このブログについて

 高齢親の囲い込みとは、認知症や要介護状態にある親について、一部の家族が「親を守る」という名目で、面会、連絡、医療・介護情報、財産管理、施設との連絡窓口を独占し、他の家族を遠ざけていく状態をいいます。

 

 

 親を守ることは大切です。
 しかし、その言葉が、親本人の意思を見えにくくし、家族を排除し、情報や財産の出入口を一人が握るために使われるなら、それは保護ではなく支配に近づきます。

 

 このブログでは、高齢親の囲い込みを、個人批判ではなく家族内支配の構造として考え、親の尊厳と家族関係を守るために何が必要かを考えていきます。

 

第16回 調停・訴訟・成年後見制度でできること――家族だけで解決できないとき、第三者を入れる意味

 

高齢親の囲い込みに気づいたとき、多くの人はまず、家族の中で何とか話し合おうとします。

 

「親に会わせてほしい」

「親の様子を教えてほしい」

「施設や病院の連絡先を共有してほしい」

「財産や通帳の管理状況を説明してほしい」

「親本人の意思を直接確認したい」

 

本来であれば、これらは家族同士で冷静に話し合えるはずのことです。

 

 

しかし、高齢親の囲い込みが起きている場面では、話し合いそのものが成立しないことがあります。

 

連絡しても返事がない。

質問しても答えない。

「親が嫌がっている」とだけ言われる。

施設や病院への連絡窓口を一人が握っている。

親の意思を確認しようとしても、必ずその人を通さなければならない。

財産や介護の情報が開示されない。

 

このような状態になると、家族だけで解決することには限界があります。

 

そこで重要になるのが、第三者を入れることです。

 

第三者とは、家庭裁判所、調停委員、裁判官、弁護士、成年後見人、司法書士、社会福祉士、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどです。

 

もちろん、制度を使えばすべてがすぐに解決するわけではありません。

 

それでも、家族内で密室化していた問題を、外部の目にさらし、記録し、整理し、親本人の利益を中心に置き直すためには、制度の力が必要になることがあります。

 

 

1 まず考えたいのは「話し合いの場」を外に出すこと

 

高齢親の囲い込みでは、問題が家族の中に閉じ込められます。

 

閉じられた家族関係の中では、声の大きい人、親の近くにいる人、通帳や印鑑を持っている人、施設との窓口になっている人が、圧倒的に有利になります。

 

一方、親から遠ざけられている家族は、情報を持っていません。

 

親の状態も分からない。

誰が何を決めているのかも分からない。

施設や病院にどう説明されているのかも分からない。

親本人が本当にそう言っているのかも分からない。

 

この状態で「家族で話し合ってください」と言われても、実際には話し合いになりません。

 

なぜなら、話し合いの前提である情報が、一方に偏っているからです。

 

そこで、家庭裁判所の調停などを利用して、話し合いの場を家族の外に出すことが考えられます。

 

調停は、裁判のように白黒をはっきり決めるものとは限りません。

むしろ、第三者を交えて、当事者双方の言い分を整理し、合意できる点を探っていく手続です。

 

高齢親の囲い込みの場面では、たとえば次のようなことを話し合うきっかけになります。

 

親との面会方法。

親への電話や手紙の可否。

施設や病院との連絡方法。

親の体調や介護状況の共有。

親本人の意思確認の方法。

親族間での最低限の情報共有ルール。

 

大切なのは、調停を「相手を懲らしめる場」と考えすぎないことです。

 

調停の意味は、密室化した家族関係を、第三者のいる場に出すことにあります。

 

 

2 訴訟は「事実を記録する」手段にもなる

 

調停で解決できない場合や、損害、権利、財産、契約、遺言、面会妨害などの問題が深刻な場合には、民事訴訟が検討されることもあります。

 

訴訟というと、多くの人は「勝つか負けるか」「お金を取れるか取れないか」というイメージを持つかもしれません。

 

もちろん、訴訟には権利を主張し、裁判所に判断してもらうという側面があります。

 

