RIPstick -8ページ目
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『その時の僕はとんでもない財宝を発見してしまったような気持ちだったが、実はその財宝、名を絶望といった。
ためらうことなく道を辿り、そこで僕は自分の未来を観た。
そこには世界のありとあらゆる歴史が詰まっており、恐ろしいことに、未だ訪れていない筈の未来さえあった。
真っ先に自分の未来を探した行為は、今思えば浅はかと言わざるを得ない。
僕の死は決定されていた。

それも万人に訪れる終焉とは異なる、意識を理不尽に奪われるだけのもの。
いくら逃れようと、死の方が僕の動きに合わせて先回りする。

呪い。』

僕の中で、長い年月をかけて少しずつ築かれていた大切な何かが崩れる音を聞いた。

僕が知識を蓄える意味が消えた。

僕が技術を磨く意味が消えた。

僕が愛し愛される意味が消えた。

どの道を選ぼうと関係なく、全てを奪う呪い。

だから僕は、絶望する意味さえも失い、これをやめた。

袋小路の思考を停止し、体を動かした。

僕ひとりではこれ以上何も生み出せない。

僕は助けを求める旅に出た。



死が遠ざかる。

だがそれは波のように見えた。


生命が死を否定する力を感じる。

千四百もの絶望に身を焼かれようと

生きるためにそれは幻ということになった。


一ヶ月咲き続け尚衰えぬ露草に

最近僕は美しいと感じる以上の

何らかの感覚を抱き始めた。

やがて死ぬことは必ず。

しかしそれは幻なのではないかと思わせる何かを

どこにでもある時間に見出しつつある。


知覚しては生きられぬ何かに包まれながら

またはそれらを呼吸しながら動いている。

受け止めきれない

濃密にして強大な流れを

僕は僅かでも想像できているだろうか。



夢記

服は大きな花を模っていたように思う。

色褪せていたと思うのは時間が経過したためか。

着飾った彼女は毎日鏡を覗き込んでいた。

映り込む姿は四角く切り取られる。

もういくの?

本当に?

毎日彼女は語りかける。

何度も、何度も、何度も、何度も、自分に語りかける。

それはリストカットなんて生温いものじゃない。

本当に危うい綱渡りのような感覚が直接伝わってきて

僕はそれに恐怖した。

ぐらついている。

ビルの淵、押せば簡単に落ちる、そんなイメージ。

不謹慎だが、彼女の映り込む四角い鏡が

彼女の身に纏う花のドレスが

そのままその姿を遺影のように見せていて

それを僕は美しいと感じていた。




たぶん彼女は死んだ。



18:55 2006/00/00

本当の死はそんな簡単なものじゃなくて、
もっと根源を揺さぶる恐怖を伴うものだった。
いつからか忘れていたし、それでいいと思っていた。
フィルタを除いた死に対する素直な感情は、たぶん一番最後に訪れる筈。
きっと後悔する。
死ぬ間際に後悔すると思う。

食べることについて思う。
眠ることについて思う。
水と髪の毛について思う。
爪について思う。
神様について思う。

網ですくっても初めから何もないのに
そこに意味を捏造する行為が苦しい。



0:18 2006/00/00

水分と油、絵と音楽と絶望でできたトンネルを
幾度通り抜ければ諦めがつくのか。



4:19 2006/00/00

今は漠然とそれを恐怖と呼んでいる。
そして世界が正常であることの奇跡を知った。
無論、自分自身さえも。
誰もが普段歩いている道は分厚いコンクリートで出来ていると信じている。
その奇跡の上で嘆く声は、出来の悪い滑稽な演劇だ。
それさえ忘れた役者は舞台から飛び降りる。
残念ながら着地する床は無い。
時間は温く、残酷に切り込むが如く背を押し続ける。

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