「部下同士の相性が悪い」、
それは個人の問題だから自分には関係ないと片づけていませんか?
その考えは、
実は間違っているし、とっても危険です
そこで今回は、「職場環境の把握と改善」に関して、
会社が従業員から慰謝料を求められ、会社側の法的責任が裁判で認められた事例
を紹介します
【判例】ソフトウェア会社
①Aさんは、Bさんと二人でサポート業務を担当していた。
②Bさんの特徴
・本来業務を優先しない
・独自ルールで、必要性の低い作業を優先する
・社内外から苦情が寄せられている状況
③Aさんの状況
・上司へ「Bさんと一緒に仕事をするのは無理です」、
「問題がありすぎるので異動させてほしい」と
何度も相談するが、取り合ってもらえない状況。
④ある日、Aさんは、Bさんの勝手行動が目に余り、
社内スタッフへCCで注意喚起のメールを送信しました。
すると、Aさんは上司へ「Bさんにパワハラを受けている」と
会社へ申し出たのです。
⑤事実調査の結果、パワハラではないと認定されましたが、
Aさんは「これ以上Bさんと一緒に仕事をするのは無理だ」と改めて感じ、
上司と人事部長にもう一度、職場環境を考えてもらうよう要望しました。
しかし、「あなたはBさんが嫌いなだけでしょう」と言われ、
取り合ってもらえませんでした。
⑥その後、Aさんは精神的に追い込まれれ、会社を退職しました。
判例の判旨
- パワハラの事実はなかった
- 二人体制の部署で、もう一人の同僚からパワハラで訴えられるという事実案は、Aさんに相当強い心理的負荷を与えた
- 会社はAさんとBさんを業務上完全に分離する、業務上の関わりを極力少なくするなど、トラブルの再発を防止すべきであった。
この3点を基に健康配慮義務(安全配慮義務)に違反した、債務不履行責任(民法45条)等があるとして、慰謝料50万円の支払いを命じられました。
いかがでしょうか?
お気づきかと思いますが、
このシステム会社は、従業員間のトラブルを「当事者の問題」として片づけたことが間違いだったのです。
Aさんは、何度もBさんと一緒に働くことが苦痛と上司に訴えていたわけですから、
上司は安全配慮義務の観点でAさんを考える必要があったのです
具体的には、
AさんがBさんと一緒に働き続けることで精神的な健康障害が発生したり悪化する可能性が高いかどうかを予見する義務と、その可能性が高いのであればこれを避けるべき義務があったのです。
(安全配慮義務に関する記事はこちら:管理職が押さえておきたい「安全配慮義務」)
社内のトラブルは個人の問題ではなく、
「会社の問題」と捉え、
真摯に向き合い解決していくことが必要なのです