【現地リポート】 210日後の福島は今(上) ~『郡山のジャンヌダルク 滝田春奈市議』 | 民の声新聞

【現地リポート】 210日後の福島は今(上) ~『郡山のジャンヌダルク 滝田春奈市議』

社民党党首で弁護士の福島瑞穂さんは、かつて「法曹界のジャンヌ・ダルク」として人気を呼び、政界に乗り込んで行った。そして今、福島原発事故による被曝が懸念されている福島県郡山市で、若い女性市議に期待が集まっている。滝田春奈さん(33)。9月、震災の影響で延期されていた市議選で、初出馬ながらトップ当選を果たした。2位当選も女性で、同市議選で女性が上位2議席を占めるのは極めて異例。自身、7月に入籍したばかりで、被曝による出産への影響を抱いている。同じ立場の女性の味方となり、さらに若者の政治参加を促す先駆者となりたい…走り始めた「郡山のジャンヌ・ダルク」に話を聴いた


【自転車で選挙運動】

手応えなど無かった。

大きな支持母体があるわけでもなく、駅頭で話すことも未経験。

本来なら4月の統一地方選で実施されるはずの選挙戦は、酷暑の8月に延びた。

太陽が容赦なく照り付ける。

福島原発の放射性物質が降り注ぐ。

生まれ育った町を候補者で唯一、自転車で走り回った。

慣れない街頭演説も毎日行った。

貯金は印刷費や郵送費で瞬く間に消えていく。

「立候補して本当に良かったのだろうか」

後悔さえ頭をよぎる。母親は立候補に反対した。

だが、選挙運動を進めていくうちに、市民の期待の大きさが痛いほど伝わってくるようになった。

「見知らぬおじさんが『頑張れよ』と手を振ってくれる、わざわざ車を止めて冷えたジュースを渡しに来てくれる。演説も立ち止まって聴いてくれる人が日に日に増えた。これはもしかしたら、と思うようになりました。あれをいわゆる『手応え』っていうんでしょうかね」

子どもたちを避難・疎開させるプロジェクトに参加していたお母さんたちとも多く話した。選挙公報は子どもの命に絞って書いた。若いお母さんからのカンパも届いた。

気付けば、3979票を集めトップ当選。

「まさか、のひと言ですね。若い世代に投票していただいたのかもしれません」

まだ市民が生活の基盤を立て直すのに必死で投票率は前回比約14ポイント減の43.10%にとどまったが、得票率3.59%は前回選挙のトップ当選者と同じ。胸を張れる支持率と言っていい。

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初出馬・トップ当選で市議会に乗り込んだ滝田春奈さん。

モットーは「子どもたちの生活を守る」


【憲法は『国が守るべき法律』】

郡山市に生まれ育った33歳。

これまでの活動といえば、集会や学習会に参加した程度だった。

原点は東北大学法学部。憲法を学んだ時の衝撃。

「あの時、憲法は『国が守るべき法律』であることを教わった。今、行政も政治家もその意識が薄いのではないか」

卒業後は「みどりの未来運動」に参加。ノルウェーでの女性議員の活躍を学んだ。

その中で、先輩議員の蛇石郁子さんと知り合い、出馬を持ちかけられた。

2カ月あまり悩んだ末の決断。

勝算など無い。

議会は念入りに傍聴。何をやっているのか、姿が見えてこなかったからだ。

「どんな問題でも、市は『国や県の動向を見て検討します』『今後、調査・研究していきます』ばかり。議員もそれ以上追及しない。あまりに酷くて驚きました」。

市民感覚との乖離に唖然とした。その思いは、報告会でこまめに市民に伝えた。

震災3日後に開かれた市議会では、市議の海外研修が例年通り賛成多数で可決された。反対したのはわずか4人だった。

「この状況でよく賛成できるな、と。議員としての姿勢を疑いました。傍聴者は私一人だったけれど、誰が見ても怒ったでしょう」

後に海外研修は中止が決定されたが、いかに市議会が市民感覚とかけ離れているか、実感するには十分な出来事だった。
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滝田事務所前の砂だまりで毎時6.81μSVを計測。

郡山市役所内の芝生も毎時3.0μSV近くある

【拭えない出産への不安】

7月に入籍したが、出産への不安が払しょくされない。

依然として空間放射線量の高い郡山に生活し続け、どれだけ外部被曝したか分からない。

原発事故直後も、祖父が大事にしている家庭菜園の野菜を口にしていた。

内部被曝は分かっていたが、祖父に向かって食べたくないとは言えなかった。

周囲はサポートを約束してくれた。

長崎に移住した知人は「子どもだけ疎開させれば良い」と言ってくれた。

でも、結論はなかなか出ない。

「これから生まれてくる子どもに、親が被曝を押し付けて良いのか悩みます」

今になってさまざまな数値が公表されるようになったが、

「私たちは散々嘘をつかれてきた。信じられません。お母さんたちが被曝を懸念するのは当たり前です。食べ物にしても、生産者も消費者もどちらも被害者なのです」

市議選立候補を決意してからちょうど1年。

大地震があり、原発事故があり、結婚、そしてトップ当選…。
「この1年は、10年分の時間を経た気がします」

しかし、1年生市議は走り始めたばかり。

旧態依然とした政治の閉塞感を打破するため、

若者の雇用を増やすため、

そして、

子どもの生命を守るため…

市民の大きな期待を背負って全力疾走する。
(了)

平成23年9月4日執行郡山市議会議員一般選挙の結果  


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