民の声新聞 -32ページ目

学ぶ母親たち。わが子を内部被曝から守ろう ~安田節子さん講演会

多量の放射性物質が撒き散らされた福島原発の爆発事故から半年。食の秋を迎え、わが子に少しでも安全な食べ物を与えようと、母親たちは必死だ。たんぽぽ舎(東京都千代田区)で5日に開かれた学習会も、100人近くの母親たちで座席は埋め尽くされた。講師の言葉に時にはうなづき、時にはメモをとり、質疑応答では一斉に手が挙がる…。内部被曝を避けたい母親たちに、専門家は力強く呼びかけた。「基準値以下=安全ではない。放射性物質は絶対に飲食してはならない。特に子どもたちにはこの大原則を徹底してほしい」


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「国の定めた暫定基準値は非常時の我慢値。特に子どもたちの口には絶対に入れてはいけない」と強調した安田節子さん



【産地公表ではなく数値測定を】

熱心に講演を聞き入った親たちは、質疑応答になると一斉に手を挙げた。

最初に質問したのは千葉県成田市の男性。
「放射性物質が検出されないと言ってもゼロではない。ゼロの食べ物だけを買うのは現実的にはなかなか難しい。仕方ないことなのか」

安田節子さんはていねいに答えた。

「私も孫がおり、不安は良く分かる。。やはり、ドイツ放射線防護協会が示した基準値(乳児、子ども、青少年に対しては、1kgあたり4Bq以上の基準核種セシウム137 を含む飲食物を与えないよう推奨されるべきである。成人は、1kgあたり8Bq以上の基準核種セシウム137 を含む飲食物を摂取しないことが推奨される)を適用したい。日本政府の暫定基準は安全基準ではない」

東京都大田区の女性は「生9か月の子どもに授乳している。今は完全授乳だが、どこで断乳しようか悩んでいる」と尋ね、別の母親は「まもなく離乳食を与えようと考えている。脱脂乳は加工食品にも入っているようだが大丈夫か」と不安を口にした。

安田さんは「いまのところ、母乳から検出された放射性物質は非常に微量。ほとんど心配いらないと思う。むしろ、母乳のもつ生命力を活用してほしい」「日本のメーカーは、海外から輸入した脱脂粉乳を使うことが多く、今回はこれが幸いしている。もし疑問に感じたらメーカーに直接尋ねることが大事。そうすることでメーカーに消費者の不安が伝わる。メーカーを変えることが、一番力のある消費者運動だ」と勧めた。
「給食の食材に関して産地を公表するようになったが、あまり学校に口を出すとモンスターペアレントだと思われそうで、躊躇してしまう。いろいろ申し入れて良いものか」。東京都港区の母親が学校給食について質問したときは、安田さんの口調がさらに強くなった。

「学校給食こそ、産地の公表ではなく放射性物質の測定が必要。教育委員会にガンガン要求してほしい。みんなが言うしかない。安全かどうか分からない食べ物を学校給食に入れるなんて犯罪的だ」

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安田さんの話に聞き入るお母さんたち。家族を内部被曝から守ろうと必死だ



【暫定基準値は異常な数値】

この日の講師・安田節子さん(http://www.yasudasetsuko.com/ )は、食政策センタービジョン21の主宰者。NPO法人「日本有機農業研究会」理事も務め、埼玉大学の非常勤講師でもある。

講演では「拡散された放射性物質の量は、チェルノブイリ事故を超えているんじゃないか、と思う。汚染されたものは絶対に出荷・販売されてはいけない。飲食してはいけない。妊婦や胎児、幼い子どもたちにはこの大原則を適用してほしい」「今後の課題は内部被曝。放射性物質は含まれてはいけないものであって、しきい値はない。国の暫定基準値以下なら安全という保障はどこにもない」「測定のやり方がお粗末で、『安全なものだけが出回っている』は嘘。ただ、福島にもホットスポットではない地域もあるので、細かい数値を表示して流通させるべき。検査体制には、とことんお金をかけるべき」などと説明。

特に国の示している暫定基準値に対しては「科学的な根拠などない『非常時の我慢値』。途方もない我慢値だ。異常な数値。体内被曝の94%が食べ物からなので、きちんとした基準値を設けるべきだ」と話した。

調理方法によっては放射線量を減らすことができる。栄養のバランスがとれた食事が大事、として「マゴワヤサシイ(豆、胡麻、ワカメ、野菜、魚、椎茸、芋)に玄米加えた食生活」を推奨。魚介類に関しては「政府はストロンチウムを測っていない。海洋汚染がそれだけ酷いのではないか、という疑念を持たれたくないなら、水揚げされる漁港ごとに測るべき」「マグロをなぜ測らないのか。回遊魚は日本全国を回る。われわれは産地で選ぶしかないが、水揚げ漁港がそのまま産地ではない。魚こそ詳細な計測を、と声をあげてほしい。計測のためには行政に費用を惜しませてはならない」と訴えた。

講演後、取材に応じた安田さんは「避難している方々が元の地域に帰れるなんて幻想。立入禁止にして移住するべき」「生産者も消費者もどちらも被害者。買わない消費者を責める生産者は敵を間違えている。今回の事故は一企業が起こした公害だ」と力を込めた。


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23年間にわたって食品の放射能測定を続けているたんぽぽ舎。今も依頼は途絶えない(上)。



【学習こそ最大の事故防衛】

講演会に先立ち、主催者を代表してあいさつした

「たんぽぽ舎」(http://www.tanpoposya.net/main/index.php?id=202

共同代表の柳田真さんは、過去の苦い経験を例に挙げてお母さんたちに訴えた。

「チェルノブイリ原発事故の直後も、今と同じような熱気があった。多くの人が立ち上がった。だが、徐々にすっと消えていってしまった。もう一歩広がらなかった。われわれは、もう後には引かない決意でいる。福島原発の事故はまだ終わっていない。日々放射能を出している。学習すれば、自分も家族も守れる。お母さんたちが学んで、つながれる場として活用してほしい」

柳田さんには、23年にわたって食の安全という観点から原発政策に反対してきた自負があると同時に、それでも原発建設を止められなかったという悔しさがある。

そこに起きてしまった原発事故。

小さいビルとはいえJR水道橋駅の近く。学習会用としてさらに一室を借り受けるには家賃などで数百万円の負担増となり「迷いもずいぶんあった」と吐露する。それでも「学ぶことが最大の自己防衛」という信念を曲げることはできないと増室と保育付き学習会の開催に踏み切った。

