よしっ! その2
ジャズのアンサンブルがあった。わたしは、ジャズピアノのいわゆるcursus、正規の課程には属していない。第一課程は審査員満場一致という誇らしい評価を得て通ったが、第二課程の前に、ジャズピアノを希望する若者が増えて、わたしは生徒として取れないという事になった。その時はショックだった。でも今考えるとそれはそうだ。楽譜があったら練習すれば弾けるが、コードを暗記していない、ソロの練習をどうしたらいいのかわからない、コンピングは何も練習していない、やっていたのは楽譜の耳コピだけ、耳コピに時間がかかるのでピアノを弾く時間も仕事と育児でままならない、そういう段階で第二課程を受ける準備が全くできていなかったので、今は、当時のジャズピアニストの決断にむしろ感謝するほどだ。個人レッスンでは取れないがグループでの授業には参加していいという事だった。わたしが籍を置いているジャズ学科では、厳しい試験がある中、わたしがアンサンブルで一緒に弾いている若者たちの中、ギター・ヴィブラフォン・ベースの若者は、何度も書いたが、どんな速さの曲でも初見で瞬時にソロをとることができるプロレヴェルの若者たちで、なんなら移調してもすらすら演奏できる。彼らのレベルはジャズ科でもトップレベルの生徒たちで、彼らは複数のアンサンブルの授業のうち、人数が多すぎる一つのアンサンブル以外は、全参加して曲のレパートリーを広げ、力をつけまくっている。来年は3人ともわたしの在籍するジャズ科からいなくなる。一人は外国へ留学、もう二人はもっと上のレベルのジャズの学校に行くことが決まった。ジャズピアニストで、わたしが参加した曜日の担当者である先生から紹介されたのは約1年半前だった。そのことはブログの記事にも書いた記憶がある。彼は、わたしにこう紹介した。「やんぱっぱ、(わたしのブログでの仮称)、今年はこのメンバーでやる。ただ・・・、彼らはとっても良くできるんだ。」わたしが一人に質問した。「あなたは、どこのレベル?」「スぺ」プロ志願の若者の希望であるDEMの上のレベルである。「あなたは?」「今年DEMをうける。」そのようなことを言ったと記憶している。最後はわたしの昔の生徒だ。「あなたは?」彼もギタリストと同じ答えだった。今度はその中の一人の若者がわたしに尋ねた。「あなたは?」若者の空気が期待で張りつめた。『いや、こんなに上のレベルの若者から見たら他に返事はできないでしょ』わたしは答えた。「初心者」空気がほどけた感じがした。若者たちの顔がほころんだ。ギャグに近かったようだ。このアンサンブルの担当の、わたしが前についていたジャズピアニスト。彼はクールで無口な感情をあまり見せないタイプで、その時は何も言わなかったが、それからことあるごとにアンサンブル中にわたしに「15年習っているだろう」と言い始めた。ついていたのは先生の都合で2週間に一度6年、7年目は毎週だった。なんで、こんなことを言うのかなといつも思う。もしかしたら、他の生徒にわたしはゼロの初心者ではないと言いたいのか、わたしにもっと、数年ジャズピアノをやっているという自覚を持て、と、はっぱをかけたいのか、いまだに意味不明である。ちなみに、一人はもうスぺだったので試験はなかったと思うが、二人の若者は彼らの楽器のDEMに合格したそうだ。彼らはよくできるので当然の結果だ。最近は、おそらくわたしが譜面があると、見て弾くという理由だと推察するが、アンサンブルの時にリードシートを渡さないというシリーズの3曲目と4曲目に突入する。『この曲は譜面なし』と言われると、ビブラフォンの若者は、それこそごちそうを前にしたときのようにいつものようにすこぶる早い反応で上機嫌で「OK」と返事をしていたことを覚えている。わたしは、素直にそれを受け入れた。i real proがあるのでそれでコードを覚えて、メロディは録音を聞いて覚えればいい、そう思ったのだ。ここでジャズをやっている方で、まだ知らない人がいるかもしれないので、わたしが最近、気がついて実行していることを書いておこう。知識としては、i real proにいろんな機能があることは知っていたがわざわざ、全部試したりはしていなかった。というか、ほぼ使っていなかった。耳コピしていただけだから。たまにコードに対する音階を見る程度だった。だけど、数か月前に、同じアンサンブルのギターの若者にあなたはソロの勉強をどうするのと尋ねた時に彼がまずわたしに尋ねたことはi real proを持っているかという事だった。それで練習するといいという事だった。i real proには、ベースだけ機能させることもできると言った。その時はどうしてその機能をことを話すのかわからなかったが、最近、それが大事なことが、じわじわとわかってきている。リードシートを渡されなくなったからだ。これがあると伴奏してくれるので単調にならずにコードを覚えることができるのだ。正直にお話しすると わたしはコードを覚えるのが苦手だった。恥ずかしながら、おそらくわたしの知っているコードは、一生、ブルーボッサと枯れ葉だけかもしれないと心の底で思っていた。笑える?いや、初心者アルアルだと思う。ほほ笑んでくださってオッケーだよ。