このブログについて

 高齢親の囲い込みとは、認知症や要介護状態にある親について、一部の家族が「親を守る」という名目で、面会、連絡、医療・介護情報、財産管理、施設との連絡窓口を独占し、他の家族を遠ざけていく状態をいいます。

 

 

 親を守ることは大切です。
 しかし、その言葉が、親本人の意思を見えにくくし、家族を排除し、情報や財産の出入口を一人が握るために使われるなら、それは保護ではなく支配に近づきます。

 

 このブログでは、高齢親の囲い込みを、個人批判ではなく家族内支配の構造として考え、親の尊厳と家族関係を守るために何が必要かを考えていきます。

 

 

第23回 きょうだい間の力関係が、親の孤立を生むとき ――親をめぐる支配は、長年の家族関係から生まれることがある

 

高齢親の囲い込みは、親だけの問題ではありません。

 

もちろん、中心にいるのは高齢の親です。

 

親本人の意思。

親の尊厳。

親の生活。

親の人間関係。

親の財産管理。

親が孤立させられていないか。

 

そこが最も大切です。

 

しかし、実際に高齢親の囲い込みが起きる背景には、親本人だけではなく、きょうだい間の長年の力関係が深く関わっていることがあります。

 

兄と妹。

姉と弟。

長男と他のきょうだい。

親の近くにいる子と、離れて暮らす子。

親の財産管理をしている子と、何も知らされない子。

親の介護を理由に主導権を握る子と、親に会えなくなる子。

 

 

高齢親の囲い込みは、突然始まるとは限りません。

 

もともと家族の中にあった上下関係、遠慮、支配、我慢、承認欲求、劣等感、親からの評価へのこだわりが、親の高齢化をきっかけに一気に表面化することがあります。

 

親が元気なうちは、まだ見えにくかったもの。

親が自分で判断できていたころは、抑えられていたもの。

介護、認知症、施設入所、相続、財産管理が始まったことで、急に力を持ち始めるもの。

 

それが、きょうだい間の力関係です。

 

そして、その力関係が歪むと、親が孤立していきます。

 

 

 

1 親の高齢化は、きょうだい関係を変える

 

親が元気なうちは、きょうだい関係に多少の問題があっても、表面化しないことがあります。

 

年に数回会うだけ。

お盆や正月に顔を合わせるだけ。

それぞれの家庭や仕事があり、深く関わらない。

親が間に入って、何となく家族の形が保たれている。

 

このような状態では、きょうだい間の違和感や不満があっても、大きな問題にはなりにくいものです。

 

しかし、親が高齢になると状況は変わります。

 

親が病気になる。

認知症になる。

介護が必要になる。

施設に入る。

通院や入院が増える。

財産管理が必要になる。

遺言や相続の問題が見え始める。

 

その瞬間、きょうだい関係は現実的な問題になります。

 

 

誰が親の世話をするのか。

誰が施設と連絡を取るのか。

誰が通帳を管理するのか。

誰が医療方針を決めるのか。

誰が親に会えるのか。

誰が親の意思を代弁するのか。

誰が相続で有利になるのか。

 

親の高齢化は、きょうだい関係を試します。

 

そして、そこに長年の力関係があると、親の問題が、きょうだい間の主導権争いに変わってしまうことがあります。

 

2 「長男だから」「自分が中心だから」という意識

 

高齢親の囲い込みの背景には、長男意識や家の代表意識が関わることがあります。

 

「自分が長男だから」

「自分が家を継ぐ立場だから」

「親のことは自分が決めるべきだ」

「他のきょうだいは口を出すべきではない」

「自分が本家側だから」

「自分が親の一番近い存在だから」

 

このような意識です。

 

もちろん、長男だから悪いということではありません。

親の近くで責任を果たしている人もいます。

実際に介護を担い、親を支えている人もいます。

その努力は尊重されるべきです。

 

問題は、「責任」と「支配」がすり替わるときです。

 

親のために責任を果たすことと、親をめぐるすべての出入口を一人で握ることは違います。

 

親の世話をすることと、他のきょうだいを排除することは違います。

親の情報を受け取ることと、情報を独占することは違います。

親の意思を確認することと、親の意思を一人で代弁することは違います。

 