「現在、43基の原発が止まっている。動いているのはわずか11基。それでも停電することない。この事実がすべてを物語っているのです」

スタッフが子どもと遊んでくれることも手伝い、学習会は毎回、資料が足りなくなるほどの参加者を集めるようになった。東京都三鷹市から5歳の息子を連れて参加した母親も「子どもは環境を選べない。学ぶのは大人の責任だと思う。こういう場に来ることで、幼いながらもこの子も自覚してくれると思う」と話した。

柳田さんも集まったお母さんたちも、願いは一つ。

未来ある子どもたちの内部被曝を食い止めたい…。

(了)


乗組員が強調する虚しい安全神話。「原子力空母は事故を起こさない」

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横須賀を母港としている米海軍の原子力空母「ジョージワシントン」。4年後には別の原子力空母と交代するという情報もある(同空母公式サイトより)




福島原発の大事故でにわかに原子力施設への注目が高まっているが、横須賀を母港とする米海軍の原子力空母「ジョージワシントン」もその一つ。日本史上、初めて配備されたこの原子力空母の原子炉は、福井県・美浜原発の一原子炉に匹敵する総熱出力能力を持つ。原子力潜水艦も頻繁に出入りする横須賀に、米軍艦船が起因する原子力事故は起きないのか。今回、同空母乗組員に取材することができた。拙い英語をフル活用して、原子力災害の渦中にある日本人の気持ちをぶつけてみた。末端の一人の乗組員でさえ、洋上の原子炉に絶対的な自信を持っている。未曽有の原発事故を経験した今、彼らの言う「安全神話」がいかに砂の城であるかが良く分かる。


【「原子力空母は安全」と乗組員】

この乗組員は、通常型空母「キティホーク」にも配属されていた黒人兵士で、来年9月に退役する予定という。日本食など日本が大好きという彼は、電気関係の仕事柄、秋葉原に遊びに行った時のことをうれしそうに語った。

東日本大震災への支援活動に対する礼を述べたうえで、率直に聞いた。

「地震で福島原発が大爆発を起こし、多くの日本人が放射能汚染に対する不安を抱いている。あなたは心配ではないのか」

大きくかぶりを振りながら、彼は強く否定した。

「ダイジョウブ、ダイジョウブ。全く問題ない。俺の日常の仕事の方がよっぽど危険だ」

しかし、日本では実際に原子力発電所がメルトダウンを起こし、多量の放射性物質をまき散らしている。

「アメリカは何重ものプロテクトをかけている。とにかく安全だということを分かってほしい。審査も非常に厳しい。いくつものチェックを通過しないと航海に出られない。プロテクト、プロテクト、またプロテクトだ。日本人が横須賀の市民が不安に感じるのも分かるが、原子力空母は安全なんだ」


【「米艦船は放射能漏れを起こしたことがない」】
市民団体「原子力空母横須賀母港化を許さない全国連絡会」が2008年8月に刊行した書籍「東京湾の原子力空母~横須賀母港化の危険性」(新泉社)によると、彼らが重視している原子力空母の危険性は高濃度のウラン燃料を装備している点。

「原子力空母の核燃料の交換は20から25年に一回と言われています。そのため、艦内には20年分の死の灰をため込むということになります。万が一の事故の際には、艦内にため込んだ大量の死の灰が大気に放出されてしまうのです」

これに対し、横須賀市は「米軍や国(外務省)が安全だと言っているから大丈夫」という姿勢を貫いている。

今回、話を聞いた乗組員のように、米軍側も何重ものチェックをしているとか、日本より基準は厳しいとか、これまでに原子力艦船は深刻な事故を起こしていないなどと説明をしている。しかし、日本で原発を建設する際はとりあえず一通りの安全審査を受けるが、米海軍の艦船の場合は「軍事機密」を理由に無審査。地元行政の立ち入りさえも認めない。当然、市議会でも「市民の安全を守る立場から、実際に基地内に入って安全対策を確認したらどうか」との意見が出るが、市長をはじめ「軍事機密があり立ち入れない。プロが大丈夫と言っているのだから信じたい」という答弁を繰り返すばかりだ。
同連絡会はまた、2006年4月に当時の在日米海軍司令官が横須賀市内で行った講演に関し、その司令官が強調した安全性は五つの誤解によって成り立っていると指摘している。

その誤解とは①原子力発電所が横須賀の真ん中にできるわけではない②米海軍の艦船は放射能漏れを起こしたことがない③仮に事故が起きても放射能は基地の外には出ない④横須賀市民が避難するような事態にならない⑤原子炉は核兵器のように爆発しない━

これらの発言がいかに実態に即していないか、今回の福島原発事故を見れば明白だ。

一人の乗組員でさえ強調する「絶対安全」。まるで日本の原発の“安全神話”に似てはいないか。


【2015年、横須賀の原子力空母は交代】

別れ際、どうしても彼に伝えたいことがあり、思い切ってぶつけた。

「今回の震災支援には心から感謝している。でも、私は軍隊が好きにはなれないし横須賀に常駐していることも反対だ」

すると彼は穏やかな表情を崩すことなく答えた。

「ダイジョウブ(注:どういたしましての意味か)。俺だって戦うことも人を殺すことも嫌いだ。できればやりたくない。でも、日本という国を守るためには必要なんだと思う。日本人の気持ちは分かるが…」

そして、こんな“置き土産”を残して去って行った。

「ジョージワシントンは2015年には別の原子力空母と交代して横須賀を離れるよ。まあ、その頃俺は海軍にはいないけどね」

結局、横須賀への「原発配備」は将来も継続されることになる。

国防の名の下で続けられる原子力政策。

乗組員が絶対的自信を持つ“フェンスの向こうの原子炉”は明日も、横須賀市民と同じ時間を過ごしている。


(了)

【現地リポート】 160日後の福島は今(下)~『五里霧中』

先が見えない放射能処理。地元自治体は懸命に除染を進めるが、放射性物質に汚染された土や下水の処分先は依然として決まらないまま。せめて放射線量を減らそうと学校で住宅街で、除染作業は広がる。県外への避難は増えてはいるものの、条件が整わず県内にとどまっている人もまだ多い。もうすぐ新学期。国は、福島県内での核廃棄物の処理を進めようとしており、焼却灰の埋め立て基準も都合良く引き上げられようとしている。「マイナス思考だけでは街が廃れる一方だからプラス思考で前に進まなくちゃ」。福島県民は自分に言い聞かせるように話すが、五里霧中と言わざるを得ない状況が続いている


