オリンパス ペンEES-2修理の続編です。

 

実は先日のセレンユニットの鏡胴への取付時に大失敗してしまいました。

 

 

表面の透明なプラスチック部分とセレンの取付ベースのプラスチック部分はASA調整用の金属リングを挟んで組付けるのですが、透明無部品の向きを間違えて逆に組付けてしまい再組付けをしたのですがその際に既に乾燥してしまった接着剤を再利用しようとして有機溶剤を流し込んだのですが、過量に流し込んでしまった為に各々のブラスチック部品が画像の様に溶けてしまいはASA調整用の金属リングを挟んで溶着してしまいました。

このためASA設定ダイヤルが動かなくなってしまいました。

まったく持って愚かですね。

仕方ないので予備に取っておいたジャンク部品を移植して事なきを得ました。

 

 

このように綺麗に組み上がりました。

 

次に前玉の組付けです。

前玉は分解時に無限遠の位置が判るように(忘れないように)必ず目印(合わせマーク)をペイントマーカー等で付けておくことを沢山の方々が口を酸っぱくして説明されています。

ですが私はもう一点追加して

「前玉がヘリコイドから外れる位置」にも目印をつけています。

私は何故かヘリコイドにネジ込むのがとても下手で最悪の場合はこのオリンパス ペン

シリーズだと30分以上かかってしまいます。

そのため前玉がヘリコイドから外れる位置をなるべく正確にマークすることで時間と手間を大幅に削減できるようになりました。

またペンシリーズの前玉はとても小さいため親指と人差し指でつまむような感じとなり非常に滑りやすくなるのでゴムの指サックを付けて作業すると更に効率が上がります。

 

 

ちょっと見にくいですが右側の黄色が無限遠の合わせマーク

左側のピンクがヘリコイドの合わせマークです。

 

 

更にフォーカスリングを取り外す前に無限遠の合わせマークを付けて画像に残しておきます。

見にくいですがにLensの文字の「s」の位置に銀色のマークが付いています。

こちらの方が先程の黄色のマークよりも正確です。

 

 

こちらが際組上げした状態です。

ほぼほぼあっています。

これでレンズユニット&鏡胴の組上げが完成しました。

 

次はタッチアップです。

 

 

製造されてから60年近く経過していますからこういった部分的な塗装の剥がれは仕方ありません。

しかし色が灰色というのが問題です。

黒だったら単純に黒の塗料を使えばよいのですが(光沢加減の調整は必要です)、

灰色だと色んな色調の物があるため困りものです。

 

 

私は塗装の塗料はガイアノーツのプラモデル用塗料を使っています。

密着力や耐久力に問題はありますが使いやすさと好みでこれを使っていきます。

ガイアノーツには灰色はI~Vまで5種類あります。

それで始めにIVをチョイスしましたが明るすぎる

次にVを入手したら今度は暗すぎる。

仕方がないので両方の灰色Vと黒を適当に混ぜて自分で調色していきます。

オリジナルの色に完全に合わせることはできないかもしれませんが努力します。気の長い時間のかかる作業です。

あと塗装の光沢加減も調整するのでフラットベース(艶消し材)も必要であれば添加します。

 

 

プラモデル用の塗料で金属に塗装をすると非常にはがれやすいので密着性を上げるためにガイアノーツのマルチプライマーを下地材として塗装します。

これはナカナカの優れもので強力す。

 

 

更にスプレー塗装と違って筆を使って塗装すると筆跡や筆ムラが残るといった事をよく聞きますので、私はこのリターダーを塗料に対し15%程度添加して塗料の感想を遅らせて筆跡や筆ムラが残らないようにしています。

これもかなりの優れものです。

 

 

ようやく調色が完了しました。

段差が無ければほとんど違いが判りません大成功です。

ほんの少しずつ黒または灰色Vを足して実際に塗ってみて乾燥させて(乾燥すると色味が変わるので)何度も繰り返して色調を確認してオリジナルに近付けていったので5時間くらいかかってしまいました。

乾燥を待つ間にモルトの貼り替え等他の作業をしていました。

黄←の方は光沢強い感じがしたのでフラットベース(艶消し材)を少々添加して光沢を落としたのが赤←です。

今回は灰色だったので取り敢えずは白と黒色の混合比といった感じなのでここまで上手に調色できましたが、もし赤や青、黄、ピンクといった色だったらここまで同じ調色はできないはずです。