「自分が中心」という意識が強くなりすぎると、他のきょうだいは、家族ではなく、邪魔者のように扱われることがあります。

 

その結果、親の人間関係が、一人の家族の判断で狭められていきます。

 

 

3 承認欲求が、親を通じた支配に変わることがある

 

人は誰でも、認められたい気持ちを持っています。

 

親に認められたい。

家族に認められたい。

自分が一番親を守っていると思われたい。

自分が親孝行だと見られたい。

自分が家族の中心だと認められたい。

 

この気持ち自体は、自然なものです。

 

しかし、承認欲求が強すぎると、親を支えることが、いつの間にか「自分の正しさを証明すること」に変わってしまうことがあります。

 

自分こそが親を守っている。

自分こそが親の気持ちを分かっている。

自分以外のきょうだいは親を分かっていない。

自分がいなければ親は困る。

自分が決めるのが当然だ。

 

このような意識が強くなると、他のきょうだいの存在は、自分の承認を脅かすものになります。

 

他のきょうだいが親に会う。

親と直接話す。

施設や病院に連絡する。

財産管理について質問する。

親本人の意思を確認しようとする。

 

これらが、まるで自分への攻撃のように感じられることがあります。

 

すると、面会を制限する。

情報を出さない。

他のきょうだいを悪者にする。

「親が嫌がっている」と説明する。

「親のため」と言いながら、出入口を閉じる。

 

こうして、承認欲求が、親を通じた支配に変わっていくことがあります。

 

 

 

 

4 劣等感が、主導権への執着になることがある

 

高齢親の囲い込みには、劣等感が関係している場合もあります。

 

他のきょうだいへの劣等感。

仕事や家庭への不満。

親から十分に認められなかった感覚。

人生が思いどおりにいっていない感覚。

自分の立場が不安定だという感覚。

 

こうした気持ちを抱えている人が、親の介護や財産管理の場面で突然主導権を持つと、その権限に強くしがみつくことがあります。

 

親の通帳を管理している。

施設との窓口になっている。

親の面会を調整している。

親の意思を周囲に伝えている。

他の家族が親に会えるかどうかを決められる。

 

この立場は、家族内で大きな力を持ちます。

 

それまで十分に認められてこなかった人にとって、その力は、自分の存在価値を支えるものになることがあります。

 

だから手放せない。

 

他のきょうだいに情報を共有すると、自分の立場が弱くなる気がする。

親本人と直接会わせると、自分の説明と違うことを言われるかもしれない。

第三者を入れると、自分のやり方を見られてしまう。

財産管理を透明にすると、自分の主導権が失われる。

 

こうして、劣等感が、主導権への執着に変わることがあります。

 

もちろん、これはすべてのケースに当てはまるわけではありません。

 

しかし、高齢親の囲い込みを考えるとき、「なぜここまで情報を出さないのか」「なぜここまで会わせないのか」という問いの背後には、単なる合理性だけでは説明できない心理があることがあります。

 

 

5 財産期待が、親の意思確認を歪めることがある

 

高齢親の囲い込みでは、財産や相続の問題も避けて通れません。

 

親の預貯金。

不動産。

保険。

年金。

通帳。

印鑑。

遺言。

生前贈与。

施設費や医療費の支払い。

 

これらに関する情報を一部の家族が握ると、他のきょうだいは状況を確認できません。

 

財産期待がある場合、親との関係はさらに複雑になります。

 

親の財産を将来自分が多く受け取りたい。

親の不動産を自分の都合に合わせて処分したい。

遺言を自分に有利な内容にしたい。

他のきょうだいに財産情報を知られたくない。

親本人が何を理解しているのか、あまり確認されたくない。

 

こうした動機がある場合、面会遮断や情報遮断は、親本人のためだけではなく、財産管理や相続を有利に進めるための手段になってしまうことがあります。

 

もちろん、財産について関心を持つこと自体が悪いわけではありません。

 

親の医療費や施設費を支払うために、財産管理が必要になることもあります。

親の生活を守るために、通帳や契約の管理が必要になることもあります。

 

問題は、不透明さです。

 