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雄大な阿武隈川流域もまだまだ放射線量は高い


福島県内に渦巻くのは、不安であり不信であり怒りだ。

「震災直後、とにかく水が無くて給水の列に2、3時間並んだ。今思えば、あの時多量の放射性物質を浴びていたんだ。なぜ、あの時放射線量を発表してくれなかったんだ。なぜ放射能に気をつけろといってくれなかったんだ。俺達は水を手に入れるのに精一杯だった。今さら数値を発表されても果たして本当なのかと思ってしまう。不信感は拭えない」。福島市の自営業者の言葉が全てを表している。

先月も訪れた同市内の児童公園では、7/20から8/2にかけて「表土改善事業」と称して除染作業を行った。園内の土を厚さ5cm削り取り、土木用遮水シートを敷いた穴に埋め戻した。汚染されていない土は50cmの高さで覆った。市児童福祉課によると、それまで1.97から2.67μSV/hだった放射線量が、0.50から1.11μSV/hに減ったという(地上50cm)。

だが、子どもの姿は戻らない。

飼い犬を散歩中していた近所の男性が話す。

「みんな山形などに避難しているよ。放射能があるんだから公園で遊ぶわけがない。放射性汚泥が保管されている下水処理場の辺りは、特に子どもには歩くなと言っている。面倒でも国道に迂回しなさい、と。あんたも気をつけなよ」

この男性が今一番信頼できる学者として、福島県出身である児玉龍彦東大教授の名を挙げた。「県は長崎大学の山下俊一氏をアドバイザーに委嘱しているけれど、あんな人誰も信用していないよ」

◆  ◆  ◆

福島市はこれまで、小中学校のほか、特に放射線量の高かった「渡利」「大波」の二地区で除染作業を実施。表面的には放射線量が減ったとしている。だが、結局は汚染された汚泥の行き先が確保できず、そのことが足かせとなって、除染マニュアルともいえる「ふるさと除染計画」の取りまとめの遅れを招いているのが実情だ。

市職員が言う。

「住宅地から70m以上離れたごみの最終処分場や地区内の市有地に仮置きしているが、今後の展望が開けない。5月に44万ベクレルという高濃度のセシウムが検出された乾燥汚泥も下水処理場に保管されたまま。その後も、生活排水に混じって放射性物質を含んだ下水は処理場に流入しており、除染作業をすれば実施した地区の放射線量は下がるが下水処理場の汚染汚泥は増えることになる。また、側溝から農業用水に流れ込まないとも限らない。除染はした方が絶対に良いが、一つの壁に突き当たっているのが正直なところ

会津若松市には福島県の廃棄物最終処分場があるが、同市は元々放射線量の低い地域。除染で生じた放射性廃棄物を持ち込むことへの住民からの反発もあり、運び込まれていないという。
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郡山市・21世紀記念公園は依然として放射線量が高い(上)。市内の小学校では削り取った表土が校庭に置かれたまま。「間もなく埋め戻します」という看板が立てられている(下)


伊達市でも郡山市でも、学校校庭の一角に依然としてブルーシートに覆われた盛り土が見られる。除染によって生じた汚染表土だ。郡山市教育委員会は「8月中にはいちじてきな措置として校庭の片隅に埋め戻したい」と話していたが、実際には思惑通りには進んでいないまま、二学期を迎えようとしている。

福島市内の自営業者は「確かに、県外に持って行って欲しいけれど、持って来られたら困る、と反対する人々も当然いるだろう」と福島県内での最終処分に理解を示すが、そもそも、「あくまで仮置き」(郡山市教委)とはいえ校庭に埋め戻すという処分方法に問題はないのか。
元日本原子力学会会長の田中俊一氏ですら「放射性廃棄物は、放射能が減って安全になるまでは管理処分するのが鉄則である。校庭に埋めるのは無管理状態で、その後の安全が担保できない」と語っている。ネット上では「御用学者」と揶揄されている田中氏ですら、こういう発言をすることの意味するところはやはり、校庭に埋め戻してはいけないということではないのか。

「国の最終処分場が決定したら掘り返す」という条件付きで校庭に埋め戻した福島市の職員は「放射能が減るまで福島原発の周辺を立ち入り禁止にして、そこを最終処分地にするしかないのではないか」と話す。

◆  ◆  ◆

郡山の主婦は言う。「東電も政府も、今さらバタバタしていること自体がおかしくないか。日本は今まで、何のシミュレーションもせずに54基もの原発を建設していたのかと思うと、ただただ驚く」

そして今、過去の無策に振り回されているのが福島の民なのだ。

(了)

【現地リポート】 160日後の福島は今(上)~『怒り』

大きな揺れで痛手を負い、放射性物質が未だに降り注ぐ福島に、「実りの秋」がやってきた。大震災発生からもうすぐ半年。今度は「福島県産」の拒絶という大きなうねりが農家を襲っている。どれだけ安全を訴えてもお中元の桃は送り返され、売り上げは大きく落ち込む。「なぜ買ってくれないのか」「人助けだと思って」…。固定給のない農家の怒りを前にしては、内部被曝の危険性など吹き飛んでしまう。まもなく米の収穫も本格化。福島ブランドはこのままイメージ回復ができないままになってしまうのか、「実害」と「風評」に振り回される農家の怒りはそして、これまで原発に無関心だったわれわれに突き刺さる


古い小さな小屋の真ん中に座る老農夫。畑で収穫された野菜を並べて売っている。

20歳から農業に従事してきた83歳。少し耳が聞こえなくなったが元気に農作業を続けている。

「取材?これっぽっちの大した農家じゃねえべさ」と笑う彼にも、福島原発から放出された放射能の〝実害〟が着実に迫っている。

「年寄りは買いに来てくれるけれど、幼い子どもを抱える親はピタッと来なくなったな。ほれ、牛肉から放射能が出たべ?あれからだわ、客足が遠のいたのは。検査で合格したものしか売ってねえんだけんどもなぁ」