 

 

次にモルトの貼り替えです。

私はこの作業がカメラ修理の中で一番嫌いです。とても面倒くさいですから。

軍艦や底蓋を取り付ける前に作業をした方が貼り付ける溝部へのアクセスが楽になります。

先ずはラッカーシンナーと細いマイナスドライバーを使って古いモルトのカスを除去します。

モルトは様々な機種に合わせてカットされた糊テープ付きモルトを 

Aki-Asahi.comさんが販売してくれています。

カメラ革専科 [Aki-Asahi Custom Camera Coverings]

興味のある方は覗いてみてください。

本当は糊テープの付いていないモルトを自分寸法通りにカットして接着剤を使って丹念に張り付けなければダメだと師匠に教わったのですが、それでは時間がかかりすぎるので費用対効果でAki-Asahiさんのお世話になっております。

 

一晩経過して塗料が乾きました。

結果は大成功です。

 

 

画像があまりよくないせいもありますがどこをタッチアップしたのか判別不明です。

 

 

こちらでは塗料に若干の段差が付いているので判別できますが色と光沢は全く同じと言えそうです。

段差ができた理由として、このように微細なタッチアップの場合は塗料を筆で塗るのではなく筆で置くという感じで行うからです。

このため塗料が盛り上がって乗る(付着する)からです。

この段差が気に入らなければ耐水ペーパーで磨きだす方法もありますがここまで小さいとそこまでする必要はないと思います。

まぁなんにせよ、今回はオリンパス ペン用のタッチアップペイントの調色に成功したことで今後のペン修理の強力なツールが完成したことになります。

 

次に革を貼り付けます。

 

 

私が革の貼り付けに使用している接着剤はコニシボンドのG103です。

どこでも簡単に入手できる接着剤です。

ただ、このままストレートで使用すると粘度が高いため膜厚な塗布となってしまい革を貼り付けると余剰な接着剤が端部からはみ出してとても醜い仕上がりになってしまいます。

そこで溶剤で希釈してこれくらいまでサラサラにします。

これ以上サラサラではなくシャバシャバにしてしまうと乾燥時間が早くなってしまい接着力が落ちてしまいます。

特に鋭角な端部が…。

元々劣化しているので反り返っている場合は尚更です…。。

だったら新しい革で張り替えれば良いのでは?と思われるかもしれません!

ですが私はこのカメラが半世紀以上の時間を生き抜いてきた証として敢えて当時からのオリジナルの革を慎重に剝がして再利用します。

ですから革の剝がしと貼り付けには最重の神経を払って時間をかけて作業をします。

 

 

とはいってもこのように接着剤がはみ出してしまう場合があります。毎回の事です。

この様な時は…。すぐに対処せずに10分程度放置して少し乾燥させて粘度を高めます。

 

 

そうしてからピンセットで摘まんで引っ張るとこのようにまとまってくれるので

それを更にピンセットで除去していきます。

 

 

するとこのように綺麗に仕上がります。

 

フィルム巻上げボタンを取り付けてから底蓋を取り付けます。

 

次に軍艦の取付です。

 

 

オリンパスの設計者の設計の崇高さがこの画像から見て取れます。

製造後に分解修理された時のことを想定していることが伺われるのです。

まず赤←です。白のストロボ用の電線が途中でハンダ付けされています。

これは後々に軍艦が取り外されることを想定しているので、わざわざ一手間掛けているのでしょう。他のメーカーは一本の電線で直付けしています。

黄←の部分。ここにはセレンからくる黒と緑の電線と露出計からくる赤と黒の電線が抵抗を介して結線されて余った電線をクルクルと巻き上げてまとめられています。

つまり電線の長さにかなり余裕(長すぎ)を持たせています。

これは断線防止のために余裕を持たせているという理由もありますが、後々の修理の時に電線を切ってしまった場合に再結線しやすい様に電線の長さに余裕を持たせているのではないかとも思われます。

弱電の電気工事士の中にはこのように後の修理を想定して敢えて電線に余裕を持たせる方がいます。

 

 

私はハンダ付けがあまり上手ではないのですがこのようになっていると結線作業が楽になります。

ハンダ付け作業が下手な私はその対策として高級(高額な)ハンダごてを使って自分の未熟な能力を補っております。

そうでなければ出力が10W程度の小さなハンダごてを使用することです。

カメラに使われている電線の太さだと30Wでも熱量が多すぎて不必要な部分にまで熱が伝わってしまい溶解してしまう場合があります。

 

