20代の女性。妊娠13週の女性です。夜中突然の左下腹部痛と吐き気で来院されました。

発熱、下痢なし。ある女性のレジデントが対応しました。

主訴を記録するかみには背部痛と書かれていました。


CVA tendernessが陽性であったため、尿管結石が疑われました。

尿検査が行われ、(±)という結果でした。

妊娠中で放射線を使った検査が出来ないので、しばらく点滴をして経過観察、

となっていました。


ERは当番性で動いているため、そこから別の医師が担当となりました。

痛みは軽減せず続いていました。

なんとechoも採血も行われておらず、そこで初めて実施となりました。

炎症反応はWBC 11500 CRP 0.1。


echoではわずかな水腎症とダグラス窩にこれまたわずかな腹水が

認められました。やはり尿管結石と考えましたが、妊娠中ということもあり

婦人科にコンサルテーションとなりました。










結果。








卵巣嚢腫径茎捻転、でした。


緊急手術となりました。手術が遅れたら卵巣を摘出する必要があったケース

でした。

卵巣嚢腫径茎捻転は急激な下腹部痛と悪心、嘔吐、微熱等の症状があります。

圧痛部位に一致して緊満した嚢腫を認めます。


茎捻転を起こすような卵巣嚢腫は3cm以上(多くは5~7cm)であり、

注意深くechoを行えば嚢腫が明らかになったかもしれません。しかし、施行した医師も

半ば尿管結石を疑っていたこと、また男性の医師であったため、若い女性の下腹部を時間

かけてechoすることがためらわれたのかもしれません。


当院のレジデントの間で人気の高い本を紹介していこうと思います。

まずは『内科オンコール』。メディカルサイエンスインターナショナルから出版されています。

Internal Medicine On Call,3rd Editionの訳ですが、日本の初期のレジデント向けに注釈が

書かれているので重宝します。当直医が良く出くわすケースごとに何を考え、どんな検査を

してどんな治療をするのかが解説されている本です。

たくさんのレジデントが持っている本で私も欲しかったのですが、先日ついに入手しました^^


値段は5250円です。






去年の10月26日にA群β溶連菌についての記事を書きましたが、その後勉強した事を

追加しておきますね。内容は、咽頭痛に対してのペニシリン投与と効果についてです。

読んだ文献は、


Penicillin for acute sore throat:

randomised double blind trial of seaven days versus three days treatment

or placebo in adults

BMJ 2000;320:150-154


サンフォードによれば、成人の溶連菌感染に対してもペニシリンの10日間投与

が推奨されています。果たしてこれは必要なのでしょうか?また、効果は?

というのが今回のポイントです。


咽頭炎に対し、ペニシリンを7日投与した群と、3日投与した群、プラセボでの

比較です。561人の、15歳から60歳の成人が対象です。Centorの変法のうち

少なくとも3項目を満たした患者さんをランダムに振り分け、抗生剤、プラセボを投与しました。

penicillin Vが1500mg投与されました。


結果ですが、

7日投与群でA群β溶連菌に限定すれば2.5日、症状が短縮されました。

②7日投与群でA群β溶連菌以外では1.3日症状が短縮されました。

③3日投与ではプラセボと変わりありませんでした。

④プラセボ投与群の13%では症状が悪化し、後で抗生剤投与が必要になりました。

⑤プラセボ群では3例に扁桃周囲膿瘍をきたしました。


A群β溶連菌は症状も強く、しつこい?ので、そうとわかれば抗生剤を内服する価値は

ありそうです。少なくともインフルエンザのタミフルよりは余程効果あります。

ペニシリンは、溶連菌の合併症のリウマチ熱を減らすエビデンスも

あるのですが、先進諸国ではここ最近リウマチ熱の報告がなく、このために処方する

意味はなさそうです。急性糸球体腎炎(AGN)については別の論文からになりますが

成人においてはしっかりと信頼出来るエビデンスはなく、そもそもこの合併症自体が

成人では稀であり、たとえAGNになったとしても大多数の予後は良好であることから

AGN予防としての処方もそれほど意味はなさそうです。


あとは経口のペニシリンは副作用が決して少なくない(吐き気、下痢、腹痛などの

消化器症状が20~40%)という事も考慮して処方を判断してはどうかと思います。


おまけ:急性糸球体腎炎の症状は乏尿(無尿)、浮腫、高血圧等です。

以前、出来れば尿検査も…などと書いたかもしれませんが^^;