しかし、高齢親の囲い込みにおいて、訴訟にはもう一つ大きな意味があります。

 

それは、家族の中で起きてきた事実を、公的な手続の中で記録することです。

 

いつから親に会えなくなったのか。

誰が連絡窓口を握ったのか。

どのような説明で面会が制限されたのか。

施設や病院に何が伝えられていたのか。

他の家族の質問に対して、どのような回答があったのか、なかったのか。

親本人の意思は、どのように確認されたのか。

財産管理や遺言作成の経緯に不透明な点はなかったのか。

 

これらは、家族の中で感情的に言い合っているだけでは、時間とともに流れてしまいます。

 

しかし、訴訟では、主張書面、証拠、陳述書、録音、メール、LINE、手紙、診療記録、介護記録などを通じて、事実関係を整理していくことになります。

 

もちろん、裁判所がすべての感情を受け止めてくれるわけではありません。

また、こちらが思うとおりの判断が必ず出るわけでもありません。

 

それでも、長い間、家庭内で見えにくくされてきた支配構造を、記録として残す意味は大きいのです。

 

高齢親の囲い込みでは、問題が表に出たときには、すでに何年も経っていることがあります。

 

そのとき、重要になるのは、感情の強さだけではありません。

 

重要なのは、時系列です。

記録です。

証拠です。

第三者に説明できる形で、何が起きてきたのかを整理することです。

 

訴訟は、そのための一つの手段になり得ます。

 

 

3 成年後見制度は「親の財産と意思」を守るための制度

 

高齢親の判断能力が低下している場合、成年後見制度の利用が問題になることがあります。

 

成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な人について、本人の権利や財産を守るための制度です。

 

高齢親の囲い込みでは、財産管理が不透明になることがあります。

 

通帳を誰が持っているのか分からない。

年金がどのように使われているのか分からない。

施設費や医療費の支払い状況が分からない。

不動産の売却や契約が進んでいた。

遺言の作成経緯が分からない。

親本人が本当に理解していたのか疑問がある。

 

このような場合、成年後見制度を通じて、親本人の財産管理や契約行為について、第三者的な管理を入れることが検討されます。

 

ただし、成年後見制度も万能ではありません。

 

後見人が選ばれれば、すべての親族関係が修復されるわけではありません。

面会問題が自動的に解決するわけでもありません。

家族の感情的対立が消えるわけでもありません。

 

それでも、親の財産管理や法律行為が一部の家族の手の中で不透明になっている場合、成年後見制度は重要な選択肢になります。

 

大切なのは、成年後見制度を「相手から親を取り戻す制度」と考えるのではなく、親本人の権利、財産、生活を守るための制度として位置づけることです。

 

親のために必要なのか。

親の財産管理が透明になるのか。

親本人の意思や生活の安定につながるのか。

一人の家族に権限が集中している状態を見直せるのか。

 

この視点が重要です。

 

 

 

4 制度を使う前に準備すべきこと

 

調停、訴訟、成年後見制度を考える前に、準備しておくべきことがあります。

 

それは、記録です。

 

高齢親の囲い込みに苦しんでいると、どうしても感情が先に立ちます。

 

なぜ会わせてくれないのか。

なぜ説明しないのか。

なぜ親の言葉を一人で代弁するのか。

なぜこちらだけが悪者にされるのか。

 

その怒りや悲しみは当然です。

 

しかし、制度を使う場面では、感情だけでは伝わりにくいことがあります。

 

必要なのは、次のような記録です。

 

いつ、誰に、何を伝えたのか。

それに対して、どのような返事があったのか。

返事がなかったのか。

面会を求めたのはいつか。

断られた理由は何か。

親本人と直接話せたのはいつか。

施設や病院に連絡した記録はあるか。

財産管理について質問した記録はあるか。

相手の説明に変化や矛盾はないか。

 

このような記録を、時系列で整理しておくことが重要です。

 

完璧な証拠でなくてもかまいません。

 

