露見しない高線量はある。関東全域で詳細な調査を~足立区のケースは特殊事例ではない | 民の声新聞

露見しない高線量はある。関東全域で詳細な調査を~足立区のケースは特殊事例ではない

小学校敷地内で毎時3.99μSVという高い放射線量が計測されたのを受けて東京都足立区は18日午後、除染作業を実施した。高さ10cm分土を除去したところで毎時0.15μSV。「目標値をクリアした」として作業は終了し、除去した土はすぐ近くの同校敷地内に埋め戻された。子どもたちと汚染土との〝同居〟は依然として続くうえ、依然として単純年間換算で、被曝量は1.3mSVを超える。区教委は「これを機に区内全校の調査を進めたい」としているが、具体的な日時は未定。今回のケースは決して特殊事例ではない。市民団体が調べて数値を提示するのを待たず、関東全域での詳細な放射線量調査が求められる。露見していない「サイレント高線量」は各地に存在して不思議でない


【深さ10cmでようやく0.15μSV/hに】

「駄目だ、まだまだ高いな。もっと掘ろう」

まず深さ5cmまで掘って土を除去。放射線量を5回測る。テレビ、新聞のカメラが多数見守るなか、依然として0.56、0.57、0.65、0.53、0.57、0.57。平均0.58(すべてμSV/h)と高い値が検出された。これを受けて立ち会った区教委の幹部はすぐに再除去を指示。「0.25になるまでは掘り進めたい。次で下がってくれれば良いのだが」と不安そうに話した。

2回目の除去後の計測では、0.15、0.14、0.15、0.16、0.16。平均0.15(すべてμSV/h)に減少。高さを50cm、100cmと変えて測っても差がなかったため「目標値はクリアできた」として、除去作業を終了。取り除いた土は三重のビニール袋3つに入れられ、さらにコーティングされた袋に入れてすぐ近くに埋め戻された。袋には、高さが少なくとも60cmにはなるように土がかぶせられた。

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深さ5cm掘ったところで放射線量を計測。

0.58μSV/hと高い値だったため、さらに5cm掘ることに


【きっかけは住民の情報提供】

除染作業が実施されたのは、区立東渕江小学校(足立区東和)。住民からの情報提供を受け17日夕に区教委職員が同校プール機械室外壁の雨どい下を測ったところ、毎時3.99μSVの放射線量を検出。区内の工務店に依頼し、雨どい真下の土を5cmずつの深さで除去することにした。

雨どいは、プールに併設された機械室の屋根から壁つたいに地面に降りているが、今回、高線量が計測された部分だけ地面との間にすき間がある。「他の雨どいも測ったが、なぜかここだけ値が高かった」と同幹部。他の雨どいは直接土に刺さるように設置されているため「他の雨どいも土を掘って詳細に調べれば当然、高い放射線量が検出されるのではないか」と水を向けると「確かにそれは考えられる」と答えた。

除去後の放射線量は区の定めた0.25μSV/hはクリアしているものの、年間被曝量に単純換算すると1.3mSVを超える。決して「下がった下がった」と喜べる数値ではない。

この日、区教委職員が花壇など校舎の周辺を20カ所測定したが、やはり0.15μSV/h前後の数値。学校側はこの日だけ外遊びの禁止と校庭での体育授業の自粛、通学路の変更措置をとったが、学校敷地全体が低くくない。安心できるような状態ではないのは明らか。明日からまた校庭の使用が再開されて良いのか、疑問が残る。
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深さ10cmまで土を除去して再び計測。

0.15μSV/hに下がったのを確認して除去は終了した


【早く解消したい汚染土との〝同居〟】

作業後、学校長は「数値が下がって良かった。元々子どもたちが頻繁に立ち入るような場所ではないし、袋から漏れ出すようなことはないと思う。不安はない」。区教委幹部も「とりあえずはひと安心」と話したが、区内には小学校だけで72ある。東渕江小学校だけが例外とは思えない。足立区は7月に校庭や砂場、プールの水に関して全校調査を実施しているが、雨どいは調査対象になっていなかった。「これを機に、全校で詳細な調査を行うよう、上に働きかけたい」(区教委)

今後、他校で同様の事態が起きた場合の汚染土の行方も定まっていない。

区教委幹部は「区内に敷地はあるが、当然、地域住民から反対されるだろう。高圧洗浄をした場合も、果たして下水に流して良いものか分からない。とりあえず仮置きとして敷地内に埋め戻すしかない」と弱り顔。60cmの土で覆うとはいえ、早く敷地外に搬出するべきだ。

除染作業には多くの大手メディアが取材に訪れ、時ならぬ騒動に地域住民が不安そうに作業をのぞく場面もあった。

だが、これは特殊事例ではない。

ここで高線量が計測されたということは、近隣の学校はもちろん、関東全域で同様の値が検出されても何ら不思議ではない。つまり、福島原発から200km以上離れている関東でも、日々子どもたちが被曝の危険にさらされている可能性があるのだ。

区教委は「あなたの言う通りだ」と賛同したが、もはや区レベルで対応できる問題ではない。都県レベルで本格的な調査を行わないと、子どもたちの健康は守られない。

各地で露見しないままになっているサイレント高線量。

意識の高い住民の調査で発覚するのを待たず、行政が積極的に調べよ。今回の事例を例外にするな。

(了)
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除去した汚染土はすぐ近くに埋め戻された。

子どもたちとの〝同居〟は続く