 

ハンダ付けした部分をビニールテープで絶縁します。

 

 

3個のネジで軍艦を取り付けます。

もう1個のネジはストラップホール直近です。

 

 

フィルム巻上げハンドルを取り付けます。

 

 

ストラップを取り付けて完成です。

 

それではテスト撮影を近日中に行います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハーフサイズカメラのオリンパスペンEES-2です。

 

 

このEES-2を35mmフルサイズフィルムを使えるようにしたのがTRIP 35なんだそうです。

TRIP 35はあれほどシンプルな構造でとてつもない描写力で撮影できるのですからその種機(親機)となるEES-2もハーフサイズフィルムと云えどもそれなりの写りが期待されます。

 

今回はEES-2を分解・修理しながらTRIP 35と内部構造の比較をしていきたいと思います。 

最終的にはテスト撮影まで行います。

いやぁ~、TRIP 35を修理&テスト撮影してからずっとやってみたかった企画だったんですけど在庫していたEES-2は露出計が壊れていて使えず、最近になってようやく手ごろな値段で入手できました。

 

 

まずは外観と大きさの比較です。

こうやって見るとそれ程大きさの違いを感じないのですが、実際に手に持つと

TRIP 35の方が明らかに大きく感じます。

 

 

この角度から見ると大きさの違いをはっきりと感じます。

特にレンズ鏡胴部の長さがTRIP 35は倍近くあります。

これはフィルムサイズが大きくなった分レンズとフィルムのの焦点距離が長くなったからなのではないかと思われます。

 

 

フィルム室の比較です。

フィルムの巻上げ機構(上下にギザギザが付いた軸)の位置を合わせて撮影してみました。

こうして見ると巻上げ軸から左側の寸法はほぼほぼ同じ様です。

TRIP 35は巻上げ軸を埋め込むような形状にしてフィルムのフレーム枠を拡げることでコンパクト化に成功しているようです。

素晴らしいデザイン・アイデアだと思います。

 

 

たまたまペン(ハーフサイズカメラ)シリーズのレンズキャップをTRIP 35に装着したらピッタリと装着できてしまったので気づいたんですが、なんと鏡胴部の口径は同じなんですよ!

まさかレンズの口径まで同じなのか?と思いましたが流石にTRIP 35の方が大きかったです。

しかしレンズの長さとF値は40mm F2.8で同じです。

 

 

TRIP 35には前板があってそこにレンズ・絞り・シャッター・露出計・ファインダーの全てのユニットが取り付いていて前板とボディが接合されています。

 

 

EES-2は前板が無く、シャッター・露出計・ファインダーユニットがフィルムフレーム枠側から4本のネジでボディに直付けされています。

 

 

そして絞りユニット(赤←)はレンズユニットの中にあります。

後玉(黄←)をカニ目スパナで外すとアクセスできます。

 

 

TRIP 35の絞りユニットも基本的に同じですがスペースに余裕があるためか前側からアクセスできます。矢印の3本のネジを緩めてレンズユニット外すと絞りユニットを取り出せます。

 

以上、EES-2とTRIP 35の構造の比較でしたが前板の有無と各ユニットの取り付け方が若干違う事以外は各部の構造は双子と云っても良いくらい同じでした。

フィルムサイズの違いからボディの大きさが違いますが確かにEES-2はTRIP 35の種機・親機だということが理解できました。

 

さて、ここから以下はEES-2の修理編となります。

不具合の症状は

赤ベロが出ない

絞り羽根が動かない

といったこのカメラのド定番の症状です。

以前のような「マニュアル設定なのに赤ベロがでてしまう」といったような摩訶不思議な症状ではないので今回はとても楽です。

 

 

まずは露出計が活きているかどうかのチェックです。

ここまで分解すると露出計の針(矢印)が見えるようになりますのでセレンに光を当ててこの針が動くかどうかチェックします。

本機はキチンと動いたので露出計は活きていました。

画像は赤ベロの動作確認のためセレンに光を当てないようにレンズキャップを装着しています。

因みになんですが…。

露出計が死んでいた場合でも他の部分の動作がちゃんとしていればAUTOの設定で赤ベロは出ます。

というか赤ベロしか出ませんし、絞りは開放のままで動かずシャッタスピードも低速側固定で変化しなくなります。

露出計と赤ベロと絞り羽根は連動して動作していますが、修理の際はそれぞれ別個に対応していかないといけません。

 

