学ぶ母親たち。わが子を内部被曝から守ろう ~安田節子さん講演会 | 民の声新聞

学ぶ母親たち。わが子を内部被曝から守ろう ~安田節子さん講演会

多量の放射性物質が撒き散らされた福島原発の爆発事故から半年。食の秋を迎え、わが子に少しでも安全な食べ物を与えようと、母親たちは必死だ。たんぽぽ舎(東京都千代田区)で5日に開かれた学習会も、100人近くの母親たちで座席は埋め尽くされた。講師の言葉に時にはうなづき、時にはメモをとり、質疑応答では一斉に手が挙がる…。内部被曝を避けたい母親たちに、専門家は力強く呼びかけた。「基準値以下=安全ではない。放射性物質は絶対に飲食してはならない。特に子どもたちにはこの大原則を徹底してほしい」


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「国の定めた暫定基準値は非常時の我慢値。特に子どもたちの口には絶対に入れてはいけない」と強調した安田節子さん



【産地公表ではなく数値測定を】

熱心に講演を聞き入った親たちは、質疑応答になると一斉に手を挙げた。

最初に質問したのは千葉県成田市の男性。
「放射性物質が検出されないと言ってもゼロではない。ゼロの食べ物だけを買うのは現実的にはなかなか難しい。仕方ないことなのか」

安田節子さんはていねいに答えた。

「私も孫がおり、不安は良く分かる。。やはり、ドイツ放射線防護協会が示した基準値(乳児、子ども、青少年に対しては、1kgあたり4Bq以上の基準核種セシウム137 を含む飲食物を与えないよう推奨されるべきである。成人は、1kgあたり8Bq以上の基準核種セシウム137 を含む飲食物を摂取しないことが推奨される)を適用したい。日本政府の暫定基準は安全基準ではない」

東京都大田区の女性は「生9か月の子どもに授乳している。今は完全授乳だが、どこで断乳しようか悩んでいる」と尋ね、別の母親は「まもなく離乳食を与えようと考えている。脱脂乳は加工食品にも入っているようだが大丈夫か」と不安を口にした。

安田さんは「いまのところ、母乳から検出された放射性物質は非常に微量。ほとんど心配いらないと思う。むしろ、母乳のもつ生命力を活用してほしい」「日本のメーカーは、海外から輸入した脱脂粉乳を使うことが多く、今回はこれが幸いしている。もし疑問に感じたらメーカーに直接尋ねることが大事。そうすることでメーカーに消費者の不安が伝わる。メーカーを変えることが、一番力のある消費者運動だ」と勧めた。
「給食の食材に関して産地を公表するようになったが、あまり学校に口を出すとモンスターペアレントだと思われそうで、躊躇してしまう。いろいろ申し入れて良いものか」。東京都港区の母親が学校給食について質問したときは、安田さんの口調がさらに強くなった。

「学校給食こそ、産地の公表ではなく放射性物質の測定が必要。教育委員会にガンガン要求してほしい。みんなが言うしかない。安全かどうか分からない食べ物を学校給食に入れるなんて犯罪的だ」

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安田さんの話に聞き入るお母さんたち。家族を内部被曝から守ろうと必死だ



【暫定基準値は異常な数値】

この日の講師・安田節子さん(http://www.yasudasetsuko.com/ )は、食政策センタービジョン21の主宰者。NPO法人「日本有機農業研究会」理事も務め、埼玉大学の非常勤講師でもある。

講演では「拡散された放射性物質の量は、チェルノブイリ事故を超えているんじゃないか、と思う。汚染されたものは絶対に出荷・販売されてはいけない。飲食してはいけない。妊婦や胎児、幼い子どもたちにはこの大原則を適用してほしい」「今後の課題は内部被曝。放射性物質は含まれてはいけないものであって、しきい値はない。国の暫定基準値以下なら安全という保障はどこにもない」「測定のやり方がお粗末で、『安全なものだけが出回っている』は嘘。ただ、福島にもホットスポットではない地域もあるので、細かい数値を表示して流通させるべき。検査体制には、とことんお金をかけるべき」などと説明。

特に国の示している暫定基準値に対しては「科学的な根拠などない『非常時の我慢値』。途方もない我慢値だ。異常な数値。体内被曝の94%が食べ物からなので、きちんとした基準値を設けるべきだ」と話した。

調理方法によっては放射線量を減らすことができる。栄養のバランスがとれた食事が大事、として「マゴワヤサシイ(豆、胡麻、ワカメ、野菜、魚、椎茸、芋)に玄米加えた食生活」を推奨。魚介類に関しては「政府はストロンチウムを測っていない。海洋汚染がそれだけ酷いのではないか、という疑念を持たれたくないなら、水揚げされる漁港ごとに測るべき」「マグロをなぜ測らないのか。回遊魚は日本全国を回る。われわれは産地で選ぶしかないが、水揚げ漁港がそのまま産地ではない。魚こそ詳細な計測を、と声をあげてほしい。計測のためには行政に費用を惜しませてはならない」と訴えた。

講演後、取材に応じた安田さんは「避難している方々が元の地域に帰れるなんて幻想。立入禁止にして移住するべき」「生産者も消費者もどちらも被害者。買わない消費者を責める生産者は敵を間違えている。今回の事故は一企業が起こした公害だ」と力を込めた。


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23年間にわたって食品の放射能測定を続けているたんぽぽ舎。今も依頼は途絶えない(上)。



【学習こそ最大の事故防衛】

講演会に先立ち、主催者を代表してあいさつした

「たんぽぽ舎」(http://www.tanpoposya.net/main/index.php?id=202

共同代表の柳田真さんは、過去の苦い経験を例に挙げてお母さんたちに訴えた。

「チェルノブイリ原発事故の直後も、今と同じような熱気があった。多くの人が立ち上がった。だが、徐々にすっと消えていってしまった。もう一歩広がらなかった。われわれは、もう後には引かない決意でいる。福島原発の事故はまだ終わっていない。日々放射能を出している。学習すれば、自分も家族も守れる。お母さんたちが学んで、つながれる場として活用してほしい」

柳田さんには、23年にわたって食の安全という観点から原発政策に反対してきた自負があると同時に、それでも原発建設を止められなかったという悔しさがある。

そこに起きてしまった原発事故。

小さいビルとはいえJR水道橋駅の近く。学習会用としてさらに一室を借り受けるには家賃などで数百万円の負担増となり「迷いもずいぶんあった」と吐露する。それでも「学ぶことが最大の自己防衛」という信念を曲げることはできないと増室と保育付き学習会の開催に踏み切った。

「現在、43基の原発が止まっている。動いているのはわずか11基。それでも停電することない。この事実がすべてを物語っているのです」

スタッフが子どもと遊んでくれることも手伝い、学習会は毎回、資料が足りなくなるほどの参加者を集めるようになった。東京都三鷹市から5歳の息子を連れて参加した母親も「子どもは環境を選べない。学ぶのは大人の責任だと思う。こういう場に来ることで、幼いながらもこの子も自覚してくれると思う」と話した。

柳田さんも集まったお母さんたちも、願いは一つ。

未来ある子どもたちの内部被曝を食い止めたい…。

(了)