あれから児童相談所の職員キャリッサは週に数回、我が家へ遊びに来るようになりました。


遊びに来くるといっても、実は家庭訪問で我が家の様子を観察していたのですが。


本当に仲良しのお友達が遊びにきてくれる感覚でした。


「Hi, 凜!」



「キャリッサ!来てくれてありがとう!

ねえ、コーヒー飲もう!」



「うん、飲もう!」



キャリッサは私の淹れたコーヒーを飲みながら、

「凜の淹れてくれるコーヒーが大好き。」



「そう?私は牛乳と砂糖を入れてカフェオレにするから、コーヒーは濃いめかも。キャリッサはブラック派だけどね。」



「そう、だから私はあなたの淹れるコーヒーが大好き!濃くておいしいの。」



家庭訪問とはいえ、キャリッサとは仲良しのお友達のように過ごしました。


「凜、感謝祭はどう過ごしたの?」



「感謝祭は…、私は日本人だからあまり概念がないからいいんだ。

私の家族もアメリカにいないしね。」



寂しそうな顔をするキャリッサに、

「あ、キャリッサの感謝祭の写真を見せて😊」



キャリッサが見せてくれた、キャリッサのお家の感謝祭。



これぞアメリカの

ザ・感謝祭


経済的に恵まれた立派なお家に、


おじいちゃん、

おばあちゃん、

パパ、

ママ、

きょうだい、

甥っ子、姪っ子、

おじさん、

おばさん、

イトコたち…






経済的に恵まれたお家の象徴である、

大きく立派な暖炉の隣で

家族とクリスマス・ツリーを飾り、はしゃぐ、かわいいキャリッサ。




素敵なご家族の中で育てられたキャリッサ。


キャリッサが素敵なご家族に囲まれている姿を見て、

とても嬉しい気持ちでした。


感謝祭って家族そのものが表れますね滝汗



おじいちゃん、おばあちゃんを囲んで、


①当たり前のようにいる家族、


②離婚、不仲で、バラバラになり、

一緒にいることが当たり前ではない家族。



私の実家のお正月は、祖父母の家で、

子供、孫、祖父母のきょうだい、おじ、おば、


祖父母を中心に、ありとあらゆる親族が集まり、みんな幸せそうで賑やかでした。 

孫やら甥っ子やら子供にあふれ、みんなで走り回って遊んでいました。


私の中では、祖父母を中心に親族みんなが集まる、それが当たり前でした。


夫の家族を見ていると、

家族みんなが当たり前のように一緒にいることが、どれほど難しいことか…

考えさせられました。


そしてたまたま子供たちに観せていた映画「ガーフィールド」について、

「ねえ、キャリッサってこの女優さんに似ているよね?」




「え!?

嬉しい!今まで言われたことないよ!」



「そうだよね、やっぱり言われないよね。

だってこの女優さんより、キャリッサのほうがずっと美人だもん…。」



「凜、さすがに言い過ぎよ〜!」


いや、私は本当に4年間いたアメリカで、キャリッサが一番キレイだと思いました。


テレビで観るどの女優さんよりも、です。


内面も外面も美しい人でした。




「凜、子供たちが保育園に入ってどう?」



「キャリッサのおかげで、とても助かっているよ!

本当にありがとう。


でも実は、少し心配なことがあるんだ…。

保育士のローズ先生からも教えてもらったんだけど、

保育園で相変わらず第1子が走り回ってね…。


実はもう何年もずっと心配してるんだ。


私の夫の母が私の第一子について、


『私の注意欠陥多動性障害(ADHD)の次男にソックリ!』って笑いながら言ったこともあって、


心配だから、3歳児健診で小児科のお医者様に相談したら、

『5歳まで待て。』と言われ、


ようやく5歳になったら、

『保険会社からの連絡を待て。』


でも保険会社からは全く連絡は来ず、

こちらから問い合わせても、

『小児精神科の予約が取れたら連絡するから待て。』


日本の病院システムと違って、

『待て』と言われ、かかってくるかもわからない電話を待ってるのが辛い。


私はアメリカの病院システムがいまいちよく理解できていないし。」





「そう。

それはね、保険会社の都合なのよ。

(※アメリカの健康保険は、民間です。

夫の場合は米軍だったので、政府の特殊な健康保険に入れましたが、同じく制限がありました。)