小屋の片隅には、「キノコ」と書かれた看板が逆さまに置かれている。

「キノコ?キノコは駄目だ。山ん中は放射能が高いから危なくて入れねえべ。危険だ。今年はキノコは並べらんねえな」。それまで穏やかだった目がその瞬間だけ険しくなった。

◆  ◆  ◆
福島駅から、「あぶきゅう」の愛称で地元の人々の生活の足となっている阿武隈急行に乗ると、福島市を出て伊達市に入る。

二両編成のワンマン列車が駅に着くと「桃の里」「リンゴの里」と車内アナウンスが流れる。車窓の外に広がる水田や畑。伊達市は宅地面積が5%なのに対し、山林と田畑を合わせて65%。農業算出額145億円で、県内では福島市、郡山市に次いで3位と農業の町。作物別では水稲が1450ha、桃489ha、柿167ha、リンゴ143haの順だ。

収穫された作物の直売所も多い。

あぶきゅう・大泉駅から程近い直売所は、20軒余の農家が共同出資してオープンした。店内には旬の桃をはじめ、キュウリやナス、枝豆、ミョウガなどが並ぶ。出品する農家が日々交代で店番をしているが「売り上げは昨年の10分の1に落ちた。福島県外からのお客さんがパッタリといなくなった」と語気を強めた。

農家のぶつけどころのない怒りは、話しているうちに原発立地地区の住民へ、そして「福島県産」を買わなくなった関東の人々へ向けられた。

「福島原発はそもそも、都会の人、東京の人々のための電気でしょ?私らには全然関係ない。そのせいで東北の人間が風評被害を受けているわけだから、福島県産の作物を買うことで人道的に助けてくれてもいいんじゃないの?人としておかしくないか」

「放射能が怖いとか危ないとか言っているけれど、じゃあ普段食べているものは全て安全なのか?検査して基準値以下のものしか売っていないのに…」

「大体、原発周辺に住んでいた人達だって、建設に賛成して今まで散々良い思いをしてきたんでしょ?こっちは何も優遇もされなければ何の得もなかった。それで東電の補償だって受けられない。冗談じゃないよ」

誰を責めても仕方ないことは分かっている。自分にだって子どもがいる。大切さは良くわかる。それでも言わずには気が済まない。この収入減は来年になれば解決するのか。だが、「被害者」が「被害者」を攻める構図ほど哀しいものはない。

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旬の果物や野菜が並ぶ直売所(上)。伊達市役所の近くで放射線量は1μSV/hを超えた

郡山市内の直売所では、主婦が不安を口にした。

「少しでも放射性物質が検出されない方が良いに決まっている。いくら基準値内と言ったって…」。毎年、親戚に桃を贈っているが、今年は要らないと言われたという。

「勤め先のスーパーで社員が話していた。『今後は惣菜に福島県産の野菜を使わない』。福島の農業はどうなってしまうのか」と話したのは伊達市の主婦。

郡山では、別の主婦が自嘲気味に語った。

「県外の人が買ってくれないから地元で食べる。美味しいからね。まるでセシウムの地産地消だわ」

◆  ◆  ◆

「放射能の心配が無い昨秋収穫の米が買い占められている。一人10kgまでにしてもらっているが…」

福島市内の米穀店主(42)は嘆息する。順調にいけば9月後半から10月半ばには福島県産の新米が市場に流通することになるが、顧客からは西日本で収穫された新米を望む声も入ってくるという。「宮崎や佐賀の米が手に入らないか、とね。でも、向こうは向こうで買占めが始まっているから全く手に入らない」。

「国の暫定規制値(1kgあたり500ベクレル)を超さない限りは、そんなに心配ないのではないか」と話すが、一方で父親としての想いも吐露した。小中学校に通う三児の父。「内部被曝を心配するお母さん達の気持ちも良く分かる。生産者の怒りも正論。消費者の不安も正論。どちらも間違っていないと思う。あとは政治がしっかりするしかないのではないか」

「農家は収入減を補償してもらえるかもしれないが、われわれ小売店は東電からの補償もない。もし買ってもらえないのであれば、税金の優遇など何らかの策を考えてほしい。東電のこれからの方針を聞かせてもらいたい」

(了)
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米穀店主は葛藤している。「福島県産を買ってほしいし、お母さん達の不安も分かる」




※今回、取材で使用したガイガーカウンターは、横須賀市在住の薗部道代さんにお借りしました。深く感謝します

ジレンマのはざまで進められる除染~茨城

二学期が始まるのを前に、各自治体で校庭などの表土を削り取ることで放射線量を減らす「除染」が活発化している。根本的な解決にはならないのを承知で、しかし「せめて今、子どもたちのために最大限の努力を」と汗を流す大人の前に、大きな「壁」が立ちはだかる。取り除いた汚染土の処理だ。校庭に山積みにするわけにもいかず、かといって廃棄物の最終処分場に持ち込むわけにもいかない。結局、校庭に埋め戻すしかないのが実情で、国の処理方針決定を待っている状態。「汚染土の移動にすぎない」とわかっていても他に妙案もなく、深まるジレンマの中で除染は進む。


「子どもたちの外部被曝を少しでも抑えたい。でも、取り除いた汚染土の持って行き場がない」

そう語るのは、茨城県龍ヶ崎市環境対策課幹部。

同市は今月9日、市立長戸小学校の校庭で表土を削り取る作業を行ったが、取り除いた汚染土は1㌧ずつ20個のビニール製袋に入れられ、校庭の片隅に埋め戻されている。「地表に置けば、ブルーシートなどで覆うにしても子どもたちが汚染土に触れてしまう。かといって除染に関する国レベルの大きな枠組みが何もないから処分のしようがない。結局、埋めるという方法しかなかった」と担当者は話す。

埋め戻すにあたっては、深さ1.5m~1.7mの穴を2ヶ所掘った。広さは5m×1.3mと、3.5m×2m。埋めた後は50cmほどの高さで土をかけて覆った。いまのところ汚染土が埋まっているとの表示は何も無いが、今後、学校側で用意するという。

同小は、茨城県から借り受けた測定器を使った測定で、5月下旬から0.4μSV/h前後と市内でも高めの数値が計測されていたが、「作業前に地表面で最大0.666μSVあった箇所は0.263μSVに減少した」という。福島県南相馬市の除染マニュアルなどを参考に実施したが、平均すると3mm程度しか削れなかったにもかかわらず、発生した汚染土は20㌧。「今後も除染は行いたいが、校庭でも数値が高い地点を見極めてピンポイントでやっていきたい。そうでないと大量の汚染土ばかりが発生してしまい、埋め戻す場所も確保できなくなってしまう」(同課)。

