記
木と布でできた巣に生きた。
理屈などなくただ毒を与えられ続け
想うことと引き換えに考えることを得た。
思考は複雑さを越え
一生かけても届かない、事象の裏側を見るに至った。
だが何も想わなかった。
思考はますます神に近づき、
その見えざる腕で無機質に神秘を掴み取っていくが
そこには誰もいなかったし、輝きは何もなかった。
そうしてやがてそこは倉庫となった。
あらゆる真理の欠片が集うその場所は
木と布でできていた。
記
ますます加速が進む日々の中で
自分自身が正しくなっていくのを感じる。
人と人のつながりにおいて大切なことを学んでいくのを感じる。
同時に
そのために削ぎ落とすものの中に
生きる上で何の役にも立たないどころか邪魔にさえなるけれど
失えばきっと二度と手に入らないであろう何かが混じっているのを見た。
記
一日が速やかに終わるようになったのはいつからだったか。
夜を隔てた昨日と今日と明日がつながっていると意識しなくなったのは
いつからだったか。
正常な世界の脆さに気付いたのはいつだったか。
明日が来ることを疑わなくなったのはいつからだったか。
記
過ぎた日は確かに幻であったが
その点から伸びる線が未だここにつながっていたならば
この線が切れるまで今という点は幻と現実を溶かしたものとなる。
ここにないものさえ再生できる、過去を保存する唯一のデバイス。
遠い過去は遠い点に。
しかし、この線が届くならば、その場で過去は現実となる。
記
痛みに高揚する。
痛い。
幸せの次には必ず孤独があることを発見した誰かが
それを逆手に取った。
彼は世界中の不幸を背負うことで神を見る。
痛みを感じていた。
反発する曲線の法則を利用して
考えられる限界の高さから飛んだ。
空。彼は確かに神を見た。
そして彼はその法則により
地面深くに叩き込まれた。
全て承知の上だった。
痛みこそ我なり。
彼は笑った。
記
東京の夜空の星という例えは少し陳腐な気がするが
まさにそれはぴったりとくる。
絶望と希望の比率。
大きな灰色の虚無と絶望に
それでも希望は気まぐれに降る。
しかも雪のようにじゅっと溶ける。
一瞬の喜びは速やかに呑み込まれていくが
それでもしぶとく、時々現れてはまた消える。
生きながらえさせる光。
それを星座の如く紡いで生きていくのが正解なのだろうと思う。
死が最悪の選択であることは多く語られている。
自分の心を自分でコントロールすることができない。
いつ思考が狭くなっていても気付かないだろう。
死に抗う本能だけが頼りだと感じる。
その本能、恐怖に身を委ねる。
死は恐い。
生きていたい。
今、この思考は、正しいだろうか。