今月1日(火曜)に放送されたテレビ番組「アナザーストーリーズ」。
当日2人の友人から知らせをもらったおかげで見逃さずに済んだので、お礼を兼ねて感想や気になった点を急ぎ報告します。メモ書きで失礼します。
尚、この番組は再放送されるので、興味のある方はぜひご覧ください。
http://www4.nhk.or.jp/anotherstories/x/2018-05-12/10/11195/1453090/
・多用される当時のニュース映像や写真のなかには初めて見る素材も多く、一見の価値あり!
・だが革命闘争中の「情報戦」について、それがチェの功績のように伝えられたが、カルロス・フランキのアイディアではなかったか?
https://ameblo.jp/rincon-del-cine-cubano/entry-10513064979.html
・また、わずか82人で始まったというが、シエラより危険な首都で闘った都市ゲリラの存在が無視されている。
・証言者、オルランド・ボレゴ: 「チェは誇張を嫌った」 (この点については共感と好感を覚える)
・証言者:オマル・フェルナンデス 1959年7月、チェの日本視察に同行。
日本に対するチェの関心は、キューバと同じ島国で資源が乏しい日本が戦後どのように復興したか、ヒントを得るため。
・当時の駐日キューバ大使の息子、カルロス・アルスガライ(当時16歳)、 チェの日本視察(複数の工場見学)に同行。
仕事に没頭する日本人労働者の姿にチェは注目し、それこそが経済発展の基と考える。
ちなみに、2年前に来日したチェの甥にあたるマルティン・ゲバラもチェの日本での体験の重要性を語っていた。https://ameblo.jp/rincon-del-cine-cubano/entry-12001790619.html
・広島訪問について
アルゼンチンで医学を学んでいた頃から原爆の被害に関心を抱いていた。
原爆病院を訪問したチェの言葉:「ここで知ったことは私の人生で一番悲惨な出来事だ」
「このために広島に来たのだ」(自らの目で歴史の現実を見るため)
チェの指摘: 『過ちは繰返しませぬから』という碑文に主語がない。原爆の過ちはアメリカの責任ではないのか。
「主語がない」というチェの指摘は有名だが、〈主語はアメリカだ〉とチェが考えていたとは知らなかった! 私はてっきり「主語=わたしたち日本で、過ち=戦争」だと思っていたのだが、皆さんは?
・キューバ危機:ソ連のミサイル基地建設(核配備)に合意するサインをしたのは、チェ・ゲバラだった。
疑問点:1962年1月 キューバ危機 というタイトルは、〈10月〉の間違いでは?
念のため1月に何かあったのかと調べてみたが不明。
拙年表1962年の6月以降を参照してみてください。
上の疑問点を含め、このあたりからやや違和感を感じた。
・〈この事件を機にゲバラはカストロと袂を分かつことになる〉というナレーションに??
・〈フィデルとチェが真剣に話している様子の写真〉は、ミサイル危機とは関係なく、チェがアルジェでソ連を非難し帰国したときのものではないか? ソ連を公けに非難したせいで、チェはキューバに居られなくなる…
参照: この記事の ⑦ (1965年2月に)アルジェでソ連を暗に批判した演説後、帰国したチェの待遇が問題になる。 「ゲバラを国家反逆罪に問うべきだ」と言う共産党員もいた。(フィデルはチェをアフリカに送る)
「チェは平和のための戦った」ように伝えているが、その手段が「武闘(暴力)革命」だったことは言わない。
知り合いのジャーナリスト(チェを尊敬している)はかつて、「今だったらテロだよね」と言った。テロとの違いは?
「平和のための戦い」には人それぞれのやり方がある
私はブログを通してキューバを理解しつつ、共に「より良い世界とはどうあるべきか?」を考えたい。
・ボリビア軍に捕らえられたチェに食事を届けた女性、フリア・コルテスの証言は、既知の内容だったので割愛するが、ボリビアの元新聞記者の証言(ボリビア政府の偽りの発表を暴露)は、フェイクニュースが問題の今、非常に貴重な情報だ。
真実を発表したために、レヒナルド・ウスタリス・アルセ記者は、ボリビア政府に追われブラジルに逃亡せねばならなかったが、世界にゲバラの真実を伝えたことは彼の誇りだ。
・「理想家」という共通項でジョン・レノンの『イマジン』が引用されていたが、キューバでは60年代から70年代にかけてビートルズの音楽はタブーだった。
・番組は「革命家 チェ・ゲバラ」は天使か悪魔か、という問いで始まったので、チェの負の面も取り上げるのかと思いきや、結果的には「理想家 チェ・ゲバラ」という「天使」のイメージが強調されていた。
日本のマスコミではほとんどポジティブなイメージで伝えられるが、スペイン語圏の知り合いに「ゲバラをどう思うか?」と訊くと、「昔は良いと思ったが、負の面を知った今は支持しない」という人や、「今のキューバの若者は関心がない」という声もある。
実際、私のFacebookの友達(キューバ出身の移民)に、ゲバラを賛美する人はいない。むしろ“極端”だと見ているし、嫌悪している人もいる。
私個人は、チェ・ゲバラの気になる発言や、“死を厭わない精神”に危うさや警戒心を抱く。
・私がキューバにハマったきっかけの映画『低開発の記憶』から得た教訓のひとつ。
「何事も絶対化してはならない」 (原作者 エドムンド・デスノエスの言葉)
テレビ番組には〈分かりやすさ〉が求められるのかもしれないが、これからは相対化して見る視点が大事だと思う。
一つの方向に流れることは危険だから。
批評(批判)精神をもつこと。違う意見と対話すること。キューバ映画の精神に励まされ、私も敢えて異議を唱えた。
皆さんのご意見や、新しい情報、誤りのご指摘など、コメント欄に頂ければ幸いです。
*チェとフィデルに関する拙ブログ記事
https://ameblo.jp/rincon-del-cine-cubano/theme-10010773418.html