長戸小学校の汚染土は、あくまで一時保管で、市は国などに最終処分を求めていく方針だ。
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長戸小学校の校庭にできた盛り土の下に、取り除かれた汚染土が眠っている。国の処分方針が確定するまで、子どもたちと汚染土の〝同居〟は継続する


福島市は最終処分として埋め戻し(最終処分場が決まれば掘り返す)、郡山市は仮置きとしてとりあえず校庭の一角に埋めているが、一方で表土を削り取らずに汚染されていない土で覆ってしまおうという実験を行ったのは茨城県守谷市。「すべての施設で汚染土を埋め戻せる環境にない」と今月2日、市立保育所で園庭を厚さ5cmの土で覆った。

どの程度放射線量を減らすことができるかを確認するのが目的だったが、作業前、最大で0.526μSV/hだった数値が、作業後は0.135μSV/hに下がったという。10日の測定では0.164μSV/h(地表面)だった。


いずれの方法も、目の前の数値は減るものの、放射線の除去にはなっておらず、最終的には覆い隠していることにしかなっていない。部屋の掃除をしたつもりが部屋の隅にごみを寄せ集めただけ、と同じではないか。「数値が下がったことで前に進まないと何もできない」という市職員の本音が現場の苦悩を示している。それだけに国の除染に対する基本方針の取りまとめが急がれるところだ。

(了)
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取手市は除染費用の補助制度をスタートさせた。公立学校はPTAなどからの要望を受け市が表土除去を行うが、私立幼稚園・保育園には20万円を上限に実際にかかった費用の半額を補助する

埼玉知事選で投票に行かなかった側の論理~民は権利を放棄したのか

7/31に投開票された埼玉県知事選挙。上田清司知事の圧勝三選で幕を閉じたが、投票率24.89%(2.78ポイント減)は全国の知事選での最低記録を更新。そればかりか、前回と併せ、低投票率ワースト5までに2回の知事選が入ることになった。4人のうち3人が投票に行かないという異常事態。民はなぜ動かなかったか。現職に各党相乗りで勝負が見えていたか、政治に無関心なのか、はたまた政治に絶望したか…。県庁所在地のさいたま市浦和区で、投票に行かなかった埼玉県民の言い分を聞いた。


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県庁所在地にあるJR浦和駅。知事選への関心は高まらなかった

道行く県民の多くが、結果が見えていたことを理由に挙げた。

「はじめから現職が勝つのが決まっていたからね。特にマイナス材料も無いし」(77歳女)、「無難にやっているから現職に悪いイメージは無い。結果が見えているなら私一人行かなくても影響ないでしょ」(67歳女)。中には「もともと選挙には関心が無く、ほとんど行ったことが無い」(45歳女)という人もいた。

前回2007年も27.67%(8.13ポイント減)と低かった同県知事選の投票率。現職の上田知事に各党が相乗りしたうえに、対抗馬の共産党系候補も知名度が低く、結果は大方の予想通り119万票を獲得した上田知事の圧勝に終わった。3回目の新任を得た格好だが、587万を超える有権者数から見れば、信任率はわずか20%にすぎない。県議会の間にも「有権者の8割が『上田』と書いていないのに、信任されたと言えるのか」(8/2付読売)という声があるというが、実際、現職に投票した人ですら「あれでは信任されたとは言えない」(73歳男)と同様の見方だ。しかし、有権者が権利行使しなかったのもまた事実。なぜか。埼玉独特の県民性を上げる人もいた。

「日々の生活で切迫した課題も無く、危機感が薄い県なのではないか。原発があるわけでも、海があって津波の危険があるわけでもないし」(48歳男)

別の20代女性は、ベッドタウンならではの地元意識の希薄さを指摘した。

「都内に通勤する人が多く、地元には夜遅く帰って寝るだけだから、地元の問題には目が向かないのではないか」

民主党への落胆が選挙離れを加速させた、とする70代男性も。

「あれだけ盛り上がって期待して政権交代させたのに、ふたを開けてみればこの体たらく。『どうせ投票に行っても何も変わらない』と思った人もいるのではないか」

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知事公館に設置された太陽光パネル。エネルギー政策も争点とはなり得なかったか


地元紙・埼玉新聞は8/1付で「県選管が行った啓発事業の予算額は約6800万円。『投票に行きましょう』の呼びかけだけで投票率は上がるのか。選挙啓発を再考する時期だ」と指摘しているが、そこまで行政が血税を使って啓発しないと民は権利行使しないのか。

県選管幹部は首をかしげる。

「前回も投票率が低かったので、今回は当初から危機感を持っていた。投票啓発CMの企画を県内の大学生から募ったり、新しい試みもやったが…。お金をかければ良いというものでもないし。県民が投票を大事な権利としてとらえていないのか」

上田知事は選挙翌日の会見で「何か特別な事件でもない限り投票率は上がらない。選挙啓発の限界が来ている」と述べ、選管でも「選挙制度の歴史、投票権を獲得するまでの苦労の歴史を知っていれば、投票行動につながるかもしれない」と、今後は学校教育の中で、選挙の意義や投票という権利の大切さを子どもたちに教えていく方針という。

一方で、こんな声も。

「美容師という仕事柄、時間が合わない。選挙があるのは知っていたし気になっていた。朝6時から投票所が開いていてくれるとか、もう少し制度が変わればいいのに」(21歳女)

実際、期日前投票所は、新越谷駅の構内にあるのをはじめ川越駅や川口駅近くにも設けられたが、大半が決して足の便が良いとは言えない役所ばかり。都心部は複数用意されたが、鳩山町や長瀞町など郊外ではほとんど1ヵ所だけ。これには、県選管も「決して期日前投票しやすいとは言えないのが現状。数を増やしたり駅前に投票所を設けるなど、なるべく利便性を高めることで投票率のアップに結び付けたい」と話した。


国政と市町村政のはざまで存在感がうすれつつある県政。もはや県という行政単位に限界がきているのか。

民は、先人が命がけで獲得した権利を放棄するのか。「対抗馬がぱっとしないから」という前に、まずは権利を行使しよう。その上で行政を厳しく監視しよう。上田知事が強権を振るった時、投票に行かなかった埼玉県民に反論の言葉はあるだろうか。民にも果たすべき義務はあるのだ。




















