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BLACK-SKY

ひとりごととか、小説だとか。

取るに足らない言葉たちの遊戯会。






うわぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!←((ウルセ

















本多孝好氏の


at Home




買ったんだよ





そしたら

































まさかのサイン本じゃないですかぁぁぁぁぁぁアップアップアップ









後ろにサインペン滲んでるし


薄い紙?みたいの被せてあるし



カバーついてる時点でん?って思ったんだけど






それにしたってまさかのサイン本じゃないですかぁぁぁぁぁぁアップアップアップ






嬉し過ぎて今宵はよく眠れるドキドキ 





あーでも勉強は手につかないこと決定ww




こんなにテンション高いの未だかつてないかもしれない((現金な奴




明日はストレイヤーズ・クロニクル買に行かないと♪((思う壺









あああああもう狂喜乱舞うぅぅぅーーーー!!!


キター Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒(。A。)!!!


キター Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒(。A。)!!!


キター Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒(。A。)!!!













「え?」


その言葉が俄かには信じがたくて、ぼくはたっぷり五秒、

寂しそうにオレンジ色の缶を傾ける純乃を眺めてしまっていた。



「だから、引っ越すんだって。一年前の蓮都みたいにさ」


手袋で缶ジュースを包むように持ちながら、淡々と純乃は言った。





「だって」


やるせない思いに包まれながら、ぼくはぎゅっと口を閉ざした。


引っ越す、という言葉と、目の前にいる大好きな彼女が、

何だかうまく実を結ばない。





「しょうがないの。転勤だから。大人の都合ってやつでしょ」


一年の間にやけに大人びた横顔で、冷めたように純乃は言い放つ。







大人の都合。



なら、大人なんて今すぐに地球上から滅んでしまえばいいとぼくは思った。


自分たちの都合でぼくの世界から純乃という女の子を

拭い去ってしまうなんて、それなら大人なんて滅んでしまえばいい。





でも、現実はそうはいかない。


簡単に大人が滅ぶことなんてできなくて、それと同じくらい、

純乃が引っ越しを中止することなどもちろんできない。



大人には簡単にできることでも、九歳のぼくには果てしなく遠かったから。












「やだよ、そんなの」


駄々っ子のようにそう呟いたことは覚えている。



「しょうがないでしょ」


その後、瞳を震わせながら純乃がそう言ったことも覚えている。




涙に呑み込まれそうになるぼくらを優しく包んだ夕日の色も、

涙に濡れた頬を乾かしていった風の温もりもはっきりと思い出せる。





けれど、なぜあの時純乃に思いを打ち明けなかったのか、それだけはどうしても思い出せない。














それから一週間して、純乃は本当に、ぼくの世界からいなくなってしまった。







純乃のいない春にも、秋にも冬にもすぐに慣れた。



けれど、夏だけはどうしても。



純乃と出会い、共に過ごした百パーセントの夏。



純乃抜きの世界には慣れても、純乃抜きの夏が成り立つ訳がなかった。








夕焼けを見るといつも、夏と共に訪れ、夏と共に去って行った純乃を思い出す。



あの日から、あの夏から、ぼくの夏は止まったままだ。














純乃に再び会いに行くにあたり、取りあえず何か口実を作らねば、

というのが僕の行き着いた答えだった。



じゃあ、何が?



