SSRIは新規抗うつ薬として、我が国では1999年5月に初のSSRIであるフルボキサミン

(デプロメール、ルボックス)が、2000年にパロキセチン(パキシル)が発売されています。

抗うつ作用の他に抗不安作用も併せ持ち、うつ病のみならず幅広い臨床適応を持ちます。


本来の適応としては、


・デプロメール(ルボックス)は①うつ病、うつ状態 ②強迫神経症 ③社会不安障害


・パキシルは①うつ病、うつ状態 ②パニック障害


ですが、摂食障害、月経前症候群、アルコール依存症の抑うつ、抑うつを伴う人格障害、

慢性疼痛性障害、身体醜形障害、病的賭博などにも奏効する可能性があるとのことです。

適応がないなら使っちゃいけないんじゃないの?という人もいるかもしれませんが、

これらの疾患は気分障害(うつ)を伴っている事も多く、うつ症状に対して処方するなら

何ら問題はないと思われます。


三環系、四環系の抗うつ薬と比べると効果は弱いと考えられていますが、最大の利点は

重篤な副作用が殆どないこと。抗コリン作用もとても少ないので非常に使いやすい

薬です。また、多量服薬でも致命的になるにくいです。

依存もなく、長期の内服に適しています。内服開始時に嘔気等の消化器系の

副作用が出やすいのは有名ですが、1週間ほどで慣れると言われています。

逆にこの副作用は効果が出ている証とも言えるものです)