メール、LINE、手紙、メモ、録音、郵送記録、面会記録、施設とのやり取りなど、残っているものを整理することから始めればよいのです。

 

高齢親の囲い込みでは、「何となくおかしい」という感覚が、長い時間をかけて積み重なっていきます。

 

その「何となく」を、第三者に伝わる形にする作業が、記録化です。

 

 

 

5 制度を使うことは、家族を壊すことではない

 

調停や訴訟、成年後見制度の利用を考えると、多くの人がためらいます。

 

「ここまでしたら、家族関係が壊れてしまうのではないか」

「裁判所を使うなんて大げさではないか」

「親が悲しむのではないか」

「自分が悪者にされるのではないか」

 

そう感じるのは自然なことです。

 

しかし、考えなければならないのは、すでに家族関係が歪められていないかということです。

 

親に会えない。

親の状態が分からない。

情報が一人に集中している。

他の家族が排除されている。

親本人の意思が確認できない。

説明を求めても答えがない。

 

このような状態が続いているなら、問題は「制度を使うから家族が壊れる」のではありません。

 

すでに、家族の中で不透明な支配構造が生まれている可能性があるのです。

 

制度を使うことは、家族を攻撃することではありません。

 

親本人の意思を確認すること。

情報を透明にすること。

家族内の力の偏りを見直すこと。

第三者の目を入れること。

必要な記録を残すこと。

 

そのための手段です。

 

6 目的は、相手を倒すことではなく、親の尊厳を守ること

 

高齢親の囲い込みに直面すると、どうしても相手への怒りが強くなります。

 

なぜ親を独占するのか。

なぜ説明しないのか。

なぜ他の家族を悪者にするのか。

なぜ親の言葉を一人で握るのか。

 

その怒りには理由があります。

 

しかし、制度を使うときに忘れてはいけないのは、最終目的です。

 

最終目的は、相手を倒すことではありません。

 

親本人の尊厳を守ることです。

親本人の意思を確認することです。

親が孤立させられないようにすることです。

親の財産や生活が不透明に扱われないようにすることです。

家族関係の出入口を、一人の家族だけが握らないようにすることです。

 

 

高齢親の囲い込みで本当に問われているのは、きょうだいの勝ち負けではありません。

 

親を守るとは、どういうことか。

親のためと言いながら、親の人間関係を狭めていないか。

親の意思を代弁する人に、説明責任はあるのではないか。

家族の中で、情報と権限が一人に集中していないか。

 

その問いを、社会の側に開いていくことが大切です。

 

7 まとめ

 

高齢親の囲い込みに気づいたとき、家族だけで解決しようとしても限界があります。

 

話し合いができない。

情報が開示されない。

親本人の意思が確認できない。

施設や病院との連絡が遮断されている。

財産管理が不透明になっている。

 

そのようなときは、調停、訴訟、成年後見制度など、第三者を入れる手段を検討する必要があります。

 

 

もちろん、制度は万能ではありません。

 

しかし、密室化した家族関係に外部の目を入れ、事実を整理し、記録し、親本人の利益を中心に置き直すためには、制度の力が必要になることがあります。

 

大切なのは、感情的にぶつかることではありません。

 

記録すること。

時系列を作ること。

説明を求めること。

第三者に相談すること。

親本人の意思と尊厳を中心に置くこと。

 

高齢親の囲い込みは、家族の中だけで抱え込むには重すぎる問題です。

 

だからこそ、制度を知ること。

記録を残すこと。

第三者を入れること。

そして、親本人の尊厳を守るという原点に立ち返ること。

 

そこから、閉じられた家族関係を、少しずつ開いていくことができます。


 


 

プロフィール

 

高齢親の囲い込み解放コンサルタント 白岩俊正

白岩会計事務所 代表/公認会計士・税理士/株式会社みらい 代表取締役

〒422-8005 静岡市駿河区池田616-2パレス葵102

お問い合わせはまずはメールで release.advisor@gmail.com

 


 

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