三分弱考えあぐねた挙句、僕が新たに導き出した答えは、

取りあえず女性の問題は女性に聞いた方が早かろう、というものだった。



携帯のアドレスを順繰りに見ていく。

こんな小っ恥ずかしい相談を持ちかけられるのは、どう考えても柚季くらいのものだろう。


なるべくならそれは避けたかったが、手段を選んでいるほど暇ではない。













『デートのお誘いなら結構ですけど』


コール一回で電話に出るなり、柚季のおどけた声が応じた。



「開口一番それかよ。厄介な奴め」


『冗談じゃん。で、何か?』


「疎遠だった近所の男の子に久し振りに会いに来られるとき、どんな口実で来られるのが一番嬉しい?」


『疎遠にするくらいだから、どんな口実で来られても嬉しくない』


「……言い直す。どんな口実で会いに来られると嬉しい?」


『んー、プレゼントとか、そういうの?』




プレゼントか……・。


純乃がオレンジを好きなことは知っているが、十八歳の今、

缶ジュースなんかもらっても嬉しくなどないことは目に見えている。


かくなるうえは。




「今から会える? 校門で」


『は!? えーとでも、プライベートで会うの初めてだよね、どんな服を着ていけば』


「別にデートのお誘いじゃない。初恋の人に会いに行くだけ」


『……分かった』


それきり電話は切れた。



――何なんだよ、もう。

















きっかり十七分後、校門の前に現れた柚季は、心なしか不機嫌そうだった。




「何なの、ちゃんと事情話してよ」


柚季は言動とは裏腹に、白いトップスとキュロットという意外と可愛い格好で自転車に跨っていた。


高く結われたポニーテールにオレンジのシュシュがくっついていることに

少しだけ胸の奥の方が疼いたが、時間がないのでさっさと説明を済ませることにする。






「なるほど? で、プレゼントを選んでもらおうって魂胆か」


僕が一通り事情を話し終えると、柚季はいかにも面倒臭そうに溜め息を吐いた。



「協力してくれる?」


「面倒臭っ。アイスくらい奢ってくれたら嫌とは言えないけど」


「……分かった、それで手を打とう」








そんなこんなで更に十分後、僕は丁寧に包装された小さな袋を手にしていた。


柚季と、やけに物知り顔な店員の口車に乗せられるがままになっていたような

気もしないでもないが、取りあえず目的は果たしたので良しとしよう。




「これからどうする?」


ペダルに足をかけながら、僕は取りあえず柚季の方を振り返って尋ねた。



「どう、って。ここまで来たら、最後まで見届けるけど?」


柚季はなぜか偉そうに腕を組んで言う。



見届けるけど、って。

なぜに偉そうなんだ、お前はっ。




「……まあ、行くか」


「おう」













風に背中を押され、陽射しを存分に浴びながらアスファルトを疾走する。



これから純乃に会える。そのことで僕の頭は満たされていた。



純乃に会えば、あの日のままで止まった夏がきっと動き出すはずだ。








――君の待つあの夏へ、今すぐに駆けて行こう。



















小学二年の、やけに蒸し暑い夏。


突然見知らぬ町に放り込まれたぼくに居場所を、光を与えてくれたのは

他でもない、純乃だった。



















「かーなーしみーや」


前の学校で教わった歌を口ずさみ、ぼくは一人ブランコを漕いでいた。



前は、ぼくの背中をめいっぱい押してくれる仲間も、

どっちが高く漕げるか競争だよ、と競い合ったライバルのような奴もいた。






でも、今は。





「くーるーしみーが」




いつの日か、




「喜びーに、変わるだーろう」


ぼくの奏でる調子っ外れの幼稚な音に、可憐な旋律が重なる。



「え?」


今まで聞いたことのないような無邪気さに満ちた声の方を向くと、

ぼくの隣のブランコにやはり見たことのない年上の少女が腰を下ろした所だった。





「友達いないの? きみ」


上級生と思しきその少女は、悪びれた様子もなく笑う。

荒涼とした砂漠に突如として大輪の向日葵が花を咲かせたような、ぼくにはそんな笑みに見えた。



「いないってほどでもないけどさ」


「強がっちゃって、かーわいい。きみ、何年生の何て子?」


「……二年二組。蓮都。そっちは?」


「五年の、純乃。お姉さんって呼んでもいいよ」


「分かった。純乃ね」


「前言撤回。可愛くない」



そう言って笑みを浮かべた純乃の横顔を、ぼくはちらりと盗み見る。


簡単に壊れてしまいそうな小さな顔の中に収まるパーツは、やはりどこか小さかった。


美人とは呼べない顔だけれど、それでも美しく見えてしまうのは、

内面から滲み出る溌剌としたエネルギーのせいだと思う。




「何? ああ、髪? 酷いでしょ、お母さんの遺伝ですごい癖っ毛なの」


一分程度男の子顔負けのベリーショートを撫でつけた末、それ以上の争いは

無駄な抵抗に過ぎないと悟ったらしく、弾かれたように純乃は立ち上がった。


「帰るの?」


「ううん、喉渇いたから。蓮都も何か飲む?」


壊れかけた水飲み鳥のように、ぼくは首を大きく縦に振った。







じゃあ待ってて、と純乃がどこかへ消え、ぼくは寂れた公園に一人取り残される。