この間、プリンペラン等の吐き気止めを併用してもOKです。


ちなみに消化器系の副作用を少なくするために、食直後の服用が望ましいそうです。


効果発現まで時間がかかる事も特徴です。副作用をなるべく少なくするために

少量(デプロメールなら50mg、パキシルなら10mg)程度から始めると、

治療域(デプロメールなら150mg、パキシルなら20mg)までの増量にも

1~2週間、更にしっかりとした効果発現には4週間前後かかると言われています。

なので、その間はBZ系薬剤の併用がスタンダード。効果の早いドグマチールを

併用する事もあります。


2つのSSRIの使い分けはどうするんでしょう?上記適応症の違いに加え、

①併用注意薬剤が若干違う。

②パキシルではムスカリン受容体阻害作用があり、口渇や尿閉が出やすい。

③パキシルは1日1回投与でOK

④パキシルで駄目ならデプロメールに変えてみる⇒効果がある場合あり。逆もまた然り。

⑤値段は飲む量によるがどっこい。


抗うつ薬の併用

あまり一般的ではない。確固たるエビデンスに基づいているとは言えず、試行錯誤的な

処方と言えます。少量のSSRIと少量のTCA併用に反応する患者さんがいるという記事を読んだ事が

ありますが、玄人の技です。


>TCAは以前から有りましたが、2000年前後にSSRI、SNRIが登場してきました。

>肝臓における代謝の関係で、両方あわせることは禁忌に近いです。

>合わせている医者は勉強不足か超売れっ子です。


とは、精神科医gaito先生のお言葉です。いずれにせよ、広く認められている方法とは

言えないようです。実際には他に方法がないので行われているという印象です。

実際の投与例

58歳女性。悪性リンパ腫の診断を受けてから抑うつ気分(日内変動あり)、倦怠感、

不眠(中途覚醒あり)、テレビすらも観る気がしないという訴えが出現。

①パキシル(10)1T 夕食後

②コンスタン(0.4)2T 2X 朝夕

③ドラール(15)1T 1X 寝る前

④頓用 不安時 コンスタン(0.4)1T

1週間後、パキシルを20mgに増量。2週間の時点で抑うつの訴えが減り、夜間も良眠。

朝のコンスタンを減量し、様子をみている。




今日紹介したいホームページです。このページを知ってもらえただけで、私の

ブログが存在している意味があると思います、素晴しいサイトです。


精神医学用語が知られ、頻用されるようになってきました。

『トラウマ』とは外傷のことですが、『心的外傷』、心の傷を意味する言葉です。

巷では、

「俺さー、合コンがトラウマになっちゃったよ」

なんて軽い意味で使われる事も多く、

本当にトラウマに苦しんでいる人の気持ちを考えると嫌な気分になります。


PTSD (Post Traumatic Stress Disorder:(心的)外傷後ストレス障害)という

言葉もまた、広く使われるようになってきました。自分や愛する人の存在を脅かす

ような事態に巻き込まれ、恐怖や悲しみから心のバランスを保つのが難しく

なる事を指します。再体験症状(フラッシュバックなど)、過覚醒症状(不安、不眠など)、

回避症状(トラウマに関連した事物を避けるなど)が特徴とされます。


ホームページの管理をされている未奈さんも多くの苦しみを経験されてきました。

「良太Ⅱ」というページに、その内容が詳しく書かれています。

このホームページの魅力は、トラウマについての理解が得られることだけではなく

管理人の未奈さんの人柄にもあると思います。

薄っぺらな優しさではなく、多くの悲しみを乗り越えてきた深い優しさを感じます。


http://youalive.com/

統合失調症の告知の面談に立ち会いました。

患者さんの気持ちを考えた素晴しい説明だったと思います。


患者さんは11月10日のブログに書いた方です。治療により、だいぶ気持ちが落ち着いて

幻覚や妄想の体験は覚えていますが、「思い出」のように、距離を持って振り返る事が

出来るようになってきました。患者さんから病状説明の希望があったため、予定より少し

早かったのですが告知をする事になりました。


以下に要約を記します。一般の方にも参考になると思いますし、医師の方にも理解したり

説明する必要がある場合、参考になるのではないかと思います。


・貴方の病気は現時点で100%と言えないが、統合失調症という病気の可能性が高いと

思います。この病気に特徴的な症状がいくつも見られたからです。


・この病気の最大の特徴は『幻覚』と『妄想』。


・例えば、貴方は入院する前、「悪いものが入ってこないように」という理由で

会社中の鍵を掛けてしまいました。貴方には意味があってやった事で、貴方の

その考を否定はしませんが、やはり会社の同僚から見るとそれは今までの貴方

とは違う行動であり、「おかしい」と感じてしまいます。

このずれが統合失調症です。


・自分だけの世界で周りの人とのずれが大きくなると、貴方ひとりで生活する分には

大きな問題はないかもしれないが、社会との摩擦は多くなり、生活するのが難しくなってしまう。

また、「何者かに操られる感じ」があったそうですが、操られるままに他の人を

傷付けたり自分を傷付けたりする事が起こるかもしれません。

また、自分でもお分かりだと思いますが、入院時は強い緊張や不安、恐怖感があり、1週間以上殆ど

眠れていなかった。それらの症状も貴方自身にとってもつらい事であったと思います。

だからそういう部分は治療しなければいけません。


・この病気は周りに気を遣う、優しい人に多い病気と言われています。色々考えて

周囲の出来事が自分で処理出来なくなって心のバランスを崩して発症する事が多いのです。

「ガラスの心」と呼びますが、精神的な無理がきかなくなります。

自分のそういう部分を知る事は大切で、今後は無理がないようにしていかなければいけません。


・ご自分では随分症状が良くなったと感じていると思いますし、実際その通りですが、

薬は今回のような「発作」を起こさないように、私は生涯飲み続けた方が良いと思います。

「発作」を繰り返すとだんだん病状が悪くなる事が多いからです

もちろん、量は少なくしていきます。


・また、偏見の強い病気です。周囲の人に病名を伝える時は慎重に考えて下さい。

ご自分で病気を勉強された上で、必要な人だけに告げるのが良いと思います。

時に病気そのものよりも偏見の方がつらい病気でもあります。


患者さんは病名を聞いた事がないようでした。今日は“分裂病と呼ばれていた病気”とは敢えて

お伝えしませんでした。上級医は、病状が落ち着き、「目覚め」た時に絶望してしまう方もいるので

今後の動向は注意が必要、と話していました。



今日は精神科の当直でしたが、朝9時から午後9時までで、たった一人でした^^;

