)初めてのサイレンの使用も画期的です。私としては、神戸弘陵がやっているように全力で手回しして欲しいと思ってしまうのですが、スイッチでサイレンの音を出すスマートさが橘らしさなのかもしれませんね。

この曲の最初のメロディを奏でるトロンボーンとユーフォニアムの左右へ向くフォーメーションは割とありがちですが、京都橘では初めて見るような気がします。なかなか新鮮な画です。

 

更に、カラーガードによるジャンピング・ハイキックも初めて目にするものです。これも来期のイヴェントの目玉になるかもしれません。

 

「80日間世界一周」は、1956年のアメリカ映画の主題曲です。私も随分昔に観たのですが、ほとんど覚えていません。けれども、この音楽だけは体に染み付いています。大好きな曲です。岩井直溥氏のアレンジが、実に素晴らしいです。東京佼成ウインドオーケストラの演奏でお聴きください。

 

 

京都橘の演奏は、これよりもずっとエモーショナルで私のお気に入りです。特に、サックスのオブリガート(メロディのバックに流れる対旋律)が素敵です。

 

そしてこの日の最後を締めくくるのは、「The Sing~Sing,Sing,Sing」です。

今期のマーチング・コンテストのプログラムの中でも印象的だった「The Sing」の最初の部分を導入部にして、十八番の「Sing,Sing,Sing」が始まります。今期の充実ぶりを示す、貫禄のパフォーマンスです。

 

 

 

この2日目はゲストもなく、部員たちが構成するステージをじっくり楽しめました。

中高生のステージにありがちな「グズグズになる」ところが一切なく、よく考えて構成された見事なコンサートでした。どんな場面においてもとても洗練されたものを作り上げるところは、今期の大きな特徴だと思っています。

中高生がコンサートの構成を考える場合にお手本となるような、見事な演奏会でした。

 

とても爽やかな印象を残して、最終日への期待を膨らませるのでした。