成人の場合、治癒後にわざわざ尿検査までしている先生は周りにはいません。

症状がでたら来院という事でよろしいかと思います。治療も安静、食塩制限

で自然に治るのが殆どです。小児は話が別ですが。





これも私が担当した方ではないのですが…。

糖尿病にて当院かかりつけの男性。

普段はアマリール(1mg)4T、ベイスン(0.3)3TでHbA1c 7.0くらいにコントロール

されています。10日前より食欲不振、下痢、心窩部痛あり。

本日右季肋部に痛み、意味不明な言動が聞かれたため救急車で来院。


体温37.4℃、血圧 94/74、呼吸数 18回、脈拍 126回、SpO2 97。

意識は覚醒しており、会話は成立する。

項部硬直なし、神経学的所見ではfocal signなし。

臍の右側に圧痛、筋性防御(±)?

胃腸炎の印象、という記載があり、採血が行われていた。


採血結果:WBC 13100、Hb 11.4、BUN 43.9、Crea 2.3、Glu 820、CRP 7.7、尿ケトン(+)、

ABG:pO2 78.9、pCO2 34.7、HCO3- 24.7、pH 7.4

胸部Xpポータブル:浸潤影なし、心拡大なし。

非ケトン性高浸透圧性昏睡、腎前性の腎機能障害と診断されました。

来院時に血糖チェックすべきですよね^^;…。


まぁ、それは置いといて、実はこれで終わりじゃなかったんです。

入院後交代した担当医が腹部を診察して、“硬い”と判断しました。

緊急CTを撮ったところ、perforationが明らかになったのです!

十二指腸潰瘍の穿孔でした。

この患者さんは緊急手術となり、無事回復されてきています。

今までそこそこにコントロールされていた患者さんが、高血糖となる

原因に感染症がありますが、この方はそれが腹膜炎だったのです。

初めの担当医はまったく考えていなかったようでした


教訓は、glucose 820に目が行ってしまい、

本来の患者さんの主訴、腹痛が軽視されてしまったことが

今回の問題であっただろうという事です。

糖尿病もあり、高齢であった事から訴えが強くなかった可能性があります。

救急外来では、異常な高血糖、吐血や黄疸と言った派手な所見の裏に

大切な所見が見落とされる事がないように気を付けなければいけませんね。

私の経験した患者さんではありません。

若い患者さんで呼吸困難と言えば、どのような疾患を考えますか?

この方は特記すべき既往症はありませんでしたが、

有機溶剤の塗装の仕事をしていて、以前にも新しい材料を使った時に呼吸苦が

出現していたようです。数ヶ月で良くなりましたが、今回は新しい

材料を使ったわけでもないのに7日前より次第に呼吸苦が増悪してきました。

胸痛はありません。


家族歴には気管支喘息(兄、母)

嗜好:タバコ20本/day×10年

来院時のvitalは、体温36.6℃、脈拍90、血圧89/68、SpO2 89

胸部聴診でcrackle、wheezing聴取せず。

胸部Xpでは浸潤影なし、その他活動性病変を認めない。

採血:WBC 6600、Hb 16.1、CRP 0.0、pO2 58.4、pCO2 41.1、pH 7.391、HCO3- 24.4

当直医は気管支喘息を考え、ベネトリンの吸入を2回、ソルメドロール125mgの点滴を

行いましたが呼吸苦は良くならず、酸素3L投与下でSpO2 94であったため、呼吸不全として

入院となりました。


診断は?

実はこの患者さんは入院したばかりでまだ診断はついていません。

私はやはり気管支喘息だと思うのですが…他に考えられる疾患はありますか?

本日以降、色々な検査が行われる事になると思いますので

また経過わかり次第報告させて頂きます。