よくカメラのレンズ状態の良否判定のチェックポイントとして言われているのが

・傷(コーティング剥がれ含む)

・カビ

・クモリ

・チリ(極小ゴミ)

・バルサム切れ

・コバ落ち

等がありますは今回はこの中で傷とクモリというかクスミというかちょっと変わった現象について検証してみたいと思います。

 

そのサンプルとして活躍してもらうカメラがオリンパスのTRIP 35のブラックモデルです。

前回のテスト撮影ではあまりのポテンシャルの高さに驚愕し映りの描写力に感動したカメラです。

 

 

これは修理後の姿なんですが...。

 

 

本来はこんなふうに鏡胴のフィルター取付部のリングが大幅に凹んでいました。

幸いにもセレンが死んでしまって部品取りになってしまった個体があったのでそちらよりリングを移植したのですがこれが結構手間がかかってしまいました。

 

 

このように鏡胴を構成する各種リングにはセレンに繋がる電線が通っているためセレンと電線が繋がっているハンダを外す必要があるのですがセレンリングが微細な構造になっているために無理をするとプラスチック部品を破壊しかねません。

 

 

結局ここまで分解したのですがど~もレンズの状態があまりよろしくないようなんです。

 

 

仕方ないので更に分解してレンズを全て取り外しました。

右から前玉・中玉・後玉です。

そしてそれぞれをチェックしてみると...。

パッと見は全部綺麗に見えるのですが...。

 

 

組立に集中してしまい現物の撮影を忘れてしまったので現物と同じ症状を持つ、

キャノンDemi EE17のレンズで代用します。

清掃後はこの様に非常に綺麗なんですが...。

 

 

ブルーLEDライトの光をかざすとこのようにクモリというかクスミのようなものが確認できます。(よろしかったら拡大して見てください)最初はカビかと思ったのですがどんなに頑張っても除去できません。

TRIP 35は前玉と後玉にこのような症状がありました。

でも通常光では確認できず、言われた後で慎重に見るとそう言われてみれば…。  というレベルです。

 

 

更に不思議だったのが中玉の症状です。

画像をよく見てもらえると解ると思いますがレンズ内に『白い線のような傷のようなもの』が確認できます。

実はこれ、前玉じゃなく中玉の表面に存在しているんです。

前玉の表面だったら傷があっても仕方がないと思うのですが外気に触れることがない中玉にナンで傷が付くのでしょうか?しかも良く見ると硬いもので引っ搔いた傷というよりは。経年変化でレンズが瘦せた後の皺(しわ)の様にも見えます。

これらはいったい何者なのでしょうか??

そしてこれらは撮影にどの様な影響があるのでしょうか?

撮影した画像が白くボケて不鮮明になったり

解像力が落ちたり

光の乱反射

といったような弊害が撮影した画像に起きるのでしょうか?

逆に画像に影響が出なければこれらの症状は無視できる症状と判定できるので再生できるカメラの個体が増える事になります。

という事で可能な限りこれらのレンズを清掃して組み上げてからテスト撮影を行いました。

 

使用したフィルムはKodak ColorPlus ASA200です。

 

 

今回は新たにレストアが完了したキャノンDemi EE17もテスト撮影に随伴します。

 

 

更に2台ともゾーンフォーカス機なので、私の目測は全く当てにならない。といよりも能力がないみたいなので距離測定のためにアサヒペンタックスSPも随伴させます。

このSPは私が13歳の時に使用して鉄道を撮影していたカメラで、先日弟が実家で弟が発見してくれて我が家まで持ってきてくれた個体です。

久しぶりに手にしてみると55mmF1.8のレンズはカビだらけで本体はミラーアップした状態でした。

本体を治しレンズも清掃して往時の状態にもどしました。

そして今回のために黄変除去した50mmF1.4のレンズに換装しての参加です。

 

では実写撮影をして行きます。

 

 

お約束の窓からの撮影ですが何ら変わった感じはしません。

 

 

 

ん?フレアの出方がなんかおかしい。

白く靄のかかったような感じ?

 

 

Demi EE17はこんな感じです。

 

 

 

こちらのフレアもおかしいような気がします。

 

 

Demi EE17ではこんな感じです。

 

 

 

 

 

 

 

ここでとんでもないミスが判明しました!

TRIP 35のゾーンフォーカスは4段階あるのですが、

それぞれ距離が1m・1.5m・3m・5m以上(無限遠)となるのですが

私はそれを1m3m5m10m以上(無限遠)と勘違いして撮影していました!

つまり今までの撮影は無限遠以外ピントが合っていないことになります!

 

 

こちらが正しいピントで撮影したものです。

上の画像と比較してみてください。2枚共画像のサイズ(容量)を大きくしてありますので拡大して見較べてみてください。

違いが解ると思いますが、ピントが合っていない画像でもなかなかの描写力です。

おそるべしTRIP 35!

 

 

ここからはピントが合っている画像です。

 

 

 

 

 

この画像には理由がありましてTRIP 35の最短は1mなんですがフォーカスリングがそれよりもすこし近距離寄りに回るので0.8mで撮影しました。

でもやっぱり範囲外だったようです。

 

 

これ、多彩な色の細かい文字がびっしりと写り込んでいますがキッチリ描写されています。

ほんとうにおそるべしTRIP35!

 

 

 

 

 

今回の検証の結果としては逆光気味でのフレアの出方がDemi EE17とは違っていましたが、それとて許容の範囲ではないかと私は思いました。

それ以外の通常の撮影では私には一切問題無い様に感じました。

TRIP 35の能力が一線を画していて影響がでなかっただけなのかもしれませんので

いつかキャノンDemi EE17で同じ症状+若干のキズありの状態でもテストしてみたいと思います。

 

懐かしのアサヒペンタックスSPを持ってきてくれた弟に「走っている鉄道を撮影するとどうしても車体がブレる」と相談したところ「シャッタースピードが遅いから。最低でも1/500秒じゃないとブレる。」と教えてくれました。

ということで随伴のDemi EE17で1/500秒で撮影してみたところ

 

 

 

この4枚は事故か何かで上り線のダイヤが乱れていた用で速度が異様に遅く目前で下り線にかぶられてしまい、通過した車両後端を無理くり撮影しようとしてしっぱいしました。

 

 

しかし余裕をもって準備してから満を持して撮影したらこのように上手く撮れました。

なるほど!電車の様に高速で動く物体を撮影するならシャッタースピード優先の露出装置の方が有利になるんですね。