呼吸器の先生が肺炎の時、外来で好んで出す抗生剤を調べてみたところ、

このオーグメンチンとサワシリンの組み合わせが多かったです。


オーグメンチン 3T 3X 毎食後

サワシリン 3T 3X 毎食後


どちらもアモキシシリンなのですが、オーグメンチンに含まれているクラブラン酸は

必要な量の何倍も含まれているそうなのです。

安い薬ですしオーグメンチン6Tでも良いような気がしますが1日量1125~1500mgとあるので

保険で問題があるのでしょうか?


真似して外来でfollowすることにした肺炎の患者さんに先週お出ししてみましたが

なかなか切れ味が良く、これは覚えておこうと思いました。


ちなみに肺炎の治療ガイドラインでは基礎疾患がなく、外来でエンピリックに抗生剤

を使用する場合はジスロマックやクラリスが推奨されています。非定型肺炎には

良いかもしれませんが、肺炎球菌では耐性が多く、配慮が必要です。


90代の女性が喘息で救急車で運ばれて来ました。

90で喘息と言うと、実は心不全なんてことも多いのですが、本当に喘息でした。

数日前から風邪気味だったそうですが、本日急に苦しくなりゼーゼーと喘鳴が始まったと

いうことでした。リザーバマスクで酸素が6L投与されており、サチュレーションは99~100

という数字で胸部の音もwheezingはハッキリ聞こえませんが意識は朦朧となり、全身で息を

してかなり苦しそうです。もう一人の同期のER当番と一緒に、採血して吸入して、レントゲンを

オーダーして…とやっていると吸入後にやっとゼーゼーという音が聴こえてきました。

いわゆる、silent chestのような状態だったようです。

サチュレーションが良くても気道の狭窄が強ければ呼気が上手く出せずに苦しいのは当然です。


血液ガスの結果は、pO2 146、pCO2 54.1。

レントゲンも出来てきました。肺炎や心不全もなさそうです。

酸素を3L nasal(鼻カヌラ)に変えて、ちょっと落ち着いてきたかな、と思い

今度はソルメドロール125mgを生食50mlで溶き、側管から点滴しました。


終わった頃、なんと呼吸状態が再び悪化。苦しそうな呼吸に変わり

サチュレーションも90くらいまで低下しました。


!!

何が起こったんだ!?と思いましたが、患者さんの脚を見ると来院時にはなかった

赤い発疹が出ているではありませんか。手も真っ赤になっています。

尋ねると「かゆい…」と。

ステロイドの注射薬には、商品によりパラベン(防腐剤)やコハク酸が含まれて

います。これらによって、稀に喘息発作が悪化する患者さんがいるのです。

患者さんは他に薬を飲んでいないので、これが原因の可能性が高いと思いました。


普通はこの場合、迷わずボスミン!となるべきですが、

狭心症の既往のある90代の患者さん、血圧も220と来れば、流石にボスミンは

躊躇われます。ポララミン、ガスターとリンデロンを生食50mlに溶き、点滴しましたが

どれも即効性はありません。吸入を用意し、あとはもうステロイドが効いてくるまでひたすら

頑張って頂きました。


粘った甲斐あって、ボスミンを使わずに呼吸状態は落ち着いてきました。

ただ、しばらくしてからまた呼吸状態が増悪する場合もあるので、この日は救命センターに

入院とさせて頂きました。


コハク酸の含まれていないステロイド注射剤は、ハイドロコートン、デカドロン、リンデロン。

このうち、パラベンも含まれていないのはリンデロンのみです。

従って他のステロイド剤で喘息が悪化した場合はリンデロンが最も無難、という事になります。

初めての経験だったので、ちょっと焦りました。

リンデロンの半減期は5~6時間だそうなので、リンデロン4mgを1日4回使用するのが

標準のようです。

臨床薬理学 9:541-549,2006に社会不安障害(SAD)の最新薬物療法という座談会の

記事が出ていました。内容をまとめてみます。


①SADと内気な性格との違い

SADは不安や恐怖を不合理と感じており、日常における支障や苦痛が大きい。

病前性格は多くの場合内気ではなく、また治療に成功すれば変わる。


②治療の中心は精神療法、BZ系抗不安薬からSSRIに移ってきている。

(日本ではフルボキサミン(デプロメール、ルボックスで適応がある)


