埼玉知事選で投票に行かなかった側の論理~民は権利を放棄したのか
7/31に投開票された埼玉県知事選挙。上田清司知事の圧勝三選で幕を閉じたが、投票率24.89%(2.78ポイント減)は全国の知事選での最低記録を更新。そればかりか、前回と併せ、低投票率ワースト5までに2回の知事選が入ることになった。4人のうち3人が投票に行かないという異常事態。民はなぜ動かなかったか。現職に各党相乗りで勝負が見えていたか、政治に無関心なのか、はたまた政治に絶望したか…。県庁所在地のさいたま市浦和区で、投票に行かなかった埼玉県民の言い分を聞いた。
県庁所在地にあるJR浦和駅。知事選への関心は高まらなかった
道行く県民の多くが、結果が見えていたことを理由に挙げた。
「はじめから現職が勝つのが決まっていたからね。特にマイナス材料も無いし」(77歳女)、「無難にやっているから現職に悪いイメージは無い。結果が見えているなら私一人行かなくても影響ないでしょ」(67歳女)。中には「もともと選挙には関心が無く、ほとんど行ったことが無い」(45歳女)という人もいた。
前回2007年も27.67%(8.13ポイント減)と低かった同県知事選の投票率。現職の上田知事に各党が相乗りしたうえに、対抗馬の共産党系候補も知名度が低く、結果は大方の予想通り119万票を獲得した上田知事の圧勝に終わった。3回目の新任を得た格好だが、587万を超える有権者数から見れば、信任率はわずか20%にすぎない。県議会の間にも「有権者の8割が『上田』と書いていないのに、信任されたと言えるのか」(8/2付読売)という声があるというが、実際、現職に投票した人ですら「あれでは信任されたとは言えない」(73歳男)と同様の見方だ。しかし、有権者が権利行使しなかったのもまた事実。なぜか。埼玉独特の県民性を上げる人もいた。
「日々の生活で切迫した課題も無く、危機感が薄い県なのではないか。原発があるわけでも、海があって津波の危険があるわけでもないし」(48歳男)
別の20代女性は、ベッドタウンならではの地元意識の希薄さを指摘した。
「都内に通勤する人が多く、地元には夜遅く帰って寝るだけだから、地元の問題には目が向かないのではないか」
民主党への落胆が選挙離れを加速させた、とする70代男性も。
「あれだけ盛り上がって期待して政権交代させたのに、ふたを開けてみればこの体たらく。『どうせ投票に行っても何も変わらない』と思った人もいるのではないか」
知事公館に設置された太陽光パネル。エネルギー政策も争点とはなり得なかったか
地元紙・埼玉新聞は8/1付で「県選管が行った啓発事業の予算額は約6800万円。『投票に行きましょう』の呼びかけだけで投票率は上がるのか。選挙啓発を再考する時期だ」と指摘しているが、そこまで行政が血税を使って啓発しないと民は権利行使しないのか。
県選管幹部は首をかしげる。
「前回も投票率が低かったので、今回は当初から危機感を持っていた。投票啓発CMの企画を県内の大学生から募ったり、新しい試みもやったが…。お金をかければ良いというものでもないし。県民が投票を大事な権利としてとらえていないのか」
上田知事は選挙翌日の会見で「何か特別な事件でもない限り投票率は上がらない。選挙啓発の限界が来ている」と述べ、選管でも「選挙制度の歴史、投票権を獲得するまでの苦労の歴史を知っていれば、投票行動につながるかもしれない」と、今後は学校教育の中で、選挙の意義や投票という権利の大切さを子どもたちに教えていく方針という。
一方で、こんな声も。
「美容師という仕事柄、時間が合わない。選挙があるのは知っていたし気になっていた。朝6時から投票所が開いていてくれるとか、もう少し制度が変わればいいのに」(21歳女)
実際、期日前投票所は、新越谷駅の構内にあるのをはじめ川越駅や川口駅近くにも設けられたが、大半が決して足の便が良いとは言えない役所ばかり。都心部は複数用意されたが、鳩山町や長瀞町など郊外ではほとんど1ヵ所だけ。これには、県選管も「決して期日前投票しやすいとは言えないのが現状。数を増やしたり駅前に投票所を設けるなど、なるべく利便性を高めることで投票率のアップに結び付けたい」と話した。
国政と市町村政のはざまで存在感がうすれつつある県政。もはや県という行政単位に限界がきているのか。
民は、先人が命がけで獲得した権利を放棄するのか。「対抗馬がぱっとしないから」という前に、まずは権利を行使しよう。その上で行政を厳しく監視しよう。上田知事が強権を振るった時、投票に行かなかった埼玉県民に反論の言葉はあるだろうか。民にも果たすべき義務はあるのだ。