民の視点欠く横須賀市長~子を守りたい母の願いは届いたか

わが子の内部被曝を心配するお母さんたちが27日、横須賀市役所で吉田雄人市長と面会。直接、想いをぶつけた。手渡された要望書と227人分の署名に込められた願いは、子どもを放射能から守ることだ。ママ友から、幼稚園長から、小学校の担任から、まるでヒステリーかノイローゼにでもなったかのような扱いを受けているお母さんたち。世界中が未経験の事態。不安が募るのは当然のことだ。せめて、行政が「放射能は心配ない」という根拠のないバリアを取り除いてくれたら…。吉田市長を囲むお母さんたちの視線はとても熱く、鋭かった。



吉田市長と面会したのは「NO!NO!放射能ミーティング@よこすか&みうら」の13人。住まいは追浜や長井、秋谷などバラバラ。ツイッターなどインターネットのを通じて知り合ったという。

与えられた時間はわずか20分。事前に〝作戦会議〟は開いたものの、慣れない状況に時間だけが過ぎていく。さらに、吉田市長の言葉がお母さんたちを落胆させた。

「市が安全を届けるのは難しい。国や東電の責任だ」。第一声がこれだった。母親の一人が「うちの幼稚園では裸に裸足で屋外活動をしている。除染が必要です」と訴えると「市が直接、幼稚園などの表土除去をするのは難しい。国がやるべきだ」「土壌放射線量の計測器は市には無い。そこまで手が回らない」。さらには「市職員は『何言っているんですか?大丈夫ですよ』という対応はしていないはずだ」という言葉も。これまで多くの市民が様々な形で市に問い合わせや要望をしているが、それらが本当に市長の元に届いているのか。本気で市民を守る気概はあるのか。すがる想いで市役所を訪れたお母さんたちの心情を本当に理解しているのか。結局、市長が約束をしたのは、「安心を届ける責任はあるので、空間の放射線量を計ってホームページなどで公開していきたい」ということだけだった。
民の声新聞
母親たちから直接、想いを聴いた吉田市長。しかし、官僚答弁のような言葉ばかりが並んだ

ある母親は、市職員から「日本人は放射能に強いんですよ」と電話で言われ言葉を失ったという。幼稚園にマスクをしてわが子を迎えに行けば、園長に呼ばれてマスクをしないよう諭された。別の母親を刺激するのだという。幼稚園から配られるパンフレットには、「放射能は怖くない、大丈夫」というような言葉が並ぶ。放射能問題が原因で、距離を置くようになってしまった友達もいる。

別の母親は、とある市立小学校の対応に驚きを隠せなかった。「水筒にミネラルウォーターを入れて持たせたら、全て捨てて学校水道水に入れ替えさせられた聞きました。放射能は危険じゃないというスタンスを崩すわけにはいかないのでしょう」。手紙に切実な想いを綴って市長に手渡した母親もいた。夫婦で参加した人もいた。

日本人男性と結婚して市内に暮らすアメリカ出身の母親は、他の母親たちがいかに孤独かを目の当たりにして心を痛めていた。「私は本当にラッキーだと思った。だって、不安を共有できる人が周囲にいるから。日本のお母さんたちは一人ぼっち。不安を打ち明けることもできない」。しかし、その不安を市長は受け止められたか。福島・南相馬市長との会談で何を得て来たのか。


市長との面会では、小学生の娘の父親でもある男性が代表して要望書を読み上げた。

「10年後20年後に『あの時みんなで子どもたちを守ったんだ』と胸を張って言える対応を、行政と市民一体となって実行してほしい」


「事故後、数十年ぶりに教科書を引っ張り出した」と苦笑するが、獣医師として放射能の知識はある。「よくレントゲン撮影が数値の比較で持ち出されるが、それがいかにくだらないか。内部被曝は積み上がっていくもの。年間600回X線を照射される人はいないでしょう」

お母さんたちが吉田市長に熱い視線を送っている最中も、一緒に市役所を訪れた子どもたちは無邪気に室内を走り回っていた。何も知らずに被曝を続ける子どもたち。その前で木で鼻をくくったような言葉を発するばかりの市長…。

「あんなものだろう。初めから期待はしていなかった」なんて市民に言われてしまうのは、若くして重責を担っている吉田市長にとっても本意ではないはずだ。「たしかに、ネットの情報にあおられているのかもしれない。でも、30年後に大げさだったと笑い話になればいいじゃないですか。ここで危機意識を持たない方がおかしいと思う」。子を守るお母さんたちの闘いは始まったばかり。市長に民の叫びが届く日は来るのだろうか。

民の声新聞

面会前に〝作戦会議〟を開いたお母さんたち。227人分の署名も手渡した



【この日、吉田市長に手渡された要望書の内容は次の通り】

法律で定められた一般人の年間被曝限度量1mSVを守るために、原発事故による外部被曝・放射性塵の吸入による内部被曝・食品や水からの内部被曝等の全てを合算することを基本として下さい。

食品の検査は有意義ですが、食べてしまった後の検査よりも土壌・海水汚染がある地域の産物(米・野菜・果物・魚介類・乳製品・食肉・鶏卵など)を保育園・幼稚園・小学校の給食に使わない事がもっとも安全です。是非そのようにしてください。保育園から小学生の年齢の子どもは30歳の成人に比べて約4~5倍、放射線被曝により癌になる危険が高い事を考慮して下さい。給食の食材から除外する生産地は少なくとも福島県、宮城県、茨城県、群馬県、埼玉県、東京都、千葉県、の8都県に加え岩手県、山形県とする事を要望します。

水道水の放射性物質検出限界はヨウ素9Bq/kg、セシウム10Bq/kgとなっていて、それ以下の濃度のものが含まれているか個人では確認のしようが無いので不安を感じる元となっています。また水道水の安全が確保されても、現状では学校給食で牛乳を提供する事は控えるのが子どもたちの健康を守るためには最善と考えます。保育園・幼稚園・小学校の園児、児童が家庭から飲み物を入れた水筒持参で登園・登校し休み時間や給食時に飲む事を認めてください。その上で教育委員会から園児・児童全員に対し上記の内容を正式に文書で通知すると共に、広報よこすか、横須賀市ホームページでも告知してください。