 

露出計の確認が終わったので今度は赤ベロです。

正常であればシャッターボタン(緑←)を押すと銀色のレバー(白←)が左方向へ動いて真鍮色のプレートが連れ添って左に動きます。

露出が適正範囲ならば黄←段の部分の範囲でレバーが動きます。

露出が適正範囲外(アンダー)になると青←の段までレバーが動き、赤ベロが出てシャッターが切れなくなります。

 

 

この様に露出が適正範囲内黄←の位置でシャッターが切れますし

赤ベロも出ていません。

 

 

適正範囲外(アンダーに)なると青←の位置となりロックが掛かりシャッターは切れません。

そして赤ベロがしっかり出ます。

 

 

ということで白←のレバー(赤ベロ)の軸となる赤←部が固着していると判断してここにベンジンを注入しました。

すると予想通り赤ベロがスムーズにスルスル出て来るようになりました。

 

ですが…。

絞り羽根の動きがなにやらおかしい?

赤ベロが出る➡露出アンダー=絞りは開放となる。ならなければいけない。

なのですが何回も繰り返してみると二回に一回くらいの確立で絞りが解放まで開きません。

ということは…。

絞り羽根の動きが悪い。動きが渋い。

と判断できます。

 

 

 

絞り羽根のユニットを取り出して確認。

ヤッパリ古い油分のせいで動きが渋くなっています。

 

 

しばらくベンジンに漬けこんで脱脂洗浄します。

取り出して乾燥させて完了です。

とてもスムーズに動くようになりました。

(絞り羽根ユニットの分解・洗浄行程の撮影を忘れて組み立ててしまったので、部品取りのジャンクユニットで代替撮影しました。実際の絞り羽根ユニットは錆も腐食もありませんでした)

 

 

 
このように露出計の針が光量に合わせて動いています。
絞り羽根も露出計に連動して動きますし
赤ベロもスムースに出るようになりました。
 
露出計
赤ベロ
絞り羽根
これらは連動しているのですがと別系統で独立していると考えてそれぞれに対応して修理していく方が頭が混乱せずに作業がしやすいと思います。
 
今日はここまで。
次回は更なる組上げをして完成させます。
 

 

 

オリンパスTRIP35の購入者様からマニュアル操作時でも赤ベロが出てきてシャッターが切れない』というクレームをいただきました。

念のため証拠の画像を送ってもらうとF2.8でしっかりと赤ベロが出ていましたので即座に返品&返金の申し入れを行いました。

 

『赤ベロ』という言葉はオリンパスのハーフサイズカメラのPenシリーズやTRIP35の状態説明で非常に多く使われます。

これはAUTO状態で撮影している場合に露出がアンダーになった場合ファインダー内に警告のための赤い札が下から出てきます。

 

 

『赤ベロが出ます』とか『赤ベロが出ません』といった動作確認時の症状の説明の表現に使われます。『赤ベロが出ない』状態だとAUTO状態での露出計に不具合があると判断されるみたいです。実際はそんなことはないんですけど前板を外す所までの分解しての修理が必要となります。

 

さて件のカメラが昨日飛行機に乗って大陸から帰ってきたので即分解して原因を究明して修理をしましょう。

しかし...。

殆どの場合この手の不具合は『赤ベロが出ない』というものであって『赤ベロが出てしまう』といった不具合は聞いたこともありません。ナニか嫌な予感がします。

更にTRIP35(とPenシリーズ)はとてもシンプルな構造で部品点数も少なく故障の原因となるような部分(部品)はなかなか思いつきません。というか壊れようが無いのではないかと思えるぐらいです。(後にこの思い込みが深く沼にハマる原因となります)

それでいて写真の写りはあの映え方で価格もお手柄なんですから脅威ですね。

 

先ずはマニュアル時の絞り羽根の動きを確認していきましょう。

 

 

この絞り環の裏側に張り付けられた矢印の金属のプレートの斜めにカーブした部分がカムとなって絞り環をF2.8~F22の範囲で回転させることによって

 

 

こちらシャッターユニットの矢印にあるピンを押し下げる事によって絞り羽根が開閉します。

因みにマニュアル時でも露出計は動作していますので、例えば露出計がF16を示す様な明るさの状況でAUTOからマニュアルF2.8に絞り環を動かしても絞り羽根はF2.8にはなりません。先にレンズキャップ等で光を塞いでからでないと正しく動作しないと思います。(実はまだ分解中で組み上げていないので正しく確認できてはいませんが…。)