小児精神科医療は、とても高額なの。


だからいわゆる本当に発達障害があるのか、

もしかしてただヤンチャなだけで、

年齢が上がれば落ち着くんじゃないかという

グレーゾーンの子供たちは、

小児精神科への受診を、健康保険の都合で後回しにされるの。


小学校入学したら、ケロッと落ち着く子供もいるしね。」




「そうだったのか、アメリカ滝汗




「凜の第1子は、いつもニコニコしていて元気なハッピー・チャイルドよ。


まだ小学校にも入っていないし、

様子を見てもいいと思うけど、


凜がそんなに心配なら、

一度、小児精神科で診てもらいましょう。


私が凜たちの為に、

小児精神科を手配するわ。」





「え!?キャリッサ、そんなこともできるの?ポーン

だって私が米軍の保険会社にさんざん電話かけても、全くラチが開かなかったのに…滝汗。」




「私に任せて。遅くても来月中には行けるようにする。」




「ありがとう…。

でも、こんなことまでキャリッサにお願いしていいいのかな?

何でもかんでも、キャリッサに助けてもらって、なんだか申し訳ないよ。

だってこれは児童相談所のお仕事ではないんじゃない?」




「凜、これは児童相談所の仕事よ。


母親であるあなたが悩んでいること、

困っていることを、

助けるのが私の仕事よ。」





「そうなの!?

キャリッサには言いづらいけど、

児童相談所って、

子供を親から引き離して施設へ連れて行く、こわい場所だと思っていた…。」




「児童相談所はね、


親から子供を奪う場所ではない。



どんな場合でも、

やっぱり親子は一緒にいた方がいい。



子供を親から引き離して施設へ連れていくと、

子供の精神的なダメージがとてつもなく大きいの。  


せっかくその子の命を助けても、施設で育ってしまうと、その子供が施設を出た後は、

生きづらさ、貧困、異性への依存、結婚の失敗、精神的な病いを発症し、


犯罪者になったり、

親になってまた同じように我が子を虐待してしまうの。




親が子供を育てづらいケースは、

貧困、離婚、精神的な病い、その親が虐待家庭出身など、

理由はさまざま。


親が抱える問題を児童相談所が支援し、

親の問題を解決して、


親子が安心して一緒に暮らせることが一番。」





そういえばテレビで、

アメリカの児童相談所のドキュメンタリーを観たことがあります。


児童相談所が子供の強制保護に踏み切る瞬間でした。



保護され、親から引き離された子供はパニックを起こし、


児童相談所の車の中で、


「お父さん!お父さん!」

と泣きながら、


車から出ようと必死で、お父さんの名前を呼び続けていました。



児童相談所の車の外には、その子供の父親が…。


我が子を奪われ、

お父さんは膝から崩れ落ちて、呆然とし、

立つことすら出来なくなっていました。






児童相談所のドキュメンタリーでは、なぜこの子供を強制保護に踏み切ったのか、

理由は語られてはいませんでしたが、


強制保護するくらいなので、それなりに子供の養育が難しい理由が父親にあったのでしょう。



それにも関わらず、


「お父さん!お父さん!」

と、

必死で父親の元にいようと泣く子供。



そして膝から崩れ落ちて、

立てなくなる父親。



明らかにこの父子には

無償の愛の親子関係があります。


それなのに、うまく父親になれなかった、あのお父さん。


それはご本人のせいではなく、

おそらくあのお父さんも過酷な幼少期を過ごされて、生きづらさを抱えたまま、親になられたのかもしれません。


あのお父さんには明らかに支援が必要です。




もちろん子供の命が最優先ですが、


生きづらさを抱える親へ、

行政が支援をし、


親子が安心して暮らせる環境を、できるのであれば、

整えてあげてほしいと感じました。


目の前で子供を奪われて、

膝から崩れ落ち、

立てなくなったお父さん。


あのお父さんを助けてあげてほしい。




日本語では”児童相談所”

英語では”Child protective service”

=子供を守る場所