85歳女性。既往は胃潰瘍、糖尿病、心不全。胆石を指摘された事がある。

腹部の手術歴はない。

食後より吐き気、腹痛が出現し増強。発熱、下痢は見られなかった。

近医で診察を受けている時に茶褐色の吐物を嘔吐された。

ヘマスティックで潜血反応(+++)。上部の消化管出血が疑われ当院紹介となった。

消化管出血、吐血という触れ込みであった。

vitalは問題なく、腹痛の訴えは続いているが、腹部は平坦、軟であり、腹膜刺激症状なし。

疼痛の最強点ははっきりせず、圧痛は腹部全体に軽度。

X線とlabo dataを確認。

Hb 12.6と大きな出血はなさそうであった。

labo dataで目立つものはWBC 17100、CRP 3.0。肝機能、BUN、LDH、Amyは上昇していない。

腹部、胸部X線ではfree airを認めず、niveauを認めない。


どのような疾患を考え、どのような検査をしますか?






わざと書かなかったのですが、まず心筋梗塞は否定しないといけませんね。

心電図ではST変化はなく、CK-MB、トロポニンも一応調べましたが陰性でした。

上腸管膜動脈閉塞症と腹部の大動脈解離は思い浮かべる必要があります。

しかし、そこまで急激に症状が完成した訳ではなく、

腹部全体に圧痛があったので、これらの疾患はあまり疑っていませんでした。

最悪、あるとすれば消化管穿孔。潰瘍や憩室の穿孔は常に念頭におく必要があります。

下血はありませんが虚血性大腸炎辺りは考えられそうです。


問題の潜血(+++)ですが、これはかなり鋭敏な検査で、胃粘膜が痛んでいたりすると

それだけでも陽性になります。バイタルが安定しており、貧血もなく、食後であったので

内科の当番医と話し、明日でも良いのではないか、という話になりました。


結局、急性胃腸炎の可能性が一番高い、としながら

消化管出血の可能性もあり、WBC 17100が気持ち悪かったので入院としました。

一応、夜中も何度か腹部所見は取り直しました。特に変化なし。

患者さんも寝ていました。


結局診断は…


胆石が小腸に詰った事による、『胆石イレウス』でした。

CTで診断がつき、緊急手術となりました。腸を切開し、石を取り出して縫合、という

最低限の手術で済みました。患者さんは今全粥を食べています。

恐らく慢性の胆のう炎があり、胆嚢と腸にろう孔が出来ていたようでした。

胆石イレウスは、胆石の人の0.1~0.15%に起こるという事でした。


反省点


消化管出血という派手な病態に目を奪われ過ぎてしまったこと。石は腹部X線にも写っていました。

②忙しかったとはいえ、多少なりとも出血を疑っていたならばN/G tubeは挿入してみるべきでした。

どうしようかと思ったのですが、胃腸炎という印象が強かったので…。

niveauなし⇒イレウス否定”にはならない。エコーのキーボードサインの方が有用です。