ともあれ、マニュアル状態では赤ベロが出ないようにロックが掛かる仕組みがどこかにあると思いながらシャッターユニット(前板)を持ってあれや、これやと動作を確認してもロック機構は見つからず、動作もおかしい所は無さそうです。

原因不明で行き詰ってしまいどうする事も出来なくなり沼にハマり始めました。

こういう時は正しく動作している別の個体も分解して動作を比較して何が違うのかを確認するしかありません。

 

 

画像左が問題の個体、右が正常に動作する個体です。

両方ともこの状態で動作確認をすると全く同じ動きをします。

どちらも赤ベロは途中で止まらずファインダー内まで上がります。

やはり原因不明...。ズブズブと首まで沼に入り込んだような感じ。


 

何の気なしに絞り環を付けて動作確認をしてみると動きに違いが現れました。正しく動作していた方はマニュアル時にしっかりと赤ベロにロックが掛かります。

 

 

しかし絞り環の裏側には例のカムのプレートが貼り付いているだけで他には何もありません。いったいどうやってロックがかかったのでしょうか?

試しにと正しく動く絞り環を問題のユニットに着けて動作をかくにんしてみたら…。

何も変わりません。赤ベロにロックはかかりません。

一体何が違うのでしょうか?

原因は何なのでしょうか?

シンプルな構造なのが災いし疑える箇所が無く手の施しようがありません。

こんなに簡単な構造なのに何で不具合が発生するのでしょうか?

頭まで沼に沈み込んで更に沈下していくような気分です。

 

 

もう何も考えることができなくなりピンセットを机に置きしばらく放心状態に。

しばらくしたらある疑問が頭の中に浮かびました。

そういえば…。あの赤ベロの下に付いている銅製のレバー…、あれ何のために付いているんだろうか?」

上の画像の赤い矢印の部分です。

この部分を比較してみましょう。

 

 

こちらが問題のユニットのレバー部分。

銅の非鉄金属製です。

 

 

こちらが正しく動作しているレバー部。

金属製です。

形状も若干違います。これだと正確な比較はむずかしいです。

しかしシリアル番号を比較すると

銅製が      8,000,000番台

金属製が  20,000,000番台

その差なんと120万! これだけ離れていれば材質や形状の変更はあり得るのでこのレバーの存在の目的は同じと考えられますので比較を続けることにしました。

 

 

先ずは絞り環を装着してAUTOの状態を確認します。

こちらは正しく動作している方

しっかり赤ベロが出ています。

 

 

こちらが問題児。

同じく赤ベロが出ています。

 

 

ここで絞り環にこのような切り欠きのような部分がある事に気が付きました。

この部分がレバー端部に近接していたので何か関連性がありそうです。

 

 

更に詳しく見てみると絞り環の外周の一部分だけが高くなっています。

 

それでは次にマニュアルF2.8の状態で確認してみましょう。

 

 

正しく動作している方。

なんと! 

絞り環の高くなっている部分がレバー部をロックして赤ベロの上昇を防いでいます!

これがロックだったんですね!

 

 

問題児の方は

レバー部が曲がっていて絞り環のロック部分より低い位置にありロックをスルーしてしまうためにロックが掛からず、マニュアル時でも赤ベロが上がっていたのでした。

 

 

レバー部の曲がりを治して動作確認をしたら…。

見事に赤ベロがブロックされてくれました。

こういった不具合があることを考えればレバー部の材質を硬い物に変更することは正しいですね。

 

 

ということで今年修理して経験した数々のトラブルの中で二番目と言える時間を費やした難問題でしたがこうやって書き綴ってみたら、くだらないというか実に些細な原因にここまで時間を費やしたのかと反省しきりという感じです。

シンプルな構造なんだから壊れる要素がないといった勝手な思い込みが判断をにぶらせたのでしょう。

また赤ベロの下についているレバーの役目に付いても以前から気になっていたにもかかわらず昨日まで解析をせずにおざなりにしていたのも時間を浪費した原因です。

 

ちなみに今年一番苦労させられたカメラの機種はヤシカ(YASHIKA) HALF14でした。構造が複雑で理解に苦しまされ分解途中に訳が分からなくなってもう一台を分解して確認する。を繰り返していたら5台同時に分解するハメになってしまいました。

