メイロン(炭酸水素ナトリウム)。基本的な薬でありながら、実はあまり良くわからないで
使っておられる先生が多いように思います。如何でしょうか?
まずはどんな場合に使うか、です。まずCPAの場合。
高K血症での使用は明らかに有効性が確立しており(ClassⅠ)、誰も文句はないと
思います。また、三環系抗うつ薬やアスピリン過量時も、ClassⅡaであり、まぁ
悩まずに使用出来るのではないかと思います。その他、例えばCPAでは循環不良で
乳酸アシドーシスになる事が多いのですが、これに対しては実際的な効果は殆ど
期待されておらず、何をやっても厳しい時のみ、やってみようかという感覚です。
理由は、
①動物実験でも生存率が改善されない
②酸素解離曲線をシフトさせ、末梢での酸素解離を抑制する
③ナトリウム、浸透圧負荷が有害
④paradoxical acidosis(血液のpHが上がっても、組織や脳ではむしろ低下)
⑤カテコラミンを不活化
などマイナス要素が多くが挙げられていることにあります。
まして呼吸性アシドーシスではもってのほか(ClassⅢ)です。
基本的なことだと思うのですが、pCO2の著増したpH7.00の患者さんに、私と同じくらいの
医師が大真面目にメイロンを注射(しかも250ml)しようとしている場面に出くわしました。
適当に理解されているのは、使用量です。
だいたいのテキストには、使用するメイロンの量がmEqで記載されています。
ところが、メイロンのアンプルには7.0%とか8.4%とか書いてあるので
正直よくわかってない(わかろうとしていない)先生が多いようです。
炭酸水素ナトリウムは、1gが12mEqです。
8.4%20mlには、1.86gの炭酸水素ナトリウムが含まれていますので
12×1.86≒20mEqが入っている計算になります。
つまり、
1ml≒1mEq
なのです。常識?でも結構周りの先生は知らないようでした。
使ったことないのかな?
投与スピードは、2mEq/分(100mEq/時)以下とされています。
ちなみに何故メイロンに7.0%と8.4%があるのでしょう?
どうも、最初は7.0%のみだったのが、計算が面倒なので(1mlが0.833mEq)、
後から8.4%が出たのだそうです。8.4%は無理に溶かしているので不安定で、
多少白濁しやすいのが欠点で、開けたら急いで使うように気を付けましょう。
で、実際に投与する量は、不足する塩基量から計算します。
計算の方法はいくつかあるので成書に譲るとして、
救急の場で細かい計算をするのは実際的ではありません
そんな時はまず1mEq/kgを投与するという手があります。
(臨床医マニュアル 医歯薬出版株式会社)
普通の体格の成人ではメイロン60mlくらい(高齢者では少なく)から、ガスを見ながら追加が
正しいと思います。250mlのボトルをドボドボ入れる方は、目標のpHを
どの辺に置いておられるのかといつも思ってしまいます。
メイロンが配合注意が多いのはご存知かと思いますが、それでもたまにドパミンが
入っている側管からメイロンを入れようとしているのも見掛けます!!!オソロシイ
また、ヴィーンF等にメイロンを入れている先生も見掛けます。
炭酸水素ナトリウムを緩衝液の中に入れると?どうなるのかは知りませんが
ビン注したいなら普通5%glucoseに入れます。
末梢性めまいに対するメイロンは、その意義は不明ながらも、適応も通って
いるので使用するのは良いと思います。が、耳鼻科の先生などはよく
これくらい入れないと効かない!とか言って250mlのボトルを使っています。
確かにこれくらい使用しないと効果がないという意見は多いのですが
250mL中には12gの食塩を含んでいますのですごいナトリウム負荷になるのは…
知っておられるのでしょうね。当然低Kにも注意が必要ですね。
また、メイロンがそのままの濃さで点滴して血管外に漏れると、壊死を起こす
可能性があります。使用上の注意をみると必ず希釈して使うように、とあります。
(一方でめまいでは薄めると効果が低いという先生もいますが)
それを考えると私は末梢性めまいでの使用はどうなのかな、
って思ってしまいます。