上記の要望全てに関して期限を付けずに外部被曝・内部被曝の問題が完全に終息するまで実施してください。

【現地リポート】120日後の福島は今~『同居』

試合終了を告げるサイレンが鳴る。

ウグイス嬢のアナウンス。

スタンドからの拍手。

福島県郡山市役所と道路を挟んで位置する開成山野球場では、夏の全国高校野球・福島県予選の熱戦中。

照り付ける太陽、流れる汗…

毎年当たり前の光景に、今年は被曝の不安が加わっている。

国の暫定基準値、3.8μSV/hを超えた場合は中止とする方針のなか、市役所入り口では0.77μSV/hを記録した。単純年換算で6.7mSVに相当する。

郡山市は独自に「外遊び3時間ルール」を設けて広報誌などで周知しているが、この環境下で3時間も遊んで良いのか、疑問だ。
「民の声新聞」
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7/1516時すぎ、郡山市役所入り口の放射線量は0.77μSV/h。下は、88年以来のジャイアンツ戦で寄せられたメッセージ。しかし、「がんばっぺ」だけでは子どもの被曝は防げない


同市の小中学校には、校庭の一角にブルーシートで覆われた盛り土がある。行き場を失った汚染土だ。

その校庭で、部活動に興じる生徒たち。同市では、飛散防止剤でコーティングだされシートに覆われているとはいえ、放射能に汚染した土と生徒が同居する異常事態が続いている。


市教委によると、4/27以降、4回にわたって市内の小中学校65校で汚染表土の除去作業を行ってきた。文部科学省が示した3.8μSV/hを上回る学校を優先的に、1cm分を削り取った。順次、高圧洗浄器で校舎の除染も行った。県内では一番早い取り組みだった。

だが、削り取った表土を市内の廃棄物処理場に運び込もうとした段階で、周辺住民から「待った」がかかる。汚染土を一般ごみの処理場に一時保管したい市側と、放射性物質の拡散を恐れた住民。結局、「けんかをしてまで進めることではない」と市側が譲歩。しかし、結果として行き場を失った汚染土が校庭にそのまま残される異常事態を生んでしまった。

「あくまで仮置き。今後も問題の原因者である国と東電に処分を求めていきたい。これまでも何回も申し入れをしているが解決しない」と市教委。児童生徒が直接触れないような囲いはしてあり「2mくらい離れれば高い線量も計測されない」というが、子供たちが日々通う学校に山積みにされているのは尋常な状態ではない。

校庭に埋める場合には深さ1.5mまで掘り、遮水シートで汚染土を包む。その上に、猪苗代から取り寄せた汚染されていない土を50cmの高さでかぶせる方法をとる。

福島市もほぼ同様の方法を採用、幼稚園や小中学校の校庭表土を既に埋め終えている。その結果、表土除去をする前後で、82.9~90.7%の放射線量の低減が達成されたと公表している。

これらは、5/11に国から示された文科省の方針に沿った措置だが、地中に埋めるにせよ、2学期も子どもたちと放射能汚染土との同居が続くことに変わりはない。
「民の声新聞」
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校庭の一角に山積みされたままになっている汚染土(郡山市)。下は、学校表土除去の方法を公表する福島市の広報誌


季節外れの大型台風が去り、夏休みが始まった。

「学校は表土除去したからむしろ校庭で遊んだ方が安全」という人もいる。

しかし、表土は除去できても学校周辺では依然として高い放射線量が計測されている場所もある。

可能な限り疎開するのが望ましいが、環境が整わない人の苦悩は深まるばかり。

猛暑の中でもプールは休み、川遊びもできない。マスクをしたまま室内で過ごす夏。

8月に入ればお盆を迎え、終戦の日がやってくる。

だが、子どもたちを守る大人の闘いは始まったばかり。

秋の運動会は無事に行えるのだろうか。

(了)


※今回の取材では、たんぽぽ舎(http://www.tanpoposya.net/main/index.php?id=202 )の横関彩子さんに放射線測定器をお借りしました。本当にありがとうございました。


◇  ◇  ◇


「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」などが5/12に発表した緊急声明より

【もはや一刻の猶予もありません。時間が経てばそれだけ子どもたちの被ばくは増え続けます。子どもたちの被ばくをこれ以上増やさないために、文科省は「20 ミリシーベルト」基準をただちに撤回すべきです。全ての保育園、幼稚園、学校などの徹底的な除染を行って下さい。除染が完了し安全が確認できるまで学校を閉鎖して下さい。たとえ子どもたちの一時的な教育の機会が制限され不十分な状況になろうとも生命と健康があれば後で取り返すことは十分可能です。生命と健康を害してまで当面の教育の機会を確保することなど本末転倒です】

【現地リポート】120日後の福島は今~『被曝の不安』

JR福島駅近くの浴場受付で働きながら二人の娘を育てている母親の願いはただひとつ、子どもをのびのびと遊ばせてあげることだ。幼稚園と小学校(1年)に通う二人。マスクは欠かせず、暑い日が続くとのぼせるのか鼻血を出すこともあるという。

「小学校では、教室の窓を閉め切り、何台もの扇風機を回して授業を行っている。屋外プールも使えないから、水泳はバスで猪苗代のホテルまで行った。せめて夏休みくらいどこかに旅行をして、子どもたちを屋外でのびのびと遊ばせてあげたい」

本音では、県外に避難をしたい。でもそれも難しい。疎開の話題を耳にするたびに胸が痛む。

「ここでの仕事もあるし、避難や疎開をするといったって当てもない。遠く離れた方が良いのはよくわかっているけれど…」と表情を曇らせる。
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15日午前8時半、東北新幹線・福島駅のホームで測定器は0.30μSV/hを記録。新宿の3倍。福島市役所では1μSV/hを超えた



福島市役所から阿武隈川に向かう途中にある市の児童公園は、数百円で一日遊べる安さが人気だった。だが、今や遊びに来る親子はいない。楽しげな遊具の音楽だけが響く園内で、女性スタッフが悲しそうに話す。

「震災前は2ケタの入園は当たり前で、行列ができることもあった。でももう、誰も来てくれない。昨日もゼロ、今日もゼロ。この辺は放射線の数値が高いのは知っているから仕方ないけれど…寂しいですね」。そうやく土の入れ替えが決まり8月上旬まで臨時休業することになった。だが、再開後に子どもたちの笑顔が戻ってくるとは思えない。


公立学校の給食用に地場野菜を納めていた八百屋では、市の指示で県外産食材へ切り替えた。

「元来、日本では地産地消が当たり前だった。それに、福島の野菜は美味しいのよ。それを食べさせてあげられないのは本当に残念。先生も親も過敏になっているけれど、当たり前。子どもは大人が守ってあげないとね」。街を歩く子どもたちの姿が激減したことを実感する日々。夏休みに県外へ疎開をするという話も多く聞いた。子どもが一斉に避難する夏。