更に腐食が激しくて固着してしまい2台を破壊してしまった上に部品の精度・品質の悪さから動作が安定しない等で修理にまる一カ月かかってしまいました。「シャッターが開いているようで開いていない」という謎の動作を起こすとんでもないカメラでした。

 

さて、

明日からこれらのTRIP35二台を組み上げていきましょう。

 

 

 

 

よくカメラのレンズ状態の良否判定のチェックポイントとして言われているのが

・傷(コーティング剥がれ含む)

・カビ

・クモリ

・チリ(極小ゴミ)

・バルサム切れ

・コバ落ち

等がありますは今回はこの中で傷とクモリというかクスミというかちょっと変わった現象について検証してみたいと思います。

 

そのサンプルとして活躍してもらうカメラがオリンパスのTRIP 35のブラックモデルです。

前回のテスト撮影ではあまりのポテンシャルの高さに驚愕し映りの描写力に感動したカメラです。

 

 

これは修理後の姿なんですが...。

 

 

本来はこんなふうに鏡胴のフィルター取付部のリングが大幅に凹んでいました。

幸いにもセレンが死んでしまって部品取りになってしまった個体があったのでそちらよりリングを移植したのですがこれが結構手間がかかってしまいました。

 

 

このように鏡胴を構成する各種リングにはセレンに繋がる電線が通っているためセレンと電線が繋がっているハンダを外す必要があるのですがセレンリングが微細な構造になっているために無理をするとプラスチック部品を破壊しかねません。

 

 

結局ここまで分解したのですがど~もレンズの状態があまりよろしくないようなんです。

 

 

仕方ないので更に分解してレンズを全て取り外しました。

右から前玉・中玉・後玉です。

そしてそれぞれをチェックしてみると...。

パッと見は全部綺麗に見えるのですが...。

 

 

組立に集中してしまい現物の撮影を忘れてしまったので現物と同じ症状を持つ、

キャノンDemi EE17のレンズで代用します。

清掃後はこの様に非常に綺麗なんですが...。

 

 

ブルーLEDライトの光をかざすとこのようにクモリというかクスミのようなものが確認できます。(よろしかったら拡大して見てください)最初はカビかと思ったのですがどんなに頑張っても除去できません。

TRIP 35は前玉と後玉にこのような症状がありました。

でも通常光では確認できず、言われた後で慎重に見るとそう言われてみれば…。  というレベルです。

 

 

更に不思議だったのが中玉の症状です。

画像をよく見てもらえると解ると思いますがレンズ内に『白い線のような傷のようなもの』が確認できます。

実はこれ、前玉じゃなく中玉の表面に存在しているんです。

前玉の表面だったら傷があっても仕方がないと思うのですが外気に触れることがない中玉にナンで傷が付くのでしょうか?しかも良く見ると硬いもので引っ搔いた傷というよりは。経年変化でレンズが瘦せた後の皺(しわ)の様にも見えます。

これらはいったい何者なのでしょうか??

そしてこれらは撮影にどの様な影響があるのでしょうか?

撮影した画像が白くボケて不鮮明になったり

解像力が落ちたり

光の乱反射

といったような弊害が撮影した画像に起きるのでしょうか?

逆に画像に影響が出なければこれらの症状は無視できる症状と判定できるので再生できるカメラの個体が増える事になります。

という事で可能な限りこれらのレンズを清掃して組み上げてからテスト撮影を行いました。

 

使用したフィルムはKodak ColorPlus ASA200です。

 

 

今回は新たにレストアが完了したキャノンDemi EE17もテスト撮影に随伴します。

 

 

更に2台ともゾーンフォーカス機なので、私の目測は全く当てにならない。といよりも能力がないみたいなので距離測定のためにアサヒペンタックスSPも随伴させます。

このSPは私が13歳の時に使用して鉄道を撮影していたカメラで、先日弟が実家で弟が発見してくれて我が家まで持ってきてくれた個体です。

久しぶりに手にしてみると55mmF1.8のレンズはカビだらけで本体はミラーアップした状態でした。

本体を治しレンズも清掃して往時の状態にもどしました。

そして今回のために黄変除去した50mmF1.4のレンズに換装しての参加です。

 

では実写撮影をして行きます。

 

 

お約束の窓からの撮影ですが何ら変わった感じはしません。

 

 

 

ん?フレアの出方がなんかおかしい。

白く靄のかかったような感じ?