お陰で随分時間があり、勉強でもしようと図書室へ行ったところ、タイトルにある

『ガンは抗ガン剤療法で治るのか』という本が目につきました。

1998年に出版されたRalph W.Mossという米国のジャーナリストが書いたものです。

内容は、想像通り抗ガン剤の効果、意味に否定的な立場で書かれたものでした。

私も抗ガン剤にはかなり慎重な立場の人間なので、納得出来るところは多かったです。


著者も認めているように、いくつかの血液やリンパの癌は、抗ガン剤で命を救う事の

出来る悪性腫瘍があります。それに対して固形癌に対する抗ガン剤は、と言うと…

基本的に『抗ガン剤では治らない』という事を医師は認めています。


よく指摘される事ですが、「抗ガン剤が効いた」という目安に、奏効率という言葉を

使います。これがまた胡散臭い言葉です。これは、「腫瘍が4週間以上、半分以下の

大きさになった」という意味で、決して寿命が延びたという意味ではないのです。

腫瘍の縮小と生存率は全く異なる事も指摘。確かにそれもその通りだと思います。

例えば強い抗がん剤を組み合わせて使えば、かなりの確立で腫瘍を小さく出来る事が

増えてきました。しかし、強い抗がん剤は明らかに患者さんを弱らせている事も多いのです。

この本の著者も、応答率の高さと生存期間の延びとの間には相関関係が

ない、と繰り返し書いています。確かに、こんなに延命が出来た、と胸を張って

患者さんに見せられる統計はどれだけあるでしょうか。


勘違いしないで頂きたいですが、単純に抗ガン剤を否定したり、治療に反対している訳では

ありません。私もTS-1で腹水が消失し、旅行をしたり良い時間を過ごせた患者さんを知って

いますし、肺癌に対してイレッサでびまん性に散らばった転移性肺がんが見えないくらいに

小さくなって、数ヶ月間咳や呼吸苦、胸の痛みが消失した患者さんもいました。

彼らにとっては明らかにQOLの改善につながったと信じています。

また、例え数ヶ月の延命であっても、つらい治療であっても、患者さんやご家族にとって

何にも変え難い、貴重な数ヶ月である場合も多いと思うのです。


ただ、一方で…


例えば抗ガン剤の副作用について説明が不十分である事が多い、という指摘が

あります。ある医師は、詳しく話すと患者が不安になって治療を受けないかもしれない、

と言っていましたが、おかしいと思いませんか?きちんと話すと嫌がるような治療なのですか?

また、自分ならこの治療を受けますか?という質問に、NOと答える医師が多いのにも

驚かされます。自分は受けたくない治療を人に勧めるんですか?

1986年、カナダの肺癌専門医に、自分が肺癌であったとしたら、シスプラチンを含む

試験に参加しますか?という問いに、81%が参加しない、と答えたそうです。

シスプラチンは細胞毒性の強い抗がん剤で、吐き気等の副作用が強い事で

有名です。


また、ただ単に「他に治療法がないから」という理由や、「患者を失望させない為に」、

「おかしな治療に走らないために」、「みんなやってるから」等だけを理由に、

副作用の多い、延命効果の証明されていない治療が行われる事も実際にあるのです。


結論としては、残念ながら全て医師にお任せするのは危険な事が多いという事です。

少しでも納得出来なければセカンド・オピニオンは絶対受けましょう。

理解し、納得出来ないような治療は、まず受けない方が正解です。

そして医師は患者さんに後ろめたい気持ちで治療を行う事はないようにしていきましょう。

治療法がなくても、思いやりと心遣いをもって、誠実に関わってくれるならば、患者さんも

きっと心強いと感じて下さるのではないかと思うのです。









今日は精神科の当直です。今のところ、救急の患者さんは来ません。

なので、ゆっくり回診してきました。


11月10日に入院となった統合失調症(疑い)の患者さん(この日のブログ参照)ですが

その後の経過は順調です。非常に混乱し、話も滅裂でしたが、最近は落ち着いています。

妄想についてはまだ残っているようですが、少し距離が出来てきたようで、あまり

気にならなくなった、と話していました。怖くて開けられなかった目も、最近は閉じている

事がなくなりました。笑顔で、生き生きと喋るようになりました。

治療はワイパックスとマイスリー、リスパダール(入院時3mg⇒一度4mgに増量)

だけです。一人で外出も許可となり、あと1~2週間で退院の話が出るのではないかと

思っています。でも、彼女にとって、問題はこの先かもしれませんね。

…彼女はまだ、自分が統合失調症を疑われている事を知りません。


ひどいうつ病で入院となっている患者さんは、今週一度だけECTを行いました。

合計3回終わって、本当の効果はこれからだと思うのですが、ここ数日は毎日

笑顔が見られるようになりました。驚いたのは、数ヶ月殆ど食べられなかった食事が

食べられるようになったのです。鼻からの栄養の管は必要なくなり、

昨日は全粥を全量摂取されました。自覚的な抑うつの改善は少したってからと

言われています。早く改善すると良いな、と思っています。

(ECTについては11月17日のブログを参考にして下さい)


あと、治療の効果を感じているのは、慢性疼痛の患者さんです。

数年前から帯状疱疹後の神経痛に悩まされていた患者さんですが、

これまたECTが著効です。まだ4回終わっただけですが

いつ聞いても10/10だった痛みの強さが5/10に改善したと言います。

そしてやっと、痛み以外の事を考える事が出来るようになってきました。

恐るべきECTです。

これだけ効くのなら、治療の選択肢として多くの方に知っていただきたいですね。