Still病に合併する事があるというHPSについて調べました。


血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome)とは、血球貪食性の

組織球の増殖による汎血球減少、発熱、肝障害、DIC等で特徴

付けられる。


組織球ってなんじゃ?と言うと、組織にある白血球の仲間、

マクロファージや樹状細胞(抗原提示細胞)がこれに当たる。


本症の原因となる疾患には、感染症、悪性リンパ腫、膠原病

等がある。悪性リンパ腫や遺伝性のHPSは致死的。時に重症の

肝不全やDICが日単位で起こることがあるという。感染症に

よるものは軽症~最重症まで様々。膠原病関連ではSLE、Still病

での報告が多いがStill病では比較的重症傾向がある。

(と言ってもStill病全体からするとHPS合併の頻度は稀)

それぞれややこしい分類があるが、ここはわかりやすさをモットー

としているため成書に譲る。


病態は活性型T細胞がサイトカインをぶちまけ(サイトカイン

ストームと呼ばれる)、組織球を活性化して貪食を促している。


症状は、


汎血球減少

②肝酵素上昇

血清フェリチン高値

④DIC

⑤肝脾腫

⑥中枢神経症状

⑦脂肪織炎


治療は膠原病の場合、病態に応じたステロイド内服やソルメドロールの

パルスが行われる。不十分な場合シクロスポリン、シクロフォスファミド

が併用される。重症例ではCHOPや骨髄移植が考慮される。


更に詳しくは

http://www.f-teisinhp.japanpost.jp/HOMEPAGE/profile/profile/ProfileNo.30.pdf

Still病の患者さんを受け持ち、まとめてみました。


反復ないし持続する発熱、関節痛(必発)、サーモンピンク色で有名なリウマトイド疹

を特徴とする疾患。フェリチンと白血球の異常高値がしばしば見られる。

患者数は日本で1100人程度と推測される。

成人例では16~32歳が多く(62%)、1:2で女性に多い。

後述のように悪性リンパ腫、伝染性単核球症などが鑑別となる。

予後良好な疾患だが長期にわたり再発を繰り返す事も稀ではない。

また、時に見られる重篤な合併症(アミロイドーシス、DIC)も知られ、ステロイドの投与は

単なる発熱や関節痛のコントロール以上の意味がある。


リウマトイド疹は隆起のない、あるいはわずかに隆起した径数mm

赤斑で、本症最大の特徴のひとつ。発熱時に出現し、解熱すると消える。いくつか融合した

大きいものも見られる。掻痒は一般的にない。四肢に多い。

他によく見られるものとして、咽頭痛は成人では有名。

リンパ節腫脹、また、しばしば肝機能障害を見る。

この辺り伝染性単核球症に似るかもしれない。

ちなみにフェリチンが著増(>3000ng/ml)する疾患は多くはない。

Still病、悪性リンパ腫、血球貪食症候群くらい

もちろん、感度100%という訳ではなく、軽度上昇例もある。


1992年に出た山口らの診断基準を記す(感度98%、特異度96%)


【大項目】

①発熱(39℃以上、1週間以上続く)

②関節炎(2週間以上続く)

③定型的皮疹

④白血球増加(10000以上、好中球80%以上)

【小項目】

①咽頭痛

②リンパ節腫脹または脾腫

③肝機能異常(薬剤性を除外すること)

④RF、ANAは陰性

【除外項目】

①感染症(特に敗血症、伝染性単核球症)

②悪性腫瘍(悪性リンパ腫)

③リウマチ性疾患(結節性動脈炎、リウマトイド血管炎など)

5項目以上または大項目2項以上があり、除外診断がなされること。



治療はステロイド20~60mg/day 分2~3

初期量は1~2週が目安。

膠原病のプロトコールよりも早く減量可能で、CRP低下が

明らかであれば陰性化しないうちに減量可能。

時にステロイド抵抗性あり。しかし合併症の観点から

強い免疫抑制剤の使用は慎重に。


http://www.f-teisinhp.japanpost.jp/HOMEPAGE/profile/profile/ProfileNo.43.pdf

オピオイドの吐き気

テーマ:

ご存知のようにオピオイドは開始時に、30%~50%程度の患者さんに吐き気の副作用が

出ます。この副作用はオピオイド開始時に多く、1週間~2週間で(イレウス等他の問題が

生じていなければ)吐き気止めの併用が不要になる程度まで改善すると言われています。

しかし、そうは言ってもその1週間~2週間がつらい事も多いです。


緩和ケアの世界では、オピオイド開始時に吐き気止めを併用するのは常識です。

一度でも強い吐き気を経験してしまうと、オピオイドに対する嫌悪感が生まれ、

適切な使い方をすれば有効である場合にも使用出来ない事があります。

最初に使用する先生の責任です。


オピオイドの吐き気はいくつかの原因によりますが、化学受容器引き金帯(CTZ)を直接刺激

する作用が最も一般的で、内服し、血中濃度が上昇する頃に出現します。

これに対してはプリンペランやナウゼリンよりもノバミンがよく使われています

(保険適応外)


更に、セレネース(保険適応外)はノバミンよりも確実に吐き気を止める、信頼出来る

吐き気止めです。更に強力な吐き気止めとしてはPZC等があります。


ここまでは、淀キリの『緩和ケアマニュアル』にも載っていると思いますが、

日本緩和医療学会に、ハロペリドールで不十分な嘔気のコントロールが

十分ではない時に、塩酸ヒドロキシジン(アタラックス)を併用すると

著しく嘔気が防止出来た、という発表がありました。


http://www.jstage.jst.go.jp/article/jspm/1/1/1_101/_article/-char/ja/


何だよ、そんなのもうやっているよ、という方もいらっしゃるかもしれませんが

アタラックスは副作用の大変少ない薬ですから、オピオイド開始時に

併用すれば、吐き気で苦しむ患者さんが少なくなるのではないかと

思います。意識して使ってみては如何でしょうか?

ゾメタ

テーマ:

2006年4月20日ゾメタが、固形癌の骨転移に対する治療薬としての保険適応が通りました。

(これまでは悪性腫瘍による高Ca血症のみ)


SRE(骨関連事象)という言葉がありますが、これは圧迫骨折等の病的骨折や放射線治療や

外科的手術が必要になることを指します。ゾメタの使用で、このSREの発現が有意に低下した

という事です。簡単に言うと骨転移の合併症を減らせた、って事ですね。


詳しい数字は以下を参考にして下さい。

http://www.novartis.co.jp/product/zom/pi/pi_zom.pdf


似たような薬にアレディアというのがありましたが、アレディアは乳がんの骨転移にしか

適応がありませんでした。アレディアとの比較ではゾメタ4mg/月はアレディア90mg/月に

劣っていないというものでしたが、作用の効果を考えると十分強力である可能性がある

と思います。点滴の時間も、アレディアは2時間以上かけることになっていますが

ゾメタは15分以上と大幅に短い時間で点滴可能です。


いくつかの点についてQ&A形式で述べさせて頂きます。


Q1 )では、ゾメタはどの時点で開始するのが良いでしょうか?


A1)骨シンチで転移がわかった時点では、ゾメタの使用は一般的ではないようです。

ASCOからガイドラインでは

骨転移を示す画像所見を有する患者のうち、
①単純X線所見で溶骨性骨病変を有する患者
②骨スキャンが異常、単純X線所見は正常、CTやMRIで骨破壊を認める患者

に関しましてはビスホスホネートの投与が推奨されています。

つまり、X線、CTで骨病変が認められたら、という事になります。


Hillner BE, et al.: J Clin Oncol. 2003 Nov 1;21(21):4042-57.


Q2)既に疼痛が起こっている患者さんの疼痛に対してゾメタは有効ですか?