 

 

Demi EE17はこんな感じです。

 

 

 

こちらのフレアもおかしいような気がします。

 

 

Demi EE17ではこんな感じです。

 

 

 

 

 

 

 

ここでとんでもないミスが判明しました!

TRIP 35のゾーンフォーカスは4段階あるのですが、

それぞれ距離が1m・1.5m・3m・5m以上(無限遠)となるのですが

私はそれを1m3m5m10m以上(無限遠)と勘違いして撮影していました!

つまり今までの撮影は無限遠以外ピントが合っていないことになります!

 

 

こちらが正しいピントで撮影したものです。

上の画像と比較してみてください。2枚共画像のサイズ(容量)を大きくしてありますので拡大して見較べてみてください。

違いが解ると思いますが、ピントが合っていない画像でもなかなかの描写力です。

おそるべしTRIP 35!

 

 

ここからはピントが合っている画像です。

 

 

 

 

 

この画像には理由がありましてTRIP 35の最短は1mなんですがフォーカスリングがそれよりもすこし近距離寄りに回るので0.8mで撮影しました。

でもやっぱり範囲外だったようです。

 

 

これ、多彩な色の細かい文字がびっしりと写り込んでいますがキッチリ描写されています。

ほんとうにおそるべしTRIP35!

 

 

 

 

 

今回の検証の結果としては逆光気味でのフレアの出方がDemi EE17とは違っていましたが、それとて許容の範囲ではないかと私は思いました。

それ以外の通常の撮影では私には一切問題無い様に感じました。

TRIP 35の能力が一線を画していて影響がでなかっただけなのかもしれませんので

いつかキャノンDemi EE17で同じ症状+若干のキズありの状態でもテストしてみたいと思います。

 

懐かしのアサヒペンタックスSPを持ってきてくれた弟に「走っている鉄道を撮影するとどうしても車体がブレる」と相談したところ「シャッタースピードが遅いから。最低でも1/500秒じゃないとブレる。」と教えてくれました。

ということで随伴のDemi EE17で1/500秒で撮影してみたところ

 

 

 

この4枚は事故か何かで上り線のダイヤが乱れていた用で速度が異様に遅く目前で下り線にかぶられてしまい、通過した車両後端を無理くり撮影しようとしてしっぱいしました。

 

 

しかし余裕をもって準備してから満を持して撮影したらこのように上手く撮れました。

なるほど!電車の様に高速で動く物体を撮影するならシャッタースピード優先の露出装置の方が有利になるんですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャノンのセレナー85mm F1.5です。

 

 

絞り羽根は20枚だそうです。

 

 

フォーカスリングはこんな感じ。

 

 

絞りリングはこんな感じでF1.5になっています。

 

 

L39のマウント部はこんな感じです。

 

 

ケースはこんな感じで前回のニッコールSC 5cm F1.5同様70年以上経過しているにもかかわらずとても状態がよいです。

 

 

Serenar 85mmと刻まれているので純正のケースですね。

 

このレンズも数カ月前まで85mm F1.9だと思っていたんです。

というのもネットで検索してもF1.5は殆どヒットせずF1.9ばかり出てきてしまうんです。

ようやくキャノンカメラミュージアムにこのレンズが掲載されているのを発見しました。

それによりますと、このレンズは1952年の発売で初期型のI型が真鍮製で後期のII型はアルミ製だそうです。

判明したのはそれだけでこのレンズが、なぜ・どのように開発されたのかといったような情報は全く入手できませんでした。まか不思議なれんずです。

どなたかたこのレンズの詳細をご存知な方がいらっしゃいましたらコメントでご教示ください。

 

 

このレンズは初期型の真鍮製なのですが重量がなんと727gもあります。

 

 

残念な事に中玉にカビが発生しています。

画像は前玉側からです。

 

 

こちらは後玉からです。

 

この程度のカビなら清掃すれば簡単に除去できるのですが、残念ながら私個人のスキルでは分解することができません。

どなたか先輩が分解方法をネットにアップしていないか検索してみてもF1.9の一部の分解方法がアップされていただけでした。

このような状態で盲目的に分解するとほぼ間違いなく組み上がらなくなります。

今回は後玉まで分解して清掃しましたが、それ以上の分解・清掃は断念しました。

 

以上の3本のレンズは私が持っていても意味がないので12月上旬以降に現状の状態でネットオークションに出品します。