親本人が本当に理解していたのか。

他のきょうだいに説明があったのか。

財産の使い方が親本人の利益に沿っているのか。

遺言や契約の経緯が明らかか。

親への面会や連絡が遮断された状態で、財産に関する重要な手続が進んでいないか。

 

面会遮断と財産管理の不透明化が重なると、慎重な検証が必要になります。

 

 

6 他のきょうだいを悪者にする構造

 

囲い込みをする人は、他のきょうだいを悪者にすることがあります。

 

「あの人は親に悪影響を与える」

「あの人はお金のことしか考えていない」

「あの人が来ると親が混乱する」

「あの人は何もしてこなかった」

「あの人には関わらせない方がいい」

 

こうした説明が、施設、病院、親族、周囲の人に対して行われることがあります。

 

もちろん、他のきょうだいにも問題がある場合はあります。

過去に親との関係が悪かった場合もあるでしょう。

介護に十分関わってこなかった場合もあるかもしれません。

 

しかし、それだけで親との関係を完全に遮断してよいとは限りません。

 

高齢親の囲い込みで問題なのは、他のきょうだいを悪者にすることで、親との接点を断つことです。

 

一度悪者にされると、その人の言葉は聞かれにくくなります。

面会希望も、迷惑行為のように扱われることがあります。

親の意思確認を求めても、「親を苦しめる行為」とされることがあります。

情報共有を求めても、「財産狙い」と言われることがあります。

 

こうして、排除された側は、声を上げるほど悪者にされるという苦しい状況に置かれます。

 

これは、きょうだい間の力関係が親の孤立を生む典型的な構造です。

 

 

7 親は、きょうだい間の争いの道具ではない

 

高齢親の囲い込みで最も忘れてはいけないのは、親本人の存在です。

 

きょうだい間の力関係が強くなると、親がその争いの中心に置かれます。

 

誰が親に近いか。

誰が親を守っているか。

誰が親の意思を代弁できるか。

誰が親の財産を管理するか。

誰が親の最期に立ち会えるか。

誰が相続で有利になるか。

 

こうした問題の中で、親本人が、まるで家族内の主導権争いの道具のように扱われてしまうことがあります。

 

しかし、親は道具ではありません。

 

親には親の人生があります。

親には親の感情があります。

親には会いたい人、気になる人、話したい人がいるかもしれません。

たとえ認知症や病気があっても、その人の尊厳は失われません。

 

親を守るというなら、親本人を中心に置かなければなりません。

 

きょうだいの勝ち負けではありません。

長男の面子でもありません。

過去の恨みを晴らす場でもありません。

財産を有利に確保するための手段でもありません。

 

親本人の意思、生活、人間関係、尊厳。

 

そこを中心に戻す必要があります。

 

 

8 きょうだい間の問題を、親の意思にすり替えない

 

きょうだい間に長年の感情的対立がある場合、それを親の意思にすり替えてしまうことがあります。

 

本当は自分が他のきょうだいを嫌っている。

本当は自分が関わらせたくない。

本当は自分が説明したくない。

本当は自分が主導権を失いたくない。

本当は財産管理に口を出されたくない。

 

それなのに、表向きはこう言う。

 

「親が嫌がっている」

「親が会いたくないと言っている」

「親が混乱する」

「親のために関わらせない」

「親が全部自分に任せると言っている」

 

これが起きると、親本人の意思は見えなくなります。

 

親の意思ではなく、きょうだい間の感情が、親の言葉として語られてしまうからです。

 

もちろん、親本人が本当に拒否している場合もあります。

その可能性は否定できません。

 

しかし、その場合でも、確認方法が重要です。

 

誰が聞いたのか。

どのように聞いたのか。

親は十分に理解していたのか。

その場に利害関係のある家族がいたのか。

第三者が確認したのか。

面会方法を調整する余地はなかったのか。

 

きょうだい間の問題を、親の意思として語ってはいけません。

 

親の意思を尊重するためには、むしろ透明性が必要です。

 

 

 

9 力関係を見抜くための視点

 

高齢親の囲い込みを考えるとき、次のような視点が大切です。

 