A2)上記のように予防で用いられるゾメタですが、ASCOのガイドラインでは

ゾメタやアレディアは全身化学療法やホルモン療法と併用で疼痛の軽減に有効

と上記ガイドラインでも言及されていますし、鎮痛補助剤という位置付けで使用

されているようです。また、使用した患者さんの中にも明らかな効果を感じておられる方が

少なくありませんし、臨床報告はいくつかあるようです。


Q3)副作用は?


A3)以前ここのブログで、薬剤師のがちょんさんからゾメタはアレディアよりも副作用が

多い印象であるとご意見を頂きましたので、ノバルティスファーマに問い合わせてみました。


海外では乳癌の骨転移及び多発性骨髄腫の症例に対しては、アレディア90mgを対照
薬として臨床試験を行なっていますが、その結果などでは、発熱の副作用は

ゾメタ4mg投与群7.2%、アレディア90mg投与群5.4%という結果だったという事です。
同様に骨痛に関しても、ゾメタ4mg投与群9.1%、アレディア90mg投与群8.6%とい
う結果でした。この結果では、アレディアとゾメタの副作用の頻度は大きくは異ならないと

思われます、とのことでした。


またビスホスホネートの発熱の副作用は投与初回に起こしやすく、連用するに従って
頻度は低くなります。また、投与時間を早くした方が発熱を起こしやすくなります。
発熱等の副作用に関しては、投与時間を長く取ることで、頻度が低くなる可能性も

言及されているそうです。


『癌性骨疼痛に対するパミドロネート療法』という本が金原出版から出ています。

参考になるのではないかと思います。

CO中毒

頭痛の原因として、疑わないとなかなかわからないもののひとつに、CO(一酸化炭素)中毒が

あります。先日ひとり経験したのでご報告します。


20代女性。リストカットを繰り返している方です。

夕方から部屋で火鉢を焚いていたところ、頭痛と嘔気が出現。一度嘔吐。

23時頃まで我慢していたが改善せずに来院しました。

Vitalは意識清明、体温36.9℃、血圧146/90、脈拍92、SpO2 99。

項部硬直なし。脳神経学的所見に異常を認めない。

練炭自殺?と考えCOHbを測定したところ16.2と高値!

(正常値2%以下)


COHbは施設によっては測定出来ません。検査科に尋ねて検査出来なければ

出来る施設に送りましょう。


COHbは10%以上で頭重感や軽度の頭痛、30%~40%で激しい頭痛、50%~で

痙攣、昏睡、70%以上で呼吸停止、死亡となる事が多いそうです。

30%以上では、高圧酸素室での治療を考慮すべきで、可能な施設に連絡します。

典型的な症状は頭痛、悪心、視野が暗くなるなどの訴えがあります。

意識障害例では、他の疾患との鑑別が必要です(特に過量服薬など)


治療は酸素投与です。リザーバ付きの酸素マスクで10Lだとほぼ70%くらいの

酸素になりますが、5-6時間投与することでCOはほぼなくなると言われています。

高圧酸素室が使えない場合、挿管し100%酸素による換気を行います。

ちなみに重症ではアシドーシスを伴いますがメイロンは原則禁忌です。


この患者さんは10Lリザーバマスクで6時間酸素化を行い、COHb1.9まで改善

したため、帰宅可となりました。


しかし、根本は何故このような事をしたかです。

希死念慮については曖昧で、リストカットと同じような気持ちでしたのですか?の

問いにも答えず。精神科の診察は拒否。

同じ事を繰り返すようなら帰せないと説明したところ、「しない」と返事。

本人と家族に、なるべく早く現在かかっているクリニックを受診するように話して

帰宅となりました。


もうひとつ、忘れてはいけないこと。

CO中毒では、数日から数ヶ月たってから認知障害、異常行動等が出現する場合

があります。この場合受診は必要です。

しかし、この場合治療はどうするのかは不明…何処にも載っていません^^;