ジャズをしていない人にはちんぷんかんぷんなことかもしれないが、これはジャズには大事なことなの。決して覚えられないと悲壮感に浸っていたといのではなく、覚えられたらいいけど、現状はそう、と言う事実を体感していたと言っておこう。そう思っている人は、もしかしたら、わたしだけではないかもしれない。そういう人には朗報だよ。楽譜がないという状況に置かれたら、コードを覚えるしかなくなる。見ることに依存できなくなるから。実はそれは依存だったのだ。いざと言う時には見たらわかるから、という、依存だったのだ。一つの癖、と言ってもいいと思う。つい、そうしてしまうという行動パターン。それが習慣的に繰り返されて、いつも何気なくそういう風にしてしまう習慣・行動パターンだった。でも、目に見えるリードシートさえなければ、覚えているという事が絶対条件になり、絶対条件になった時には覚えられるのだという事が、実体験でわかったこと。覚えられたという事を強調することがこの間のアンサンブルの授業の時に起こった。留学の書類の準備などもあって忙しかったのだと思う、一人が2曲中1曲のコードをまだ見ていないと言った。ジャズピアニストはすぐにわたしに言った。「やんぱっぱ、彼にコードを説明して。」その時にひらめいた。やっぱりこの、リードシートなしのプロジェクトはわたしをリードシートから引き離すための「試み」だったのだと。わたしが たんたんと説明を始めた。" 4 mesures de F7, 4 mesures de Bb7, 4 mesures de Eb7,Ab6 1mesure, Bbm7 Eb7, Ab6 1 mesure, Gm7b5 C7 b9,F7 4 mesures, Bb7 4 mesures, Fm7 1 mesure,Gm7b5 C7b9, Fm7 1 mesure, Bbm7 Eb7, Ab7, G7, Gb7 F7,Bb7 Eb7 Ab6"ジャズピアニストは先にも書いたが、ポーカーフェイスだがそれでも、スラスラいうわたしに唖然としていることは伝わってきたが、他のメンバーの若者たちもしかり。わたしのことを、このシニアのおばちゃまは、リードシートを見ての初見はきくがコードや即興などジャズではレベルが下のやつ、と思い込んでいたであろうわたしがスラスラ言っているのを聞いて、空気がドン引きして、心の中では、動揺が起こっているのが感じられた。どっきりカメラレベルのシーンが繰り広げられたのだ。(笑)それから曲を弾いている最中に、練習した通りのドロップ2は5ポジションそのまま通して入れられなかったが、それでも、ところどころボイシングとして、かなり音が離れたところにドロップ2のボイシングで和音をとばして入れられたところもあり、前に一曲だけ練習したJim Snideroから、アイデアをとって少し変えて、両手で6度音程になる合間を埋めるコンピングを入れたりしたら、耳のいい担当のジャズピアニストも若者たちも、驚いている感じが伝わってきた。コードを覚えてコンピングもアイデアがあると楽しい。弾いてきたようには弾けなくてもその時々で、できることを入れながらふっと微笑んでいると、ポーカーフェイスながら、体中耳かと思うようなジャズピアニストがふとこちらを振り返った。わたしが機嫌よく弾いているのが目撃された。彼は、合間に、いろんな録音をアンサンブルの授業中に自分の携帯でYouTubeで検索してポータブルのボーズのスピーカーでみんなに聞かせてくれる。今回も、その中で、4分音符の3連符で4分休符、その後は4分音符でコードの5度から始まって半音ずつ上行し、トニックで締めくくると言う音型をみんなに練習させた。それは彼の数年前の即興のグループレッスンでもやったことなので知っていたが今回はボイシングまでしっかり覚えられた。よく使う、4度堆積和音のまま、6つのポジションを弾くと言うものだった。練習すればできるようになるだろう。『ポジション6つもか、ピアニストは両手合わせて6音を抑えることになる。すぐにその場でうまく弾くには難しいかも』ちょっと困った顔をしたわたしの耳に入ってきたのは反応の速いビブラフォンの若者が、彼のできるボイシングですなわち4つの音で実現した音だった。『あの子も、複数の音を弾かなきゃいけないんだ。わたしもやってみよう。』やってみたら、意外にできた。次に、オルタードのコードを入れるようにアドバイスされた。その時に、左手は、4度堆積の3音を半音上行させ、右手は4度堆積の手のポジションを短3度上行させるといいことが視覚的に把握された。意外と簡単かも。とに角この2つのテクニックは、高い料金を払ってジャズのマスタークラスに参加しているくらい、実践的で使える内容だったと思う。そして、わたしのドロップ2を聞いて知覚したであろうジャズピアニストは、So what voicingを入れろと弾いて見せてくれた。これで、ドロップ2よりもっと緊張感が増してくる。それから、ドミナント7の時に半音全音のスケールを使う即興が、また、二つのコードを組み合した即興もやって来いと言うのが、来週までの課題となった。どんくさいと思われていたやんぱっぱのコードの記憶とコンピングに、場にいた参加者が、驚いたであろうアンサンブルに、2つ目の「よしっ!」\(^_^)/