暇潰しに空を見上げると、いつの間にか世界は夕暮れを迎えていた。




赤とオレンジが絶妙に溶け合い、いつしか全てを包み込む様を、

ぼくはどれくらいの間眺めていたのだろう。



気が付くと純乃が、二人分の缶ジュースを手にして舞い戻ってきていた。


「はい」


純乃がビーズのブレスレットを付けた華奢な腕を伸ばし、ぼくに缶を手渡す。


「ん」


何だ、コーラじゃないのか。

イラストからすると、オレンジジュースのようだった。気を取り直して、ラベルを読む。

果汁は、かじゅう。100はひゃく。%は……



「これ何?」


「どれ。……ああ、パーセント、って読むんだよ」


「パーセントって何さ」


「飲んでみれば分かるって」



プルトップに苦戦しながら缶を開け、純乃の真似をしてぐいと傾け、ぼくはむせ込んだ。

何だ、この味? 前、親戚のおじさんに飲まされたウイスキーくらい酷い。


「あーあ、何やってんの」


「しょっぱい」


「お子ちゃま。甘酸っぱいから美味しいんでしょ」


「百パーセントって、甘くて酸っぱいってこと?」


「うん。まあそういうこと」


そう言って純乃はふふっと笑った。

何だかくすぐったいような笑みだとぼくは思った。





……なら、ぼくの初恋は百パーセントだ。





ちっとも美味しく感じられはしなかったけれど、空を仰ぎながら二人で黙ってジュースを飲んだ。


オレンジの淡い光と、甘酸っぱい感情に包まれながら。




「きれい」


不意に静寂を裂いて、恍惚としたように純乃は呟く。


「夕日?」


「ん。オレンジって、一番きれいな色だと思うんだ」


そう言われてみれば、純乃のシュシュやブレスレットやTシャツまでもがオレンジだった。



「そう、だね」


「うん」






夏の予感をはらんだ風が、ぼくらの上にふわりと舞い降りる。



甘美で、それでいて酸っぱいぼくの忘れられない夏が、静かに始まろうとしていた。























不必要と判断され、捨てられたゴミだって、

いざ積もってしまえば貝塚だなんて立派な名前を与えてもらえる。



なら、十五年積み重ねた僕の人生には、誰が、どんな名を付けてくれるのだろう。



客観的に判断するなら、「惰性」辺りが妥当なところだろうか。


あくまで客観的に判断するとしたなら、の話だ。



じゃあ、僕が自分で名付けるとしたなら――



「百パーセント」。












あの頃やけに固執していた懐かしい単語を口ずさむと、心の奥の方で、確かに何かが疼いた。



それはまだ彼女に対する未練を捨てきれていないからなのか。


それとも唐突に訪れた別れに未だ納得しきれていないからなのか。




分からないけれど、ただ一つだけはっきりと見えてきたものがある。



――僕は、純乃にもう一度だけ会いたい。














何だかもう受験勉強に勤しむ気も起きなくなって、

僕は社会の資料集を文字通り放り投げると、目的を果たすためにまずはキッチンへ向かった。




キッチンでは母が十年も前のヒット曲を小さく歌いながら、

その曲に合わせて小気味よくキャベツを刻んでいた。


母がソプラノと共に包丁でリズムを刻んでいれば安泰、さもなければ地獄。

それは父が僕にこっそり教えてくれた、秘密のボルテージだ。



「母さん」


「何」


母は目もくれずに返事を投げてよこした。

無理もない。リズミカルに野菜を刻む時話しかけられるのを、母は忌み嫌う。



「去年とか一昨日の年賀状って、どこに仕舞ってある?」


「……確か、居間のサイドボード」


母はそれでもまだ包丁が愛おしそうに溜め息を吐くと、僕を居間へと導く。





両親が結婚した年から家にあるというサイドボードから、

くたびれた輪ゴムで素っ気なく括られた年賀状の束が姿を現した。


探し求めていたものだというのにぞんざいな扱いに、苦笑を漏らすしかない。



「これでいいでしょ。 あとは何もない?」


特には思い浮かばなかったが、ふと思い出して言ってみる。


「果汁百パーセントのオレンジジュース」


「冷蔵庫にパックのオレンジジュースなら」


「缶は、ないよね? 自販機とかのさ」


「そんなの、自販機で買えばいいでしょ」


それもそうだ。










二年前に届いたきりの年賀状の宛先は、ここから自転車で三十分程度の距離だった。


たった三十分の距離なのに、それでも今までその一歩を踏み出せなかったのは、

七年間という深い深い溝のせいだと思う。



今年の誕生日にもらって以来何となく付けっ放しになっている腕時計を見やると

やけに凝った作りの短針と長針が、十五時をまわったところだと僕に告げていた。




突然訪れたら、純乃はどんな顔をするだろうか?




年賀状を裏返すと、明らかに使い回しな定番のデザインの隅に、

いわゆるギャル文字で「あけおめ☆」と小さく記されているのが読み取れた。




……少なくともあの頃のような無垢な笑顔は浮かべていまい。
























あの頃。



公園の朽ちかけたベンチに腰掛けて、二人で缶ジュースを飲んだ、あの頃。



純度百パーセントの、僕の幼い恋。



僕の耳に、純乃の笑い声が甦る。



「蓮都、コーラよりずっとおいしいでしょ。あたしの好きな百パーセント」














あの日から僕の夏は止まったままだ――