それから小児精神科医は、隣の部屋の

プレイルームみたいなところに第1子を連れていきました。



プレイルームはマジックミラーになっており、

こちらから第1子と小児精神科医の様子が見えました。


役職はよくわかりませんでしたが、

小児精神科の他に、おそらく心理士さんのような方も2名いました。


第1子がおもちゃを見てはしゃぎ、

次から次へと夢中になる姿を、

小児精神科医たちが声をかけたり、

一緒に遊んだり、

見守ったりしていました。




相変わらず第1子は、走り回ったり、

カウンターに登ってそこからジャンプしたり、


手を洗う水道の水を出してバシャバシャと遊んだりしていました。




ビデオカメラでも録画されていました。


その遊びは40分程度。


ウィスクや田中ビネーの検査ではありませんでした。



それから小児精神科医だけがまた私たちが待つ診察室へ戻ってきて、



「確かにエネルギーいっぱいの元気なお子さんですね。


1つの遊びに集中するより、代わる代わるオモチャで遊んだり、


テーブルの上からジャンプしたり、


少し気になったのは、

水道の流れる水をジッと眺めている時間もありました。


ただまだ5歳になったばかり、

特別、好奇心が強いお子さんであるとも考えられます。


言語は確かに遅れていますが、

ご自宅が2カ国語環境ですから、その影響もあります。

そこは気にせず、お母さんはこのまま母国語でお子様に話しかけてあげてください。

バイリンガルになれる、大変恵まれた環境です。



注意欠陥多動性障害(ADHD)の疑いがあるか、といえば、


まだ5歳で、判断はできません。


小学校に入学して2年生頃、

もしまだ困っていたら、

再度、連れてきてください。


小学校に入れば、

落ち着いたりしますから、

小学校に入るまで待ちましょう。」




「あとまた3年も待つのは不安で…。

今、何かできることはないでしょうか?」





注意欠陥多動性障害(ADHD)の場合、

主にできる支援は2つ。


服薬と療育です。




服薬に関しては、まだその年齢に達していませんし、

第一、ご両親の信念では、服薬は希望されませんよね。


我々も、服薬に関しては、学齢期になって、本人が生活に本当に困るのであれば、検討しますが、


周りは困っても、本人が困っていないのであれば、服薬はすすめません。





療育に関しては、

毎週、あのジャネット先生の療育に通われていますね。


素晴らしい、

ジャネット先生は大変優秀で信頼できる方です。

このまま続けてください。」




私は焦っていました。


第1子に生きづらさがあるのであれは、

何でもできる支援をしたいと思っていました。


しかし発達障害があってもなくても、

親の役割は変わらず、


子供が困っていれば手を差し伸べる。



先走りせず、

学齢期に子供が困っていたら、その時にまた考えようと思いました。



今は素晴らしいジャネット先生の療育を受けられているし、



「あと3年も待つのは不安だ。」

って…私は何を得ようとしたのでしょうか?




診断されて、できる支援をしたい?


「大丈夫、本人の性格だよ」

と言われて、ホッとして、悩みから解放されたい?



大ざっぱに言えば、

「すみません、私の子供は注意欠陥多動性障害(ADHD)ですか!?


アメリカの世界一高額といわれる医療よ、

今すぐ解明してくれ。

今日こそ白黒ハッキリつけたいです!

毎日、不安なんです!」


という気持ちでした。



しかし子供のレントゲンに写るわけでもない

注意欠陥多動性障害(ADHD)、

そんなこと、

小児精神科医でも、親の私でも、

白黒ハッキリつけられないです。



そんなことを焦るより、

今はいっぱい遊んであげて、

この子に安心した毎日を与えようと思いました。





それから数週間後、


小児精神科医から、

あの日、私の第1子が受けた、


検診結果が届きました。



平均的な5歳児より遅れていた

私の第1子の言語行動面





検診結果の紙には、


「平均以下」(bellow average)や、

「遅れている」(behind)

の表現でなく…




言語や行動面は、

平均的な5歳児に


「追いついている途中段階」

(Catching up )



その英単語の表現に、


ゆっくり追いつこうとしている第1子を、

頼もしく思い、


また愛おしく思いました。