ASCO(American Society of Clinical oncorogy)の公式カリキュラムより
がんの終末期において、消化管閉塞(Ileusもしくはsubileus)は、あらゆる進行がんの3%に
みられます。11~42%は卵巣がん、5~24%は結腸がん。これらは手術不能の場合、
予後は平均64日と大変厳しいです。原因はがんによる圧迫、直接浸潤、がん性腹膜炎など
が挙げられます。
症状は、悪心/嘔吐(68~100%)、消化管拡張による痛みとそれに加えて周期的に増強する
強い痛み(疝痛)、腹部膨満感です。当然、食事は摂れなくなります。
治療の評価は、まず外科的治療が出来るかどうか、です。Feuerらによるメタ解析では
外科的治療によって悪性の腸閉塞や進行した婦人科、消化器がんの42~80%の患者さん
の症状のコントロールが出来るとのこと。しかし、この時期の消化管閉塞では、閉塞部位が
ひとつとは限らず、開通しても再発のリスクも高いです。開腹によって一層衰弱する事も
まれではないため、慎重な判断が必要です。手術関連死12%~33%とのことです。
辞退する患者さんも多いので、本人の希望を聞く事も大切ですね。
内視鏡的にアプローチ可能であれば、ステント留置により、症状が緩和出来る場合も
あります。が、それでも18%の患者さんに穿孔、疼痛、出血、ステントの移動などの
合併症が起こるとされています。胃ろうも、手術適応外の患者さんの消化管閉塞で
効果的に減圧が行えるので良い選択肢のひとつです。胃ろうについては、Bainesに
よれば「胃内容物のみ除去しても患者の86%以上で症状緩和には非効果的」と否定的な
意見もありますが、鼻からのチューブがなくなるだけで患者さんにはプラスだと思います。
内視鏡での胃ろう造設は開腹にくらべれば患者さんへの負担はずっと少ないです。
素晴しい治療にはならないかもしれませんが、選択肢のひとつにはなると思います。
さて、ではその他の治療はと言いますと、基本的には輸液と経鼻胃管による減圧です。
この鼻からの管が数週間、数ヶ月というのはとてつもない苦痛だと思います。
しかも大抵これだけでは症状コントロールは不十分です。吐き気と痛みに対する治療が
必要となります。吐き気に最も多く使用されるのはプロクロルペラジン(ノバミン)ですが、
これでコントロール出来るのは13%。部分的な閉塞ではメトクロプラミド(プリンペラン)が
有効ですが、完全閉塞では症状を逆に悪化させるので、殆ど禁忌です
コルチコステロイドは、炎症反応を抑え、浮腫を軽減したり腫瘤を縮小することによって
症状緩和が期待出来ます。但し、きちんとした臨床研究はなされていません。
純粋な糖質コルチコイドであるデキサメタゾン(デカドロン)4~20mg/dayの使用が
推奨されています。
モルヒネは最大89%の患者さんの持続的な疼痛をコントロール出来るとされています。
しかし、間欠的な疝痛にはあまり効果がありません。この痛みは腸の蠕動に伴って
平滑筋の攣縮が起こる事によると考えられています。抗コリン薬、臭化ブチルスコポラミン
(ブスコパン)等が疝痛の治療目的に、しばしばオピオイドと併用されます。
ブスコパン持続投与も試みられています。
さて、その他の治療として期待されているのは、オクトレオチド(サンドスタチン)の持続
投与です(血中半減期2時間なので持続投与が必要です)。
2004年10月に、『進行・再発がんの緩和医療における消化管閉塞に
伴う消化器症状の改善』としての効能、効果が追加になりましたが、
みなさん、知っていましたか?
ソマトスタチンは、消化管の分泌液(胃酸や膵酵素など)の分泌を抑制し、
消化管に対する末梢神経にも働いて蠕動運動を減少させます。
1994年のRileyらの前向き研究では、24症例中14例が完全寛解、4例が部分寛解。
副作用はありませんでした。別に、Mangiliの報告では3日で100%(13例中13例)に
吐気のコントロールが出来ました。胃管を挿入された患者さんでは、2000cc以上
あった排液が100cc以下に減少したとあり、驚くほどの効果と言えると思います。
副作用は殆どなく、たまに対処可能な口渇がみられる程度です。
一般の先生にはあまりなじみがないかも知れませんが、ホスピスではかなり前から
保険外の治療として行われてきた経緯があります。
使用法は静注もしくは持続皮下注で1日量300~600μg
200μg/dayから開始しますが多くは300μg/day以上で
効果が発現します。600μg/day以上では効果が変わり
ないとの報告があります。これは原液で100μg/1mL/A
を使用し、持続皮下注を行うとすれば、
0.1cc/hで開始し、0.05cc/hずつ量を増加、0.25cc/hまで、
となります。
効果判定は7日とされていますが3日くらいでだいたい分かります。
ちなみに高カロリー中に混ぜてしまうのは効果が下がる
のでお勧め出来ません(米国添付文書)。
尚、サンドスタチンは50μgが2118円なので、300μg使用すると1日12000円
以上になります。一応、覚えておくと良いと思います。