誰が親との接点を握っているのか。

誰が施設や病院との窓口になっているのか。

誰が財産情報を持っているのか。

誰が親の意思を代弁しているのか。

他のきょうだいは、親本人に直接確認できているのか。

面会や連絡を制限する理由は具体的か。

情報共有を求めたとき、説明があるか。

第三者の関与を受け入れる姿勢があるか。

親の生活や人間関係が広がっているか、狭くなっているか。

 

これらを見ると、家族内の力関係が少しずつ見えてきます。

 

高齢親の囲い込みでは、表向きには「親のため」と説明されます。

 

しかし、実際には、一人の家族に情報、面会、財産管理、意思確認の権限が集中していることがあります。

 

この集中こそが問題です。

 

力が集中すると、親本人の意思が見えにくくなります。

他のきょうだいの声が届きにくくなります。

施設や病院も、一人の説明だけを前提にしやすくなります。

結果として、親が孤立していきます。

 

だから、きょうだい間の力関係を見ることが必要なのです。

 

 

10 必要なのは、主導権争いではなく透明性

 

きょうだい間の力関係がこじれると、問題は主導権争いになりがちです。

 

誰が親を管理するのか。

誰が施設と連絡するのか。

誰が財産を把握するのか。

誰の言い分が正しいのか。

誰が親孝行なのか。

 

しかし、本当に必要なのは、主導権争いではありません。

 

透明性です。

 

親本人の意思を透明にする。

面会や連絡のルールを透明にする。

医療や介護の情報共有を透明にする。

財産管理を透明にする。

施設や病院との窓口を透明にする。

重要な判断の経緯を記録する。

 

透明性があれば、一人の家族に過度な権限が集中することを防ぎやすくなります。

 

他のきょうだいも、親本人の状況を確認しやすくなります。

施設や病院も、一方の説明だけに依存しなくて済みます。

親本人の意思確認も、より慎重に行えます。

 

親を守るために必要なのは、閉じることではありません。

 

開くことです。

 

すべてを公開するという意味ではありません。

親本人のプライバシーを無視するという意味でもありません。

 

しかし、必要な範囲で、必要な人に、必要な情報が届く仕組みを作ること。

 

それが、親の孤立を防ぐために重要です。

 

 

11 まとめ

 

高齢親の囲い込みは、親だけの問題ではありません。

 

その背景には、きょうだい間の長年の力関係があることがあります。

 

長男意識。

承認欲求。

劣等感。

財産期待。

過去の感情的対立。

親からの評価へのこだわり。

主導権への執着。

 

これらが、親の介護、認知症、施設入所、財産管理、相続の場面で表面化することがあります。

 

そして、一部の家族が、親との面会、連絡、医療・介護情報、財産情報、施設との窓口、親本人の意思確認を握ると、親は孤立しやすくなります。

 

他のきょうだいは、親に会えない。

親の状態を知らされない。

親本人の意思を確認できない。

財産管理の状況も分からない。

それなのに、「親のため」と説明される。

 

これは、単なるきょうだい喧嘩ではありません。

 

親を通じた支配構造です。

 

親は、きょうだい間の主導権争いの道具ではありません。

 

親には、親自身の意思があります。

尊厳があります。

人間関係があります。

人生があります。

 

だからこそ、高齢親の囲い込みを考えるときは、親本人だけでなく、きょうだい間の力関係にも目を向ける必要があります。

 

誰が情報を握っているのか。

誰が親の言葉を代弁しているのか。

誰が他の家族を排除しているのか。

誰が説明責任を果たしていないのか。

誰が第三者の関与を嫌がっているのか。

 

その構造を見ることが、親の孤立を防ぐ第一歩です。

 

親を守ることは、親を一人の家族の管理下に置くことではありません。

 

親本人の意思、尊厳、自由、人間関係、財産の透明性を守ることです。

 

きょうだい間の力関係が、親の孤立を生まないようにするために。

 

必要なのは、支配ではなく透明性です。

独占ではなく共有です。

沈黙ではなく説明です。

囲い込みではなく、親本人を中心にした開かれた関係なのです。

 

 


 

プロフィール

 

高齢親の囲い込み解放コンサルタント 白岩俊正

白岩会計事務所 代表/公認会計士・税理士/株式会社みらい 代表取締役

〒422-8005 静岡市駿河区池田616-2パレス葵102

お問い合わせはまずはメールで release.advisor@gmail.com

 


 

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