「政治かも東電幹部も、しばらくここで暮らしてみたらよく分かる。ほんの数時間来たって子どもたちのことなんて分かるはずがない。早く震災前の状態に戻してほしい。福島県産の野菜を食べさせたい」
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阿武隈川沿いのサイクリングロードでは2.60μSV/hを記録。すぐ目の前の下水処理場には44万ベクレルもの汚染汚泥が一時保管され続けている



下水処理場で確認された汚染汚泥をどうするか。国が8000ベクレルまでの埋め立てを認めるなか、福島市の下水処理場には44万ベクレルという高濃度汚染汚泥が保管され続けている。

「水分を抜き干草のように乾燥したものを5月に県が測定したら44万ベクレルという値が出た。しかし、再三にわたって国に処分方針を決めるよう求めてもぜんぜん決まらない。スピードこそ必要なのに…」と市職員。現在はコンクリートで封印し24時間体制で監視を続けているという。しかし、これだけの高濃度廃棄物を市で処分することはできず、国の方針決定をひたすら待つのみ。周辺の空間線量を測って公表するしか手立てがない。そうしている間にも、日々新しい生活下水は処理場に集まっており、除染の広がりなどでそれらも汚染していると考えるのが自然だ。

最近、埋め立て処分の基準を10万ベクレルにまで引き上げるとする国の案が報道された。「正直驚いた。近く正式決定されるのだろうが、各地で汚染汚泥が見つかっているから基準値の方をを引き上げようというのか。それで本当に放射能は拡散しないのか」と前出の市職員は怒りを隠さない。
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今夏の営業中止が決まった中央市民プールでは0.58μSV/h。下は来園者数ゼロが続く児童公園


◇  ◇  ◇

1ヶ月ぶりに訪れた福島は、街から子どもの姿が消えるという状況に変わりはなかった。むしろ、内部被曝や低線量被曝への不安がより高まっているようにも映った。実際、0.3μSVで設定された測定器は、福島駅を降りてから警報音がならないことはなかった。放射能汚染が確認された下水汚泥や校庭の土は未だ処分されないまま。先の見えない放射能の恐怖に苦悩する現地の様子をリポートする

わが子に何を食べさせるか~深まる母親の苦悩と危機感、フル稼働の食品分析

わが子に食べさせる物は安全なのかー。20年以上にわたって食品の放射能汚染を調べている「放射能汚染Gメン」に、全国から検査依頼が殺到している。6月は330検体を分析、今月も既に100検体に達している。11日に開かれた母親を対象にした学習会も満席になるなど、子どもの内部被曝への危機感は高まるばかり。設立当初から分析を続けてる担当者は「残念ながら汚染がゼロでない以上、産地などに留意するほかはない」と複雑な表情を見せている。

◇ ◇ ◇


東京・JR水道橋駅の近く、日大法学部に隣接するビルにある「たんぽぽ舎 放射能汚染食品測定室」。震災前は一日に平均2検体だったが、今や14検体を分析する忙しさになった。3ベクレルまで測定できる測定器は1台600万円で購入。連日2台がフル稼働している。

分析を手掛けているのが共同代表・鈴木千津子さん。デスク周りは依頼書や分析結果が書かれた書類が山積みにされている。ひとつの検体分析に要する時間は2時間余。好きなタバコでゆっくり一服する間も惜しんでデータとにらめっこしている。
「個人はもちろん、生産者や直売所の経営者、生協など依頼主は様々です」と鈴木さん。家庭菜園の収穫祭を控えた幼稚園からの依頼もあるという。
チェルノブイリ原発事故を機に誕生した「たんぽぽ舎」の設立メンバーで以来、食品の放射能汚染を調べてきた。「みんなが本当の事を知りたがっている」という想いが継続の源。今は睡眠を4時間に減らし、他の業務を止めて分析に専念している。
子どもに直接、影響がありそうな依頼を優先してこなしているという。「数値は、震災前の3倍、いや、それ以上になることもある。そもそも、原発事故が起きる前はヨウ素もセシウムも不検出だったのだから、検出されること自体が異常。基準値以下かどうかの問題ではない」と厳しい表情で話す。

これまでの分析では、セシウム134の場合、福島県産葉物(3/18採取)から5100ベクレル/kg、千葉県産ほうれん草(同4/2)から520ベクレル/kg、茨城県産の小松菜(ハウスもの、同4/3)から88ベクレル/kgが検出されている。逆に、栃木や千葉で生産された原乳や埼玉県産の鶏卵からは検出されなかった。

「もちろん、何も検出されないのが一番です。しかし、残念ながら現状ではそれは無理。消費者が産地や時期を十分に見極めるしか無いようです」
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20年以上にわたって食品の放射能汚染を調べてきた鈴木千津子さん。下は600万円でメーカーに造らせたたんぽぽ舎オリジナルの測定器

◇ ◇ ◇

約70人が参加した学習会では、震災前に制作されたアニメ「源八おじさんとタマ」が上映されたほか、たんぽぽ舎のメンバーが放射線や被曝の基本を解説。集まった母親たちは、身を乗り出すように聞き入った。質問コーナーでは「魚はもう、食べられないのか」「日本海側は汚染していないのか」「牛乳を飲ませても大丈夫か」など、予定時刻を過ぎても挙手が止まらないほど。「何を子どもに食べさせて良いのか分からなくなってしまった」という不安の声も聞かれた。
新宿区在住の女性は、幼稚園児の娘を連れて参加。講師の言葉を熱心にノートに書き込んだ。「まず自分が勉強しないと、娘の通う幼稚園に要望すらできないので来ました。汚染が心配なので食材は四国や九州から取り寄せています。牛が福島県外に疎開していると聞いたから卵や乳製品は食べていません」。
別の母親(文京区在住)も男児を抱き抱えながら熱心に耳を傾けた。「産地が福島原発から遠い食材を買うようにしているが、そうはいっても100%とはいかない。外食だとどのような食材を使っているか分からないし…」と表情を曇らせた。

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11日、多くの母親をが参加した「母と子どものための放射能教室」=東京都千代田区


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たんぽぽ舎は1989年、チェルノブイリ原発事故を受けて設立。当初から原発政策に異議を唱えている。今後も「お母さん向け保育付き講座」を定期的に開催していく予定という。ホームページはhttp://www.tanpoposya.net/main/index.php?id=202

食品分析は1検体7000円。問い合わせは℡03-3238-9035まで


(了)