90代の女性が喘息で救急車で運ばれて来ました。
90で喘息と言うと、実は心不全なんてことも多いのですが、本当に喘息でした。
数日前から風邪気味だったそうですが、本日急に苦しくなりゼーゼーと喘鳴が始まったと
いうことでした。リザーバマスクで酸素が6L投与されており、サチュレーションは99~100
という数字で胸部の音もwheezingはハッキリ聞こえませんが意識は朦朧となり、全身で息を
してかなり苦しそうです。もう一人の同期のER当番と一緒に、採血して吸入して、レントゲンを
オーダーして…とやっていると吸入後にやっとゼーゼーという音が聴こえてきました。
いわゆる、silent chestのような状態だったようです。
サチュレーションが良くても気道の狭窄が強ければ呼気が上手く出せずに苦しいのは当然です。
血液ガスの結果は、pO2 146、pCO2 54.1。
レントゲンも出来てきました。肺炎や心不全もなさそうです。
酸素を3L nasal(鼻カヌラ)に変えて、ちょっと落ち着いてきたかな、と思い
今度はソルメドロール125mgを生食50mlで溶き、側管から点滴しました。
終わった頃、なんと呼吸状態が再び悪化。苦しそうな呼吸に変わり
サチュレーションも90くらいまで低下しました。
!!
何が起こったんだ!?と思いましたが、患者さんの脚を見ると来院時にはなかった
赤い発疹が出ているではありませんか。手も真っ赤になっています。
尋ねると「かゆい…」と。
ステロイドの注射薬には、商品によりパラベン(防腐剤)やコハク酸が含まれて
います。これらによって、稀に喘息発作が悪化する患者さんがいるのです。
患者さんは他に薬を飲んでいないので、これが原因の可能性が高いと思いました。
普通はこの場合、迷わずボスミン!となるべきですが、
狭心症の既往のある90代の患者さん、血圧も220と来れば、流石にボスミンは
躊躇われます。ポララミン、ガスターとリンデロンを生食50mlに溶き、点滴しましたが
どれも即効性はありません。吸入を用意し、あとはもうステロイドが効いてくるまでひたすら
頑張って頂きました。
粘った甲斐あって、ボスミンを使わずに呼吸状態は落ち着いてきました。
ただ、しばらくしてからまた呼吸状態が増悪する場合もあるので、この日は救命センターに
入院とさせて頂きました。
コハク酸の含まれていないステロイド注射剤は、ハイドロコートン、デカドロン、リンデロン。
このうち、パラベンも含まれていないのはリンデロンのみです。
従って他のステロイド剤で喘息が悪化した場合はリンデロンが最も無難、という事になります。
初めての経験だったので、ちょっと焦りました。
リンデロンの半減期は5~6時間だそうなので、リンデロン4mgを1日4回使用するのが
標準のようです。