③非常に良くなった+良くなった人が10週間で51.1%。52週で64.8%。

投与量は150mg~200mgが多くの例で必要。


④クロナゼパム(リボトリール)もエビデンスが多い。

SSRI単剤が基本だが不安が強い場合しばらく併用する。


⑤SSRI開始時、スルピリド(ドグマチール)を50mgだけ入れると

初期として有名な消化器系副作用が殆ど起こらない。


⑥SADの中でもスピーチ恐怖、視線恐怖は比較的治りやすい。


⑦治療期間は多くの場合3ヶ月~12ヶ月で回復後の再発は少ない。


⑧症状の評価にLSASというスケールを用いられる。


⑤はSADに限らず、朗報だと思います。ドグマチールは1錠でよく、他の

胃薬は全くいらないそうです。不思議ですが…。

セロトニン症候群は、SSRI等、セロトニン濃度を上昇させる薬剤を内服した場合に

稀にみられる副作用です。複数の同じ機序を持つ薬(MAO阻害薬エフピーや

三環系抗うつ薬、augmentationに用いられるブロモクリプチン等)を併用した場合

比較的よく起こるとされています。


症状としては、焦燥、錯乱、幻覚、ミオクローヌス、発汗、振戦、下痢、発熱。

また、自律神経症状として頻脈、高血圧、頻呼吸、散瞳、顔面紅潮、腹痛

等が見られます。


こうして見ると、悪性症候群(NMS)とそっくりじゃないですか?

ワシントンマニュアル精神科サバイバルガイドによると、

『硬直またはクレアチニンキナーゼの上昇がないことにより

NMSと鑑別できる』

とあります。


なるほど、これなら分かりやすいです


しかし!


同じくワシントンマニュアルによると、


筋硬直、開口障害、後弓反張等が起こることがある』


『重篤な場合DIC、横紋筋融解症、腎不全、呼吸不全、ARDSを合併する事がある』


そうなのです。筋硬直があって、横紋筋融解症があったら、NMSとどう違うのでしょう。

つまり、重症型、合併症により、NMSと全く見分けがつかない症状が起こりうる、

という理解で良いのでしょうか。私はそう考える事にしました。


最後に、今日の治療薬2005に載っている、セロトニン症候群の診断基準を紹介します。

これによれば、抗精神病薬を飲んでいないことが診断のひとつとなっており、

セロトニン症候群は除外診断である、と考えることが出来ます。


①薬の処方、増量と一致して以下の症状の少なくとも3つが認められる。

精神状態の変化(錯乱、軽躁状態)、興奮、ミオクローヌス、反射亢進、

発汗、悪寒、振戦、下痢、協調運動障害、発熱。


②他の原因(感染、代謝疾患、物質乱用やその他の離脱)が否定的。


③上記臨床症状出現前に、抗精神病薬の投与やその用量の増加がないこと


他の合併症がなければ予後は良好で、通常原因薬物の中止のみで

70%は24時間以内に回復します。症状によりペリアクチン、プロプラノロール、

ジアゼパム、ダントロレンが用いられる事があります。


※ペリアクチンはセロトニン拮抗薬


薬物中毒で、活性炭について追加しようと思います。

昨日と同じく、日本中毒学会からのまとめです。


投与の1回量は50g~100g。うちでは50gで使っています。

マグコロール1Pを混ぜて使用しています。

微温湯300mlに溶かしています

(小児では量が異なるので、サイトを参照して下さい)。

18Frの胃管が推奨されていますが、16Frでも問題なく投与出来ました。

それ以下だと詰るかもしれません。

なお、活性炭をそのまま飲んでもらうのも(飲めれば)OKです。


胃洗浄よりは効果が認められている活性炭ですが、

実は1時間過ぎるとかなり吸着率は低下するようです。

ボランティアを使って行ったスタディでは、1時間以内では

60~80%の吸着率であったのに対し、

1時間過ぎると30%程度に効果が落ちます。

更に2~3時間では有意差がなかったそうです。


そうなると、何がなんでも活性炭、という態度はどうか、という問題に

なりますね。それに活性炭も意識の落ちている患者さんに挿管なしで

投与するのは禁忌です。

ちなみに合併症は意識清明時は3.6%,意識障害時には18.8%。

嘔吐、便秘、消化管閉塞、誤嚥(1.7%)。


①しかし、活性炭が吸着しやすい物質があり、これらは少しタイミングが落ちても

効果が期待出来るかもしれません。


アスピリン、アセトアミノフェン、バルビツレート、フェニトイン、テオフィリン、

三環系・四環系抗うつ薬。


②更に活性炭の繰り返し投与が効果的とされているのは


テオフィリン、三環系抗うつ薬、フェノチアジン系、オピオイド、カルシウム拮抗薬、

抗コリン薬。


臨床効果は証明されていないものの理論的に繰り返し投与が有効と考えられるのは


テグレトール、アレビアチン、アスピリン、デパケン、ジゴキシン、シクロスポリン、

フェニルブタゾンなど。


繰り返し投与は、初回量の半分を2~6時間おき、24~48時間投与するそうです。


③逆に吸着が期待出来ないものは、

強酸、強アルカリ、アルコール、鉄、リチウム、ヒ素、カリウム、ヨウ素、ホウ酸、

フッ化物、臭化物など。


禁忌は消化管閉塞、消化管穿孔。


体内に吸収されないので妊婦には投与可。